軟部腫瘍– category –

整形外科軟部腫瘍

軟部腫瘍とは、皮膚、皮下組織、筋肉、血管、神経、腱、靭帯、脂肪組織などの軟部組織に発生する腫瘍の総称です。骨以外の運動器系組織に発生するため、整形外科領域で重要な疾患群の一つです。

軟部腫瘍は「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(肉腫)」に大きく分類されます。良性腫瘍は生命に直接的な脅威をもたらすことは少ないものの、大きくなると機能障害や美容上の問題を引き起こすことがあります。一方、悪性の軟部肉腫は適切な治療を行わなければ、局所の制御困難や遠隔転移により生命に関わることがあります。

軟部腫瘍の診断は、発生部位、年齢、腫瘍の特徴、画像所見などを総合的に評価して行います。特に悪性腫瘍の可能性がある場合は、適切な生検と病理診断が不可欠です。早期発見・早期治療により良好な予後が期待できるため、気になる症状があれば早めの受診が重要です。

大垣中央病院の整形外科では、軟部腫瘍の診断から治療まで、専門的な知識と豊富な経験に基づいた診療を提供しています。必要に応じて他の専門医療機関との連携も図り、患者様にとって適切な治療を行います。

こんな症状はご相談ください

以下のような症状でお悩みの方は、当院整形外科にご相談ください。

  • 皮下に触れるしこりや腫れがある
  • 腫瘤が徐々に大きくなっている
  • 腫瘤に痛みや圧痛がある
  • 腫瘤が硬く、周囲組織と癒着している
  • 腫瘤の表面が赤くなったり、潰瘍ができた
  • 筋肉内に硬いしこりを感じる
  • 関節周囲に腫れや違和感がある
  • 血管が浮き出て見える
  • 指先に激痛を伴うしこりがある
  • 以前にあった腫瘤が再発した

主な軟部腫瘍

良性軟部腫瘍

良性軟部腫瘍は生命への直接的な脅威は少ないものの、機能障害や美容的な問題を引き起こすことがあります。また、一部は悪性化する可能性もあるため、適切な診断と治療が重要です。

ガングリオン

関節や腱鞘周囲に発生する最も頻度の高い良性腫瘤です。関節液や滑液が袋状の構造に貯留したもので、手首、指、膝、足首などに多く発生します。特に手首の背側(甲側)に多く見られます。

多くの場合は無痛性の弾性軟の腫瘤として触知されますが、神経を圧迫する場合は痛みやしびれを引き起こすことがあります。サイズは米粒大からピンポン玉大まで様々で、活動量により大きさが変化することもあります。

治療は、無症状であれば経過観察も可能です。症状がある場合や美容的に気になる場合は、穿刺吸引や手術による摘出を行います。ただし、穿刺のみでは再発率が高く、完全な治癒を目指す場合は手術が推奨されます。


脂肪腫

皮下脂肪組織に発生する最も頻度の高い良性軟部腫瘍です。背部、肩、頸部、上腕、大腿などに多く発生し、中年以降に多く見られます。多発することもあります。

典型的には柔らかく、境界明瞭で可動性のある腫瘤として触知されます。多くの場合は無痛性ですが、神経を圧迫する場合は痛みを生じることがあります。悪性化することはまれですが、急激な増大を示す場合は注意が必要です。

治療は、小さく無症状であれば経過観察を行います。大きくなって機能障害を引き起こす場合や、美容的に問題となる場合、悪性が疑われる場合は手術による摘出を行います。


血管腫

血管組織から発生する良性腫瘍で、様々なタイプがあります。皮膚や皮下組織、筋肉内に発生し、先天性のものと後天性のものがあります。

海綿状血管腫では、青紫色の柔らかい腫瘤として触知され、体位変換により大きさが変化することがあります。筋肉内血管腫では、筋肉内の硬い腫瘤として触知され、MRIで特徴的な所見を呈します。

治療は、小さく無症状であれば経過観察を行います。機能障害や美容的な問題がある場合、出血のリスクがある場合は手術による摘出や硬化療法を行います。


グロムス腫瘍

爪の下(爪床)に好発する小さな良性腫瘍で、グロムス体(動静脈吻合に関与する特殊な血管構造)から発生します。指先、特に爪の下に多く見られ、女性にやや多い傾向があります。

特徴的な症状として、触れると激痛を生じること、冷水に触れると痛みが増強することが挙げられます。夜間痛を訴えることも多く、小さな腫瘍にも関わらず強い症状を呈するのが特徴です。

治療は手術による摘出が基本です。爪を一時的に除去して腫瘍を摘出することもあります。完全摘出により症状は劇的に改善します。


デスモイド(類腱腫)

線維性結合組織の増殖により形成される腫瘍様病変で、良性ですが局所浸潤性が強く、「局所悪性」と称されることもあります。腹壁、肩甲骨周囲、大腿部などに多く発生し、若い女性に多く見られます。

硬い腫瘤として触知され、周囲組織に強く癒着します。痛みを伴うことは少ないですが、神経や血管を巻き込むと症状を呈することがあります。悪性化はしませんが、不完全切除では高率に局所再発を起こします。

治療は手術による広範囲切除が基本ですが、解剖学的に完全切除が困難な部位では放射線療法や薬物療法(抗エストロゲン薬、NSAIDsなど)を行うこともあります。

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)

軟部肉腫は比較的まれな悪性腫瘍ですが、適切な治療を行わなければ生命に関わる疾患です。早期発見・早期治療により予後の改善が期待できます。

脂肪肉腫

脂肪組織から発生する悪性腫瘍で、軟部肉腫の中では比較的頻度が高い疾患です。40~60歳代の中高年に多く、大腿部、臀部、後腹膜などに好発します。

初期には痛みのない腫瘤として現れ、進行とともに急速に増大します。良性の脂肪腫との鑑別が重要で、急激な増大、硬さの変化、痛みの出現などが悪性を疑う所見となります。

治療は手術による広範切除が基本です。病理学的亜型により予後が異なり、高分化型は比較的予後良好ですが、多形型や円形細胞型は予後不良とされています。術前・術後の化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。


滑膜肉腫

関節周囲の滑膜様組織から発生する悪性腫瘍で、15~40歳代の比較的若年者に多く見られます。膝関節周囲、足関節周囲、手関節周囲などに好発します。

比較的進行が緩慢で、長期間にわたって徐々に増大することが特徴です。石灰化を伴うことがあり、画像上で特徴的な所見を呈することがあります。肺転移を起こしやすいため、早期発見・治療が重要です。

治療は手術による広範切除が基本で、術前・術後の化学療法を組み合わせます。若年者に発症することが多いため、機能温存を考慮した治療計画が重要です。


平滑筋肉腫

平滑筋組織から発生する悪性腫瘍で、血管壁の平滑筋から発生するものと、他の平滑筋組織から発生するものがあります。40~60歳代に多く、四肢、後腹膜、子宮などに発生します。

比較的境界明瞭な腫瘤として現れることが多く、初期には症状に乏しいことがあります。血管原性のものは特に悪性度が高く、早期に転移を起こすことがあります。

治療は手術による広範切除が基本です。化学療法や放射線療法の効果は限定的ですが、症例に応じて集学的治療を行います。


横紋筋肉腫

横紋筋組織から発生する悪性腫瘍で、小児・青年期に多く見られる代表的な軟部肉腫です。頭頸部、泌尿生殖器、四肢などに発生し、急速に増大する傾向があります。

小児では胎児型、青年期では胞巣型が多く見られ、それぞれ予後が異なります。早期から遠隔転移を起こしやすく、全身治療が重要となります。

治療は化学療法、手術、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。化学療法に対する反応が良好で、適切な治療により治癒が期待できる疾患です。


未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫)

以前は悪性線維性組織球腫と呼ばれていた疾患で、現在は未分化多形肉腫として分類されています。50~70歳代の高齢者に多く、四肢の深部軟部組織に好発します。

比較的急速に増大し、局所浸潤性が強いことが特徴です。肺転移を起こしやすく、予後は一般的に不良とされています。

治療は手術による広範切除が基本で、術前・術後の化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療を行います。完全切除が予後を決定する最も重要な因子です。

診断・検査

当院では、軟部腫瘍の正確な診断のために、以下のような検査を行っています。

問診・診察

腫瘤の発症時期、増大速度、症状の変化などを詳しく聞き取り、適切な診察を行います。

超音波検査

腫瘤の性状、血流の有無、周囲組織との関係を評価します。

MRI検査

腫瘤の詳細な構造、周囲組織への浸潤の程度を評価します。

CT検査

胸部CT検査により肺転移の有無を評価します。

PET-CT検査

悪性腫瘍の活動性や転移の評価を行います。

血液検査

  • 腫瘍マーカー:LDHなどの一般的な腫瘍マーカーを測定します。
  • 炎症反応:CRP、血沈などを測定します。

病理検査

  • 穿刺吸引細胞診:細い針で細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
  • 針生検:太い針で組織を採取し、病理診断を行います。
  • 切開生検:手術により組織の一部を採取し、確定診断を行います。
  • 免疫組織化学検査:腫瘍の詳細な分類を行います。
  • 遺伝子検査:特定の遺伝子異常を検索し、診断や治療選択に活用します。

治療方法

軟部腫瘍の治療は、腫瘍の種類(良性・悪性)、大きさ、発生部位、患者様の年齢や全身状態などを総合的に考慮して決定します。

良性軟部腫瘍の治療

経過観察

小さく無症状の腫瘍では、定期的な検査による経過観察を行います。

手術療法
  • 摘出術:腫瘍を被膜と一緒に摘出します。
  • 穿刺吸引:ガングリオンなどの嚢胞性病変に対して行います。
非手術療法
  • 硬化療法:血管腫などに対して硬化剤を注入します。
  • 理学療法:症状の軽減を目的として行います。

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の治療

集学的治療

複数の治療法を組み合わせて行います。

手術療法
  • 広範切除術:腫瘍を周囲の正常組織と一緒に広範囲に切除します。
  • 機能温存手術:可能な限り患肢の機能を保持しながら根治を目指します。
  • 再建手術:切除により生じた欠損を筋皮弁や人工材料で再建します。
化学療法
  • 術前化学療法:手術前に腫瘍を縮小させる目的で行います。
  • 術後化学療法:再発・転移の予防を目的として行います。
  • 転移時化学療法:転移病巣に対する治療として行います。
放射線療法
  • 術前照射:手術前に腫瘍を縮小させる目的で行います。
  • 術後照射:局所再発の予防を目的として行います。

分子標的治療・免疫療法

近年、軟部肉腫に対する新しい治療法として、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などが使用されるようになっています。

分子標的治療薬

特定の遺伝子異常を標的とした治療薬

免疫チェックポイント阻害薬

免疫系を活性化して癌細胞を攻撃する治療薬

当院では、患者様の状態に応じて最適な治療選択を行い、必要に応じて専門医療機関との連携も図ります。また、治療後の機能回復や社会復帰に向けたサポートも行っています。

早期発見のポイント

軟部腫瘍、特に軟部肉腫では早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。以下のような症状や変化がある場合は、早めに専門医にご相談ください。

受診が必要な症状・所見

  • 5cm以上の腫瘤:大きな腫瘤は悪性の可能性が高くなります
  • 急速な増大:短期間で明らかに大きくなる腫瘤
  • 硬い腫瘤:石のように硬く、周囲組織と癒着している腫瘤
  • 深部の腫瘤:皮下ではなく筋肉内にある腫瘤
  • 痛みを伴う腫瘤:特に夜間痛がある場合
  • 皮膚の変化:腫瘤上の皮膚が赤くなったり、潰瘍ができた場合
  • 再発:以前に手術で摘出した腫瘤が再発した場合

良性を示唆する所見

  • 小さな腫瘤:5cm未満の小さな腫瘤
  • 柔らかい腫瘤:弾性軟で可動性のある腫瘤
  • 表在性:皮下にある腫瘤
  • 長期間変化なし:何年も大きさが変わらない腫瘤

ただし、これらの所見のみで良悪性を判断することはできないため、気になる腫瘤がある場合は専門医の診察を受けることが重要です。

アクセス

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住  所:〒503-0025 岐阜県大垣市見取町4丁目2番地

提携駐車場がございます。アクセスについて詳しくはこちらのページをご覧ください。

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