関節リウマチ(RA)

関節リウマチ(RA)(Rheumatoid Arthritis)とは、自己免疫の異常によって主に関節に痛みや腫れをもたらす疾患です。

多くの場合、手指や手首、足首などの小さな関節から対称性に症状が広がり、進行すると日常生活にも大きく影響します。

男女ともに発症しますが、女性のほうが多い傾向があります。

進行度合いには個人差があり、発症初期のうちに原因を把握して適切に対処すれば、症状をコントロールできる可能性が高まります。

この記事では、関節リウマチの病型や症状、原因、検査・治療方法、治療費などを詳しく解説します。

この記事の執筆者

臼井 大記(日本整形外科学会認定専門医)

臼井 大記(うすい だいき)

日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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目次

関節リウマチ(RA)の病型

関節リウマチ(RA)は臨床的特徴や進行度、活動性、画像所見、病態生物学的特徴、治療反応性など様々な観点から分類できます。

血清反応性による分類

血清反応陽性(セロポジティブ)RA

セロポジティブRAはリウマトイド因子(RF)や抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA: 抗CCP抗体)が陽性で、古典的RAの大部分を占めます。

血清反応陰性(セロネガティブ)RA

従来、セロネガティブRAはセロポジティブRAに比べ臨床症状や関節破壊が軽度で進行も緩やかな傾向があると考えられてきました。

近年は2010年のACR/EULAR分類基準の適用により早期から診断されることもあって、治療反応性や画像的な病態の進行はセロポジティブRAと大差なく、むしろ初期炎症が強い例もあるとが報告されています​。

※血清反応性:血液中の血清(けっせい)に含まれる抗体やその他の物質が、特定の抗原(異物)と反応するかどうかを示すもの。反応を利用して、病気の診断や体の状態を調べられる。

疾患の経過による分類

単相性(monocyclic)

単相性とは発症後1回の関節炎エピソードのみで寛解しその後再燃しない経過で、全RA患者様の約20%にみられます。

多相性(Polycyclic)

多相性は寛解と再燃を繰り返す経過です。

進行性(progressive)

慢性的に疾患活動性が持続し関節破壊が進行する経過です。

近年の治療法進歩により、多相性・進行性の患者様でも疾患活動性を抑制できるようになり、単相性(寛解導入)で経過する方の割合が増えているとされます​。

特殊な病型

関節リウマチの中には特殊な病態を呈する亜型が存在し、鑑別が必要です。

Felty 症候群 (Felty’s syndrome)

長期罹患した重症の血清反応陽性RAに、好中球減少(白血球減少)と脾腫※1を合併する稀な病態です。RA患者様の1%未満と稀ですが、「難治性リウマチ」の一形態とも呼ばれ、皮膚潰瘍や重篤な細菌感染症を合併しやすいのが特徴です。

血清反応陽性RAの重篤な合併症としてリウマチ性血管炎もしばしば併存し得ます。

中~小動脈の血管炎により皮膚潰瘍や壊疽、多発単神経炎、播種性血管炎(古称「悪性関節リウマチ」)を呈しうる重篤な状態で、RAの晩期合併症として注意が必要です。

※1脾腫:脾臓が通常よりも大きくなった状態。

回帰性リウマチ(palindromic rheumatism)

一過性の関節炎発作を繰り返す症候群で、関節が腫れ上がるほどの炎症発作が自然寛解し、また不定期に再発するのを特徴とします。

発作は数日以内に消失し、X線上の関節破壊は残さない点でRAとは異なります。

しかし約30~50%の症例では将来典型的なRAへ移行しうると知られており、特に抗CCP抗体陽性例ではRA移行リスクが高いとされています。

Caplan症候群

塵肺合併RAとも呼ばれ、炭塵など粉塵曝露による塵肺症を背景にRAを発症した場合に、肺にリウマトイド結節様の陰影(肺類結節)が多数出現する病態です。

採炭労働者などで報告されますが、現在では稀です。

病理的には珪酸曝露とRAの相乗効果で肉芽腫や結節形成が起こると考えられます。

病態進行度に基づくステージ分類

RAの関節破壊の進行度に応じたステージ分類として、Steinbrockerの分類が古典的によく知られています。

この分類では、X線所見に基づき関節の破壊段階をI期~IV期の4段階に評価します。

ステージⅠ

X線所見が正常に近い段階です。関節周囲の軟部組織腫脹や骨粗鬆像が見られても、骨びらんは認めません。臨床的には関節炎症状はあっても関節破壊がまだ起きていない早期RAです。

ステージⅡ

X線でびらん(骨侵食像)が出現した段階です。骨びらんに加え、関節裂隙の狭小化もみられ始めます。明らかな関節の変形はまだ生じていませんが、骨・軟骨破壊が進行しつつある状態です。

ステージⅢ

びらんと関節裂隙狭小化がさらに進行し、関節の亜脱臼(変形)や高度な破壊が認められる段階です。関節の不安定性や変形(例えば指の尺側偏位など)が出現し、日常動作にも支障をきたし始めます。筋萎縮も目立ち、関節機能は大きく制限されています。

ステージⅣ

関節の完全破壊がおこった終末期です。X線では関節の骨融合(強直)や骨の消失的破壊がみられ、関節構造は不可逆的に失われています。臨床的にも関節は強直または重度変形し、可動域はほとんど失われ機能的に使用困難な状態です。

近年では関節破壊の程度を定量的スコア※2で評価する方法も発展しています。

研究目的では手足X線のSharpスコア(シャープ法。関節の骨びらん数・大きさと関節裂隙狭小化の程度を点数化)やLarsenスコア(ラーセン法。関節ごとに破壊の程度を0~5の6段階評価)などが広く用いられています。

※2定量的スコア:観的な数値や指標に基づいて評価された得点。特定の事象や状態の程度を、あいまいさのない具体的な数値で表すためのもの。

疾患活動性の分類

RAの疾患活動性(Disease Activity)は、関節炎症の程度を反映する指標により寛解・低疾患活動性(LDA)・中等度・高疾患活動性のカテゴリに分類されます。

正確な活動性評価は治療戦略(Treat-to-Target)の中核であり、国際的にいくつかの複合指標が用いられています。代表的なものとしてDAS28、SDAI、 CDAIが挙げられます。

DAS28(Disease Activity Score-28)

28関節の圧痛関節数・腫脹関節数、赤沈(ESR)またはCRP、患者全般評価VASを組み合わせて算出するスコアです。

DAS28-ESRの場合、その解釈は<2.6で寛解、2.6~3.2未満で低疾患活動性、3.2~5.1で中等度活動性、>5.1で高活動性と定義されています。

DAS28は世界的に最も広く用いられてきた指標ですが、寛解基準がややゆるい(関節にわずかな炎症が残っていても寛解と判定されうる)ため、真の寛解判定には補助的に他の指標を用いることが推奨されます​。

SDAI(Simplified Disease Activity Index)

28関節の圧痛・腫脹関節数、患者様および医師評価、CRP(mg/dL)の5項目単純合計です。計算が容易で評価者間の再現性が高い利点があります。

researchgate.net。SDAIの寛解基準は≦3.3、低疾患活動性は3.3~11、中等度11~26、26以上で高活動性と定義されています。

この閾値はACR/EULARの寛解基準にも採用されており、SDAI≦3.3は臨床的寛解状態として位置付けられます。

CDAI(Clinical Disease Activity Index)

SDAIからCRPを除いた4項目(28関節の圧痛・腫脹関節数、患者および医師評価)の合計で、検査値を要さず診察室で即時計算できる指標です。

CDAIの寛解は≦2.8、低疾患活動性は2.8~10、中等度10~22、22以上で高活動性とされています。

CRPを含まない分、炎症反応が正常化した患者の微妙な残存炎症を拾いにくい可能性はありますが、その分実臨床での簡便性が評価されています。

関節リウマチ(RA)の症状

関節リウマチの症状は多彩で、関節のみならず全身に及びます。どのような症状が代表的かを知っておくと、早期のうちに対策を講じやすくなります。

代表的な初期症状

初期には手足の小関節を中心とした軽いこわばりや痛みが現れやすいです。

起床後30分以上続く関節のこわばりも特徴的なサインとしてよく知られています。

痛みは動かしていると和らぐ場合がありますが、休息後には再度痛みやこわばりを感じる場合が多いです。数週間~数ヶ月かけて徐々に進行していきます。

関節リウマチ初期症状の例特徴部位
朝のこわばり起床後、関節が動かしにくい。30分以上続くケースもある手指、手首、足首など
軽い関節痛運動開始時に痛みを感じるが、動かすとやや軽減する主要な小関節が中心
腫れ・軽度の熱感皮膚表面が赤くなる場合もある腱鞘付近の関節など

進行した場合の特徴

病気が進行すると痛みの持続時間が長くなり、夜間も眠れないほどの痛みを感じる場合があります。

関節の変形もゆっくりと進み、日常動作に支障が出やすくなります。

例えばドアノブを回す、ペットボトルのフタを開けるなど、普段は意識しない動作が困難になりがちです。

関節以外の症状

関節リウマチは全身性の炎症を伴う疾患なので、発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなど、さまざまな臓器にも影響を及ぼします。

肺や目などの粘膜組織に炎症が及ぶケースもあり、注意が必要です。

炎症が強い時期には「flare(フレア)」と呼ばれる一過性の症状悪化(全身倦怠や関節痛増悪)がみられます。

他にも皮膚にリウマトイド結節(肘や手の伸側などの圧部にできる皮下結節)が出来たり、動脈硬化の促進による虚血性心疾患のリスク増大、心膜炎、心不全、心臓弁膜症の合併などがみられます。

生活への影響

痛みによって集中力が落ちたり、運動不足から筋力が低下したりすると、生活の質が下がりやすくなります。家事や仕事など、多忙な日常をこなすのが困難になるケースも少なくありません。

症状による生活面での課題具体例
家事の負担増洗濯物を干す、食器を洗うなどの作業
仕事の制限長時間のパソコン作業、立ち仕事など
外出の減少痛みや疲労感による活動範囲の狭まり
ストレス増加長期的な痛みがメンタルに与える負担

家事や仕事は、痛みのコントロールと体力維持を並行して行いましょう。

関節リウマチ(RA)の原因

自己免疫とは、本来外敵から身を守る免疫系が自分自身の組織を攻撃してしまう現象です。

関節リウマチでは関節包や滑膜を異物とみなし、炎症反応を起こして関節を破壊する方向に作用します。原因の中心に位置するのが、この自己免疫機能の異常です。

自己免疫反応が起こるメカニズム

ステップ内容
免疫細胞の誤認識本来自己と外敵を区別する免疫細胞が、何らかのきっかけで自己を攻撃対象に設定
炎症因子の放出攻撃対象と判断された組織に対して、免疫細胞が炎症性サイトカインを放出
関節組織の破壊炎症が継続し、軟骨や骨が損傷して変形や痛みが発生

自己免疫機能をコントロールする治療薬が開発されている理由は、このメカニズムにあります。

遺伝要因と家族歴

家族の中にリウマチ患者がいる場合、発症リスクがやや高まるといわれています。

ただし、遺伝要因だけで決まるわけではなく、環境要因や生活習慣も重要です。

遺伝要因がある方は、特に早めに症状をチェックし、少しでも異変を感じたら専門家に相談すると安心です。

環境因子の影響

喫煙や肥満、口腔内の歯周病などがリウマチ発症と関連すると考えられています。

特に喫煙は肺や口腔の粘膜に慢性炎症を起こし、タンパク質の異常修飾(シトルリン化)を誘導して自己免疫を引き起こすと考えられています。

実際、RA患者様では関節症状が出現する何年も前から抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA)が体内で産生されており、発症の4~5年前から血中に検出されるとの報告があります。

過度の肥満では関節への負荷が増え、炎症を起こしやすい環境が作られます。

発症リスクを高める主な環境要因
  • 喫煙習慣
  • 肥満や高脂肪食
  • 歯周病や口腔内ケア不足
  • 過度なストレス

ストレスとの関係

長期的なストレス状態が免疫系に影響を与え、炎症を助長すると考えられています。

ストレスを解消できない環境にいると、交感神経が優位になり、自己免疫の暴走を抑えにくくなります。

十分な休息や運動、リラクゼーションを心がけてください。

RAの病態には遺伝因子+環境因子による免疫破綻 → 自己抗体産生 → 滑膜への免疫細胞浸潤とサイトカイン産生 → 軟骨・骨破壊という連続的な経過が想定されています。

関節リウマチ(RA)の検査・チェック方法

関節リウマチの検査方法は多岐にわたり、血液検査や画像検査、関節機能の評価などを総合的に行います。

早期発見の鍵を握るのは、複数の検査結果を組み合わせて総合的に判断することです。

血液検査

血液検査ではリウマチ因子(RF)や抗CCP抗体、炎症の程度を示すCRP、赤沈(ESR)などを確認します。

RFや抗CCPが陽性の場合は関節リウマチの可能性が高いと考えられますが、陰性でも関節リウマチを発症するケースは存在します。

血液検査の主な項目意味関節リウマチとの関係性
RF(リウマチ因子)抗体の有無をチェックする陽性の場合、可能性が高まる
抗CCP抗体RAに特異度の高い抗体を測定陽性のとき、診断補助に有用
CRP炎症の程度を把握上昇していると炎症が強い傾向
ESR(赤沈)血球の沈降速度を計測し、炎症度を推定高値だと慢性炎症が疑われる

検査結果を全体的に見ながら、症状とのつながりを考察します。

画像検査

レントゲンは骨の変形や関節裂隙の狭小化を確認するために用います。

エコー(超音波検査)では滑膜の炎症を捉えやすく、MRI検査では軟骨や骨髄、靭帯などを詳しく観察できます。

初期段階でレントゲン変化が見られない場合でも、超音波やMRIで炎症を早めに捉えやすくなります。

画像検査手法特徴メリット
レントゲン骨の変形や間接裂隙の変化を把握しやすい検査コストが比較的低く、手軽に実施できる
超音波検査関節周辺の滑膜や血流の状態がわかる初期の炎症変化を捉えやすく、放射線被曝がない
MRI軟骨や骨髄、靭帯、腱など細部の評価が可能早期病変を見つけやすい、三次元的な情報を得やすい

症状の進み具合や痛みの強さによって、適切な検査手段を選択します。

身体所見

医師は関節の可動域や痛みの度合いを直接確認し、腫れや熱感、変形の有無を詳しくチェックします。

患者様ご自身が痛みを感じる動作を踏まえて、どの部分に強い炎症が起こっているかを把握します。

フィジカルチェックで重点的に確認する項目
  • 手指の関節可動域
  • 腫れや発赤の有無
  • 触診による熱感の確認
  • 患者様が痛みを感じるポイント

こうしたフィジカルチェックによって、検査機器では捉えにくい症状の程度を見極めます。

関節機能評価

関節リウマチの進行状況を把握するために、握力や歩行バランス、身の回りの動作(歯磨きや着替えなど)を評価します。

これらの評価を定期的に行い、治療効果がどの程度あるのかを確認します。

項目評価内容目的
握力測定握力計などで力の低下度合いを測る筋力の衰えや関節痛の進行度を把握
歩行テスト歩幅、足の運び方、バランスなどを観察日常生活での移動能力を評価
ADL(Activities of Daily Living)評価食事や着替え、入浴などの動作をチェック自立した生活ができるかどうかを確認

こうしたデータをもとに、総合的な治療方針を検討します。

検査を受ける際の注意
  • 血液検査前は医師から指示がある場合のみ食事制限を行う
  • 画像検査の前に着衣や金属類を確認して適切に準備する
  • 痛みがある場合は遠慮せず医療スタッフに伝える
  • 定期的な検査日程を守り、経過を見逃さないようにする

検査結果と自覚症状の両面を照らし合わせると、診断と治療計画を明確にできます。

関節リウマチ(RA)の治療方法と治療薬、リハビリテーション、治療期間

関節リウマチの治療には、薬物療法やリハビリテーションなどの多角的なアプローチが重要です。

症状の強さや病期に応じて治療方法を組み合わせながら、長期的なコントロールを目指します。

薬物療法の基本

薬物療法は、抗リウマチ薬(DMARDs)やステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの組み合わせで行います。

抗リウマチ薬にはメトトレキサートなどが代表的で、免疫機能の過剰な働きを抑え、関節の破壊を抑制します。

ステロイドは炎症を急速に鎮める効果があり、症状の激しい時期に短期間で用いられやすいです。

現在は「可能な限り早期に治療開始し、明確な目標(寛解あるいは低疾患活動性)に向けて治療を強化する」Treat-to-Target (T2T)戦略が標準です​。

具体的には、RAと診断次第できるだけ早くメトトレキサート(MTX)などの従来型DMARD(csDMARD)治療を開始し、定期的(例えば月1回程度)の疾患活動性評価に基づき治療効果を判定します。

十分な効果が得られない場合、3~6か月以内を目処に治療強化(DMARDの追加・変更)を行い、疾患活動性が目標値になるまで治療をエスカレートします。

これにより関節破壊のウィンドウ・オブ・オポチュニティ(治療好機期間)とされる発症後数年の間に炎症を抑え込み、不可逆的な関節破壊を予防します​。

薬剤カテゴリ具体例主な効果
生物学的製剤TNF阻害薬など免疫細胞が産生するサイトカインを標的にアプローチ
ステロイド(副腎皮質ホルモン)プレドニゾロンなど強力な抗炎症作用を持ち、痛みを素早く緩和する
NSAIDsロキソプロフェンなど炎症や痛みを和らげ、発熱を抑える

医師は患者様の状態を見極め、これらを必要に応じて組み合わせます。他にJAK阻害薬※3などがあります。

薬物治療を継続するためのポイント
  • 指定された用量と服用タイミングを厳守する
  • 副作用の早期発見のため定期的に血液検査などを行う
  • 痛みや体調の変化を医師に報告し、薬の調整を検討する
  • 長期的な視点で効果を評価する

薬物だけでなく、総合的なサポートが必要です。

※3JAK阻害薬:細胞内にあるJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素の働きを抑えて、炎症や免疫反応を抑制する薬。

リハビリテーションでのアプローチ

薬物療法と並行して、リハビリテーションによる機能回復を図ります。

作業療法(OT)や理学療法(PT)を行うと、関節の可動域を保ち、筋力維持を期待できます。温熱療法や電気刺激などの物理療法も症状の緩和に役立ちます。

リハビリテーション内容目的
作業療法(OT)日常生活動作や趣味の動作を訓練し、必要に応じて道具を工夫する日常生活の自立度向上
理学療法(PT)関節可動域運動や筋力トレーニング、歩行訓練などを行う筋力維持と関節機能の改善
温熱療法低周波治療器やホットパックなどで関節を温め、血流を促進する痛みの緩和と血行改善
電気刺激療法関節周辺の筋肉に電気刺激を与え、筋肉を活性化する筋力維持と痛みの軽減
自宅で取り組めるリハビリの例
  • 手指のグーパー運動で可動域を維持する
  • 軽いウォーキングで血行をよくする
  • ストレッチポールなどを使い、姿勢を整える
  • 無理のない範囲での軽い筋力トレーニング

毎日のケアが、症状のコントロールと生活の質の維持につながります。

手術療法が必要な場合

長期間の炎症によって軟骨や骨が重度に損傷している場合、手術療法を検討する場合があります。

人工関節置換術や滑膜切除などが代表的です。手術を行うタイミングは症状や患者様の生活スタイル、年齢などを総合的に判断して決定します。

手術療法主な内容期待できる効果
人工関節置換術痛みや変形が強い関節を人工関節に置き換える痛みの軽減、可動域の改善
滑膜切除炎症を起こしている滑膜を取り除く痛みや腫れの軽減、進行抑制
関節鏡視下手術関節鏡を用いて、内部の洗浄や滑膜除去を行う侵襲が少なく、回復が比較的早い

手術後もリハビリテーションを継続し、再発防止や機能回復を図ります。

治療期間と目標

関節リウマチの治療期間は、数カ月から数年単位で継続します。

症状が安定した後も再燃を防ぐために薬物治療やリハビリを継続する。

近年のガイドラインでは、寛解が安定した患者様ではDMARDの減量を試みてもよいが、中止すると多くで再燃するため完全中止は推奨されないとされています​。

治療の目標は関節の破壊を抑え、痛みをコントロールし、日常生活をできる限り維持することです。

治療計画を立てる際の着眼点
  • 現在の症状と病期の把握
  • 生活習慣(食事・運動・休息)の見直し
  • 病院やリハビリ施設との連携
  • ストレスマネジメントの導入
  • 定期的な検査で治療方針を見直す

薬の副作用や治療のデメリット

関節リウマチの薬物治療は効果が期待できる一方で、副作用やデメリットも存在します。

治療を続けるうえでのリスクを把握し、必要に応じて医師と相談しながら対策を取りましょう。

抗リウマチ薬の副作用

メトトレキサートなどの伝統的抗リウマチ薬には、肝機能障害や胃腸障害、口内炎などの副作用が見られる場合があります。

定期的な血液検査や肝機能検査を受けると、早期に対処できます。

メトトレキサートは胎児奇形のリスクがあるため催奇性に注意し、妊娠希望者・妊婦には禁忌です。

ステロイドのリスク

ステロイドは強力な抗炎症作用を持ちますが、長期連用すると骨粗鬆症や糖尿病の悪化、感染症リスクの上昇などが懸念されます。

短期間・必要最低限の用量を使う工夫を医師が行います。

ステロイド使用時の注意点詳細
用量の調整症状の変動に合わせて徐々に減量する
骨粗鬆症予防ビタミンDやカルシウムの補給、適切な負荷運動を検討する
感染症対策手洗い、うがい、ワクチンの活用などを取り入れる
血糖値管理糖尿病がある場合は特に注意し、血糖値を定期的に測定する

適切な管理を行うとで、副作用をできる限り抑えられます。

生物学的製剤の留意点

生物学的製剤は高い治療効果が期待できる一方、特に感染症リスクが上がる可能性や、高額な治療費が発生するデメリットがあります。

治療を継続する際は、結核検査やB型肝炎ウイルスのチェックなども実施します。

通院や生活面の負担

定期的な通院や検査、リハビリが必要になるため、時間的・経済的コストが発生します。

通院が難しい方は医療機関と相談して、在宅支援や訪問リハビリなどを検討するのも一案です。

治療継続によるデメリット
  • 通院頻度の増加による負担
  • 検査費用や薬剤費の家計負担
  • 投薬や検査の副作用リスク
  • 日常生活の制限や手術への不安

こうしたリスクや負担を踏まえたうえで、主治医と情報を共有しつつ治療計画を調整します。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

関節リウマチの治療にかかる費用は、使用する薬剤や治療方法によって変動しますが、健康保険を活用できるケースが多いです。

経済的負担を軽減する制度も整備されているため、適切に利用することが大切です。

健康保険での自己負担割合

日本の公的医療保険の場合、一般的には医療費の3割が自己負担となります。

高齢者や一定の障害認定を受けている場合、自己負担割合が1割または2割になる可能性があります。

主治医や医療機関の窓口で詳細を確認してください。

高額療養費制度

高額療養費制度を利用すると、1カ月の医療費の上限が一定ラインを超えた場合、その超過分が払い戻されます。

所得や年齢によって上限額は異なりますが、長期的な治療を要する関節リウマチ患者様にとっては負担軽減に大きく寄与します。

高額療養費制度の概要

区分世帯所得基準月の上限額の目安
70歳未満・一般所得標準報酬月額28万円~50万円約8万~9万円+(医療費の1%)
70歳以上・一般所得年金収入などによる区分約8万~9万円+(医療費の1%)
低所得者保護受給等約3万5000円

適用の可否や必要な手続きは、医療機関や市町村の窓口に相談するとスムーズです。

治療にかかる費用の例

一般的な抗リウマチ薬を使う場合、1カ月あたりの薬剤費が保険診療で数千円~1万円程度になる場合が多いです。

生物学的製剤は自己負担額で1カ月あたり1~2万円程度かかるケースがあり、保険外で自己負担すると月5万~10万円以上になることもあります。

手術を受ける場合は、入院費や手術費が加わり数十万円単位に達する可能性がありますが、高額療養費制度の活用で実際の自己負担額は抑えられます。

治療内容おおよその自己負担費用(3割負担の場合)備考
一般的な抗リウマチ薬数千円~1万円/1カ月副作用チェックの検査費も考慮する
生物学的製剤約1万~2万円/1カ月保険適用外なら5万~10万円以上の負担も
手術(人工関節置換など)10万~30万円程度入院期間や手術内容で変動大
リハビリテーション(外来)1,000円~3,000円/1回週1~2回など、頻度で費用が変わる

実際の費用は個々の保険証や所得状況、通院頻度などによって異なります。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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