強直性脊椎炎(AS)

強直性脊椎炎(AS)(Ankylosing Spondylitis)とは、主に脊椎や仙腸関節などに炎症が起こる慢性の自己免疫疾患で、脊椎関節炎(SpA)グループに属する軸性脊椎関節炎(axSpA)の代表的疾患です。

若年から中年の男性に多くみられ、痛みやこわばりが徐々に進行し、日常生活に影響が出る場合があります。

放置すると脊椎が硬直して姿勢が崩れるリスクもあり、早期の治療とケアが重要です。

この記事の執筆者

臼井 大記(日本整形外科学会認定専門医)

臼井 大記(うすい だいき)

日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

LinkedIn

医師プロフィール
整形外科(大垣中央病院)TOPページ

目次

強直性脊椎炎(AS)の病型

強直性脊椎炎は軸性脊椎関節炎の中でもX線で仙腸関節の明らかな変化(炎症性癒合)が確認できる「放射線学的軸性SpA」に該当します。

一方、症状がASと同様でもX線で変化がない早期例は「X線基準を満たさない軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)」と分類されます。

ニューヨーク基準(Modified New York criteria)

従来、1984年改訂ニューヨーク基準(Modified New York criteria)がAS分類に用いられ、臨床症状(3ヶ月以上続く運動で軽快・安静で増悪する腰痛、腰椎可動域制限、胸郭拡張制限)のいずれかと、X線上の両側仙腸関節GradeⅡ以上(または片側GradeⅢ以上)の所見が揃えばASと診断してきました。

しかし、この基準ではX線所見が出現するまで診断が遅れる問題がありました。

ASAS(Assessment of SpondyloArthritis International Society)分類基準

現在はASAS(Assessment of SpondyloArthritis International Society)分類基準(2009年)が広く受け入れられ、放射線像の有無に関わらず軸性SpAを包括的に分類します。

ASAS基準では「45歳未満で3ヶ月以上続く慢性腰痛」を対象とし、以下の二通りのいずれかを満たす場合に軸性SpAと分類されます。

  1. 画像所見陽性(X線またはMRIで活動性の仙腸関節炎が確認できること) + 脊椎関節炎の特徴的所見1項目以上
  2. HLA-B27陽性 + 脊椎関節炎の特徴的所見2項目以上

「特徴的所見」には、炎症性腰痛、関節炎、ぶどう膜炎、乾癬、指趾の腫脹、Crohn病・潰瘍性大腸炎、NSAIDsが著効、脊椎関節炎の家族歴、HLA-B27陽性、CRP高値などが含まれます。

例えば、「MRIで仙腸関節炎あり」かつ「炎症性腰痛の臨床所見あり」の場合や、「HLA-B27陽性」で「家族歴・ぶどう膜炎など2項目あり」の場合に分類基準を満たします。

この基準によりX線所見を伴わない早期例(nr-axSpA)も拾い上げることが可能になりました。

ただしASAS分類基準はあくまで分類・研究目的であり、診断には臨床的判断も重要です。

現実の診療では、患者の症状経過・画像・血液検査など総合的に評価して診断が下されます。

強直性脊椎炎とnr-axSpAは連続した病態と考えられ、治療方針も概ね共通しています。

強直性脊椎炎(AS)の症状

強直性脊椎炎の症状は、主に痛みとこわばりですが、進行度合いや合併症の有無によって多彩になります。

症状を正しく把握すると日常生活での対策を考えやすくなり、治療の必要性を感じやすいです。

朝のこわばり

強直性脊椎炎の代表的な症状のひとつが、朝のこわばりです。寝起きに腰や背中、首などが固まったような状態になり、体を動かすのに時間がかかります。

お湯に浸かったり軽いストレッチを行ったりすると、ある程度は和らぐ傾向があります。

慢性的な腰痛

慢性的な腰痛はASの初期段階から見られやすい症状です。

デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取った後に痛みが増す、もしくは体を前後に曲げにくくなるなどの腰痛、背部痛がゆっくり出てきます。

単なる腰痛と放置すると進行してしまう恐れがあるため、持続する腰痛がある場合は注意が必要です。

40歳以下で発症、徐々に始まる、運動や活動で軽快する、夜間痛がある、といった状態が特徴的な腰痛です。

胸郭の動きの制限

炎症によって脊椎だけでなく肋骨の付着部にも影響が及ぶと胸郭が動かしにくくなり、呼吸が浅くなる人がいます。

息苦しさや肺活量の低下を感じる場合があり、重症化すると日常生活に支障が出てきます。

疲労感・姿勢の変化

慢性的な炎症は全身に負担をかけるため、疲れやすさを感じたり、背骨が弓なりになって前かがみになる姿勢(脊柱後弯の増強)になったりするケースがあります。

人によっては、肩や首の可動域が制限される結果として、後ろを振り返る動作が難しくなります。

付着部炎の症状

アキレス腱付着部の痛みや足底の踵痛(足底筋膜炎)として現れるときがあります。

その他関節外の症状

急性虹彩炎(ぶどう膜炎)が繰り返し起こる人もいて、目の充血・眼痛・視力低下を呈します。

腸疾患としてはクローン病や潰瘍性大腸炎が併発する場合もあり、腹痛・下痢・血便など消化器症状に注意が必要です。

皮膚症状では乾癬の合併も考慮します。まれに心臓伝導障害(房室ブロック)や大動脈弁閉鎖不全症を合併する例も報告されています。

症状の発現タイミングと特徴

症状特徴発現タイミング
朝のこわばり起床時に背中や腰、首が固まる睡眠後の起床直後
慢性的な腰痛継続的な痛み、姿勢の変化で痛みが増す安静時や長時間の同一姿勢後
胸郭の動きの制限深呼吸がしづらい、息苦しさを感じる症状が進行した段階
疲労感・姿勢の変化全身の疲れやすさ、猫背や前屈姿勢の固定化炎症が広がった段階

これらの症状は、単に運動不足や筋肉の張りが原因ではない可能性があります。

強直性脊椎炎の場合、安静にしていると悪化しやすいという特徴があるため、対策が後回しになりやすい点に注意が必要です。

症状が続くときに考慮したいポイント
  • 痛みが夜間や朝方に強く出る
  • 休んでも改善しない慢性的な痛み
  • 数日から数週間単位で繰り返す炎症やこわばり
  • 腰痛だけでなく胸や肩にまで広がる違和感

こうした症状に心当たりがあるときは、早めの診察が望ましいです。

初期には「なかなか治らない腰痛・臀部痛」として発症し、進行すると脊椎の硬直と姿勢変化、関節外症状を呈するようになるのが典型的経過です。

強直性脊椎炎(AS)の原因

強直性脊椎炎の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用によると考えられています。

HLA-B27遺伝子との関係

強直性脊椎炎は、HLA-B27と呼ばれる遺伝子との関連がよく知られています。

HLA-B27陽性の場合、免疫系が過剰反応を起こしやすいと推測され、炎症が慢性的に続きやすくなるケースがあります。

HLA-B27を持っていても、必ず発症するわけではありませんがAS患者の90%が陽性を示します。

HLA-B27自体は100種類以上のサブタイプがあり、特定のサブタイプ(例: B2705, 2704など)はASと強く関連する一方、B2706やB*2709では関連がないなど、多様性が認められます。

免疫機能の異常

リウマチ性疾患全般にいえることですが、自己免疫の異常反応によって身体の組織が免疫系の標的とみなされ、炎症が持続するときがあります。

炎症が続くと骨や関節が徐々に硬くなっていき、強直につながりやすいです。

HLA-B27分子そのものが細胞内で誤って折りたたまれることで小胞体ストレスを誘導し、炎症性サイトカイン(IL-23/IL-17経路)の過剰産生につながるという分子ミスフォールディング説も提唱されています。

IL-23/IL-17経路の活性化がASの病態に重要である点からIL-17阻害薬が開発され、その有効性が報告されています。

環境要因

HLA-B27陽性でも発症しない人が多数いるため、発症には何らかの誘因が必要と考えられます。

その有力な候補が腸内細菌叢(マイクロバイオータ)や感染症です。

HLA-B27トランスジェニックラットの実験では、無菌環境下では脊椎関節炎が発症せず、腸内細菌を導入すると炎症が生じると示されています。

これは腸内細菌と免疫反応がAS発症に関与する可能性を示唆しており、実際AS患者では健常者に比べて腸内細菌の組成に変化が認められます。

そのため、腸炎を伴う細菌感染(例: 腸炎後関節炎)がAS発症の引き金になる可能性や、他にも喫煙がASの発症リスクおよび重症化因子となることも指摘されています。

ストレスとの関係

精神的・身体的ストレスが続くと、自律神経やホルモンバランスに影響が及び、免疫力が低下または過剰反応を起こしやすくなります。

この状態で強直性脊椎炎の素因を持っていると、痛みやこわばりが増すケースがあるようです。

原因に関連する主なポイント

原因候補具体例発症への関わり方
遺伝的要因HLA-B27遺伝子を持つ自己免疫反応を強め、慢性的な炎症を誘発しやすい
免疫機能の異常自己免疫疾患全般の素因自己組織に対して過剰な免疫反応を起こしやすい
環境要因感染症、喫煙、食生活など遺伝的要因との相乗効果で症状が出る可能性が高まる
ストレス長時間労働、不安定な生活リズムなど自律神経の乱れによって症状が増悪する恐れがある

原因は単一とは限らないため、「遺伝要因もあるらしいし、自分に関係ないかもしれない」と自己判断せず、痛みやこわばりが続くときは一度検査を受けると安心です。

日常生活で意識したい点
  • 喫煙習慣を見直す
  • 適度な運動と休養を意識する
  • 感染症に対する予防策を講じる(手洗い、うがいなど)
  • ストレス管理の方法を身につける

こうしたポイントを押さえておくと、強直性脊椎炎の発症リスクを下げたり、症状の進行を遅らせたりする可能性が高まります。

まとめると、現在では「遺伝素因を持つ個体において、腸内細菌や感染症など環境因子が免疫異常を誘発し、慢性の付着部炎・関節炎へと進展する」という複合的な病因モデルが受け入れられています。

強直性脊椎炎(AS)の検査・チェック方法

強直性脊椎炎は、レントゲンやMRIなどの画像検査と血液検査を組み合わせて診断します。患者さんの自覚症状や既往歴をあわせて確認しながら、総合的に評価する流れです。

早期には画像に変化が見られにくい場合もあり、症状だけでなく複数の要素を総合的に見るのが望ましいです。

検査項目概要特徴
問診・身体所見自覚症状や関節可動域のテスト生活習慣や痛みの性質、発症タイミングなどを総合的に把握
レントゲン骨の状態を画像で確認進行度合いを把握しやすいが、早期所見が出にくい
MRI軟部組織や骨髄の炎症をより詳細に確認早期診断の際にも有用で、炎症部位を明確に把握しやすい
血液検査CRPやESR、HLA-B27などの測定炎症の程度や遺伝子の有無を調べ、他疾患との鑑別に役立つ

問診と身体所見

医師は患者さんが感じている痛みの部位や強さ、継続期間などを丁寧に聞き取り、関節の可動域や姿勢、歩行状態などをチェックします。

触診や簡単な動作テストを行い、炎症が起きている可能性がある場所をある程度特定します。

レントゲン

初期段階ではレントゲンにはっきりとした所見が出ないケースが多いです。症状が少し進行すると、仙腸関節の狭小化や骨棘の形成などが写る可能性があります。

レントゲン検査の典型例では、関節裂隙の不整・侵食像、骨硬化や骨橋形成、最終的には仙腸関節の強直(癒合)が認められます。

仙腸関節の放射線学的変化は診断上の決め手で、これが明瞭なときは従来からの改訂NY基準でASと診断されます。

しかし、発症早期ではX線上の変化が軽微なものも多く、早期診断が困難な場合がよくあります。

MRI

MRIは軟部組織や骨髄の炎症をより早期に検出しやすいため、早期診断の際に重要です。

骨髄浮腫や炎症性病変を検出でき、X線で正常に見える段階でも仙腸関節や脊椎の炎症所見(STIR像での骨髄浮腫やT1造影での骨炎)が確認できます。

ASAS分類基準でも、MRIで活動性仙腸関節炎の所見があればX線所見と同等に扱われます。

血液検査(炎症マーカー)

血液検査では、CRPやESR(赤血球沈降速度)などの炎症マーカーの値を確認します。また、HLA-B27の有無を調べる検査を行うケースもあります。

HLA-B27が陽性の場合は強直性脊椎炎を含む自己免疫疾患を疑いやすくなりますが、それだけで確定ではないため総合判断が必要です。

他疾患との鑑別

腰痛を訴える方は、椎間板ヘルニアや変形性腰椎症、骨粗しょう症など他の整形外科的疾患が原因の可能性もあります。

さらにリウマチ性疾患には種類が多いので、専門医による鑑別診断が重要です。

チェックしておきたい主な症状

  • 3カ月以上継続している腰痛
  • 朝起きたときの強いこわばり
  • 休んでも改善しにくい疲労感や痛み
  • レントゲンで異常が出なくても症状が強い

検査を受ける際は、普段の症状の経過や生活習慣を詳しくメモしておくとスムーズです。自己判断で終わらせず、気になる点を医師に積極的に伝えましょう。

強直性脊椎炎(AS)の治療方法と治療薬、リハビリテーション、治療期間

強直性脊椎炎の治療は、疼痛と炎症のコントロール、脊椎の柔軟性と良好な姿勢の維持、日常生活動作能力の確保、そして合併症の予防です。

薬物療法やリハビリテーションを組み合わせて行い、炎症を抑えながら筋力や柔軟性を保つことを目指します。

早めに治療を開始すると、進行を遅らせるだけでなく、生活の質の維持が期待できます。

薬物療法

薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いて痛みと炎症を抑えるケースが多いです。

十分に効果が得られないときは、免疫調整薬や生物学的製剤などを使う場合があります。

適切な薬を選択するには、患者それぞれの病状や副作用リスクを考慮する必要があります。

リハビリテーション

リハビリテーションではストレッチや体操、軽い有酸素運動などを通じて、関節の可動域と筋力を保つことを重視します。

過度に体を動かしすぎると炎症が悪化するリスクがありますが、まったく動かさないと強張りが進行しやすいです。

理学療法士や作業療法士と相談しながら、個人に合ったメニューを継続すると効果的です。

リハビリで意識しておきたい運動例
  • 軽いウォーキングやスイミング
  • 背筋や肩甲骨周辺をほぐすストレッチ
  • 深呼吸を意識して胸郭を拡げる練習
  • バランスボールを使った体幹トレーニング

装具や生活環境の調整

脊椎や関節への負担を軽減するために、コルセットやサポーターなどの装具を利用する場合があります。

職場や自宅の環境を見直し、長時間のデスクワークを避ける工夫をするのも症状緩和に役立ちます。

寝具や椅子の選び方を変えるだけでも負担が軽減し、痛みが和らぐ人もいます。

治療期間の目安

強直性脊椎炎は慢性疾患のため、症状が落ち着いてからも長期的なフォローが必要です。

個人差はありますが、痛みが軽減しても定期的な通院とリハビリが必要な人が多いです。

生物学的製剤などを使用する際は、症状が安定するまで数カ月単位で様子を見つつ投与を続けるときがあります。

主な治療方法と特徴

治療法特徴目的
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)炎症と痛みを緩和し、動きやすい状態をつくる痛みの軽減と炎症のコントロール
免疫調整薬免疫反応を抑制し、慢性的な炎症を軽減症状の進行抑止と長期的な安定
生物学的製剤特定のサイトカインをターゲットにして炎症を抑える重症例や他の治療で効果が不十分な場合に適応
リハビリテーションストレッチや運動療法で可動域と筋力を保つ関節や筋肉の固まりを防ぎ、日常動作を維持
装具・生活環境の調整コルセット、サポーター、 ergonomics※1の見直し痛みや姿勢の悪化を防ぎ、負担を軽くする

※1ergonomics(エルゴノミクス):作業環境や作業方法が体に与える影響を考慮して、より快適で安全な作業を可能にするための工夫や改善

治療は一時的なものではなく、継続的に行うのが重要です。完治する疾患ではないため、長期継続治療が必要になります。

症状が緩和した後も、再燃を防ぐために定期的なチェックやリハビリを続けると、生活の質を保ちやすくなります。

手術治療

強直性脊椎炎に対する手術は主に不可逆的な骨性強直や関節破壊に対する救済手段として位置付けられます。

適応を満たせばQOLの向上に大きく寄与しますが治療期間は症例ごとに異なり、手術に至るのは発症から長年経過した重症例が多く、術後もリハビリと内科的治療の両面でケアが続きます。

薬の副作用や治療のデメリット

強直性脊椎炎の治療薬や治療法にはメリットがある一方で、副作用やデメリットも存在します。

デメリットを把握した上で、医師と相談しながら治療方針を決めましょう。

NSAIDsの副作用

消化器への負担が増え、胃もたれや胃潰瘍のリスクが高まる場合があります。

長期的に服用する際は、胃酸を抑える薬を併用したり、定期的に胃カメラ検査を検討したりするときもあります。

また、高血圧や腎機能への影響にも注意が必要です。

免疫調整薬や生物学的製剤の副作用

免疫を抑制する性質のある薬は、感染症にかかりやすくなる傾向があります。特に結核などの潜在的な感染症を持っている人では、症状が顕在化する恐れがあります。

さらに、生物学的製剤は注射や点滴で投与する場合が多く、通院頻度や経済的負担が増える傾向があります。

薬の種類副作用その他の注意点
NSAIDs胃腸障害、腎機能悪化など長期服用時は胃薬併用や定期検診を検討
免疫調整薬感染リスク増加、肝機能障害血液検査をこまめに行い、感染症対策が重要
生物学的製剤感染症リスク、高額治療費注射や点滴での投与が必要になる場合が多い

リハビリや運動の負担

リハビリを行うときは、痛みと折り合いをつけながら継続する必要があります。

過度に運動をすると痛みや炎症が増すかもしれませんし、適切な負荷をかけないと効果を得にくいという問題もあります。

専門家の指導を受けつつ、自分のペースで進めるようにしましょう。

治療費と通院の負担

薬物療法やリハビリを継続する際には通院が定期的に必要となるため、スケジュール調整や交通費などの負担が増えます。

生物学的製剤は特に高価で、保険適用があっても高額になるケースが珍しくありません。

経済的な面も考慮しながら、継続可能な治療計画を立てるのが望ましいです。

治療継続上の注意点
  • 体調に違和感があったら医師に早めに報告する
  • 自己判断で薬の量や種類を変えない
  • 定期的な血液検査や画像検査で副作用をモニタリングする
  • 家族や職場と情報共有し、サポートを得る

副作用への不安がある場合でも、早めに相談すると対策を講じやすくなります。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

強直性脊椎炎の治療には、保険適用となるものが多く含まれます。

ただし、薬の種類や通院頻度、リハビリの回数などで自己負担額が変わるため、治療費の面でもあらかじめ情報を集めておくと安心です。

保険の適用範囲

日本の公的医療保険(健康保険や国民健康保険)を利用している場合、基本的な診察や検査費、NSAIDsなど一般的な治療薬、リハビリは保険適用です。

通常は自己負担が3割(所得や年齢によって異なる場合があります)となり、月ごとの自己負担上限が設定されています。

生物学的製剤の費用

生物学的製剤は1カ月あたり数万円から数十万円程度のコストがかかるケースが多いです。

公的医療保険が適用される場合でも、3割負担で月数万円程度の自己負担が発生する可能性があります。

高額療養費制度※2を利用すると一定額を超えた部分が払い戻されるため、条件を確認しながら活用すると経済的な負担を軽減しやすくなります。

※2高額療養費制度:医療機関や薬局などで支払った医療費の総額がひと月の上限を超えた際に、その超過分が支給される制度。上限額は年齢や収入により決定される。

リハビリテーションの費用

外来でのリハビリテーションは、医師の指示で実施すると保険適用になります。

自己負担3割で通院するケースが多く、1回あたり数百円から数千円程度かかる場合があります。

リハビリの頻度や内容によって費用は変動するため、担当の理学療法士や作業療法士と相談しながら継続が可能な範囲を検討すると良いでしょう。

治療費の目安

項目自己負担3割時の目安費用備考
初診料+基本検査(血液、X線など)約5,000円~15,000円MRI検査を加えると更に数千円~1万円上乗せになる場合がある
NSAIDsなどの一般的治療薬月数千円~1万円薬の種類や量によって変動
生物学的製剤月数万円~高額療養費制度を活用すると自己負担上限を設定できる
リハビリテーション(外来)1回あたり数百円~数千円周回数やリハビリ内容に応じて変化

初診時には診察料や血液検査、X線検査やMRIなどを実施するときがあり、3割負担で合計5,000円~15,000円程度になる場合もあります。

症状によっては検査内容が増え、費用が高くなりやすいです。

継続的な治療に関しては、毎月のNSAIDsなどの薬代と通院費で数千円~数万円、重症例で生物学的製剤を使うと月数万円以上の負担になる人が多いです。

治療費に関する対策
  • 高額療養費制度や限度額適用認定証の活用
  • 任意保険や医療保険の見直し
  • 医療費控除を意識したレシートや領収書の保管
  • 社会福祉制度(障害年金など)の適用可能性を調べる

治療は長期間にわたる可能性があるので、費用面での無理が生じないよう、医療ソーシャルワーカーに相談するなどして、サポート体制を整えると安心です。

以上

参考文献

BRAUN, Jürgen; SIEPER, Joachim. Ankylosing spondylitis. The Lancet, 2007, 369.9570: 1379-1390.

EBRAHIMIADIB, Nazanin, et al. Ankylosing spondylitis. Journal of ophthalmic & vision research, 2021, 16.3: 462.

VAN DER LINDEN, Sjef; VAN DER HEIJDE, Désirée. Ankylosing spondylitis: clinical features. Rheumatic Disease Clinics of North America, 1998, 24.4: 663-676.

HEUFT-DORENBOSCH, L., et al. Assessment of enthesitis in ankylosing spondylitis. Annals of the rheumatic diseases, 2003, 62.2: 127-132.

TAM, Lai-Shan; GU, Jieruo; YU, David. Pathogenesis of ankylosing spondylitis. Nature Reviews Rheumatology, 2010, 6.7: 399-405.

GOLDER, Vera; SCHACHNA, Lionel. Ankylosing spondylitis: an update. Australian family physician, 2013, 42.11: 780-784.

MCVEIGH, Claire M.; CAIRNS, Andrew P. Diagnosis and management of ankylosing spondylitis. Bmj, 2006, 333.7568: 581-585.

DEAN, Linda E., et al. Global prevalence of ankylosing spondylitis. Rheumatology, 2014, 53.4: 650-657.

BOONEN, Annelies; VAN DER LINDEN, Sjef M. The burden of ankylosing spondylitis. The Journal of Rheumatology Supplement, 2006, 78: 4-11.

SIEPER, Jochen, et al. Ankylosing spondylitis: an overview. Annals of the rheumatic diseases, 2002, 61: iii8-iii18.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次