かかとの痛みだけで、内臓疾患のサインとは判断できません。使いすぎによる痛みのほかに、全身の炎症に伴う病気や骨の感染が関係する場合もあり、足以外の症状と痛みの経過を一緒に確かめる必要があります。
朝の腰のこわばりや皮膚の変化を伴う痛みは整形外科へ相談し、赤く腫れて熱をもつ、発熱する、急に歩けなくなる状態では当日の受診を優先してください。夜も続く痛みや、負担を減らしても説明のつかない痛みが残る場合も、受診を先延ばしにしないことが大切です。
この記事では、かかとの痛みと内臓・全身の病気との関係、足以外に現れるサイン、受診の目安と診察前の準備を解説します。
この記事の執筆者

臼井 大記(うすい だいき)
日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師
2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。
「かかと痛い」が続くときの内臓疾患との関係
かかとの痛みは、持病の有無と足の状態を合わせて原因を判断する症状です。いつから痛むか、腫れや発熱があるか、腰や皮膚にも変化があるかが診察の手がかりになります。
持病との関連があっても原因とは決まらない
腎結石や高血圧がある人でかかとの痛みが多くても、直接痛みを起こしたとまではいえません。腎結石は尿の通り道に石ができる病気で、高血圧は血圧が高い状態が続く病気です。
米国の成人4,957人を調べた調査では、腎結石、高血圧、骨粗鬆症の既往と、かかとの裏の痛みとの関連が見られました。骨粗鬆症は骨がもろくなり骨折しやすくなる病気ですが、持病が痛みの原因かを確定する研究とは区別します。
そのため、以前の健診で高血圧を指摘されていても、それだけを理由に足の診察を省くのは避けてください。
使いすぎの痛みでも経過を確かめる
足底腱膜炎は、足の裏でかかとから指の付け根へ伸びる丈夫な組織に負担がかかり、かかと周辺が痛む状態です。歩く量が増えたあとの痛みでは候補になりますが、発熱や目立つ腫れが加われば、すぐに診察を受けましょう。
足以外の症状を一緒に伝える
全身の病気を調べる手がかりは、足の痛みと違う時期に現れる場合もあります。何年も前から続く腰痛や、いったん落ち着いた皮膚の症状も、現在のかかとの痛みと合わせて伝えましょう。
| 確認する症状 | 診察で伝える内容 |
|---|---|
| 腰の痛み・こわばり | 始まった年齢、朝の状態、動いたあとの変化 |
| 皮膚・爪の変化 | 赤い発疹、皮むけ、爪のへこみや浮き |
| 足の赤み・腫れ | 急に始まったか、熱をもつか、発熱の有無 |
| 続く痛み | 夜に目が覚めるか、休んでも痛むか |
朝の腰のこわばりを伴うかかとの痛み
かかとの痛みに、若い頃から続く腰痛や朝の長いこわばりが重なるときは、脊椎関節炎が診察で検討されます。脊椎関節炎は、背骨や骨盤の関節、腱の付け根などに炎症が起こる病気の総称です。
腱が骨に付く場所の炎症は足にも起こる
付着部炎は、腱や靱帯などが骨につながる場所に炎症が起きる状態を指し、かかとにも痛みが出ます。腱は筋肉の力を骨へ伝える組織で、付け根の痛みには、繰り返す負担と全身の炎症の両方が関係することがあります。
使いすぎによる痛みと脊椎関節炎に伴う痛みは、痛む位置だけでは分けきれません。押すと痛い場所に加え、ほかの関節の腫れや腰の動かしにくさがあるかを診察で確かめるのは、背景を区別するためです。
歩行量を減らしても痛みを繰り返し、足以外にも症状があるなら、その両方を受診時に伝えましょう。痛い部分を強く押して自分で炎症を確かめる必要はなく、日常のどの動作で困るかが役立ちます。
45歳より前に始まった腰痛が手がかりになる
体軸性脊椎関節炎という背骨や骨盤を中心に炎症が起きる型では、45歳より前からゆっくり始まる腰痛が手がかりです。朝のこわばりが長く、動くと楽になり、休んでも改善しにくい腰痛が患者さんの80%超みられます。
また、この病気では症状が出てから診断まで6〜8年遅れやすいとされています。長年の腰痛を年齢や仕事のせいと決めていた場合も、かかとの痛みとともに相談する意味があります。
目や腸の病気、家族の病歴も問診の材料になる
付着部炎が疑われるときは、目や腸の炎症、以前の感染、家族の脊椎関節炎の有無も問診の材料です。ぶどう膜炎は目の中に炎症が起こる病気、炎症性腸疾患は腸の炎症を繰り返す病気で、診断されたことがあれば病名を伝えましょう。
ただし、症状や家族歴の組み合わせだけでの自己診断は困難です。個々の情報を診察所見と合わせて判断するため、該当項目が少ないという理由だけで、続く痛みを放置しない姿勢が大切になります。
皮膚や爪の変化がかかとの痛みと重なるとき
皮膚や爪の変化に、かかとの痛みや指の腫れが重なるときは、乾癬性関節炎を調べる手がかりです。乾癬は赤い皮膚に白っぽい皮むけを伴う病気で、関節や腱の付け根にも炎症が及ぶ型があります。
発疹と爪のへこみを見落とさない
乾癬性関節炎では、皮膚だけでなく爪の変化が診断の手がかりになります。爪の表面の小さなへこみや、爪が指から浮く変化は、足の痛みと別々に感じていても問診時に申告しましょう。
筋肉や関節などの症状がある乾癬性関節炎の患者さんでは、最大85%に皮膚や爪の変化が見られます。この値は、爪に変化がある人が乾癬性関節炎になる割合を示した数字とは区別して考えます。
爪の変化には爪の水虫や外からの力による変形もあるため、見た目だけで乾癬と決めるのは避けましょう。以前に皮膚科で診断された病名があれば、現在の皮膚の状態と合わせて伝えると役立ちます。
指全体の腫れも関節の炎症の手がかりになる
乾癬性関節炎では、指の1か所だけでなく、指全体がふくらむ指炎という症状が手がかりになります。かかとが痛むために足裏ばかり見ていると、足指や手指の変化に気づきにくいことがあるので、注意が必要です。
| 自分の体で見る場所 | 記録しておく変化 |
|---|---|
| 手足の爪 | 表面のへこみ、爪の浮き、変化が始まった時期 |
| 足指・手指 | 指全体の腫れ、曲げにくさ、腫れる指の変化 |
| 皮膚 | 赤みや皮むけの位置、以前に診断された病名 |
かかとの痛みと指の腫れが同時でなくても、起きた順番が分かれば診察の材料になります。腫れていたときの写真があれば、受診当日に落ち着いている症状も伝えやすくなるでしょう。
皮膚の通院中でも足の痛みを相談する
乾癬で通院している人に新しいかかとの痛みが出たら、次の診察で足の症状も伝える必要があります。
痛む場所、歩行への支障、症状が出た時期をまとめ、皮膚の治療内容が分かるものを整形外科でも見せましょう。関節や付着部の炎症が疑われた場合は、リウマチを専門にする診療科と皮膚科を検討することになります。
一方、乾癬があっても、かかとの痛みすべてを乾癬性関節炎で説明できるわけではありません。皮膚の病名を共有したうえで、負担のかかり方や足の診察所見から原因を確かめる順序が大切です。
足が急に赤く腫れて強く痛むときは受診を急ぐ
突然の強い痛みに赤みや腫れが重なるときは、痛風などの関節の炎症を考えて当日の受診を優先してください。熱をもつ腫れや発熱があれば、感染が原因ではないかも確かめる必要があります。
1つの関節に急な痛みが出る痛風
痛風は、尿酸という物質の結晶が関節にたまり、強い炎症を起こす病気です。兆候としては、足や足首の1つの関節が急に赤く腫れて激しく痛む、以前にも似た発作があった、などです。
特に足の親指の付け根は典型的な場所ですが、かかと付近が痛いと感じる場合も、実際に腫れている関節の位置を確認する必要があります。痛みの呼び方だけで診断せず、赤みや腫れが広がる範囲を診察で確かめます。
尿酸値が高いだけでは痛風と診断しない
血液中の尿酸値が高い状態と、その結晶によって関節に炎症が起きている状態は区別して判断されます。健診で尿酸値が高かったという情報だけで、今回の足の痛みを痛風と断定するのは適切ではありません。
確定のために関節の液を採取し、尿酸の結晶があるかを調べる検査が行われます。以前の検査結果は診断の手がかりになるので、数値と採血した日が分かれば、症状の始まりと合わせて伝えましょう。
発熱や熱をもつ腫れを放置しない
赤く腫れた足に発熱や傷が重なるときは、感染を除外するためにも受診を急ぐ状態です。痛風と感染は見た目だけでは区別しきれず、熱がない場合も、急に歩けないほど強い痛みが出たら診察が必要になります。
| 今の状態 | 受診の目安 |
|---|---|
| 赤み・熱をもつ腫れと強い痛み | 当日の受診を優先 |
| 傷の周囲の赤み、発熱や強いだるさ | 当日中に医療機関へ相談 |
| 急に体重をかけられない痛み | 歩行を無理に続けず当日の診察 |
痛みの強さだけで受診の順番を決めず、発熱や体のだるさも含めて判断してください。受診先に連絡するときは、足のどこが腫れているか、発熱があるか、歩けるかを伝えると状態が伝わります。
夜間や安静時も続く痛みで確かめたい骨の病気
夜も続く痛みや、負担を減らしても説明のつかない痛みが残る場合は、骨の感染や腫瘍を画像で確かめる対象です。骨の腫瘍はまれな原因であり、夜間痛だけを根拠に腫瘍と決めず、診察でほかの所見も確認します。
傷のあとに続く痛みは骨の感染にも注意する
踵骨骨髄炎は、かかとの骨に細菌などが入り、炎症が起きる病気です。かかとの骨の感染は、けがに伴う感染や糖尿病の足の傷から起こる例が多く報告されています。
報告された1,118例をまとめた検討では、症状が出てから診断されるまでの期間の中央値は3か月でした。
傷ができたあとに痛みが続いたり、赤みや腫れが増したりした場合は、傷ができた日も伝えて受診してください。表面の傷だけを見て判断せず、かかとの奥の痛みと合わせて診断を受ける必要があります。
夜に目が覚める痛みは経過を具体的に伝える
骨性骨腫は骨にできる良性の腫瘍で、足の痛みのまれな原因の1つです。良性とは、がんのように周囲へ広がったり転移したりする性質を持たないということで、痛みが軽いという意味とは区別されます。
足や足首の骨性骨腫の患者さん17人を調べた報告では、88%に夜間の痛みがあり、診断まで平均21か月かかっていました。ただし、少人数の患者さんを振り返った結果なので、一般のかかとの痛みに、この割合や期間を当てはめるのは適切ではありません。
夜に痛む頻度、痛みで目が覚めるか、昼も安静時に痛むかを記録すると、経過が伝わりやすくなります。薬で一時的に軽くなった場合も、その後に痛みが戻るかを含めて相談するのが大切です。
理由の分からない痛みと腫れは画像で確かめる
かかとの骨にできる腫瘍はまれですが、痛みや足首周辺の腫れを伴い、原因として気づかれにくい場合があります。最初の画像検査には、骨の形や変化を確かめる単純X線(レントゲン)が用いられます。
たとえば、活動量を減らしても痛みが続き、痛む範囲や腫れが増しているなら、前回の診察からの変化を伝える必要があります。一度受診したあとでも、症状が続く理由が説明できない場合は再受診してください。
腰から足まで広がる痛みは神経の症状を確認する
膝より下へ、さらに足や足指まで広がる痛みは、腰から来る神経の痛みが判断材料になります。かかとに加え、お尻や脚を含めた痛みの広がりを診察で伝えると、腰の状態も評価できます。
膝より下までつながる痛みが手がかりになる
坐骨神経痛は、腰から脚に向かう神経に沿って痛みが出る症状の総称です。主な原因は椎間板ヘルニアで、これは、背骨の間でクッションになる椎間板が飛び出し、神経を圧迫する状態です。
足や指まで痛みが広がるときは、痛む場所を指で示すだけでなく、お尻から脚へつながる範囲を伝えましょう。かかとだけに痛みがある場合は、それだけを根拠に腰の椎間板ヘルニアと決めるのは適切ではありません。
2〜4週の改善という経過を待機の理由にしない
急に起きた坐骨神経痛では、多くの人の痛みと生活への支障が2〜4週で軽くなります。この期間は腰から脚へ広がる痛みについての経過で、原因が分からないかかとの痛み全般の目安とは区別します。
発熱や説明のつかない夜間痛が加わったときは、改善を待つ方針のままにせず、受診時期を早めてください。痛みの原因に感染や腫瘍が疑われる状態では、通常の経過を待たずに調べる必要があります。
強い症状が続くときは診断を見直す
手術をせずに経過を見る治療を6〜8週続けても強い症状が改善しない場合は、MRIで調べることになります。MRIは磁気を使って体の内部を画像にし、腰の神経やその周囲の状態を確かめる検査です。
ただし、感染や腫瘍が疑われる場合は早い時期から検査が検討されます。診察後に症状が変われば予定より前の評価が必要になるため、6〜8週を満たすまで再受診を控えるということはしないでください。
「かかと痛い」で受診を急ぐサインと診察の準備
受診を急ぐ目安は、痛みの長さだけでなく、赤みや発熱、夜間痛、足以外の症状があるかです。急な腫れは当日、続く夜間痛や腰・皮膚の変化を伴う痛みは、我慢を重ねず整形外科へ相談する目安になります。
日数より症状の変化で受診時期を決める
原因が分からないかかとの痛みは、日数に加えて症状の変化から受診時期を判断します。急に悪化したか、休んでも続くか、歩行や睡眠が妨げられているかによって、診察を受ける時期が変わります。
| 症状の組み合わせ | 行動の目安 | 伝えたい経過 |
|---|---|---|
| 赤い腫れ・熱感・発熱 | 当日の受診 | 始まった時刻、傷の有無 |
| 夜間痛・続く腫れ | 先延ばしにせず予約・相談 | 睡眠への影響、悪化の有無 |
| 腰のこわばり・皮膚や爪の変化 | かかとの痛みと合わせて相談 | 足以外の症状が始まった時期 |
軽くなった日があっても、同じ症状を繰り返す場合は経過をまとめて相談できます。受診日までに歩けなくなるほど悪化したときや発熱したときは、予約日を待たずに医療機関へ連絡してください。
足と靴を見て変化を記録する
受診までの準備は、痛みを何度も再現するより、普段の足と靴の状態を観察する方が役立ちます。痛む関節の位置と腫れ、体温、腰のこわばり、皮膚や爪の変化を、気づいた日付と一緒に残しておきましょう。
| 手元で確認するもの | 記録の例 |
|---|---|
| 普段履く靴 | 痛む場所に当たる縁、靴を替えた時期 |
| かかと周囲の皮膚 | 傷や赤みの位置、腫れの写真 |
| 足指・爪 | 指全体の腫れ、爪の見た目の変化 |
| 体温と朝の状態 | 発熱した日、腰のこわばりが続いた時間 |
靴の当たりが見つかっても、発熱や夜間痛をすべて靴のせいにするのは避けたい判断です。痛みが増す活動を控えながら受診を準備し、傷や腫れを強く揉んだり、自分で針を刺したりしないようにします。
診察後も変化があれば相談し直す
整形外科では、問診と足や腰の診察をもとに、必要な画像検査や血液検査が選択されます。持病の名前と服薬内容が分かるお薬手帳、以前の検査結果を持参すると、痛みが出る前の状態も共有しやすくなります。
診断後は、何の症状を目安に経過を見るか、どの変化が出たら予定より早く受診するかを確認するのが大切です。全身の炎症が疑われれば専門の診療科へつなぎ、感染や骨の病変が疑われれば、その原因を確かめることになります。
痛みが残るときは、対処を繰り返すだけでなく、当初の診断で現在の症状を説明できるかを再評価します。新しい腫れや発熱、睡眠を妨げる痛みが出た場合は、変化を具体的に伝えて再受診してください。
よくある質問
- 腎結石や高血圧があると、かかとが痛くなりますか?
-
持病がある人にかかとの痛みが多いという関連は報告されていますが、その病気が痛みを起こしたとする断定は困難です。持病の名前だけで原因を決めず、足のどこが痛むか、いつから続くかを診察で確認します。
- 腰痛が長年続いていても、かかとの痛みと関係しますか?
-
関係する場合があり、特に45歳より前に始まった腰痛で、朝のこわばりが長く動くと楽になる経過は脊椎関節炎の手がかりです。最近のかかとの痛みと、以前からの腰痛を一緒に伝える意味があります。
腰痛が始まった年齢と朝の状態を思い出し、足の診察時に相談しましょう。年齢だけで病気を決めるのではなく、症状の組み合わせと診察所見から判断されます。
- 尿酸値が高く、足が赤く腫れたら痛風ですか?
-
痛風は候補ですが、尿酸値と見た目だけで確定するのは難しい状態です。感染でも赤く腫れて強く痛むため、急に症状が出たら当日の受診を優先してください。
受診時は、発熱や傷の有無、以前に似た発作があったかを伝えます。昔の尿酸値が高かったという情報だけで、今回も同じ原因と判断しない姿勢が大切です。
- 夜にかかとが痛むときは腫瘍が心配ですか?
-
夜間痛だけで腫瘍とはいえず、かかとの骨の腫瘍はまれです。負担を減らしても理由の分からない痛みが続く場合や、腫れが加わる場合は、画像で原因を確かめる対象になります。
痛みで目が覚める頻度や、昼間に休んでいても痛むかを記録すると診察に役立ちます。鎮痛薬で軽くなった場合も、夜間痛を繰り返していれば受診して経過を伝える必要があります。
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