慢性骨髄炎

慢性骨髄炎(Chronic osteomyelitis)とは、骨の内部に細菌などの病原体が侵入し、長期間にわたって炎症が続く難治性感染症です。

急性骨髄炎が適切に治療されなかったときや、外傷・手術後の感染が原因となるケースが多く、骨の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。診断には血液検査や画像検査が必要で、治療は抗菌薬の投与と外科的処置を組み合わせて行います。

特徴として、感染した骨の一部が血行不良に陥り死んでしまう場合があり、それを囲むように新しい骨が形成されます。

慢性骨髄炎では、このような死骨が存在するため、抗菌薬だけでの治療が難しく、しばしば外科的に死骨を除去する必要があります。早期の診断と適切な治療により、症状の改善と合併症の予防が期待できます。

この記事の執筆者

臼井 大記(日本整形外科学会認定専門医)

臼井 大記(うすい だいき)

日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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目次

慢性骨髄炎の病型

慢性骨髄炎は、発症の経過や原因によって複数の病型に分類されます。それぞれの病型には特徴的な臨床像があり、治療方針も異なるため、正確な診断が欠かせません。

急性骨髄炎からの移行型

急性骨髄炎が適切に治療されなかった場合や、治療が不十分だったときに慢性化するケースがあります。通常、急性期の症状が一時的に改善した後、数週間から数か月後に再び症状が現れます。

この病型では、初期の急性炎症により骨の血流が障害され、骨組織の一部が壊死する場合があります。壊死した骨組織(腐骨)は細菌の温床となり、抗菌薬が届きにくいため、感染が持続しやすくなります。

特徴内容注意点
発症時期急性期から3〜6か月後症状の再燃に注意
主な症状間欠的な痛み、腫脹急性期より軽度
画像所見骨硬化、腐骨形成CTで詳細評価

外傷後骨髄炎

骨折や外傷後に発生する骨髄炎で、開放骨折や手術部位感染が主な原因です。金属プレートやスクリューなどのインプラントを使用している方では、感染のリスクが高まります。

外傷部位から直接細菌が侵入するため、皮膚や軟部組織の損傷を伴う人が多く、瘻孔形成※1や排膿が見られるときがあります。

※1瘻孔(ろうこう)形成:体の深部で生じた炎症・外傷が原因で組織の内部から皮膚や粘膜の表面までつながる穴が形成される。穴は管状で、膿が出るほか、周囲が赤く腫れて痛みを伴うケースも多い。

インプラント周囲にバイオフィルムが形成されると、抗菌薬治療に抵抗性を示すため、外科的切除が必要になる例が多いです。

血行性慢性骨髄炎

血流を介して細菌が骨に到達し、感染を起こす病型です。小児では長管骨の骨幹端部、成人では椎体に好発します。糖尿病や免疫不全などの基礎疾患がある患者さんに多く見られます。

初期症状が軽微なため診断が遅れる場合があり、慢性化しやすい特徴があります。複数の部位に同時に発生する方もいて、全身状態の評価が必要となります。

リスク因子頻度好発部位
糖尿病高い足部、下腿
免疫不全中等度椎体、長管骨
血液透析中等度鎖骨、肋骨

特殊な病型

慢性骨髄炎には、通常の細菌感染以外の原因による特殊な病型も存在します。結核性骨髄炎は結核菌による感染で、脊椎に好発し、進行すると脊椎の圧潰や神経症状を引き起こすときがあります。

真菌性骨髄炎は免疫不全患者に見られ、通常の抗菌薬が無効なため、診断に時間がかかる傾向があります。放射線骨髄炎は放射線治療後に発生し、血流障害による骨壊死が主な病態です。

これらの特殊な病型は、通常の慢性骨髄炎とは異なる治療が必要となるため、鑑別診断が欠かせません。

慢性骨髄炎の症状

慢性骨髄炎の症状は急性骨髄炎に比べて軽微で、進行も緩徐なため、診断が遅れる場合があります。症状の程度や種類は、感染部位、原因菌、患者さんの全身状態によって異なります。

局所症状

慢性骨髄炎で最も多く見られる症状は、感染部位の持続的または間欠的な痛みです。痛みの程度は様々で、安静時には軽度でも、体重負荷や運動により増強するときがあります。

感染部位の腫脹や発赤も一般的な症状です。急性期ほど顕著ではありませんが、慢性的な炎症により局所の皮膚温が上昇し、触診で圧痛を認めるケースがあります。長期間の炎症により、周囲の軟部組織が硬くなる方もいます。

他に慢性骨髄炎の特徴的な症状として、瘻孔形成があります。感染が皮膚表面まで波及すると、膿が排出される通路(瘻孔)ができます。瘻孔からは持続的または間欠的に膿や浸出液が排出され、悪臭を伴う場合があります。

全身症状

全身症状は、急性骨髄炎に比べて軽微な方が多いです。

微熱は慢性骨髄炎でよく見られる症状で、37〜38度程度の発熱が持続または間欠的に出現します。高熱を呈する例は少ないですが、急性増悪時には39度以上の発熱を認める方もいます。

認められる全身症状
  • 全身倦怠感や易疲労感
  • 食欲不振や体重減少
  • 夜間の発汗
  • 貧血による顔色不良

機能障害

慢性骨髄炎が関節近くに発生すると、関節の可動域制限や機能障害を引き起こす場合があります。炎症による疼痛や腫脹により、関節の動きが制限され、日常生活動作に支障をきたします。

下肢の骨髄炎では、歩行困難や跛行※2が見られます。痛みを避けるために患側への荷重を避ける結果、健側への負担が増加し、二次的な問題を引き起こす方も珍しくありません。

※2跛行(はこう):正常な歩行ができずに足を引きずるように歩く状態。痛みや筋力の低下、血管障害や神経障害などが原因。

部位主な機能障害日常への影響
大腿骨歩行困難、跛行移動能力の低下
上腕骨肩関節可動域制限更衣、整容動作困難
脊椎体幹の可動域制限姿勢保持困難

合併症による症状

慢性骨髄炎が長期間持続すると、様々な合併症が生じます。

病的骨折は、感染により骨の強度が低下した結果生じる骨折で、軽微な外力でも発生するときがあります。突然の激痛と変形、機能障害を認め、緊急の対応が必要です。

敗血症は感染が血流に波及した状態で、高熱や悪寒、血圧低下などの重篤な症状を呈します。迅速な診断と治療が必要で、生命に関わるケースもあります。

アミロイドーシスは、慢性炎症に伴う合併症で、腎機能障害や消化器症状を引き起こす場合があります。蛋白尿や浮腫、下痢などの症状が見られたときは、この合併症を疑います。

  • 病的骨折
  • 敗血症
  • アミロイドーシス

慢性骨髄炎の症状は多彩で、経過も様々です。軽微な症状でも持続するときは、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。

慢性骨髄炎の原因

慢性骨髄炎の主な原因は、細菌感染です。起因菌には複数の種類があり、慢性骨髄炎に陥る背景には外傷や糖尿病などの感染リスク因子のほか、喫煙や栄養不良といった誘因の存在があります。

慢性骨髄炎の起炎菌

最も多くみられる起炎菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)で、急性・慢性を問わず骨髄炎で一番多い菌です。耐性菌であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は近年よく検出され、治療を難しくしています。

人工関節や金属プレートなど整形外科インプラント周囲の感染では、表皮ブドウ球菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)などの皮膚常在菌が原因となる例もあります。

糖尿病足や褥瘡に続発する骨髄炎では、複数の菌(混合感染)が検出される傾向があり、ブドウ球菌のほかレンサ球菌、大腸菌などの腸内細菌、嫌気性菌など幅広い菌種が関与します。

特殊な原因としては、結核菌による骨髄炎(骨結核)や真菌による骨感染症もありますが、頻度は高くありません。

外傷や手術

開放骨折や大きな外科手術によって骨が露出すると、細菌が侵入しやすくなります。重度の開放骨折では特に感染率が高く、その一部が慢性骨髄炎に移行します。

また、骨に入れた金属(プレート、人工関節など)があると菌が付着・定着(バイオフィルム形成)しやすく、感染が慢性化する一因になります。

糖尿病

高血糖により免疫力が低下し、さらに末梢神経障害で傷に気づきにくく、末梢血行障害で傷の治りが悪いため足の小さな傷から感染が進行し骨髄炎に至りやすいです。

末梢血管障害

動脈硬化による下肢の血流不足(閉塞性動脈硬化症など)は、外傷や潰瘍からの感染が治りにくく、骨まで波及しやすくなります。

免疫不全

ステロイドや抗がん剤の使用、HIV感染症などで免疫機能が低下していると感染症にかかりやすく重症化しやすいため、骨まで感染が広がる場合があります。

喫煙や栄養不良

喫煙は血流を悪化させ免疫細胞の働きを抑えるため、創傷治癒を妨げ感染リスクを高めます。また、低栄養状態も組織修復を阻害します。

慢性腎不全

透析患者では免疫不全や頻回の穿刺・カテーテル留置により感染症のリスクが高く、骨髄炎も起こりやすい傾向があります。

注射薬物乱用

静脈注射による薬物使用は、菌が血行性に骨へ運ばれる原因になります。特に脊椎や鎖骨周辺の骨髄炎が発生しやすいとされています。

慢性骨髄炎の原因への理解

慢性骨髄炎の原因は「菌」と「宿主要因」の両面から理解する必要があります。

治療にあたっては原因菌を特定し適切な抗菌薬を選ぶことに加え、糖尿病の血糖コントロールや血流障害の改善など、基礎疾患の対策も大切です。

慢性骨髄炎の検査・チェック方法

慢性骨髄炎の診断には、臨床症状の評価に加えて、血液検査や画像検査、微生物学的検査などを組み合わせて行う必要があります。

臨床症状や画像所見、検査結果に矛盾がないか確認し、必要に応じて追加検査を行います。

血液検査

血液検査は慢性骨髄炎の診断において基本的な検査です。炎症の程度や全身状態を評価できます。

白血球数は急性骨髄炎では著明に上昇しますが、慢性骨髄炎では正常または軽度上昇にとどまるケースが多いです。白血球分画では好中球の増加が見られる場合があります。

CRPと赤血球沈降速度(ESR)は、炎症の指標として有用です。慢性骨髄炎では軽度から中等度の上昇を示す例が多く、治療効果の判定にも使用されます。

CRPは炎症の変化を鋭敏に反映するため、経過観察に適しています。

検査項目正常値慢性骨髄炎での値
白血球数4,000〜9,000/μL正常〜12,000/μL
CRP0.3mg/dL以下1〜10mg/dL
ESR男性10mm/h以下、女性15mm/h以下20〜100mm/h

その他の血液検査として、アルブミンやプレアルブミンなどの栄養状態の評価、腎機能や肝機能の確認も重要です。基礎疾患の評価として、血糖値やHbA1cの測定も行います。

画像検査

画像検査は慢性骨髄炎の診断において中心的な役割を果たします。各検査法には特徴があり、目的に応じて使い分けます。

画像検査の種類と目的
  • 単純X線:骨変化の全体像の把握、経過観察
  • CT:骨破壊の詳細評価、手術計画
  • MRI:早期診断、軟部組織評価、活動性評価
  • 骨シンチグラフィー:多発病変の検索、活動性評価

単純X線

単純X線撮影は最も基本的な画像検査です。慢性骨髄炎では、骨硬化や骨透亮像、腐骨形成や骨膜反応などの所見が見られます。

ただし、発症早期には異常所見が認められない例もあり、2〜3週間後に再検査が必要な方もいます。

CT

CTは骨の詳細な評価に優れており、腐骨の存在や範囲、骨破壊の程度を正確に評価できます。また、瘻孔の走行や膿瘍の位置確認も可能です。造影CTを行うと、軟部組織の炎症の評価もできます。

MRI

MRIは骨髄炎の早期診断に最も有用な検査です。骨髄の炎症性変化を鋭敏に検出でき、感染の範囲や活動性を評価できます。T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示すのが典型的な所見です。

微生物学的検査

原因菌の同定は、適切な抗菌薬選択のために必須の検査です。可能な限り抗菌薬投与前の検体採取の実施を行います。

血液培養は、全身感染を伴う際や急性増悪時に陽性となる場合があります。発熱時に複数セット採取すると、検出率が向上します。

瘻孔からの排液培養は簡便に行えますが、表在菌の混入により、真の原因菌を反映しないときがあります。深部の検体採取が困難なときの補助的検査として位置づけられます。

検体の種類検出率信頼性
骨生検70〜90%高い
術中検体80〜95%最も高い
瘻孔排液30〜50%低い

骨生検は、CTガイド下または手術時に採取します。抗菌薬投与前に行うのが理想的で、好気性・嫌気性培養に加えて、結核や真菌の検査も考慮します。

病理組織学的検査

病理組織学的検査は、慢性骨髄炎の確定診断に有用です。手術時に採取した組織を顕微鏡で観察し、炎症の程度や骨壊死の有無を評価します。

慢性骨髄炎の病理所見として、リンパ球や形質細胞を主体とした慢性炎症細胞浸潤、線維化、骨壊死、新生骨形成などが見られます。急性炎症の所見が混在するケースもあります。

特殊染色により、細菌や真菌を直接観察できるときもあります。培養検査で原因菌が同定できないときに、診断の手がかりとなる場合があります。

病理組織学的検査は、腫瘍との鑑別にも重要です。慢性骨髄炎と骨腫瘍は画像所見が類似することがあり、確定診断には病理検査が必要となります。

慢性骨髄炎の治療方法と治療薬、リハビリテーション、治療期間

慢性骨髄炎の治療は、感染の制御と機能の回復を目標として、薬物療法と外科的治療を組み合わせて行います。患者さんの状態に応じた個別化された治療計画が必要です。

薬物療法

抗菌薬治療は慢性骨髄炎治療の基本です。原因菌に対して、有効な抗菌薬を十分な期間投与する必要があります。

抗菌薬の選択は、細菌培養と薬剤感受性試験の結果に基づいて行います。経験的治療を開始する際は、黄色ブドウ球菌をカバーする抗菌薬を選択します。

MRSAが疑われるときは、バンコマイシンやダプトマイシンなどの抗MRSA薬を使用します。

投与期間は通常6〜12週間と長期にわたります。最初の2〜4週間は静脈内投与を行い、その後は経口薬に切り替えるケースが多いです。骨への移行性が良好な抗菌薬の選択をします。

原因菌第一選択薬代替薬の例
MSSAセファゾリンクリンダマイシン
MRSAバンコマイシンダプトマイシン
グラム陰性桿菌フルオロキノロンセフトリアキソン

抗菌薬の投与経路と期間は、感染の重症度、原因菌、患者さんの全身状態により決定します。外来での経口抗菌薬治療が可能なケースもありますが、重症例では入院での静脈内投与が必要となります。

補助的な薬物療法として、疼痛に対する鎮痛薬、炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)なども使用されます。基礎疾患の管理も欠かせないもので、糖尿病患者では血糖コントロールを厳格に行います。

外科的治療

慢性骨髄炎の多くは、薬物療法のみでは治癒が困難で、外科的治療が必要となります。手術の目的は、感染組織の除去と死腔の処理です。

デブリードマンは感染した骨や軟部組織を切除する手術です。腐骨や肉芽組織、瘻孔を含めて、感染組織を徹底的に除去します。正常な骨組織が出血するまで切除する必要があります。

手術方法適応利点
デブリードマン全例感染源除去
骨移植骨欠損例骨再建
筋皮弁移植軟部組織欠損血流改善

死腔の処理には、抗菌薬含有セメントビーズの留置、筋弁や皮弁による充填、外固定器を用いた骨延長術などがあります。感染が制御された後に、必要に応じて骨移植や骨延長により骨欠損を再建します。

インプラント関連感染では、インプラントの除去が必要になることが多いです。一期的に新しいインプラントを挿入する方法と、二期的に行う方法があり、感染の程度により選択します。

リハビリテーション

リハビリテーションは、慢性骨髄炎の治療において大切な役割を果たします。長期の安静や手術により低下した機能を回復させ、日常生活への復帰を支援します。

急性期のリハビリテーションでは、関節可動域訓練と筋力維持訓練を中心に行います。感染部位への過度な負荷を避けながら、廃用性の機能低下を予防します。

手術後のリハビリテーションは、手術内容に応じて計画します。骨移植や骨延長を行ったときは、骨癒合の状態を確認しながら、段階的に荷重を増やしていきます。

リハビリテーションプログラム
  • 関節可動域訓練:拘縮予防と改善
  • 筋力強化訓練:筋萎縮の改善
  • 歩行訓練:歩容の改善と耐久性向上
  • 日常生活動作訓練:ADL(日常生活における基本的な動作)の自立

リハビリテーションは、医師や理学療法士、作業療法士などの多職種チームで行います。患者さんの状態に応じて、個別のプログラムを作成し、定期的に評価と修正を行います。

治療期間

慢性骨髄炎の治療期間は、感染の範囲、原因菌、患者さんの全身状態により大きく異なります。一般的に数か月から1年以上の長期治療が必要です。

薬物療法の期間は、静脈内投与2〜4週間、経口投与4〜8週間の計6〜12週間が標準的です。外科的治療を行った際は、創部の治癒状況により追加の抗菌薬投与が必要になる場合があります。

治療段階期間内容
急性期治療2〜4週間静脈内抗菌薬投与
維持治療4〜8週間経口抗菌薬投与
経過観察6〜12か月再発の監視

外科的治療後の治癒期間は、手術の内容により異なります。単純なデブリードマンでは4〜6週間で創部が治癒しますが、骨移植や皮弁形成を行ったときは3〜6か月かかる方もいます。

完全な治癒の判定には、臨床症状の改善、炎症反応の正常化、画像所見の改善を確認する必要があります。治療終了後も定期的な経過観察を行い、再発の早期発見に努めます。

慢性骨髄炎の治療は長期にわたるため、患者さんの協力が欠かせません。治療の必要性を十分に説明し、服薬や通院の重要性を理解していただくことが、治療成功の鍵となります。

薬の副作用や治療のデメリット

慢性骨髄炎の治療は長期にわたるため、薬物療法や外科的治療に伴う副作用やデメリットについて十分に理解しておきましょう。

抗菌薬の副作用

長期間の抗菌薬投与により、様々な副作用が出現する可能性があります。副作用の早期発見と適切な対処により、治療の継続が可能となります。

消化器症状は最も頻度の高い副作用です。下痢や悪心、嘔吐や食欲不振などが見られ、特にクリンダマイシンやアモキシシリン・クラブラン酸では下痢の頻度が高くなります。整腸剤の併用や、食後投与により症状を軽減できる場合があります。

腎機能障害は、アミノグリコシド系やバンコマイシンで注意が必要です。定期的な血中濃度測定と腎機能検査により、早期発見と用量調整を行います。高齢者や腎機能低下例では特に慎重な管理が必要です。

抗菌薬主な副作用対処法
バンコマイシン腎障害、レッドマン症候群血中濃度モニタリング
フルオロキノロン腱障害、QT延長心電図確認
リネゾリド血小板減少、視神経障害定期的血液検査

肝機能障害も問題視される副作用です。多くの抗菌薬で軽度の肝酵素上昇が見られますが、重篤な肝障害に進展するケースは稀です。定期的な肝機能検査により経過観察を行います。

アレルギー反応として、皮疹や発熱、好酸球増多などが認められる方もいます。重篤なアレルギー反応であるスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症は稀ですが、生命に関わるため注意が必要です。

外科的治療のリスク

外科的治療には、手術に伴う一般的なリスクと、慢性骨髄炎特有のリスクがあります。

手術部位感染は最も懸念されるリスクです。既に感染が存在する部位の手術であるため、感染の拡大や遷延のリスクがあります。徹底的なデブリードマンと適切な抗菌薬投与により、リスクを最小限に抑えます。

出血のリスクも考慮する必要があります。炎症により血管が脆弱になっているケースがあり、一部の方では予想以上の出血をきたします。術前の凝固機能検査と、必要に応じた輸血準備が重要です。

手術関連の合併症
  • 神経損傷による知覚障害や運動麻痺
  • 血管損傷による循環障害
  • 創部離開や創傷治癒遅延
  • 深部静脈血栓症や肺塞栓症

長期治療によるデメリット

慢性骨髄炎の治療期間は長期にわたるため、身体的、精神的、社会的な負担が生じます。入院期間の長期化により、筋力低下や関節拘縮などの廃用症候群が起こりやすくなります。

また、長期臥床により褥瘡のリスクも高まります。早期からのリハビリテーションと適切な体位変換が必要です。

精神的ストレスも大きな問題です。長期の治療による不安、痛みによる睡眠障害、社会復帰への不安などにより、うつ状態に陥る方もいるため、精神的サポートや、必要に応じて精神科・心療内科との連携が肝心です。

影響内容対策
経済的負担医療費、収入減少社会保障制度の活用
社会的影響就労困難、家族負担職場との調整
QOL低下活動制限、疼痛包括的ケア

治療抵抗性・再発のリスク

慢性骨髄炎は、適切な治療を行っても完治が困難な場合があります。

治療抵抗性の要因として、バイオフィルム形成、薬剤耐性菌、血流不良、免疫不全などがあります。これらの要因が複合的に関与すると、通常の治療に反応しないケースがあります。

再発率は10〜30%と報告されており、不十分なデブリードマンや短期間の抗菌投与を行った際に特に再発リスクが高くなります。

再発リスクが高くなる要因
  • 不十分なデブリードマン
  • 短期間の抗菌薬投与
  • 基礎疾患のコントロール不良
  • 治療コンプライアンスの不良

再発を予防するためには、初回治療を徹底的に行う、定期的な経過観察を行う、基礎疾患の管理を継続する、といった取り組みが大切です。

慢性骨髄炎の治療には様々なリスクとデメリットがありますが、適切な管理により多くは予防または対処可能です。治療開始前に十分な説明を行い、患者さんの理解と協力を得ると、安全で効果的な治療につながります。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

慢性骨髄炎の治療には長期間を要し、医療費の負担も大きくなります。日本の公的医療保険制度と各種支援制度を理解し、適切に活用しましょう。

保険診療の適用範囲

慢性骨髄炎の診断・治療に関する医療行為は、基本的に保険診療の対象となります。

外来診療では診察料や検査料、処方料などが保険適用となります。さらに、血液検査や細菌培養検査、画像検査(X線、CT、MRI)なども保険診療で行えます。

入院治療においても、入院基本料や手術料、麻酔料や薬剤料などが保険適用です。リハビリテーション料も疾患別リハビリテーション料として算定されます。

診療内容保険適用自己負担割合
外来診察適用1〜3割
入院治療適用1〜3割
手術適用1〜3割
リハビリ適用1〜3割

抗菌薬についても、慢性骨髄炎の治療に使用される薬剤は保険適用となります。ただし、一部の新薬や特殊な投与方法については、使用に制限がある場合があります。

治療費の概算

慢性骨髄炎の治療費は、治療内容や期間により大きく異なりますが、概算を理解しておくと良いです。

外来治療では、初診時の検査を含めて1回あたり5,000円〜20,000円程度(3割負担)かかります。定期的な通院と検査、薬剤費を含めると、月額20,000円〜50,000円程度の自己負担となる方が多いです。

入院治療では、より高額な医療費がかかります。

手術を伴う入院の費用
  • 入院基本料:1日あたり15,000円〜25,000円(3割負担で4,500円〜7,500円)
  • 手術料:200,000円〜1,000,000円(3割負担で60,000円〜300,000円)
  • 検査・薬剤料:100,000円〜300,000円(3割負担で30,000円〜90,000円)

1か月の入院治療で、総医療費が1,500,000円〜3,000,000円、自己負担額が450,000円〜900,000円程度です。ただし、高額療養費制度により、実際の負担はこれより軽減されます。

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月の医療費が一定額を超えた際に、超過分が払い戻される制度です。慢性骨髄炎の治療では、この制度の活用がポイントとなります。

自己負担限度額は、年齢と所得により異なります。70歳未満の一般的な所得層(年収約370万円〜770万円)では、自己負担限度額は80,100円+(医療費総額−267,000円)×1%となります。

所得区分自己負担限度額(月額)
年収約1,160万円〜252,600円+(医療費総額−842,000円)×1%
年収約770万円〜1,160万円167,400円+(医療費総額−558,000円)×1%
年収約370万円〜770万円80,100円+(医療費総額−267,000円)×1%

事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。ただし、マイナ保険証を利用する際は、限度額適用認定証が不要です。

過去12か月間に3回以上高額療養費の支給を受けたときは、4回目以降の自己負担限度額がさらに軽減されます。

その他の支援制度

慢性骨髄炎の治療に際して、高額療養費制度以外にも様々な支援制度を利用できる場合があります。

医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた際に、所得税の還付を受けられる制度です。本人と生計を同一にする家族の医療費を合算でき、通院の交通費も対象となります。

身体障害者手帳の交付を受けられる場合もあります。慢性骨髄炎により関節機能障害や肢体不自由が残存したときは、障害の程度により1級から6級の認定を受けられます。手帳の交付により、医療費の助成や各種サービスを受けられます。

検討できる支援
  • 傷病手当金(会社員の場合)
  • 障害年金(障害が残存した場合)
  • 生活福祉資金貸付制度
  • 医療費の無利子貸付制度

民間の医療保険に加入している方は、入院給付金や手術給付金を受け取れます。保険会社により給付内容が異なるため、契約内容を確認しましょう。

慢性骨髄炎の治療は経済的負担が大きいですが、公的制度を適切に活用すると、負担を軽減できます。医療機関の医療相談室やソーシャルワーカーに相談すれば、利用可能な制度について詳しい情報を得られます。

安心して治療を受けるために、早めに相談して必要な手続きを行いましょう。

以上

参考文献

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医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

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