2型糖尿病(type2-diabetes)とは、インスリンの働きが十分でないために血糖値が高くなる慢性的な病気です。
日本では、大人の7人に1人が糖尿病またはその予備群だと言われており、生活習慣の変化によって患者数は年々増えています。
初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いですが、放っておくと網膜症、腎症、神経障害などの合併症を引き起こし、生活の質を大きく損ねてしまう可能性も。
ここでは、2型糖尿病の原因、症状、診断基準などについて詳しく説明していきます。
2型糖尿病の病型
2型糖尿病は、病気の状態や臨床像に基づいて複数の病型に分けられます。
肥満関連糖尿病
2型糖尿病患者の多くを占める病型が、肥満関連糖尿病です。
肥満関連糖尿病の特徴
特徴 | 説明 |
インスリン抵抗性 | 肥満によってインスリンの効きが悪くなる |
高インスリン血症 | インスリン抵抗性を補うために、インスリン分泌が増える |
内臓脂肪蓄積 | 内臓脂肪がたまることが、インスリン抵抗性の原因となる |
肥満関連糖尿病では、生活習慣を改善することが大切です。
非肥満糖尿病
肥満を伴わない2型糖尿病を、非肥満糖尿病と呼びます。
- インスリンの分泌不足が主な病態
- インスリン抵抗性は軽い
- 膵臓の疲れが進行しやすい
非肥満糖尿病では、インスリンの分泌能力が低下することが問題となります。
若年発症2型糖尿病
30歳未満で発症する2型糖尿病が、若年発症2型糖尿病です。
若年発症2型糖尿病の特徴
特徴 | 説明 |
急速な発症 | 比較的短い期間で高血糖が進む |
家族歴 | 家族の中に2型糖尿病の人が多い |
肥満傾向 | 太りすぎていることが多い |
若年発症2型糖尿病では、早い段階からの厳しい血糖管理が求められます。
ステロイド糖尿病
ステロイド薬を長期間使用することによって引き起こされる2型糖尿病を、ステロイド糖尿病と呼びます。
主な特徴
- ステロイド薬によるインスリン抵抗性が主な病態
- ステロイド薬を減らしたり、止めたりすることで改善することが
- 高血糖の程度はステロイド薬の量に依存
ステロイド糖尿病では、基礎となる病気の治療とステロイド薬の調整が大切です。
2型糖尿病の症状
2型糖尿病は、初期段階では無症状のことが多いですが、症状が進行すると、さまざまな身体的変化が現れます。
口渇と多尿
2型糖尿病の代表的な症状は、口渇と多尿です。血糖値が高くなると、尿中に糖が排出されるため、尿量が増加し、その結果、のどの渇きを感じ、水分をたくさん摂取するようになります。
症状 | 詳細 |
口渇 | のどの渇きを感じ、水分をたくさん摂取する |
多尿 | 尿量が増加し、トイレに行く回数が増える |
倦怠感と体重減少
2型糖尿病では、体内のエネルギー代謝が乱れるため、倦怠感や体重減少を伴うことがあります。インスリンの作用不足により、細胞がブドウ糖を十分に利用できなくなるからです。
さらに、エネルギー不足に陥り、疲れやすくなったり、体重が減少したりすることがあります。
視力の低下
2型糖尿病が進行すると、網膜の微小血管が損傷を受け、視力の低下を引き起こすことがあり、糖尿病網膜症と呼びます。
- 視界のぼやけ
- かすみ目
- 視力の低下
- 飛蚊症(目の前に虫が飛んでいるように見える)
手足のしびれ
2型糖尿病が長期間続くと、糖尿病性神経障害が起こり、神経の損傷により手足のしびれを感じることがあります。
部位 | 症状 |
手 | しびれ、感覚の鈍麻、痛み |
足 | しびれ、感覚の鈍麻、痛み |
皮膚の症状
血糖値が高い状態が続くと、皮膚の感染症にかかりやすくなったり、かゆみを感じたり、また、傷の治りが遅くなることもあります。
2型糖尿病の原因
2型糖尿病は、日々の生活習慣や遺伝的な背景が複雑に絡み合い、発症するとされています。
インスリン抵抗性
2型糖尿病を引き起こす大きな要因の一つがインスリン抵抗性です。
この状態では、
- インスリンの効き目が弱まる
- 通常より多くのインスリンが必要になる
- 血糖値がなかなか下がらない
といったことが起こります。
インスリン抵抗性は、肥満や運動不足、ストレスといった生活習慣と深く関わっています。
インスリン分泌不全
インスリン分泌不全も、2型糖尿病の原因です。
特徴 | 説明 |
インスリン分泌量の低下 | 必要な量のインスリンが分泌されない |
インスリン分泌パターンの異常 | インスリンが適切なタイミングで分泌されない |
膵島の疲弊 | インスリンを生産する膵島の機能が低下する |
インスリン分泌不全は、長期間にわたるインスリン抵抗性が原因で起こることがあります。
遺伝的要因
2型糖尿病には遺伝的な背景も関係しています。
- 家族に糖尿病患者がいる人は、発症リスクが高まる
- 一卵性双生児の研究で、発症率が高いことが確認されている
- 特定の遺伝子変異が、2型糖尿病と関連していることがわかっている
その他の要因
2型糖尿病の発症には、他にもさまざまな要因が関係する可能性があります。
要因 | 説明 |
加齢 | 年を取ると、インスリン抵抗性や分泌不全が進むことがある |
膵臓の疾患 | 膵臓の炎症や腫瘍がインスリン分泌を妨げることがある |
内分泌疾患 | 甲状腺機能低下症などがインスリン抵抗性を高めることがある |
2型糖尿病の検査・チェック方法
2型糖尿病を診断したり、その管理を行うためには、いくつかの検査が必要です。これらの検査は血糖のコントロール状態を把握したり、合併症を早期に発見するために役立ちます。
空腹時血糖検査
空腹時血糖検査は、2型糖尿病の診断に最初に行われる基本的な検査です。
少なくとも8時間食事をとらない状態で血液を採取し、血糖値を測定。
空腹時血糖値が126mg/dLを超えると、2型糖尿病の疑いがあります。
空腹時血糖値 | 判定 |
126mg/dL以上 | 2型糖尿病の可能性あり |
100〜125mg/dL | 空腹時高血糖 |
100mg/dL未満 | 正常 |
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)
経口ブドウ糖負荷試験は、体の血糖値を下げる能力を評価するために行われます。
空腹時に75gのブドウ糖を摂取し、その後2時間で血糖値を測定。
2時間後の血糖値が200mg/dL以上であれば、2型糖尿病と診断されることがあります。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)検査
ヘモグロビンA1c検査は、過去数ヶ月の平均血糖値を示す指標です。
この値が6.5%以上であれば、2型糖尿病の診断が下されることがあります。
HbA1c値 | 判定 |
6.5%以上 | 2型糖尿病 |
6.0〜6.4% | 糖尿病予備群 |
6.0%未満 | 正常 |
尿糖検査
尿糖検査は、尿中に糖が出ているかを調べる方法です。血糖値が高いと尿に糖が出るため、この検査で2型糖尿病のスクリーニングが行われることがあります。
ただし、尿糖検査だけでは確定診断には至りません。
眼底検査
2型糖尿病の患者さんは、糖尿病網膜症という目の合併症を発症するリスクがあるので、眼底検査で目の奥の状態をチェックし、網膜の健康を確認します。
- 眼底カメラによる網膜の撮影
- 眼圧測定
- 視力検査
- 眼球の動きや異常の有無の確認
2型糖尿病の治療方法と治療薬
2型糖尿病の治療には、日々の生活習慣を見直すことと、薬を使った治療が中心です。
生活習慣の改善
2型糖尿病治療の基盤となるのは、食事と運動による生活習慣の改善です。
バランスの取れた食事を心がけることで血糖値を安定させ、定期的な運動は体のインスリンの効きを良くして血糖をコントロールするのに役立ちます。
経口血糖降下薬
食事や運動だけでは血糖がうまくコントロールできない場合、経口血糖降下薬が使われます。
よく使われる薬の種類とその働き
薬剤名 | 作用機序 |
ビグアナイド薬 | 肝臓での糖の生成を抑え、インスリンの効きを良くする |
スルホニル尿素薬 | 膵臓からのインスリンの分泌を促す |
チアゾリジン薬 | 体のインスリンに対する反応を良くする |
DPP-4阻害薬 | インスリンの分泌を助け、血糖を上げるホルモンの分泌を抑える |
医師はこれらの薬を患者さんの状態に合わせて選び、単独または組み合わせて処方します。
インスリン療法
経口薬だけでは血糖がコントロールできない、または病状が進んでいるときには、インスリン療法を始めることがあります。インスリンは注射で体に入れ、直接血糖を下げることが可能です。
インスリンにはいくつかの種類があり、それぞれ作用する時間が異なります。
- 超速効型インスリン
- 速効型インスリン
- 中間型インスリン
- 持効型インスリン
医師は患者さんの日常生活や食事のパターンに合わせて、インスリンを選びます。
合併症の予防と管理
2型糖尿病の治療では、目や腎臓、神経、心臓などに起こる合併症の予防と管理も大切です。定期的な検査を行い、以下のような合併症を早期に見つけて対処します。
合併症 | 検査項目 |
網膜症 | 眼底検査 |
腎症 | 尿中アルブミン、eGFR |
神経障害 | 神経伝導速度検査 |
心血管疾患 | 心電図、脂質検査 |
2型糖尿病の治療期間と予後
2型糖尿病は、一度発症すると生涯にわたって管理が必要な慢性疾患ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、病気の進行を遅らせることが可能です。
治療段階 | 期間 |
初期治療 | 診断後6ヶ月~1年 |
維持治療 | 初期治療後、生涯にわたる |
強化治療 | 合併症が発生した場合や血糖コントロールが難しい場合 |
初期治療では、食事や運動による生活習慣の改善と、必要に応じて薬物療法を行い、その後は、定期的な医師の診察を受けながら、維持治療を続けます。
2型糖尿病の予後
2型糖尿病の予後は、血糖コントロールの良し悪しや合併症の有無によって大きく変わります。
合併症 | 予後への影響 |
網膜症 | 視力低下や失明のリスクが増加 |
腎症 | 透析が必要になる可能性がある |
神経障害 | 足の感覚が鈍くなり、傷が治りにくくなる |
心血管疾患 | 心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まる |
予後改善のための治療目標
2型糖尿病の治療目標は、血糖値を適切な範囲に保つことです。日本糖尿病学会では、以下の目標値を推奨しています。
- HbA1c:7.0%未満
- 空腹時血糖値:130mg/dL未満
- 食後2時間血糖値:180mg/dL未満
目標を達成し維持することで、合併症のリスクを低減し、予後を改善することができます。
患者さんの自己管理の重要性
型糖尿病の治療においては、患者さん自身の積極的な関与が非常に重要です。
食事や運動の管理、薬の正しい服用、定期的な医師の診察を受けることが、病気のコントロールには欠かせません。
薬の副作用や治療のデメリット
2型糖尿病の治療にはいくつかの方法がありますが、それぞれに副作用やデメリットがあるため、治療選択には慎重さが求められます。
経口薬の副作用
2型糖尿病の治療でよく使われる経口血糖降下薬は、低血糖や消化器系の不調などの副作用を引き起こすことがあります。
薬剤名 | 主な副作用 |
スルホニル尿素薬 | 低血糖、体重増加 |
ビグアナイド薬 | 消化器症状(下痢、悪心など) |
チアゾリジン薬 | 体重増加、浮腫 |
副作用は人によって異なり、重い症状が出ることもあるため、服用中は医師の定期的なチェックが必要です。
インスリン療法のデメリット
インスリン療法は、体内でのインスリン生成が不十分な患者に対して行われますが、毎日の自己注射が負担となることがあります。
- 低血糖のリスクが高まる
- 体重増加の可能性がある
- 注射技術を習得する必要がある
インスリン療法を行う際は、これらの点を理解し、医師と相談しながら治療を進めていきます。
外科的治療の問題点
重度の肥満を伴う2型糖尿病患者に行うことがある外科的治療には、問題点もあります。
手術名 | 主な問題点 |
スリーブ状胃切除術 | 栄養不良、逆流性食道炎 |
胃バイパス術 | 吻合部潰瘍、内ヘルニア |
手術には合併症のリスクがあり、長期的な栄養管理が必要になることもあり、手術の適応には慎重な判断が必要です。
生活習慣改善の限界
2型糖尿病の発症には不健康な生活習慣が関係しているため、食事療法や運動療法による生活習慣の改善が推奨されますが、これだけでは血糖コントロールが難しい場合もあります。
生活習慣の改善には患者の強い意志と継続的な努力が必要です。
また、合併症が進行して身体機能が低下している場合は、運動療法が難しくなることもあります。
保険適用の有無と治療費の目安について
2型糖尿病の治療は、健康保険が適用されますが、治療内容や薬剤によって、自己負担額が異なることがあります。
生活習慣改善指導の保険適用
2型糖尿病の治療において、生活習慣の改善指導は重要な位置を占め、保険診療では、医師や管理栄養士による食事療法や運動療法の指導が含まれます。
経口血糖降下薬の保険適用と費用
2型糖尿病の薬物療法では、経口血糖降下薬が広く使用されて、これらの薬剤は、原則として保険適用です。ただし、一部の新しい薬剤では、保険適用に制限があることもあります。
経口血糖降下薬の種類と一般的な費用
薬剤名 | 一般的な費用(1ヶ月分) |
ビグアナイド薬 | 1,000円~2,000円 |
スルホニル尿素薬 | 500円~1,500円 |
DPP-4阻害薬 | 5,000円~10,000円 |
SGLT2阻害薬 | 5,000円~10,000円 |
費用は、薬剤の種類や用量によって異なり、また、自己負担割合(通常30%)によっても変動します。
インスリン療法の保険適用と費用
インスリン療法は、重症の2型糖尿病や経口薬で効果不十分なときに導入され、保険適用です。ただし、注射器具(注射針やペン型注入器)の一部は、自己負担となる場合があります。
インスリン療法の一般的な費用は、以下の通りです。
・インスリン製剤(1ヶ月分):5,000円~15,000円
・注射器具(1ヶ月分):1,000円~3,000円
費用は、インスリンの種類や投与量、自己負担割合によって異なってきます。
合併症検査と管理の保険適用
2型糖尿病の合併症検査と管理は、保険診療の対象です。
検査項目 | 一般的な費用(自己負担分) |
眼底検査 | 1,000円~2,000円 |
尿中アルブミン検査 | 500円~1,000円 |
心電図検査 | 500円~1,000円 |
脂質検査 | 500円~1,000円 |
検査費用は、医療機関や自己負担割合によって異なる場合があります。
なお、上に記載した治療費より高くなることもありますので、予めご了承ください。
また、保険適用の可否は診察時に担当医師に直接ご確認いただくことをおすすめします。
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