有機酸代謝異常症

有機酸代謝異常症

有機酸代謝異常症とは、体内で行われるアミノ酸や脂質などの分解経路に支障が生じることによって、さまざまな有機酸が過剰に蓄積してしまう先天性の疾患です。

原因となる酵素の機能が不十分であったり、遺伝子的に作られない場合に起こり、特有の症状を引き起こします。

発症時期や症状の重さには個人差があり、新生児の時期から比較的早期に気づかれるタイプもあれば、思春期や成人期になってから検査で判明する場合もあります。

目次

有機酸代謝異常症の病型

原因となる酵素の欠損や不足の種類に応じて複数の病型に分けられますが、それぞれで蓄積する有機酸の種類や発症の時期、合併症のリスクなどに違いがあります。

病型ごとの特徴を理解することで、自分や大切な家族に合った対処方法を検討するきっかけになります。

メチルマロン酸血症

メチルマロン酸血症は、メチルマロニルCoAムターゼという酵素の活性が低い、あるいは欠損している場合に起こる病型で、血液中や尿中にメチルマロン酸が蓄積しやすくなり、体内のエネルギー産生や代謝に影響が及ぶことが特徴です。

重症例では新生児期に呼吸困難や意識障害、けいれんなどが生じる場合があり、中枢神経系に影響を与えるリスクも考えられます。

中には、乳幼児期には軽度な症状しか出ず、幼児期以降に学習障害や運動機能の遅れなどとして気づくケースもあります。

代表的な有機酸の蓄積量や代謝経路

有機酸の種類蓄積しやすい病型酵素の例蓄積が及ぼす影響
メチルマロン酸メチルマロン酸血症メチルマロニルCoAムターゼ中枢神経への負担やエネルギー代謝障害
プロピオン酸プロピオン酸血症プロピオニルCoAカルボキシラーゼ代謝性アシドーシスの悪化
イソ吉草酸イソ吉草酸血症イソ吉草酸CoAデヒドロゲナーゼ体臭の変化や神経症状

プロピオン酸血症

プロピオン酸血症は、プロピオニルCoAカルボキシラーゼの活性が低下または欠損していることで起こり、プロピオン酸が体内に蓄積し、新生児期の早い段階から嘔吐や呼吸状態の乱れなど、代謝性アシドーシスを起こしやすくなります。

重度になると意識障害やけいれんが誘発されやすく、治療を受けないまま放置すると脳障害へ進行するおそれもあります。

プロピオン酸血症の注意点

  • 乳幼児期早期に急激に発症する例が多い
  • 親や医療者が異常な嘔吐や呼吸数の変化に気づくことが診断のきっかけになりやすい
  • 栄養管理や薬物治療によって血中や尿中のプロピオン酸を制御する必要がある

この病型では、定期的な血中アンモニア濃度のチェックも重要で、プロピオン酸血症では、肝機能への負担が大きくなりやすく、高アンモニア血症を合併するケースがあるため、早期の検査と対策が必要です。

イソ吉草酸血症

イソ吉草酸血症は、イソ吉草酸CoAデヒドロゲナーゼの異常によって生じ、有機酸のイソ吉草酸が体内に過剰蓄積する病型です。

特徴的な症状の1つに汗や尿が強い「足の裏のような」または「甘酸っぱい」臭いを呈することが挙げられ、周囲が異変に気づくきっかけになります。

神経系の症状としては、けいれんや発達の遅れ、嘔吐を伴う代謝性アシドーシスが目立つ場合があります。

イソ吉草酸血症にみられる主な症状と発症時期

症状発症のタイミング具体例
強い体臭新生児期~乳幼児期甘酸っぱいまたは足裏に似たにおい
嘔吐・食欲不振新生児期~幼児期母乳・ミルクの飲みが悪くなる
神経症状乳幼児期以降けいれん、意識レベルの低下など
成長障害幼児期~学童期身長や体重の伸びの遅れ

ケトチオラーゼ欠損症

ケトチオラーゼ欠損症は、体内で特定のケトン体や有機酸を処理する酵素の働きが低下している病型で、糖質制限や長時間の絶食など、体内でのエネルギー生産が脂質やタンパク質に依存した場合に症状が出やすいのが特徴です。

ストレスや感染症をきっかけに代謝性アシドーシスを繰り返すことがあり、また、発作的に症状があらわれるケースもあり、日常生活での栄養バランスや疲労の蓄積状況に注意を払う必要があります。

有機酸代謝異常症の症状

多くの有機酸代謝異常症は、新生児期や乳児期に発症する重症型と、幼児期以降に比較的緩やかに進行する軽症型に分かれますが、どの病型でも早期の対策をしないと成長や臓器機能に影響が及ぶことがあります。

ここでは、年齢や時期によってどのような症状や徴候があらわれやすいかを整理し、どのタイミングで専門の医療機関に相談すべきかの目安を示します。

新生児期・乳児期に多く見られる症状

新生児期や乳児期に重症型として発症する場合は、短期間のうちに急性の代謝障害に陥りやすくいです。

生後数日から数週間の間に激しい嘔吐、呼吸困難、意識レベルの低下、けいれんなどが見られる場合には、有機酸代謝異常症の可能性を考えm特に母乳やミルクの飲みが悪く、体重増加が不十分な時には注意が必要です。

乳幼児期の早期症状で気づきやすいポイント

  • 頻回な嘔吐
  • 哺乳量の低下
  • 過度の眠りがちまたは不機嫌
  • 体重増加の停滞や発達の遅れ

幼児期・学童期での症状

幼児期や学童期になると、急性期の症状が落ち着く一方で、学習能力の遅れや運動機能の発達不良など、神経学的な面に表れる問題が出てきます。

些細な運動や身体活動で疲れやすい、集中力が持続しないといった日常の困りごとをきっかけに受診し、検査で有機酸代謝異常症が判明するケースもあります。

成長期には栄養バランスが特に重要なので、タンパク質摂取量やカロリーの不足から体調を崩すこともあるため、細やかな管理が欠かせません。

幼児期から学童期にかけてよく見られる症状

時期主な症状観察・チェックポイント
幼児期発達の遅れ、疲労感言葉の遅れ、転びやすさ、運動嫌い
学童期学習障害、集中力低下宿題に時間がかかる、疲れやすさの訴え

青年期・成人期に進行する症状

有機酸代謝異常症の中には、青年期や成人期にいたって軽度な症状しかあらわれず、まったく気づかないまま過ごす方もいます。

ところが、免疫力が落ちたときや大きなストレス、過度なダイエットなどで体内バランスが崩れると、代謝性アシドーシスの症状が突発的に発現する場合があります。

頭痛、食欲不振、倦怠感など、比較的ありふれた体調不良の裏に有機酸代謝異常が隠れていることもあるのです。

青年期や成人期に気づかれる要因

  • ストレスフルな生活環境が長期間続いたとき
  • 大幅な食事制限やダイエットを行ったとき
  • 感染症や発熱が長引いたとき

重症化しやすいケース

重症化するかどうかは病型によって異なりますが、発症初期に治療を行わなかった場合や、疾患管理の中断などで治療が不十分になった場合には、合併症が進行しやすくなります。

特に、神経合併症としてのけいれんや発達障害、肝機能障害や心筋症などを引き起こすことがあり、最悪のケースでは生命にかかわる状態に陥る可能性もあるので、定期的なフォローと、体調の変化を見落とさないことが重要です。

原因

有機酸代謝異常症は、体内のタンパク質や脂質、アミノ酸の分解経路で特定の酵素が欠損または活性不足になることから、分解が不完全のまま蓄積していく有機酸が増加し、さまざまな臓器に負担をかけることによって症状があらわれます。

遺伝子の異常が主な原因とされ、常染色体劣性遺伝の形式をとるものが多いです。

遺伝的要因

多くの有機酸代謝異常症は、両親それぞれから受け継ぐ遺伝子の変異によって発症します。遺伝子が変異している場合、働くべき酵素が十分に合成されないか、合成されても活性が著しく低いことが原因です。

両親が保因者であっても、本人が発症しない場合もある一方、兄弟姉妹の中で重症化する例が見られることもあります。

常染色体劣性遺伝と発症リスク

遺伝形式両親の状態子どもの発症リスク
常染色体劣性遺伝父・母ともに保因者およそ25%で発症、50%が保因者、25%が非保因

酵素の欠損や活性不全

代謝経路における酵素の欠損や活性不全は、多くの場合タンパク質レベルの構造異常として確認され、生化学的な検査や遺伝子検査で確定診断を行う際には、この酵素活性の測定が指標になります。

酵素活性が全くない場合と、ある程度は存在するが非常に低い場合とでは、発症年齢や症状の重さが異なることも特徴です。

酵素活性の程度と症状の傾向

  • 活性がゼロに近い場合:新生児期に重症化しやすい
  • 活性が低めの場合:幼児期以降に緩徐に症状が進行する

代謝経路における二次的要因

本来は別の経路で代謝されるはずの中間代謝産物が行き場を失い、有害物質として蓄積すると、代謝性アシドーシスを起こしやすくなります。

また、タンパク質や脂肪分解の際に発生するアンモニアなどの有害物質が増える場合もあり、肝臓や脳に大きなダメージを及ぼすことがあります。

このように、単一の酵素欠損が引き金となって連鎖的に障害が広がり、複数の臓器や機能に不調をもたらす点が、有機酸代謝異常症のやっかいな特徴です。

主要な中間代謝産物蓄積による影響注意すべき臓器
メチルマロン酸アシドーシス、神経障害脳、肝臓
プロピオン酸血液の酸性化、免疫低下脳、免疫系
有機酸一般体液バランスの乱れ、組織障害全身

環境や栄養の影響

遺伝的要因が大きいとはいえ、環境要因や栄養管理の仕方も発症時期や症状の重さに影響し、特にタンパク質の過剰摂取や、空腹時間が長引くことで脂質の分解が増加する状況などは、有機酸が急速に蓄積する状況を作ります。

感染症にかかって食欲が低下したり、高熱が続いたりするときにも代謝状態が不安定になりやすいので、体調管理を怠らないことが大切です。

検査・チェック方法

有機酸代謝異常症と疑われる症状があった場合、医師は血液検査や尿検査、遺伝子検査などを組み合わせて総合的に診断を行います。

発症が早期の場合は新生児スクリーニングで判明することもありますが、後になってわかるケースも少なくありません。

血液検査

血液検査では、血中のアンモニア濃度や血液ガス分析、乳酸値やケトン体量などを確認し、有機酸代謝異常症では代謝性アシドーシスや高アンモニア血症が検出されることが多いです。

特にアンモニア値が高い場合は、肝臓がアンモニアを処理できていない状況が考えられ、治療方針を決める重要な指標になります。

血液検査で参考になる主な数値と、異常値が示す可能性のある状態

項目基準値(目安)異常時の主な可能性
アンモニア15~50 μg/dL 程度有機酸代謝異常症、肝機能障害
pH (血液ガス)7.35~7.45アシドーシス、アルカローシス
乳酸0.5~2.2 mmol/L代謝障害、組織低酸素

尿検査

尿中に代謝されずに残っている有機酸やケトン体の種類と濃度を確認し、有機酸代謝異常症の患者さんでは、メチルマロン酸やプロピオン酸など特定の有機酸が高濃度で検出されることが多いです。

尿検査は身体への負担が少なく、継続的なモニタリングに適している点もメリットになります。

チェック項目主な診断の参考補足
有機酸分析病型の特定GC-MS(ガスクロマトグラフィー・質量分析)など
ケトン体代謝バランス評価アシドーシスのリスク把握
pH尿の酸性度全身の代謝状態と連動

遺伝子検査

病型の特定や家族内リスクの評価を正確に行うためには、遺伝子検査が重要で、酵素遺伝子の変異部位を特定し、機能的変化を調べます。検査結果が確定すれば、将来的な合併症の予防や家族計画の見通しなどにも役立ちます。

遺伝子検査の一般的な流れ

  • 血液や唾液などからDNAを抽出
  • 対象となる遺伝子領域のシーケンス解析
  • 変異が見つかった場合の家族への検査提案

早期診断の利点

新生児スクリーニングで一部の有機酸代謝異常症を見つけられるようになっており、早期診断によって急性期の重症化を回避できる可能性があります。

特にプロピオン酸血症やメチルマロン酸血症は、新生児マススクリーニングで高リスクと判断されるケースがあり、早い段階から治療を開始することで身体的な負担を軽減することが可能です。

症状が出ないまま成長した後に発覚するよりも、早期に正しいケアを始めるほうが合併症リスクを下げやすくなります。

有機酸代謝異常症の治療方法と治療薬について

有機酸代謝異常症の治療は、基本的に不足している酵素の機能を直接補うことが難しいため、蓄積を抑えるアプローチが中心となります。

薬物療法や栄養管理によって、体内の有機酸量を調節しながら症状の進行を抑え、日常生活を安定させる方針をとるケースが多いです。

食事療法・栄養管理

病型や個人の代謝状況に応じて、タンパク質の摂取量や特定のアミノ酸の制限を行い、食事内容を管理することで、過剰に分解されるアミノ酸を減らし、有機酸の蓄積を抑制します。

低タンパク食を導入することが多いですが、栄養不足に陥らないように専門の管理栄養士や医師と連携しながら食事メニューを組むことが重要です。

栄養管理でよく推奨される食品や注意が求められる食品

種類推奨されやすい食品控えめにする食品
主菜魚の白身、豆製品赤身肉、高脂質の肉
主食白米、パスタ高たんぱくの穀物製品
副菜野菜全般、海藻類塩分が高い漬物や加工食品

薬物療法

代謝経路を補助する薬剤や、蓄積した有害物質を体外に排出しやすくする薬を使用することがあり、ビタミンB12の大量投与やカルニチン補充療法などが代表的な治療法で、特定の病型では顕著な効果が見られます。

また、肝臓や腎臓の保護を目的とした薬剤を併用することもあり、複合的なアプローチで全身状態をコントロールします。

薬剤名・補助療法期待される作用対応する病型
ビタミンB12製剤不足酵素を補う補因子として作用しやすいメチルマロン酸血症など
カルニチン製剤脂肪酸の代謝促進、毒性物質の排出プロピオン酸血症など
アンモニア除去剤高アンモニア血症の緩和さまざまなタイプ

緊急時の対応

急性期には代謝性アシドーシスや高アンモニア血症が一気に悪化する可能性があり、呼吸状態や意識レベルが低下している場合は、早急に医療機関での点滴や血液ろ過などを行い、体内の有害物質を除去することが大切です。

重症化すると集中治療が必要になることもあり、専門病院と連携して治療計画を立てる必要があります。

継続的なフォローアップ

有機酸代謝異常症は慢性的な管理が鍵で、治療を続けていても、成長やホルモンバランスの変化で代謝状況が変化するので、定期的な外来受診と検査が必要です。

血液や尿の検査値を参考に、薬の調整や食事療法の見直しを行うことで、日常生活の質をできるだけ保ちやすくなります。

治療期間

有機酸代謝異常症の治療期間は、一般的に長期にわたる傾向があり、発症早期から成人期を通じて継続的な管理が大切です。

一時的に症状が改善したとしても、酵素の欠損や活性不足という根本原因があるため、再び体調が不安定になるリスクがつきまといます。

急性期の対応期間

急性期には、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症などが短期間で深刻化するため、入院して集中的に治療を行うことが多いです。

治療期間は症状の重さや対応の早さにもよりますが、早期に発見し、点滴や薬物療法を行えば、数日~数週間で山を越えるケースもあります。

ただし、急性期を乗り越えてもその後の管理を怠ると再発リスクが高まるため、一時的な入院治療が終了したあとも、外来でのフォローが必要です。

急性期の治療手段入院の可能性症状改善までのめやす
点滴治療高い数日~1週間程度
血液ろ過重症例数日間で状態が安定する場合も

慢性期の管理

有機酸代謝異常症の多くは、慢性的に代謝バランスが不安定になりやすいため、症状が軽減しているときでも、定期的な検査と栄養管理が求められます。

食事療法と薬物療法を組み合わせながら、血液や尿の分析を行い、常に体内の有機酸やアンモニア濃度が安全域に保たれるようにコントロールします。

慢性期に意識したいポイント

  • 定期検査(血液・尿など)を受ける頻度の確保
  • 食事内容の見直しや調整
  • 新たな症状や行動面の変化の把握

成長期・思春期での再評価

成長期や思春期には、ホルモンバランスの変動や体格の急激な変化が起こり、体内のエネルギー需要が増大し、従来の治療計画では十分にコントロールしきれないケースもあります。

思春期に向かうころに再度遺伝子検査や酵素活性の測定を行って、必要ならば治療法や薬剤を見直すことが重要です。

思春期前後で見直しを行う際の主な検査や確認事項

再評価項目目的タイミング
酵素活性測定変化の有無確認小学校高学年~中学生頃
ホルモン検査思春期特有のホルモン変動必要に応じて随時
脳MRIなど神経合併症の有無学齢期~思春期

成人期以降のフォロー

成人期以降も、感染症やストレスによって急性悪化を起こす場合があり、社会生活や仕事の都合で検査や通院の頻度が減ってしまうと、知らず知らずのうちに状態が悪化するリスクがあります。

生活リズムや食事内容を安定させ、定期的に医療機関でチェックを受ける姿勢が大切で、特に妊娠・出産を考える場合は、リスクを踏まえた事前の対策や周産期の管理体制が重要です。

有機酸代謝異常症薬の副作用や治療のデメリットについて

治療に使われる薬には、体内での代謝をサポートするビタミンやアミノ酸補助製剤から、高アンモニア血症を軽減する薬剤まであり、副作用のリスクや治療のデメリットを理解しておくことも、より良い療養生活を送るために大切です。

薬剤による一般的な副作用

ビタミンB12製剤やカルニチン製剤などは比較的安全性が高いとされますが、人によっては胃腸障害や皮膚のかゆみ、アレルギー反応などが起こる場合があります。

高アンモニア血症を改善するための薬には、腸内の細菌バランスに影響を与えるものもあり、下痢や便秘など消化器症状が出ることがあります。

代表的な薬剤の副作用

薬剤の種類代表的な副作用注意点
ビタミンB12製剤発疹、かゆみアレルギー反応の可能性
カルニチン製剤胃部不快感空腹時の服用を避ける等
アンモニア除去薬腸内細菌の変化による下痢水分補給を十分に行う

食事制限のストレス

食事療法の制限は、患者本人だけでなく家族にとっても大きな負担になり、外食や学校給食、仕事での会食など、日常のさまざまなシーンで細やかな調整が必要になるため、ストレスを感じることが少なくありません。

摂取量を誤ると急激に体調が悪化する危険性もあるため、常に注意を払わなければならない点がデメリットです。

社会生活への制約

急性期に症状が再発した場合、通院や入院が必要になり、学業や仕事との両立が難しくなることがあり、有機酸代謝異常症を抱える方が安心して社会生活を営むためには、周囲の理解や協力も欠かせません。

治療の副作用や食事制限に対する周囲の配慮がないと、孤立感につながるケースがあります。

長期服用による身体的・経済的負担

薬を継続的に服用する場合、服薬管理が煩雑になったり、経済的な負担が大きくなったりする可能性があります。

また、薬物の相互作用も注意すべきポイントで、他の病気や症状で別の薬を飲む必要があるときには、医師にきちんと相談しながらバランスを取ることが必要です。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

検査費用の目安

検査種類保険適用後の費用目安特記事項
血液検査数百円~数千円項目数で変動
尿検査数百円~数千円有機酸分析はやや高め
遺伝子検査数千円~数万円病型確定のために重要

薬物療法の費用

薬剤ごとの費用目安

薬剤名保険適用後の月額目安用量・服用頻度
ビタミンB12製剤数百円~1千円1日1~2回
カルニチン製剤1千円~3千円1日2~3回
高アンモニア血症改善薬2千円~5千円症状に合わせて投与

食事療法にかかる費用

有機酸代謝異常症では低タンパク食や特殊ミルクなどが必要になる場合があります。特殊ミルクは保険適用の対象ですが、場合によっては医師の指示書が必要です。

低タンパク食の食材は通常の食材と比べて割高になることがありますが、保険ではカバーされない場合が多いです。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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