雨の日に膝が痛む「天気痛」の正体|低気圧が関節の腫れと痛みに与える影響

雨の日に膝が痛む「天気痛」の正体|低気圧が関節の腫れと痛みに与える影響

雨の日の膝痛は、低気圧による関節内圧の上昇と自律神経の乱れが重なって起こる生理的な現象です。気圧が下がると関節包が膨張し、滑膜が刺激を受けることで腫れや痛みが顕在化します。

この記事では、気圧が膝関節の構造に与える具体的な物理的変化から、痛みを増幅させる自律神経の働きまで詳しく解説します。

天候に左右されない体づくりに向けた知識を深め、雨の日の不安を解消しましょう。

目次

気圧の変化が膝の関節内部に引き起こす物理的変化

気圧が低下すると、体を取り囲む空気の圧力が弱まり、逆に体の内側から外へと押し広げようとする力が相対的に強まります。

こうした物理的なバランスの変動が、膝関節の内部環境に直接的な負荷をかけるのです。

関節を包む袋が膨らむ理由

膝関節は「関節包」という強固な袋に包まれており、その内部は外部の環境とは異なる一定の圧力(関節内圧)で維持されています。

低気圧の接近に伴い外気が薄くなると、この袋の内部が外側に向かってわずかに膨張を始めます。スナック菓子の袋を高い山の上へ持っていくとパンパンに膨らむ現象を想像すると分かりやすいでしょう。

この膨らみが膝の中で起きると、袋の表面に張り巡らされた痛みを感じる神経が、敏感に反応してしまいます。

正常な膝であればこの変化を柔軟に吸収できますが、変形が進んでいる膝では組織が硬いため、内部の膨張が強い痛みとして脳へ伝わります。

このわずかな体積の変化こそが、雨の日の不快感の源流と言えるでしょう。

内耳のセンサーが脳へ送る警告信号

人間の耳の奥にある内耳には、気圧の微細な変動をいち早く察知するためのセンサーが備わっています。

低気圧による急激な変化がこのセンサーを刺激すると、脳は体内の環境を一定に保とうと防衛反応を促します。

こうした反応が過剰になると、過去に傷めた部位や現在進行形で炎症がある膝関節に対して、痛みの信号を増幅して送り出します。

身体が天候を「外敵」と見なして警戒態勢に入るため、普段は気にならない程度の刺激が激痛に変わるのです。

つまり、膝そのものの物理的な変化だけでなく、情報の司令塔である脳が痛みのボリュームを上げてしまっている状態です。

耳のケアが天気痛に有効だとされる背景には、この内耳センサーを落ち着かせる狙いがあります。

膝関節の気圧応答に関する詳細

物理的な現象膝内部での変化自覚する症状
外気の低下関節包の膨張重だるさ、張り
内圧の上昇神経の物理圧迫疼くような痛み
組織の歪み受容体の活性化動き始めの激痛

ヒスタミンの分泌が促す炎症の活性化

気圧が急激に下がると、体内で「ヒスタミン」という物質の分泌量が増加するという性質があります。

ヒスタミンは血管を拡張させたり、神経を敏感にさせたりする働きを持っており、炎症反応を強める性質があります。

膝関節に慢性的な炎症を抱えている場合、この物質の影響を直接的に受け、滑膜の腫れや熱感が急激に悪化します。

雨が降り出す前から膝が熱っぽく感じるのは、低気圧によってあらかじめ炎症物質が準備され始めているためです。

この化学的な変化は、一度始まると気圧が安定するまで持続するケースが多いため、早めの対策が大切になります。

体内の化学物質が痛みをコントロールしているという視点は、天気痛を理解する上で重要です。

自律神経の乱れが痛みの感度を高める背景

天候の変化は私たちの意思とは無関係に、呼吸や血流を司る自律神経に大きな揺さぶりをかけます。

交感神経が優位になりすぎると、痛みを感じるセンサーの感度が上がり、小さな負担でも強い苦痛として認識してしまいます。

戦闘モードに入る交感神経の働き

低気圧の接近は、動物の本能として「危機的な状況」と捉えられ、交感神経が活性化して体を戦闘モードに切り替えます。

この状態では血管が細く収縮し、全身の筋肉がギュッと硬くなるため、膝への衝撃が分散されにくくなります。

こうした筋肉のこわばりは、関節内部への圧力をさらに高める結果を招き、痛みの原因を自ら作り出してしまいます。

心拍数も上がりやすくなり、身体が常にリラックスできない状態が続くため、疲労感も同時に蓄積していきます。

こうした神経の興奮を鎮める取り組みが、雨の日の膝痛を緩和するための近道となります。身体を温めたり、深呼吸を取り入れたりする行為が推奨されるのは、この神経系の興奮を抑えるためです。

回復を司る副交感神経の働きが低下

組織の修復や炎症の沈静化には、リラックスした状態で働く副交感神経の助けが欠かせません。天候が不安定な時期は、交感神経が休まる暇がないため、結果として膝の炎症を治める力が弱まってしまいます。

こうした修復力の低下は、膝に溜まった余分な水分や老廃物の排出を遅らせ、腫れを長引かせる要因となります。

睡眠不足が重なるとさらに自律神経のバランスは崩れ、痛みへの耐性はどんどん失われていくでしょう。

日頃から規則正しい生活を送り、自律神経の「振り幅」を小さく保つことが大切です。神経のバランスが安定しているほど、外気圧の変動に左右されにくいタフな膝を維持できます。

自律神経を安定させるための生活の知恵

  • 雨の日は、お気に入りの音楽を聴いて脳をリラックスさせる。
  • カフェインの摂取を控え、温かいハーブティーで心を落ち着かせる。
  • シャワーだけで済ませず、湯船に浸かって芯から身体を温める。

予期不安による脳内の痛み増幅

「雨が降るから今日は痛くなるはずだ」という強い思い込みや不安感は、脳内のペインマトリックスを刺激します。

この心理的な予期不安が、神経伝達物質の放出を左右し、実際に痛みを引き起こすきっかけになるのです。

こうした脳の仕組みが関与すると、物理的な膝の状態以上に苦痛が大きく感じられ、日常生活に支障をきたします。

痛みを恐れるあまり活動量を減らすと、さらに神経は敏感になり、痛みのループが強化されてしまいます。

天候と痛みの関係を客観的に把握し、「気圧のせいであって膝が悪化しているわけではない」と理解しましょう。正しい知識を持つと不安が和らぎ、脳が発する過剰な警報をキャンセルできるようになります。

雨の日に膝が腫れる原因となる滑膜の炎症

関節内を裏打ちする滑膜は、気圧の変化に対して非常に過敏な反応を見せる組織です。

低気圧の影響で滑膜が炎症を起こすと、膝を保護しようとして関節液が過剰に分泌され、膝全体が大きく腫れ上がります。

滑膜の反応性と関節液の産出

膝をスムーズに動かすための潤滑油を分泌する滑膜は、変形性膝関節症の方では既に慢性的な炎症を抱えている場合が多いです。

低気圧による物理的な刺激が加わると、この炎症が一時的に「再燃」し、滑膜が厚く肥厚します。

こうした肥厚が生じると、滑膜は関節内を保護するために急ピッチで潤滑液(水)を生産し始めます。

しかし、生産されるスピードに対して吸収が追いつかなくなることで、膝の中に水が溜まる状態が完成します。

溜まった水は関節包を内側から圧迫し、独特の「突っ張り感」や「曲げにくさ」を生じさせます。この圧迫感がさらなる痛みを誘発し、膝を動かすことへの恐怖心を植え付けてしまいます。

膝の腫れ具合と気圧の関係

滑膜の状態低気圧による影響改善へのアプローチ
軽度の慢性炎症じわじわとした重圧感適度な保温と安静
重度の慢性炎症急激な水の貯留専門医による処置
組織の硬化引っかかるような痛み筋肉の柔軟性向上

老廃物の排出停滞と組織のむくみ

滑膜が炎症を起こすと、血管の透過性が高まり、周辺の組織に余分な水分が漏れ出しやすくなります。

低気圧による血流悪化も相まって、炎症によって生じた老廃物が組織内に長時間留まる結果を招きます。

こうした状態は「膝のむくみ」として現れ、神経を周囲から圧迫して、鈍い疼きを絶え間なく発生させます。

湿度の高い雨の日は、皮膚からの発汗による水分調節もうまくいかないため、このむくみはさらに深刻化します。

膝周りがポチャポチャとした感触になる場合は、組織全体の水はけが悪くなっているサインです。軽いマッサージや足首の運動で、この滞った水分を循環させる工夫が雨の日の快適さを左右します。

炎症性サイトカインの活発化

低気圧の影響下では、滑膜から「炎症性サイトカイン」という化学物質が多く放出されることが分かっています。

この物質は痛みを感じさせるだけでなく、周囲の健康な軟骨をも傷つけてしまう性質を持っています。

こうした化学的な攻撃が繰り返されると、変形性膝関節症の進行が少しずつ早まっていく可能性があります。

単なる一時的な痛みと侮らず、炎症を長引かせないためのケアが長期的な視点で大切になります。

雨の日に膝が熱を持っていると感じたら、それ以上刺激を与えないよう注意深く過ごす必要があります。滑膜の叫びに耳を傾け、適切な休息を与えることが、将来の膝を守ることへと直結します。

気象変化による血行不良と膝の痛みの相関関係

天候の崩れに伴う気温の低下は、血管を一気に収縮させ、膝周辺の筋肉への酸素供給を極端に減少させます。

酸欠状態に陥った組織は、悲鳴を上げるように「痛み物質」を放出し、これが天候による痛みを深刻化させます。

血管収縮が招く組織の酸欠状態

外気が冷え込むと、体は体温を逃がさないように表面の血管を強く閉じます。膝のような皮膚が薄く、筋肉が少ない部位は特にこの冷えの影響を受けやすく、血流が容易に滞ってしまいます。

こうした血流不全が起きると、組織に必要な酸素や栄養が届かなくなり、代謝が正常に行われなくなります。

細胞がエネルギー不足に陥るため、痛みを感じる神経が異常な放電を始め、ズキズキとした痛みを感じさせます。

温湿布やカイロで膝を包むと痛みが和らぐのは、人為的に血管を広げて酸欠状態を解消しているためです。常に膝を温かい血液で満たしておくことが、天気痛を克服するための最もシンプルかつ強力な対策です。

痛み物質ブラジキニンの蓄積

血流が滞った箇所では、ブラジキニンなどの強力な痛み物質が発生し、その場に留まり続けます。本来であれば勢いのある血流によって洗い流されるはずのこれらが、血管の収縮によって滞留してしまうのです。

こうした物質の蓄積は、周辺の痛覚受容体を常に刺激し続け、触れるだけでも痛いといった過敏な状態を作り出します。

雨の日の膝痛がしつこく続くのは、この「洗い流されない汚れ」のような物質が原因の一つです。

適度な水分補給を行い、血液の粘度を下げておく工夫も、これらの物質をスムーズに排出するために重要です。内側からの巡りを整える意識を持つと、気圧変動に強い身体へと変わっていけます。

血行を促進する雨の日の習慣

  • 38度から40度のぬるめのお湯で、20分ほどゆっくり全身を温める。
  • 膝を締め付けすぎない、伸縮性の高いサポーターで血流を遮断しない。
  • 椅子に座ったまま、かかとを上下させて「ふくらはぎポンプ」を動かす。

深部体温の低下と痛みの関係

表面的な冷えだけでなく、身体の深部の温度が下がることも膝痛の悪化に大きな影響を及ぼします。

深部体温が下がると、酵素の働きが鈍くなり、関節を支える組織の柔軟性が著しく損なわれてしまいます。

こうした状態では、膝を動かそうとした瞬間に靭帯や腱がスムーズに滑らず、摩擦によって強い痛みが走ります。

冷たい飲み物や食べ物を控えるなど、雨の日は特に「内臓から温める」意識を持つことが膝のケアにも繋がります。

冬場の雨天などは特にこの深部体温の低下が著しいため、徹底した防寒対策が必要になります。全身のコンディションが整ってこそ、部分的な膝の痛みも軽減されるという全体観を持って過ごしましょう。

天気痛を和らげるための日常生活での対策

天気痛の症状を最小限に抑えるためには、事前の準備と、気圧が下がった後の適切なセルフケアが重要です。

膝を直接労わることと、気圧の変化を察知する感覚器を落ち着かせることの両面から取り組みましょう。

耳周りのマッサージでセンサーをリセット

内耳にある気圧センサーを落ち着かせるために、耳の血流を良くするマッサージは非常に大きな効果を発揮します。

耳たぶを優しく掴み、横へ引いたり、円を描くように回したりすることを、1日数回繰り返してください。内耳周辺のリンパの流れをスムーズにし、脳への過剰な警告信号を防ぐ手助けとなります。

低気圧が接近する数時間前から定期的に行うと、痛みが出る前の「予防」としての役割も果たしてくれます。

また、耳の後ろにある骨の出っ張りの下あたりを、じんわりと指で押してほぐすのも自律神経を整えるのに有効です。道具を使わず、いつでもどこでも行えるため、雨の日の習慣として取り入れてみてください。

室内環境の調整による物理的ストレスの軽減

外の気圧は変えられませんが、家の中の温度と湿度を一定に保つと、身体へのストレスを軽減できます。

雨の日は除湿機を活用して湿度を50パーセント前後に保ち、膝からの水分蒸散がスムーズに行われる環境を作りましょう。こうした環境設定が、関節周辺のむくみを防ぎ、不快な疼きを未然に防いでくれます。

エアコンの風が直接膝に当たらないように配置を工夫し、常に温かく乾いた状態を維持するように意識してください。

足元を冷やさないためのラグマットの使用や、保温性の高いルームシューズの活用も非常に大切です。住環境を整える取り組みは、天気痛に負けない心強い味方を手に入れることと同義になります。

膝を労わるための具体的な工夫

ケアの項目具体的な方法期待できる効果
物理的保護保温サポーターの着用血管収縮と組織膨張の抑制
血流の改善足首のパタパタ運動痛み物質の排出促進
神経の鎮静アロマや深呼吸交感神経の過興奮を抑える

食事を通じた内側からの炎症対策

天気痛に悩まされる方は、日頃から炎症を抑える働きのある栄養素を積極的に摂取することをおすすめします。

オメガ3脂肪酸を多く含む青魚や、抗酸化作用の強い野菜、生姜やシナモンなどの体を温める食材が代表的です。

こうした食材を日常的に取り入れると、低気圧が来た際の炎症反応を穏やかに抑える土台が出来上がります。

逆に、砂糖を多く含む甘いものやアルコールの過剰摂取は、体内の炎症を助長し、痛みを強くさせる恐れがあります。

雨の日はつい活動量が減り、食事内容も偏りがちですが、そんな時こそ身体を労わるメニューを選んでください。

「食べ物で膝を修復している」という意識を持つことが、長期的な改善に向けた大きな力になります。

関節軟骨の状態が天候の影響を左右する理由

膝のクッションである関節軟骨の状態が良いほど、外気圧の変化によるストレスを受け流す力が強くなります。

軟骨が減り、骨が露出しかけている状態では、気圧変動に伴う物理的な歪みが骨に直接伝わり、激しい痛みとなります。

軟骨の含水率と弾力性の維持

健康な軟骨は、その質量の約7割から8割が水分であり、この水が移動することで衝撃を吸収しています。

低気圧下ではこの軟骨内の水分の動きに微細な変化が生じ、一時的に弾力性が低下してしまう場合があります。

こうした変化が生じると、歩くたびに関節内部にかかる荷重が一点に集中しやすくなり、痛みの原因となります。

日頃から適度な運動と栄養摂取を心がけ、軟骨の質を高く保つことが、究極の天気痛対策となるのです。

軟骨の減少は不可逆的なものですが、残された軟骨をいかに潤いのある状態に保つかが鍵となります。

ヒアルロン酸の注射やサプリメントの活用も、こうした軟骨の「質」を補うための重要な選択肢となり得ます。

軟骨下骨への物理的な負荷伝達

軟骨が摩耗して薄くなると、そのすぐ下にある軟骨下骨という骨に、外圧の変化がダイレクトに伝わるようになります。

この骨には神経や血管が非常に豊富に通っているため、低気圧による内圧上昇を「骨への打撃」のように感じ取ります。

こうした骨の反応が起きると、安らげるはずの就寝中にも疼きが止まらず、精神的な疲弊を招くケースも少なくありません。

軟骨というバリアが薄くなっている自覚を持ち、雨の日は特に膝への衝撃を避ける生活動作が求められます。

重たい荷物を持たない、階段では手すりを使うといった基本的な配慮が、骨へのストレスを減らすことに直結します。

軟骨を大切に扱うことは、痛みを感じる神経への「バリア」を強化することそのものと言えるでしょう。

軟骨の状態による痛み方の違い

進行段階軟骨の厚み天気痛の傾向
初期ほぼ正常〜微減雨の降り始めに違和感
中期半分以下に減少天候崩れとともにズキズキ痛む
末期ほぼ消失・骨露出気圧変化で寝込むほどの激痛

関節液の粘度と潤滑機能の変化

低気圧の影響は、軟骨だけでなく、それらを浸している関節液の性質にも及びます。気圧が不安定になると、関節液の粘り気がわずかに変化し、潤滑剤としてのパフォーマンスが低下する場合があるのです。

こうした滑りの悪化は、膝を動かした際の摩擦を増大させ、膝の中で「パキパキ」といった異音や引っ掛かりを生じさせます。

質の良い関節液を保つためには、十分な水分補給と、関節を適切な範囲で動かし続ける刺激が必要です。

「雨だから動かさない」のではなく、室内で椅子に座り、膝に負担をかけない形でゆっくりと動かすことが推奨されます。

液を巡らせると潤滑機能を維持し、気圧変動によるきしみ感を最小限に留められるからです。

雨の日の膝痛を放置するリスクと長期的な影響

「天気が回復すれば治まるから」と、その場しのぎで痛みをやり過ごすことは、膝の寿命を縮めることになりかねません。

繰り返し起こる天気痛は、関節内部で炎症の火種が常にくすぶっているサインであり、早急な根本対策が必要です。

痛みによる活動量低下が招く筋力萎縮

雨の日に痛みが出るのを恐れて外出や運動を控えることが増えると、膝を支える筋肉はみるみるうちに衰えていきます。

膝を安定させている大腿四頭筋などの力が弱まると、膝関節への負担は晴れの日であっても増大してしまいます。

こうした「不活動による筋力萎縮」は、膝の変形をさらに加速させ、結果として次の雨の日にはもっと強い痛みを感じるようになります。

悪循環に陥る前に、痛みと共存しながらも身体を動かす工夫を見つけることが、将来の歩行機能を左右します。

筋力の低下は膝だけでなく、腰や股関節へも負担を波及させ、全身のバランスを崩すきっかけになります。天気痛を「単なる季節の悩み」と片付けず、自分の身体を見直す重要なアラートとして受け止めましょう。

脳の可塑性変化による慢性痛の定着

強い痛みを何度も繰り返し感じていると、脳の神経回路がその痛みを記憶し、常に「痛い」と感じるように回路を組み替えてしまいます。

この状態を「痛みの感作」と呼び、たとえ膝の炎症が治まっても、脳が勝手に痛みを作り出すようになってしまいます。

こうした事態を避けるためには、痛みが強い時期には我慢しすぎず、適切な鎮痛処置やケアを行うことが重要です。

脳に「痛みはコントロールできるものである」と覚え込ませることが、慢性的な苦痛からの脱却に繋がります。

長期にわたる天気痛は、精神的なストレスや落ち込みをも引き起こし、生活の質(QOL)を著しく低下させます。

心の健康を守るためにも、身体的な痛みに対して早期から積極的な姿勢で向き合うことが大切です。

放置した場合の経時的リスク

経過期間予想される状態将来への影響
1年以内痛みへの過敏反応特定の天候での外出困難
3年以内著しい筋力低下階段の上り下りが困難
5年以上関節変形の固定化杖の使用や介護が必要な状態

関節寿命を縮める炎症の繰り返し

雨の日の疼きとともに起きている微細な炎症は、軟骨を溶かす酵素をじわじわと放出させ続けます。このダメージは目に見えませんが、確実に膝の構造を破壊し、関節の寿命を確実に削り取っていきます。

こうした「微小な炎症の積み重ね」を食い止めることが、10年後、20年後も自分の足で歩き続けるための最優先事項です。

天気痛が起きるという事実は、あなたの膝が休息や適切な治療、生活習慣の改善を求めているという証拠です。

今ある痛みを当たり前だと思わず、専門のアドバイスを受けたり、生活環境を改善したりしてください。自分自身の身体を大切に扱う決断が、自由で健やかな未来の歩みを作り上げることになるでしょう。

Q&A

雨が降り始めてから膝が痛み出した時、即効性のある対処法はありますか?

まずは膝の周囲をしっかりと温めるのが最も推奨される対処法です。使い捨てカイロや蒸しタオル、厚手の膝掛けなどを使って関節を保護し、血流を改善させると痛み物質の滞留を防げます。

同時に、耳を横に引っ張るマッサージや深呼吸を行い、過敏になっている自律神経をリラックスさせてください。

これらを行うだけで、脳に伝わる痛みの信号が和らぎ、急な不快感をやり過ごせる可能性が高まります。

天気痛に悩む場合、雨の日は歩かないほうが膝のためでしょうか?

激痛で動けない場合を除き、室内で少しずつでも身体を動かすほうが、結果として膝の健康にプラスに働きます。

全く動かさないでいると、関節周辺の血流はさらに悪化し、組織のこわばりが強まってしまうためです。

椅子に座ったまま脚を交互に持ち上げる、足首をゆっくり回すといった負担の少ない動作を心がけてください。

無理のない範囲で筋肉を動かすことが天然のポンプとなり、膝のむくみや腫れの早期解消を助けてくれます。

サポーターは痛みが引いた後も、雨の日には着け続けたほうが良いですか?

痛みがない状態であっても、雨が降っている最中や低気圧が停滞している間は、着用を続けることをおすすめします。

サポーターによる適切な圧迫は、気圧変化によって関節包が膨らもうとする力を物理的に抑え込む効果があるためです。

また、膝周辺を保温し続けると急な血管収縮を防ぎ、痛みの再発を予防する役割も果たしてくれます。

「守られている」という安心感が脳の不安を鎮め、痛みへの過敏さを抑えるという心理的なメリットも期待できます。

長年続いている雨の日の膝痛でも、今から対策を始めれば改善しますか?

どれほど長い期間の悩みであっても、適切な知識とケアを取り入れると症状を和らげることは十分に可能です。

生活習慣を整えて自律神経の安定を図り、膝を支える筋力を少しずつ補うと、気圧に左右されにくい体質へと変わっていけます。

最新の膝関節に関する知見に基づいたセルフケアを継続すれば、天気痛の頻度や強さは着実に変化していきます。

「もう遅い」と諦めず、今日からできる小さな工夫を積み重ねていくことが、健やかな歩みを取り戻す鍵となるでしょう。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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