中期・末期の症状– category –

症状と進行ステージ中期・末期の症状

変形性膝関節症が中期から末期へ進行すると、膝の痛みは動作時だけでなく、休息中や就寝時にまで広がりを見せます。

軟骨のクッションが失われ、骨同士が直接ぶつかり合うことで、日常生活のあらゆる場面に困難が生じます。

本記事では、激しい痛みや膝の変形、歩行の乱れといった重症化のサインを詳しく整理します。

放置すると歩行困難を招く恐れがあるため、症状の変化を正しく把握し、適切な対策を講じることが重要です。

変形性膝関節症の中期症状とは?階段の上り下りが困難になる痛みの変化

中期症状は、初期に感じていた違和感が明確な「痛み」へと変わり、日常生活の動作に直接的な支障をきたし始める段階です。

軟骨のすり減りが進行し、関節内部の滑膜が強い炎症を起こすため、膝が熱を持ったり腫れたりする回数も増えます。

階段での痛みが増す理由

階段昇降、特に下りの際、膝には体重の約7倍の負荷がかかると言われています。中期の膝は軟骨が薄くなっているため、この巨大な衝撃を吸収しきれず、鋭い痛みが生じます。

この段階から、一段ずつ両足を揃えて上り下りするような動きが目立つようになります。

動作と膝への負担度

日常動作膝への荷重比率中期の症状変化
平地歩行体重の約2〜3倍長時間歩くと痛みが出る
階段の下り体重の約7倍激痛で手すりが必要
椅子から起立体重の約5倍膝が固まり動き出しが重い

膝の曲げ伸ばしに制限が出る理由

関節内部の炎症が慢性化すると、関節を包む袋である「関節包」が厚く硬くなります。その影響で、正座ができなくなったり、膝が真っ直ぐに伸びなくなったりする「可動域制限」が始まります。

こうした変化はさらなる筋力低下を招き、痛みが増強する悪循環の入り口となります。

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変形性膝関節症の中期症状とは?階段の上り下りが困難になる痛みの変化

変形性膝関節症の末期症状における「安静時痛」|じっとしていても痛い原因

末期に移行すると、膝を動かしていない時でもジンジン、ズキズキとした痛みが続く「安静時痛」が出現します。

これは、膝を保護する軟骨がほぼ完全に失われ、神経が密集している「骨」の表面がむき出しになることが主な要因です。

骨同士の摩擦による刺激

クッションがない状態で骨同士が触れ合うと、骨膜にある神経が絶えず刺激を受けます。たとえ座って休んでいても、骨の変形や内部の炎症が引かない限り、痛みは24時間続きます。

こうした持続的な不快感は、患者さんの活動意欲を低下させる大きな要因となります。

安静時痛を悪化させる構造的変化

  • 軟骨消失による骨膜への直接刺激
  • 骨にトゲが生じる骨棘の周囲組織圧迫
  • 関節内の気圧や血流変化による内圧上昇
  • 滑膜が分厚くなることによる血行不良

痛覚過敏と中枢感作

長い期間、強い痛みにさらされ続けると、脳や脊髄の神経系が過敏に反応するようになります。その結果として、本来なら痛みを感じない程度のわずかな刺激でも、脳が「激痛」と判断してしまう場合があります。

末期の安静時痛は、膝の組織的な問題だけでなく、神経系の変化も絡み合っている点が複雑です。

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変形性膝関節症の末期症状における「安静時痛」|じっとしていても痛い原因

寝ている時も膝が痛む「夜間痛」の原因|睡眠を妨げる炎症と骨内圧の上昇

夜間痛は、膝の疾患が重症化していることを示す代表的なサインであり、睡眠障害を併発するリスクが高い症状です。

静かに横になっているはずなのに膝が疼く背景には、昼間とは異なる身体のメカニズムが働いています。

骨内圧の上昇と血流の関係

就寝時は活動時よりも血流が緩やかになり、骨の内部にある静脈が鬱滞(うったい)しやすくなります。末期の膝では骨が硬化し、内圧を逃がすスペースが少ないため、骨内圧が異常に高まります。

内部から神経を圧迫する力が強まることが、深夜に膝がズキズキと痛む大きな理由と考えられます。

夜間痛の要因とその影響

発生要因身体の状態生活への悪影響
炎症の蓄積日中の活動で滑膜が熱を持つ入眠困難や中途覚醒
骨内圧の上昇静脈血の滞留による内圧増疼くような重苦しい痛み
寝返りの刺激骨の接触による瞬間的衝撃目が覚めるほどの鋭い痛み

精神的ストレスへの波及

夜間に十分な休息が取れないと、疲労が回復せず、日中の痛みの感じ方もさらに鋭敏になります。

痛みの恐怖から眠ること自体に不安を覚えるようになり、うつ状態や自律神経の乱れを招く恐れもあります。

夜間痛のコントロールは、膝の保護だけでなく、心身の健康を維持するためにも極めて大切です。

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寝ている時も膝が痛む「夜間痛」の原因|睡眠を妨げる炎症と骨内圧の上昇

変形性膝関節症でO脚変形が進行する理由|見た目の変化と脚長差の影響

末期に近づくにつれ、膝が外側に突き出すO脚(内反変形)が顕著になります。日本人の骨格的特徴として、膝の内側に体重がかかりやすいため、内側の軟骨が優先的に破壊されるのが原因です。

この変形は、歩行機能だけでなく全身のバランスを根底から崩します。

関節の隙間がなくなる恐怖

内側の軟骨が完全に削れると、その分だけ物理的に足が短くなります。これが「脚長差(きゃくちょうさ)」と呼ばれる左右の脚の長さの違いです。

片側の膝だけが変形した場合、歩くたびに身体が上下に揺れ、骨盤や背骨の歪みを引き起こす要因となります。

その結果として、膝の痛みだけでなく、坐骨神経痛のような腰のトラブルに繋がるケースも珍しくありません。

O脚変形を加速させる要素

  • 内側広筋の筋力低下による支持力喪失
  • 変形した膝をかばう誤った歩き方
  • 体重増加による一点集中的な過重負荷
  • 靱帯の緩みによる関節のグラつき

早期対策による変形の抑制

一度大きく変形した骨を元の形に戻すのは困難ですが、進行を遅らせることは可能です。靴にインソールを入れたり、外側の筋肉を鍛えると、内側にかかる圧力を分散できます。

末期であっても、これ以上の脚長差を作らないためのケアが、将来の歩行能力を左右します。

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変形性膝関節症でO脚変形が進行する理由|見た目の変化と脚長差の影響

末期の変形性膝関節症による歩行障害|横揺れする「デュシェンヌ歩行」の特徴

重度の痛みや変形がある方は、意識せずとも「痛くない歩き方」を身体が選択してしまいます。その典型例がデュシェンヌ歩行です。

これは、上半身を左右に大きく振りながら歩く動作を指し、歩行効率を著しく低下させるリスクを孕んでいます。

身体を揺らして膝を保護するメカニズム

膝の内側が痛い時、上半身をあえて痛い側(患側)へ傾けると、膝の重心が外側に移動し、内側の痛みを一時的に緩和できます。

一見すると理にかなった防御反応ですが、この歩き方は「中殿筋」などの股関節周囲の筋肉に過度な負担を強います。

その結果として、膝が痛いだけでなく、お尻の横や腰まで痛むという連鎖反応が起きます。

歩行障害のパターンとリスク

異常歩行主な動作の特徴二次的な合併症
デュシェンヌ歩行上半身を患側に大きく傾ける股関節痛・筋疲労の増大
トレンデレンブルグ支えている側と逆の骨盤が下がる腰椎の歪み・慢性腰痛
分回し歩行足を外側から回すように出す足首や足の指の変形

歩行困難が招くフレイルへの道

こうした不自然な歩行はエネルギーの消耗が激しく、外出自体を億劫にさせます。歩く機会が減ると、全身の筋力や認知機能が低下する「フレイル(虚弱)」の状態に陥りやすくなります。

膝の歩行障害を早期に改善することは、単なる痛みの除去以上の意味を持っています。

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末期の変形性膝関節症による歩行障害|横揺れする「デュシェンヌ歩行」の特徴

膝が痛くて眠れない時の対処法|夜間痛を緩和する寝る時の姿勢とクッションの位置

夜間の激しい痛みに対して、薬以外の手段で最も有効なのが「ポジショニング」です。

膝の関節内部にゆとりを作り、組織の緊張を緩めることで、痛みの信号を抑制する環境を整えます。ほんの数センチの角度調整が、快適な睡眠を左右します。

クッションを使った角度調整のコツ

多くの患者様が「足を伸ばして寝る」のが普通だと考えていますが、膝の疾患がある場合、完全進展(真っ直ぐ伸ばす)は関節包を緊張させ、痛みを強める原因になります。

膝を軽く曲げた状態が、関節内の圧力が最も低くなる姿勢です。仰向けなら膝裏に、横向きなら両足の間に、自分に合った高さのクッションを配置しましょう。

夜間痛緩和のためのポジショニング術

  • 仰向け:膝裏にバスタオルを丸めて入れ、10度ほど曲げる
  • 横向き:抱き枕やクッションを挟み、膝同士の接触を防ぐ
  • 足首の固定:足首が左右に倒れないよう枕で土手を合わせる
  • 温度管理:夏場でも冷房の風が膝に直接当たらない工夫をする

入浴による温熱効果の活用

炎症が落ち着いている慢性的な末期症状の場合、寝る前に関節を温めるのも効果的です。血流が改善し、骨内圧の急激な変化を抑える助けとなります。

ただし、膝が赤く腫れて熱を持っている急性期には逆効果になるため、自身の膝の状態をよく観察してから行うことが重要です。

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膝が痛くて眠れない時の対処法|夜間痛を緩和する寝る時の姿勢とクッションの位置

よくある質問

末期の痛みは手術をしない限り一生続きますか?

保存療法(リハビリや薬物療法)によって、痛みを「生活に支障がないレベル」まで抑えられる可能性はあります。

末期=即手術というわけではなく、周囲の筋肉を鍛えて膝を安定させると、痛みが劇的に改善するケースも多いです。

まずは自身の生活スタイルに合わせた治療方針を医師と相談してください。

膝の変形が進むと腰まで曲がってくるのは本当ですか?

本当です。膝がO脚になったり曲がったまま伸びなくなったりすると、上半身はそのバランスを取るために前かがみになります。

この姿勢を続けると、骨盤が後退し、腰椎のカーブが失われて腰が曲がる原因となります。膝のケアは、背筋の伸びた健康的な姿勢を保つためにも不可欠な要素です。

寝返りを打つたびに膝が痛くて目が覚めるのですが。

寝返り時の痛みは、膝の安定性が失われ、骨同士が異常な動きをしてぶつかるために発生します。

クッションで足をサポートする以外に、就寝用の軽いサポーターを使用すると関節の揺れを抑え、痛みを軽減できる場合があります。

また、マットレスの硬さが自分に合っているかも一度確認してみてください。

運動をすると逆に膝を壊してしまいそうで怖いです。

過度なランニングなどは避けるべきですが、全く動かさないと関節が固まり、さらに痛みが悪化します。

末期の方にお勧めなのは、水中ウォーキングや座ったままでの足上げ運動など、体重負荷をかけずに筋肉を刺激する方法です。

専門家による適切なプログラムであれば、運動は膝の保護に大きく貢献します。

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