膝のジャリジャリ音は消えるのか?クレピタス(軋轢音)と変形進行度の関係

膝のジャリジャリ音は消えるのか?クレピタス(軋轢音)と変形進行度の関係

膝から聞こえるジャリジャリという音は、軟骨がすり減り、骨の表面が不整になっているサインです。

こうした音は完全に消すことが難しい場合もありますが、適切な運動や生活習慣の改善で軽減できます。

放置すると変形が進行して痛みが強くなるため、音の種類から現状を把握し、早めに対策を行いましょう。

目次

膝のジャリジャリ音の正体と変形性膝関節症への影響

膝の不快なジャリジャリ音は、関節内部の軟骨が摩耗し、組織同士の摩擦抵抗が高まっている状態を指します。

この現象を放置し続けると、クッション機能が失われた骨同士が直接ぶつかり合い、変形を加速させる一因となります。

軟骨の磨り減りによる摩擦音の仕組み

膝関節を保護している軟骨は、健康な状態であれば鏡面のように滑らかで、関節液によって摩擦なく動きます。

その一方で、加齢や持続的な負荷によって軟骨の表面が荒れると、繊維状にささくれ立った組織が形成されます。

曲げ伸ばしのたびにこの不規則な突起が触れ合うことで、微細な振動が発生し、ジャリジャリという音に変わります。

関節内の組織が干渉して起こる音

異音の原因は軟骨の表面だけではなく、関節を包む滑膜の肥厚や、傷んだ半月板の断片が関係する場合もあります。

変形が進む過程で「骨棘」と呼ばれるトゲ状の突起が生まれると、それが周囲の靭帯を物理的に刺激します。

こうした組織間の干渉が繰り返されるため、炎症物質が放出され、慢性的な膝の腫れや不快感を引き起こします。

膝から聞こえる代表的な音の種類

音の主観主な原因危険度の目安
パキッガスの気泡が弾ける低い(生理的)
ジャリジャリ軟骨表面の不整中(初期変形)
ゴリッ骨同士の接触高い(進行期)

痛みの有無による将来的なリスクの変化

音が鳴るだけで痛みを感じない段階は、まだ神経が豊富な骨膜まで破壊が及んでいない状態だと推測できます。

しかし、この段階で対策を怠ると、軟骨の摩耗スピードが上がり、数年後には歩行困難な痛みへ繋がります。

音が鳴り始めた時点を重要な警告灯と捉え、関節への負担を減らす動作を意識することが、将来を守る第一歩です。

クレピタスの音の種類と関節の状態を見極める基準

クレピタス(軋轢音)の質を確認することは、現在の膝関節がどの程度ダメージを受けているかを知る有力な手がかりです。

音の高さや響き方は、関節内の潤滑油である滑液の状態や、軟骨の下にある骨の露出具合を忠実に反映しています。

乾いた高い音と鈍く響く音の違い

砂を踏むような乾いた高い音がする場合、関節内の水分が不足し、組織が乾燥して柔軟性を失っていると考えられます。

この状態は初期の変形性膝関節症によく見られ、適切な水分補給や血流改善によって音が和らぐ可能性があります。

対照的に、低く重く響くような音は、骨の変形が構造的に固まってしまい、大きな負荷が掛かっているサインです。

日常生活で注意すべき音の変化

昨日よりも音が大きくなった、あるいは鳴る時間が長くなったと感じるなら、関節内での炎症が強まっています。

こうした変化が生じているときは、無理な運動を避け、患部を安静に保ちながら専門的な診断を受けるべきです。

特に、朝の動き出しだけ音が鳴り、日中に消える場合は、関節液の循環が停滞している可能性が高いと言えます。

感触から探る内部の状態

  • 膝に手を当てた時のザラザラ感は軟骨劣化の疑い
  • 曲げ伸ばしでの引っ掛かりは半月板損傷の可能性
  • 特定の位置で鳴る音は骨棘と組織の干渉が推測される

階段や屈伸時における音の重要性

平坦な道を歩くときよりも、階段の昇り降りで顕著に音が鳴る場合は、膝蓋大腿関節への圧力が過剰です。

お皿の骨と太ももの骨の隙間が狭くなっているため、放置するとお皿の裏側の軟骨が急激に薄くなってしまいます。

特定の角度でだけ不快な音が鳴る現象は、その角度において集中して負荷が掛かっている構造的弱点を示しています。

変形進行度とクレピタスの発生頻度の深い関係

変形性膝関節症の進行度を表す国際的な分類と、膝から聞こえる音のパターンには、科学的な相関性が認められます。

初期の段階では音がランダムに発生しますが、末期に近づくほど音は避けられない恒常的な症状へと変化します。

初期段階でのかすかな音の兆候

グレード1の段階では、レントゲン画像では異常なしと判断されるケースも多いですが、音は先に現れる方もいます。

たまに「シャリッ」と聞こえる程度であっても、それは軟骨の代謝が落ち、表面が硬化し始めている証拠です。

この時期に筋肉の柔軟性を取り戻すと、将来的な変形の進行を食い止める確率が大幅に高まります。

進行期に見られる恒常的な軋轢音

グレード2から3に移行すると、骨の隙間が目に見えて狭くなり、動かすたびに必ずと言っていいほど音が鳴ります。

こうした状態では、関節包の柔軟性も低下しており、音と一緒に膝が重だるいような感覚が長時間続きます。

周囲の人にも聞こえるほどの大きなジャリジャリ音は、軟骨がかなり薄くなり、衝撃吸収力が失われている合図です。

KL分類に基づく音と画像の関係

進行度典型的な症状音の質
初期立ち上がり時の違和感軽い擦れ音
中期歩行中の重い痛み鮮明な軋轢音
末期安静時の痛み・変形激しい破壊音

末期における破壊的な音のメカニズム

末期症状では、軟骨がほぼ消失して硬い骨同士が直接こすれ合うため、石を砕くような音が聞こえる場合もあります。

この変化に伴い、関節の可動域が著しく制限され、膝を真っ直ぐに伸ばすことすら困難な状況に陥ります。

こうした深刻な異音は、骨の表面にある神経を直接刺激するため、音と連動して鋭い痛みが走るのが特徴です。

ジャリジャリ音を消失・軽減させるための医学的アプローチ

膝の不快な音を鎮めるためには、関節内の摩擦係数を下げ、骨にかかる荷重を分散させる多角的な治療が必要です。

完全に音を消すのが難しいケースでも、摩擦によるダメージを最小限に抑えると、膝の寿命を大幅に延ばせます。

保存療法による関節環境の整備

まずは関節内の炎症を抑えることが優先され、これによって滑膜の腫れが引き、関節内の物理的な余裕が生まれます。

こうした処置により、組織同士の接触が緩やかになり、結果として耳障りな音が軽減する効果が見込めます。

冷えによって血流が悪くなると関節液の粘りが増して音が強まるため、温熱療法で循環を促すのも有益です。

ヒアルロン酸注射による潤滑補助

関節内に高濃度のヒアルロン酸を注入すると、すり減った軟骨の代わりにクッションの役割を果たします。

潤滑油としての機能が回復すると、表面が荒れた軟骨同士が滑らかに動くようになり、ジャリジャリ音が減少します。

この治療は継続すると関節内の「サビ」を防ぎ、軟骨の摩耗スピードを遅らせる重要な役割を担っています。

改善に向けたリハビリの指針

  • 関節を圧迫しない軽微な振り子運動
  • 太もも前面の筋肉を意識した収縮訓練
  • 股関節の柔軟性を高めて膝への衝撃を逃す

筋肉による衝撃吸収機能の向上

膝を支える大腿四頭筋を鍛える取り組みは、骨同士の衝突を物理的に防ぐ最強のガードレールを手に入れるようなものです。

筋肉がしっかり機能することで関節のわずかなズレが修正され、摩擦が起きにくい適切な軌道で膝が動くようになります。

その結果として、動き出しの音や違和感が軽減し、安定した歩行を取り戻すことが可能になります。

日常のセルフケアで音の発生を抑える具体的な方法

専門的な治療と並行して、日々の何気ない動作を見直すことが、膝の音を静かに保つためには欠かせません。

関節に負担をかけない「使い方のコツ」を身につけるだけで、軟骨のさらなる劣化を食い止められます。

体重管理による物理的な恩恵

体重が1キロ増えるだけで、歩行時の膝にはその数倍の負担が掛かり、軟骨への圧迫力として跳ね返ってきます。

適正な体重を維持することは、関節内部の圧力を下げ、組織同士が激しくこすれ合う機会を減らすことに直結します。

こうした取り組みは、どのような高度な治療よりも長期的に見て、膝の異音を抑えるための土台となります。

靴選びとインソールによる衝撃分散

地面からの突き上げを吸収できない硬い靴は、膝関節内の骨棘や不整な軟骨に直接的なダメージを与えます。

クッション性の高い靴や、土踏まずを支えるインソールを使用すると、歩行時の振動を外部で遮断できます。

この工夫により、歩くたびに響いていた不快な音が和らぎ、関節内の微細な損傷の蓄積を回避できるようになります。

日常で気をつけたい生活習慣

項目良い習慣避けるべき習慣
座り方椅子での生活床への正座・横座り
移動エレベーターの活用重い荷物を持っての階段
運動水中ウォーキング固いアスファルトでの走行

ストレッチで関節の遊びを作る

膝周囲の筋肉が凝り固まると、関節全体が常に強い力で締め付けられ、音が発生しやすい環境が整ってしまいます。

お風呂上がりなどに膝裏をゆっくり伸ばすストレッチを行って、関節の「隙間」を確保する感覚を養いましょう。

筋肉の強張りが取れると関節液が全体に広がりやすくなり、動作時の引っ掛かり感や異音がスムーズに解消されます。

手術療法を選択した場合の音の予後と改善度

保存療法では十分な効果が得られない重度のケースでは、外科的な処置によって音の根本原因を取り去ることができます。

現代の手術技術は飛躍的に向上しており、長年悩まされたジャリジャリ音から解放される患者さんは少なくありません。

人工関節置換術による劇的な変化

人工膝関節置換術(TKA)は、損傷した軟骨と骨の表面を金属製のパーツに置き換えるため、摩擦音は物理的に消失します。

術後、患者さんの多くが「膝の中が静かになった」と実感し、精神的なストレスからも解放されるのが一般的です。

この変化に付随して、骨同士が削れ合う不快な振動もなくなるため、歩行時の安心感が格段に向上します。

骨切り術による自律的な修復の促進

自分の骨を温存する骨切り術では、荷重の軸をずらして、傷んだ部分にかかっていた負担を健康な側へ移します。

すると、圧迫から解放された部位の滑膜炎が落ち着き、激しかったジャリジャリ音が次第に沈静化していきます。

自分の組織を残したまま音を軽減できるため、違和感の少ない自然な感覚を維持しやすいという利点があります。

術後の予後を左右する要素

  • 癒着を防ぐための術後早期からのリハビリ
  • 人工関節周囲の筋バランスを整える訓練
  • 再発を防ぐための正しい歩行フォームの定着

リハビリが術後の音に与える影響

手術後の経過において、膝周囲の筋力や柔軟性が不足していると、予期せぬ摩擦音が新たに発生する場合があります。

適切なトレーニングを通じて関節を理想的な軌道で動かせるようになれば、そのような二次的な音も防げます。

最終的に「音のない健康な膝」を維持できるかどうかは、手術の精度だけでなく、術後の丁寧なケアに依存しています。

よくある質問

膝の音が鳴り始めたらすぐに受診すべきでしょうか?

痛みがない初期の段階では、緊急を要するわけではありませんが、音の質が変化した場合は注意が必要です。

「ジャリジャリ」という砂を噛むような音に変わってきたら、それは軟骨の摩耗が進行している明確なサインです。

早い段階で専門医の診断を受け、適切なストレッチや運動指導を受けることが、将来の変形を防ぐ最善の策となります。

膝の音を消すために有効なサプリメントはありますか?

グルコサミンやコンドロイチンなどの成分は、軟骨をサポートする目的で広く知られていますが、即効性は期待できません。

これらはあくまで健康維持のための補助的な役割であり、摂取するだけで魔法のようにジャリジャリ音が消えるわけではありません。

サプリメントに頼りすぎず、食事や運動、体重管理といった基本的な生活習慣の改善を主軸に置くことが大切です。

運動中に音が鳴る場合、その運動は中止したほうが良いですか?

音が鳴るだけで痛みがないのであれば、基本的には運動を続けても問題ありませんが、フォームを見直してください。

膝が内側に入っていたり、つま先と膝の向きがズレていたりすると、関節の一部に集中的な摩擦が発生して音が鳴りやすくなります。

もし運動後に膝が熱を持ったり、痛みが強まったりする場合は、負荷が強すぎるため、低負荷なメニューに変更すべきです。

膝をポキポキ鳴らす癖は変形性膝関節症を早めますか?

自分で意図的に膝を鳴らす行為は、関節内の圧力を急激に変化させ、軟骨や靭帯に微細なダメージを与える可能性があります。

これが直接の病因になるケースは稀ですが、もともとジャリジャリ音が鳴っているようなデリケートな状態の膝には有害です。

関節の安定性を損なう要因にもなりかねないため、無理に鳴らす癖は意識的に控え、関節を優しく扱うように心がけてください。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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