変形性膝関節症で膝に水がたまる原因|炎症による関節液の過剰分泌メカニズム

変形性膝関節症で膝に水がたまる原因|炎症による関節液の過剰分泌メカニズム

膝に水がたまる症状は、関節内部で発生した炎症を鎮めようとする体の自己防御反応が過剰に働いた結果です。

軟骨の摩耗によって生じた破片が滑膜を刺激し、本来は潤滑油である関節液が処理しきれないスピードで分泌され続けます。この不均衡が、腫れや重だるさ、そして強い痛みの正体となります。

本記事では、この分泌と吸収のバランスが崩れる詳細な仕組みと、日常生活で実践できる具体的な対策を詳しく解説します。

目次

膝に水がたまる現象の正体と変形性膝関節症の基礎知識

膝に水がたまる状態は、医学的に関節水腫と呼ばれ、関節を満たしている関節液が異常な量に増えた状態を指します。

健康な膝にも水は存在しますが、変形性膝関節症ではその質と量が大きく変化します。

膝の中に存在する液体の正体と本来の機能

膝内部にある液体は関節液と呼ばれ、主にヒアルロン酸やタンパク質を含んだ粘り気のある物質です。この液体は、健康な状態であればわずか数ミリリットルしか存在しません。

関節液には大きく分けて二つの重要な役割があります。一つは骨の表面を覆う軟骨同士の摩擦を軽減する潤滑油としての機能です。

もう一つは、血管が存在しない軟骨に対して酸素や栄養を届ける役割です。膝を滑らかに動かし、組織を維持するために必要です。

関節液は関節包の内側にある滑膜で作られ、古い液体は滑膜から吸収される循環を繰り返します。この循環が正常に機能している限り、膝の中に水が過剰に溜まることはありません。

しかし、変形性膝関節症によって関節内の環境が変化すると、この生産と回収のバランスが崩れます。

水がたまっている状態は、いわば膝の中の排水口が詰まり、蛇口が開きっぱなしになったような状態です。

変形性膝関節症が進行する過程と水腫の関係

変形性膝関節症は、加齢や過度の負担によって軟骨が弾力性を失い、徐々にすり減っていく進行性の病態です。軟骨が摩耗する過程で、目に見えないほど細かな軟骨の破片が関節の中に散らばります。

この破片が滑膜に接触すると、体はそれを異物とみなして排除しようと反応します。これが滑膜炎の始まりであり、水を増やすスイッチとなります。

病状が進行し、軟骨の厚みが減少するほど、刺激は強まり水が溜まりやすくなります。

初期段階では安静にすると水が引く場合もありますが、進行すると常時溜まっている状態になります。水がたまると関節内の圧力が高まり、神経を圧迫して強い痛みを感じるようになります。

また、増えすぎた関節液はヒアルロン酸の濃度が低く、本来の潤滑機能を果たせません。潤滑不足はさらなる軟骨の摩耗を招き、さらなる水を呼ぶという悪循環が形成されます。

この連鎖を断ち切る取り組みが、変形性膝関節症のケアにおいて極めて重要です。

正常な膝と炎症がある膝の状態比較

項目正常な膝の状態炎症がある膝の状態
関節液の量1〜3ml程度10ml〜50ml以上
液体の粘度非常に高い水分が増え低い
滑膜の厚み薄く滑らか分厚く充血している

関節液の産生と吸収のバランスが崩れる理由

関節液の量は、滑膜による産生量と吸収量の引き算によって決まります。

炎症が起きると、滑膜の毛細血管が拡張し、血液中の水分が関節内にしみ出しやすい状態になります。この作用で産生スピードが急激に上がり、供給過多の状態に陥ります。

一方で、炎症を起こした滑膜は吸収する能力が著しく低下してしまいます。本来の排水機能が損なわれるため、いくら時間が経過しても水が減らなくなります。

さらに、増えた水分によって関節を包む関節包が引き伸ばされ、血流が悪化します。血流不足は滑膜の細胞をさらに刺激し、炎症物質の放出を促すことにつながります。

こうした変化が要因となり、一度溜まり始めた水がなかなか引かない慢性的な水腫へと移行します。

吸収力を高めるには、まず滑膜の炎症を落ち着かせるのが前提となります。物理的な刺激を減らし、滑膜を穏やかな状態に戻すことが何より大切です。

関節液が過剰に分泌される具体的な仕組み

関節内部でどのような化学反応や物理現象が起きているのか、「水」が作られる工程において滑膜が果たす役割に焦点を当てます。

滑膜の興奮が分泌を促進する背景

滑膜は非常に敏感な組織で、関節内の異常を感知するセンサーのような働きをしています。軟骨の磨耗粉が滑膜に触れると、滑膜細胞は興奮状態に陥ります。

この興奮によって、サイトカインと呼ばれる炎症伝達物質が次々と放出されます。これらの物質は血管の壁に隙間を作る性質を持っており、血液の液体成分を関節内へ誘導します。

火傷をした際に水ぶくれができる現象と同じ反応が、膝の内部で発生していると考えてください。

炎症物質は単に関節液を増やすだけでなく、痛みを感じる受容体を過敏にさせます。その影響で、普段は何ともないような動作でも鋭い痛みを感じるようになります。

また、サイトカインは軟骨を分解する酵素の働きを活発にしてしまいます。つまり、水がたまっている状態は、軟骨をさらに溶かしてしまう危険な環境でもあるのです。

この興奮を抑える取り組みが、関節液の量を正常に戻すための直接的な近道となります。

血管透過性の変化と水分流出の流れ

炎症が起きた滑膜では、毛細血管の透過性と呼ばれる性質が大きく変化します。通常、血管の壁は必要な物質だけを通し、余分な水分は通さないようなフィルターの役割を果たしています。

しかし炎症物質の作用でこのフィルターの目が粗くなり、水分やタンパク質が漏れ出しやすくなります。これが血管透過性の亢進と呼ばれる現象です。

この一連の流れにより、絶え間なく水分が関節内に供給されることになります。

漏れ出した水分は関節包という袋の中に閉じ込められるため、逃げ場がありません。逃げ場を失った水分が膝の形を変えるほどに溜まり、視覚的な腫れとして現れます。

この水分流出を止めるには、炎症のスイッチを切るしかありません。アイシングや安静が推奨されるのは、血管を収縮させて透過性を抑えることが期待できるからです。

一時的な対症療法に見えても、物理的に流入を絞ることは重要です。

滑膜細胞の働きと分泌への影響

  • 軟骨破片などの異物を検知する
  • 炎症を誘発する化学物質を放出する
  • 血管から水分を引き寄せる
  • 増えすぎた液体を吸収できなくなる

軟骨破片が引き起こす免疫的な拒絶反応

関節の中に散らばった軟骨の破片は、体にとっては自己の一部ではなく「異物」として認識されます。

これを処理するためにマクロファージなどの免疫細胞が集まり、破片を捕食・分解しようと試みます。この免疫反応の過程で、さらなる炎症物質が撒き散らされることになります。

これは一種の拒絶反応に近い状態で、関節内では激しい戦いが繰り広げられているのです。削れた軟骨が多いほど、この戦いは激化し、水も増え続けます。

特に加齢によって軟骨が脆くなっている場合、この破片の発生は日常的に繰り返されます。

歩くたびに微細なゴミが発生し、そのたびに滑膜が反応するというループから抜け出せなくなります。これが、変形性膝関節症において水が慢性化しやすい大きな理由です。

破片を出さないためには、関節の遊びを少なくし、安定性を高める必要があります。内部の洗浄や炎症の抑制だけでは、この根本的な物理刺激をなくせません。

炎症を引き起こす要因と膝関節内の変化

膝の炎症は、単なる老化現象だけではなく、複数の要因が絡み合って発生します。日常生活の中に潜む、炎症の引き金となる要素を整理します。

加齢による組織の脆弱化と物理的摩擦

年齢を重ねると、軟骨に含まれる水分量やプロテオグリカンという成分が減少します。これにより軟骨はクッションとしての弾力性を失い、物理的な衝撃に弱くなります。

正常であれば衝撃を吸収して逃がしてくれますが、脆くなった軟骨は表面が毛羽立ち、簡単に削れてしまいます。

削れた面がザラザラになると、膝を曲げ伸ばしする際に関節内部で強い摩擦が生じます。この摩擦が直接滑膜を傷つけ、慢性的な熱感や腫れを引き起こします。

また、軟骨の下にある骨(軟骨下骨)にも負担がかかるようになります。軟骨が薄くなると、骨同士が直接ぶつかり合うのを防げなくなるからです。

骨には神経が通っているため、骨への刺激はそのまま強い痛みとして脳に伝わります。骨の変形が始まると、さらに関節の適合性が悪くなり、摩擦の連鎖は加速します。

このように、組織の脆さと摩擦の増加がセットになって炎症を煽り続けることになります。早めの保護的な取り組みが、こうした劣化を遅らせる鍵です。

筋力バランスの崩れによる関節への偏った負荷

膝を支える筋肉、特に太ももの前側にある大腿四頭筋の筋力が低下すると、膝関節が不安定になります。筋肉は関節を守る天然のサポーターですが、そのサポートが失われると関節の軸がずれます。

軸がずれた状態で荷重がかかると、関節内の特定の箇所にだけ集中的に圧力が加わります。この偏った負荷が、その部分の軟骨を破壊し、局所的な強い炎症を誘発します。

筋力不足は、関節を「ぐらつき」という形で常に攻撃し続けているようなものです。

さらに、膝の筋肉が衰えると、衝撃を逃がせずにすべて関節が受け止めることになります。歩く際の着地の衝撃は体重の数倍に達しますが、それを筋肉が肩代わりしてくれません。

その結果、軟骨は過剰な負担にさらされ、耐えきれずに損耗していきます。これが炎症を維持する燃料となり、水がたまりやすい体質を作ってしまいます。

適度な筋力を保つ取り組みは、単に動けるようにするためだけでなく、関節内の火種を消すためにも必要です。

膝への負荷を増大させる日常の要因

要因膝への影響主なリスク
急激な体重増単位面積あたりの圧力増軟骨の早期崩壊
O脚やX脚関節の片側への負荷集中滑膜の局所炎症
不適切な靴着地衝撃の吸収不足慢性的な水腫

体重増加による関節内圧の上昇と虚血

体重が1キロ増えるだけで、歩行時に膝にかかる負担は3キロから4キロ増えると言われています。この増加した重量は、関節内部の圧力を著しく上昇させます。

高い圧力がかかり続けると、滑膜周囲の細い血管が圧迫され、血流が一時的に途絶える「虚血」の状態を招きます。

組織が酸欠状態になると、回復力が落ちるだけでなく、痛みを引き起こす物質が生成されやすくなります。体重管理は、膝関節にとって最も直接的な負担軽減策です。

また、脂肪組織自体が炎症を促進する物質を血液中に放出しているという事実も分かってきました。つまり、肥満は物理的な重さだけでなく、化学的にも膝の炎症を助長しているのです。

体が重いと動くのが億劫になり、さらに筋肉が落ちるという負のスパイラルに陥ります。膝の水を減らすためには、こうした全身的な健康状態の見直しも欠かせません。

食事の内容を少し意識するだけでも、関節内の炎症レベルを下げることにつながります。できることから少しずつ、生活の質を改善していきましょう。

膝の水を抜くと癖になるという誤解と正しい対処法

多くの人が抱く「水を抜くとさらに溜まりやすくなる」という不安について、医学的な観点から真実を解説します。正しい知識を持って処置に臨みましょう。

水を抜く処置が行われる理由とメリット

医療機関で膝の水を抜く理由は、主に二つあります。

一つ目は診断のためです。抜いた液体の色や濁り、成分を調べて炎症の原因が何であるかを特定します。

例えば、黄色く澄んでいれば変形性膝関節症ですが、白濁していれば感染症の疑いがあり、血液が混じっていれば靭帯損傷などの可能性があります。

二つ目は症状の緩和です。水がたまると関節内がパンパンに腫れ、激しい痛みや可動域の制限が生じます。これを除去すると、即座に不快感を軽減できます。

また、溜まりすぎた水は滑膜をさらに圧迫し、血流を妨げて炎症を長引かせる要因になります。

水を取り除くことは、関節内の悪い環境をリセットし、滑膜が正常な活動に戻るためのスペースを作る効果もあります。

痛みで膝が動かせなくなると周囲の筋肉が急速に衰えるため、動かせる状態を作るケアは長期的な回復においても大きなメリットとなります。

適切なタイミングで水を抜くのは、決して悪いことではありません。むしろ、治療をスムーズに進めるための大切な一工程です。

再発の原因は「抜いたこと」ではなく「炎症の継続」

水を抜いた後にまた水がたまるのは、処置そのもののせいではありません。膝の中に炎症の原因が残っているために、体が再び「炎症を鎮めるための水」を出し続けているだけです。

これを「癖になる」と解釈してしまうのは誤解です。原因である炎症が鎮まれば、何度抜いても水はたまらなくなります。

何度も抜かなければならない状況は、それだけ膝内部の炎症が強く、まだ治まりきっていないというサインなのです。

この状況で本当に必要なのは、水を抜くと同時に「なぜ炎症が起きているのか」を解決することです。

軟骨の摩擦がひどいのか、あるいは急激な負荷がかかったのか、原因を特定して対策を講じる必要があります。

水がたまるサイクルを止めるには、抜き続けるだけでなく、抗炎症薬の使用やリハビリテーションを並行して行うのが望ましいです。

結果として現れている水だけに目を向けず、その背後にある火種を消す努力をしましょう。それが、水腫を根本から解決する唯一の道です。

膝の水を抜くべきか判断する指標

  • 膝が腫れて曲げ伸ばしが困難
  • 夜も眠れないほどの重だるさがある
  • 膝に熱を持っており拍動を感じる
  • 階段の昇り降りができないほど痛む

根本的な炎症抑制と関節液の正常化を目指す

水を抜いた後は、関節内の潤滑性を高めるためにヒアルロン酸の注入などが行われるのが一般的です。これは、炎症によって薄まってしまった関節液の質を補い、軟骨保護を助けるためです。

潤滑性能が回復すれば、摩擦による新たな炎症が起きにくくなります。

さらに、サポーターによる関節の安定化や、適切な運動療法を組み合わせて、滑膜への物理的な刺激を減らしていきます。こうした多角的な方法により、次第に関節液の分泌量は落ち着いていきます。

一度水がたまった膝は、滑膜が敏感な状態になっています。処置の後は数日間安静を保ち、過度な負荷を避けましょう。滑膜が落ち着く時間を与えると、再発のリスクを下げられます。

自分自身の体が持つ回復力を信じつつ、医学的なサポートを賢く利用するのが賢明です。目先の水を減らすだけでなく、将来的に水がたまらない膝を作ることを目標にしましょう。

膝の腫れや痛みを感じた時に家庭でできる初期対応

膝に異変を感じた際、最初に行うべきケアがその後の経過を左右します。自宅で安全にできる応急処置を学び、悪化を防ぎましょう。

アイシングと安静の重要性とその方法

膝が熱を持って赤く腫れている時、最も優先すべきはアイシングです。氷嚢や保冷剤をタオルで包み、腫れている部分を15分から20分ほど冷やします。

これにより血管を収縮させ、水分の流出を抑えるとともに、痛みを伝える神経の感度を鈍らせられます。

冷やしすぎによる凍傷を防ぐため、必ず布越しに当て、感覚がなくなってきたら一度中断してください。冷やすと炎症の広がりを食い止められます。

同時に、物理的な安静を保つ心がけが必要です。膝を酷使する動作、例えば重いものを持って歩くことや、長時間の立ち仕事は控えましょう。

膝が熱を持っている時期は、関節内の炎症が非常に活発な状態です。この時期に無理をして動かすと、さらなる軟骨の損傷を招き、水腫が長引く原因となります。

1日から2日は可能な限り膝を休めるように意識してください。こうした初期の決断が、早期回復への一番の近道となります。

寝る時や座る時の膝への負担軽減ポーズ

膝が痛む時は、姿勢を工夫するだけで楽になる場合があります。

寝る時は、仰向けになって膝の下に丸めたバスタオルやクッションを置いてみてください。膝を軽く曲げた状態を保つことで、関節周辺の筋肉の緊張が解け、関節内の圧力が分散されます。

足を少し高くすると、膝に溜まった水分の戻りを助ける効果も期待できます。

ただし、膝を完全に曲げ切るような姿勢は逆に圧力を高めるため、あくまで自然な角度を保つことが大切です。

座る際も、低い椅子や床に直接座る「床座」は避け、膝への負担が少ない高さの椅子を選んでください。

立ち上がる時は、膝の力だけで起き上がろうとせず、手すりや机に手をついて体重を分散させるのがコツです。

こうした些細な動作の積み重ねが、膝内部の炎症を鎮める助けとなります。

日常生活の中での小さな工夫が、滑膜への刺激を減らし、関節液の分泌を正常に戻すための基盤となります。自分の膝を労わる動作を習慣化しましょう。

膝を休めるための環境調整

場所改善できるポイント期待される効果
寝室膝下へのクッション配置筋肉の緊張緩和
リビング座面の高い椅子へ変更起立時の負荷軽減
玄関靴べらや椅子の設置屈曲動作の減少

急な悪化を防ぐために避けるべき生活習慣

膝の調子が悪い時にやってしまいがちなのが、長時間の入浴による加温です。膝が熱を持っている急性期に温めすぎると、血管がさらに拡張し、炎症が激化して水が急増するケースがあります。

腫れが強い時期はシャワー程度にとどめ、患部を温めすぎないよう注意しましょう。

また、自分で膝を強く揉んだり、無理やり膝を曲げるストレッチを行ったりするのも危険です。物理的な刺激はすべて滑膜への攻撃となってしまいます。

飲酒や激しい運動も、全身の血流を過剰に増やし、炎症を煽る要因となります。膝に水がたまっているサインを感じたら、体全体のバランスを整える意識を持ちましょう。

自己判断で「動かして治す」という極端な行動はせず、まずは炎症を落ち着かせることに専念してください。

腫れが引き、熱感がなくなってきたら、徐々に活動量を戻していきます。段階を追って丁寧に対応する工夫が、再発を繰り返さない膝を作るための鉄則です。

膝の負担を軽減し関節液の分泌を安定させる生活習慣

水が溜まらない膝を目指すためには、日常的な管理が不可欠です。炎症の再燃を防ぎ、健やかな関節環境を保つための習慣を身につけましょう。

無理なく続けられる筋力維持のためのトレーニング

膝関節の安定性を高めるには、太ももの筋肉である大腿四頭筋の強化が必要です。しかし、重い負荷をかけるスクワットなどは膝に負担が大きすぎる場合があります。

そこでおすすめなのが「足上げ運動」です。椅子に座った状態で、片方の足をゆっくりと水平に伸ばし、数秒間キープして下ろします。

この運動なら関節を動かす範囲が少なく、軟骨の摩擦を最小限に抑えながら筋肉を刺激できます。毎日少しずつ、両足を行うと、筋肉による膝の保護機能を高められます。

ウォーキングをする際は、平坦な道を選び、クッション性の高い靴を履きましょう。水の中でのウォーキングは、浮力によって体重の負担が大幅に軽減されるため、特におすすめの運動です。

筋肉を使うと膝周囲の血流が改善し、滑膜の吸収機能も活性化されます。大切なのは「痛みの出ない範囲」で行うことです。

少しでも痛みを感じたら無理をせず、運動の種類や時間を見直しましょう。持続可能な運動習慣が、関節内の環境を良好に保つ最も確実な方法です。

軟骨や滑膜の健康をサポートする食事のコツ

食事は関節の組織を修復し、炎症を抑えるための基盤となります。積極的に摂取したいのは、軟骨の材料となるタンパク質や、骨を強くするカルシウムとビタミンDです。

また、炎症を抑える効果が期待できるオメガ3脂肪酸(青魚などに含まれる油)も、膝の健康にとって心強い味方となります。

バランスの良い食事は、同時に適切な体重維持にもつながり、膝への物理的な負担を減らす大きなメリットを生みます。

一方で、糖分や加工食品の摂りすぎは、体内の炎症レベルを上げることが指摘されています。過度な飲酒も、脱水を招き関節液の質を低下させる可能性があるため、ほどほどにしましょう。

サプリメントを利用する場合も、それだけに頼るのではなく、日々の食事を整えた上での補助として活用してください。

規則正しい食生活は、膝の滑膜を落ち着かせ、過剰な関節液の分泌を防ぐための土台となります。内側からのケアも忘れずに行いましょう。

関節に優しい食事のポイント

  • タンパク質を毎食取り入れる
  • 青魚やナッツ類で良質な脂質を摂る
  • 緑黄色野菜で抗酸化成分を補う
  • 塩分と糖分を控えてむくみを防ぐ

日常生活の動作を見直し炎症の引き金を減らす

膝を守るためには、何気ない日常動作の修正が非常に有効です。

階段を昇る時は痛くない方の足から出し、降りる時は痛い方の足から出すように意識してみてください。これにより膝にかかる負担が分散されます。

また、立ち上がる時には椅子に深く腰掛けず、少し前に出てから手をついて立つと、膝への負荷を減らせます。

生活環境を「和式」から「洋式」へ変える工夫は、深く曲げる動作を減らすために非常に大きな効果があります。

外出時は、荷物を分散して持つか、リュックサックを利用して片方の膝にだけ重さがかからないようにしましょう。

重い買い物袋を持つことも、膝にとっては大きなストレスとなります。可能であれば、杖を利用して第三の支点を作るのも、関節液の分泌を安定させるための立派な対策です。

「まだ若いから」と無理をせず、膝をサポートする道具を賢く使うと、将来の自由な歩行につながります。日常のあらゆる場面で膝への思いやりを持ち、炎症の芽を摘んでいきましょう。

専門機関で行う診断と関節内の状態を確認する方法

膝の状態を正確に知ることは、漠然とした不安を取り除く第一歩です。病院で行われる検査の意味を理解し、現在の自分の状況を客観的に把握しましょう。

画像検査で把握できる軟骨と骨の変形度合い

病院での診断において、まず行われるのがレントゲン検査です。

レントゲンでは軟骨そのものは写りませんが、骨と骨の間の隙間を見ると、軟骨がどれくらい残っているかを推測できます。隙間が狭くなっているほど変形が進んでいると判断されます。

また、さらに詳細な情報を得るためにMRI検査が行われるケースもあります。

MRIでは軟骨の損傷具合だけでなく、半月板の状態や、滑膜の炎症の程度、たまっている水の量を視覚的にはっきりと確認できます。

これらの画像検査により、自分の膝が「初期・中期・末期」のどの段階にあるのかを診断できます。

水がたまっている場合、滑膜がどれくらい厚くなっているかを確認することも、治療方針を立てる上で重要です。画像を見ると、どこに負担がかかっているのかが一目でわかります。

納得感を持ってケアに取り組むためにも、これらの視覚的な情報は非常に役に立ちます。定期的なチェックを受けると、進行のスピードを把握し、対策をアップデートしていけます。

関節液の採取と分析から見える内部環境

膝から水を抜く処置は、それ自体が重要な検査でもあります。抜いた関節液を顕微鏡で観察したり、成分を分析したりすると、炎症の強さや原因をより深く知れます。

例えば、白血球の数が多い場合は強い炎症が起きていることがわかり、結晶が見つかれば痛風などの別の病気が原因であると判明します。

この検査結果によって、単に水を抜くだけで良いのか、あるいは強力な抗炎症剤が必要なのかといった判断がなされます。

また、関節液に含まれるヒアルロン酸の濃度や粘性を調べれば、関節の「潤滑油」としての性能がどれほど損なわれているかもわかります。

水がたまっている状態では本来の機能が失われているケースが多いため、これを指標にヒアルロン酸注入の必要性を判断します。

検査を通じて得られたデータは、その後の治療の「羅針盤」となります。単に「痛い」という主観だけでなく、数値や成分に基づいた客観的な評価を受けることは、効果的な対策を講じる上で欠かせません。

主要な検査の特徴と役割

検査方法主な確認内容メリット
レントゲン骨の隙間・骨棘簡便で全体像が見やすい
MRI軟骨・滑膜・水軟部組織の状態が詳細
液性検査炎症細胞・成分原因の特定に役立つ

個別の症状に合わせた管理計画の策定

検査結果を踏まえ、一人ひとりの生活スタイルや希望に合わせた管理計画が立てられます。

初期であれば運動療法や生活習慣の改善が中心となりますが、痛みが強い場合は内服薬や外用薬、関節内注入を組み合わせて炎症を抑え込みます。

大切なのは、水がたまるという「症状」を抑えるだけでなく、膝の機能を維持し、自立した生活を長く続けるという広い視点です。自分の膝の状態に合った適切なケアの継続が何より重要です。

定期的に受診すると、自分の取り組みが膝の状態にどう反映されているかを確認できます。

水がたまる回数が減ったり、腫れが引きやすくなったりすれば、それは滑膜の炎症が落ち着いてきた良い兆候です。専門家と対話し、不安を解消しながら前向きに自分の膝と付き合っていきましょう。

膝に水がたまる仕組みを正しく理解し、適切に対処すれば、変形性膝関節症とうまく付き合っていくことは十分に可能です。諦めずに、一歩ずつ改善の道を進んでいきましょう。

Q&A

膝の水を一度抜くと、その後も癖になって何度も抜くことになりませんか?

水を抜くという処置そのものが原因で、再発しやすくなるわけではありません。

水が何度も溜まってしまうのは、膝関節の内部で起きている炎症がまだ鎮まっていないのが原因です。炎症が治まれば体は自然と余分な関節液を吸収し、新たな分泌も落ち着きます。

水を抜く処置は、溜まりすぎた液体による内圧と痛みを下げるための必要な対応ですので、怖がる必要はありません。むしろ炎症を長引かせないためのリセットと捉えるのが正しい考え方です。

膝に水がたまっている時に、温めて血行を良くするのは正しいですか?

膝が熱を持っていて、赤く腫れているような時期は温めるのは避けましょう。

このような炎症のピーク時には、温めると血管がさらに広がり、関節液の分泌が活発になって腫れがひどくなる恐れがあります。

熱感がある時は、まずはアイシングで患部を冷やして炎症の勢いを抑えるのが先決です。

温めるほうが良いのは腫れが引き、熱感もなくなり、慢性的で鈍い痛みが続いている段階になってからです。判断に迷う時は、左右の膝を触り比べて熱があるか確認してください。

膝の水は、放っておいてもいつか自然に吸収されて消えるものですか?

膝の内部にある滑膜には関節液を吸収する機能があるため、炎症が落ち着けば水は自然と体内に吸収されていきます。

しかし、変形性膝関節症による刺激が強く、次々と新しい液体が作られている状態では、吸収が追いつかずに溜まり続けてしまいます。

水が溜まっている期間が長いと、関節周囲の組織が硬くなり可動域が狭まってしまうリスクがあります。

適切なケアをしても腫れが引かない場合は、専門機関で炎症を抑える処置を受けると良いでしょう。

水がたまっている状態でも、無理に歩いて筋肉を鍛えたほうが良いでしょうか?

水がたまって強い痛みや重だるさがある時期に、無理に歩くのは逆効果です。歩行時の衝撃や摩擦は滑膜をさらに刺激し、炎症を悪化させて水を増やす原因になります。

急性期は安静を優先し、腫れが落ち着いてから徐々に運動を再開するのが基本です。

筋力維持が大切であるのは確かですが、その時の膝の状態に合わせた強度の運動を選ぶ必要があります。無理をせず、まずは関節内の「火事」である炎症を消すことに集中してください。

正座ができなくなるのは、膝に水がたまっていることが原因でしょうか?

水がたまると関節を包んでいる袋が内側からパンパンに膨らみます。

この状態で膝を深く曲げようとすると、袋が限界まで引き伸ばされて強い抵抗感と痛みが生じるため、正座が困難になります。

正座を無理に行うと、さらに関節内の圧力が跳ね上がり、炎症を悪化させてしまいます。

水がたまっている時は無理に膝を曲げようとせず、椅子での生活に切り替えるなど、膝に負担をかけない動作を心がけましょう。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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