栄養不足と膝の変形|ビタミンD・Kの欠乏が骨代謝と軟骨維持に与える影響

膝の痛みや変形に悩んでいる方の中には、体重や運動不足だけが原因だと考えている方も多いでしょう。しかし近年の研究で、ビタミンDやビタミンKの不足が骨代謝を乱し、軟骨の破壊を加速させることがわかってきました。
つまり、日々の食事から十分な栄養を摂れていないことが、膝の変形を静かに進行させている可能性があるのです。とくに中高年世代では、知らないうちにビタミンD・Kの血中濃度が低下している方が少なくありません。
この記事では、変形性膝関節症の専門的な知見をもとに、ビタミンD・Kの欠乏が骨と軟骨にどのような悪影響を及ぼすのかをわかりやすく解説します。
ビタミンD・Kが足りないと膝の変形は本当に進むのか
結論から言えば、ビタミンDとビタミンKの不足は変形性膝関節症のリスクを明確に高めます。複数の大規模研究がこの関連性を裏づけており、栄養面からのアプローチを軽視すべきではありません。
変形性膝関節症と栄養不足が密接に結びついている理由
変形性膝関節症は、加齢や肥満だけで起こる病気ではありません。膝関節を構成する骨や軟骨の代謝は、日々の栄養状態に大きく左右されます。
骨の新陳代謝(骨代謝)は「古い骨を壊す」作用と「新しい骨をつくる」作用のバランスで成り立っており、このバランスが崩れると骨がもろくなります。軟骨もまた、コラーゲンやプロテオグリカンといった成分の合成と分解を繰り返しています。
ビタミンDやビタミンKはこれらの代謝を正常に保つうえで欠かせない栄養素です。どちらかが不足するだけでも、膝関節を支える構造全体に悪影響が波及するとされています。
骨代謝と軟骨維持にビタミンD・Kが果たす具体的な働き
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を助け、血中カルシウム濃度を一定に保つ働きをしています。カルシウムが不足すると骨の形成が追いつかなくなり、軟骨下骨(なんこつかこつ:軟骨のすぐ下にある骨)が弱体化します。
一方、ビタミンKは骨の中にあるオステオカルシンというタンパク質を活性化する補酵素として働きます。さらに軟骨内のマトリックスGlaタンパク質(MGP)というカルシウム沈着を制御する物質にも関わっています。
ビタミンKが不足するとMGPが正常に機能せず、軟骨に異常なカルシウムが沈着して損傷が進みやすくなるのです。
ビタミンD・Kの主な働きと欠乏時の膝への影響
| 栄養素 | 主な働き | 欠乏時の膝への影響 |
|---|---|---|
| ビタミンD | カルシウム吸収の促進、骨代謝の調整 | 骨密度低下、軟骨下骨の劣化 |
| ビタミンK1 | 血液凝固因子の活性化、骨形成の補助 | 骨質の低下、石灰化異常 |
| ビタミンK2 | オステオカルシン・MGPの活性化 | 軟骨の異常石灰化、変形進行 |
栄養不足が膝関節の構造に与えるダメージは想像以上に深刻
膝関節は骨・軟骨・靭帯・半月板などで構成される精密な構造体です。どれか一つでも弱ると、ほかの組織に過度な負担がかかり、連鎖的に損傷が広がります。
栄養不足によって骨密度が下がれば、軟骨下骨が変形し、その上に乗る軟骨に不均一な圧力がかかります。
軟骨が部分的にすり減ると関節全体のアライメント(配列)が崩れ、膝の内側や外側に偏った荷重がかかるようになるでしょう。こうした悪循環が変形性膝関節症の進行を早めてしまうのです。
ビタミンD欠乏は骨密度の低下を通じて膝の変形を加速させる
ビタミンDが不足すると骨のカルシウム代謝が乱れ、膝関節を支える骨が脆くなります。研究データでは、ビタミンD欠乏のある方は変形性膝関節症の進行リスクが2倍以上に高まると報告されています。
カルシウムの吸収力が落ちると膝を支える骨が脆くなる
ビタミンDは小腸でカルシウムを吸収するための「門番」のような存在です。ビタミンDが十分にあると、食事から摂ったカルシウムの約30〜40%が体内に吸収されます。
ところがビタミンDが不足すると、吸収率は10〜15%まで落ち込むとされています。
吸収されるカルシウムが減れば、骨への供給量も不足します。骨は常に古い組織を壊して新しい組織に置き換えるリモデリングを行っていますが、材料となるカルシウムが足りないと新しい骨の形成が遅れます。
膝関節を構成する大腿骨や脛骨の骨質が低下すれば、関節面が変形しやすくなるでしょう。
ビタミンD不足で副甲状腺ホルモンが増えると骨の吸収が進む
血中カルシウム濃度が下がると、体は副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌して骨からカルシウムを取り出そうとします。
ビタミンDが慢性的に不足している方はPTHが常に高い状態になりやすく、骨がどんどん溶かされる悪循環に陥ります。
ある研究では、ビタミンD欠乏とPTH高値が同時にみられる方は、変形性膝関節症の進行リスクが約3.2倍に跳ね上がることが示されました。PTHの上昇は骨の吸収を促進するだけでなく、軟骨下骨の微細構造にも悪影響を及ぼすと考えられています。
日光不足とビタミンD欠乏が膝に与える二重の悪影響
ビタミンDは紫外線を浴びることで皮膚で合成される、少し特殊な栄養素です。室内で過ごす時間が長い方や、日焼け止めを常用している方は、体内のビタミンD生成量が大幅に減ります。
加齢に伴い皮膚でのビタミンD合成能力は低下し、70代になると20代の約4分の1にまで落ちるとされています。
さらに変形性膝関節症による膝の痛みで外出が減ると、日光を浴びる機会がさらに少なくなるという負の連鎖が生じます。膝を守るためにも、意識的に日光を浴びる時間を確保したいところです。
ビタミンD不足を招きやすい生活習慣
- 日中の大半を室内で過ごしている
- 外出時に日焼け止めを毎回塗っている
- 魚や卵、きのこ類をあまり食べない
- 冬場の緯度が高い地域に住んでいる
ビタミンK欠乏が軟骨の石灰化と膝関節の破壊を招く
ビタミンKが欠乏すると、軟骨の異常な石灰化が進み、膝関節の変形や痛みを引き起こします。大規模な縦断研究でも、ビタミンK不足の方は変形性膝関節症の発症リスクが約1.5倍になることが報告されています。
軟骨を守るタンパク質はビタミンKなしでは正常に働けない
関節軟骨の中にはMGP(マトリックスGlaタンパク質)と呼ばれる物質が含まれています。
MGPはカルシウムの異常な沈着を防ぐブレーキのような働きをしていますが、その機能を発揮するにはビタミンKによる「カルボキシル化」という化学反応が必要です。
健康な軟骨ではMGPの大部分がカルボキシル化された活性型ですが、変形性膝関節症の軟骨では未カルボキシル化(非活性型)のMGPが多いことが確認されています。
つまりビタミンK不足がMGPの機能不全を招き、軟骨に余分なカルシウムが溜まってしまうのです。
ビタミンK不足で活性化しないMGPが軟骨の異常石灰化を引き起こす
MGPが十分に活性化されないと、軟骨の中にハイドロキシアパタイトなどのカルシウム結晶が沈着しやすくなります。軟骨は本来やわらかくしなやかな組織ですが、石灰化によって硬くもろくなり、衝撃を吸収する能力が低下します。
1180名を対象としたMOST研究では、潜在的なビタミンK欠乏のある方は30か月後に軟骨損傷を発症するリスクが約2.4倍に上昇していました。
この結果は年齢や体重などの交絡因子を補正しても有意であり、ビタミンKの軟骨保護効果を強く示唆しています。
ビタミンK欠乏と軟骨・骨への影響
| 影響を受ける組織 | ビタミンK欠乏による変化 | 膝関節への帰結 |
|---|---|---|
| 関節軟骨 | MGPの不活性化による異常石灰化 | 軟骨が硬化し衝撃吸収力が低下 |
| 半月板 | 線維軟骨の石灰化と変性 | クッション機能の喪失 |
| 軟骨下骨 | オステオカルシンの不活性化 | 骨質の低下と微小骨折 |
ビタミンK1とK2の違いを知れば食事の選び方が変わる
ビタミンKにはK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)の2種類があります。K1は主に緑黄色野菜に多く含まれ、血液凝固に深く関わります。
K2は納豆やチーズなどの発酵食品に豊富で、骨や軟骨の代謝に対してより強い作用を持つと考えられています。
膝関節を守る観点では、K1とK2の両方をバランスよく摂るのが望ましいでしょう。
日本の食卓では納豆がK2の優れた供給源であり、1パック(約45g)で約240〜380μgのビタミンK2を摂取できます。緑黄色野菜と発酵食品を組み合わせると、膝に必要なビタミンKを効率的に補えます。
変形性膝関節症の進行を食い止めるビタミンD摂取の目安
ビタミンD欠乏を防ぐためには、毎日の食事と適度な日光浴に加えて、自身の血中濃度を意識することが大切です。
目標とすべき血中25(OH)D濃度は30ng/mL以上とされており、これを下回ると膝関節への悪影響が懸念されます。
ビタミンDの推奨摂取量と膝を守るための目標血中濃度
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人のビタミンD目安量は8.5μg/日(340IU/日)と定められています。
ただし骨の健康を維持するためには、内分泌学会などの国際的なガイドラインでは血中25(OH)D濃度30ng/mL以上を推奨しており、そのためには1日600〜800IU程度の摂取が望ましいとされます。
変形性膝関節症の方に関しては、血中濃度が15μg/L(15ng/mL)未満になると膝関節の進行リスクが2倍以上に跳ね上がるという研究報告があります。
自分のビタミンD濃度がどの程度かを把握するためにも、定期的な血液検査を受けてみてはいかがでしょうか。
食事だけでは足りない場合のビタミンD補給法
ビタミンDを多く含む食品としては、鮭、サンマ、イワシなどの青魚が代表的です。干ししいたけやきくらげにも豊富に含まれます。
しかし日常の食事だけで必要量をまかなうのは簡単ではなく、とくに魚をあまり食べない方は不足しがちです。
そうした場合にはサプリメントの活用も選択肢の一つになります。ただし自己判断で高用量を摂取するのではなく、主治医に相談したうえで適切な量を決めることをおすすめします。
過剰摂取にも注意が必要 — 安全なビタミンDの上限量
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、体内に蓄積しやすい性質があります。過剰摂取が続くと高カルシウム血症を引き起こし、腎機能障害や血管の石灰化につながるおそれがあるので注意が必要です。
日本の食事摂取基準では耐容上限量を100μg/日(4000IU/日)としています。サプリメントを使用する際は、この上限を超えないよう気をつけてください。
食品からの摂取であれば過剰になることはほとんどありませんので、まずは毎日の食事を見直すところから始めてみましょう。
ビタミンDを多く含む食品と目安摂取量
| 食品 | 1食あたりの目安量 | ビタミンD含有量 |
|---|---|---|
| 紅鮭(焼き) | 1切れ(80g) | 約25.6μg |
| サンマ(焼き) | 1尾(100g) | 約14.9μg |
| 干ししいたけ | 3個(9g) | 約1.4μg |
| 卵黄 | 1個(17g) | 約1.0μg |
膝の軟骨を長持ちさせるためにビタミンKを毎日の食事で摂りたい
ビタミンKは体内に蓄積されにくいため、毎日コンスタントに補給することが大切です。
日本の食事摂取基準では成人男性で150μg/日、成人女性で150μg/日が目安量とされていますが、骨・軟骨の健康を考えるとこれ以上の摂取が望ましいとの見解もあります。
緑黄色野菜と発酵食品がビタミンK補給に適している
ビタミンK1が豊富な食品はほうれん草、小松菜、ブロッコリー、モロヘイヤなどの葉物野菜です。ビタミンK2は納豆が圧倒的に多く含まれており、チーズや卵にも少量含まれています。
和食中心の方は比較的ビタミンKを摂りやすい環境にありますが、野菜の摂取量が少ない方や、納豆が苦手な方は不足しやすい傾向にあります。
緑黄色野菜を毎食取り入れるだけでも、ビタミンKの摂取量はかなり改善されるでしょう。
高齢者はビタミンKの摂取量が不足しやすい
高齢者は食事量の減少、消化吸収能力の低下、偏った食習慣などにより、ビタミンKの摂取量が慢性的に少なくなりがちです。欧米の調査でも、高齢者のビタミンK摂取量は推奨値を下回る方が多いと報告されています。
食が細くなった方でも、納豆1パックや小鉢1杯分の青菜のおひたしを加えるだけでビタミンKの摂取量を大きく増やせます。無理なく毎日続けられる工夫を取り入れることが、膝の健康を長く保つ秘訣になるかもしれません。
ビタミンKを多く含む代表的な食品
| 食品 | 目安量 | ビタミンK含有量 |
|---|---|---|
| 納豆 | 1パック(45g) | 約240〜380μg |
| ほうれん草(ゆで) | 小鉢1杯(80g) | 約216μg |
| 小松菜(ゆで) | 小鉢1杯(80g) | 約252μg |
| ブロッコリー(ゆで) | 3〜4房(60g) | 約95μg |
ワルファリンなど抗凝固薬を服用中の方はビタミンK摂取に注意が要る
心房細動や深部静脈血栓症などで抗凝固薬のワルファリン(ワーファリン)を服用している方は、ビタミンKの摂取量を急に増減させると薬の効果に影響が出る場合があります。
ワルファリンはビタミンKの作用を阻害して血液の凝固を防ぐ薬であり、食事からのビタミンK摂取量が大きく変動すると薬効が安定しなくなるためです。
ビタミンKを「まったく摂らない」のではなく、「毎日ほぼ一定量を摂る」ことが大切だと覚えておきましょう。担当の医師や薬剤師に食事内容を伝えたうえで、適切な摂取量の範囲を確認してください。
ビタミンDとKを同時に不足させると膝への悪影響が倍増する
ビタミンDとビタミンKはそれぞれ単独でも膝の健康に影響しますが、両方が同時に不足するとそのダメージはさらに大きくなります。2つのビタミンは骨のカルシウム代謝において互いに補い合う関係にあるためです。
ビタミンDとKは骨のカルシウム代謝において補い合う関係にある
ビタミンDは腸でカルシウムを吸収して血液中に送り込む働きを担い、ビタミンKは血液中のカルシウムを骨に適切に沈着させる働きを担います。
わかりやすく例えると、ビタミンDが「カルシウムの運び屋」なら、ビタミンKは「カルシウムの案内係」のような存在です。
どちらか一方だけが足りていても、もう一方が不足していればカルシウムは正しい場所に届きません。骨が弱くなるだけでなく、行き場を失ったカルシウムが血管壁や軟骨に沈着して別の問題を引き起こすおそれもあります。
2つの栄養素が欠乏すると変形性膝関節症の進行リスクが跳ね上がる
ある縦断研究では、ビタミンD欠乏と高PTH(副甲状腺ホルモン高値)が同時に見られる方は、変形性膝関節症の関節裂隙狭小化(かんせつれつげき きょうしょうか:関節のすき間が狭くなること)のリスクが約3.2倍に達することが示されています。
また、ビタミンKが不足している高齢者では軟骨と半月板の損傷が進行しやすいという研究結果もあり、ビタミンDとKの両方を意識的に摂取することが膝の健康維持に欠かせないと考えられます。
食事で2つのビタミンを効率よく組み合わせる工夫
幸いなことに、和食には両方のビタミンを摂りやすい食材がそろっています。
たとえば朝食に納豆(ビタミンK2)と味噌汁に豆腐を入れ、夕食に焼き魚(ビタミンD)とほうれん草のおひたし(ビタミンK1)を添えるだけで、1日のうちに2つのビタミンをバランスよく補給できます。
ビタミンDもKも脂溶性ビタミンですから、少量の油脂と一緒に摂ることで吸収効率が高まります。炒め物やドレッシングに適度な油を使えば、栄養の吸収をさらに助けてくれるでしょう。
ビタミンDとKを効率よく摂取するためのポイント
- 朝食に納豆を1パック加える(ビタミンK2)
- 週に3回以上は青魚を食べる(ビタミンD)
- 毎食の副菜に緑黄色野菜を取り入れる(ビタミンK1)
- 油脂を含む調理法で吸収率を上げる(脂溶性ビタミン共通)
膝の痛みと変形を遠ざけるために今日から見直したい生活習慣
栄養素の摂取だけでなく、日常の生活習慣全体を整えることが変形性膝関節症の予防と進行抑制には欠かせません。日光浴・運動・食事・検査を組み合わせた総合的なセルフケアが、膝を守る土台になります。
適度な運動と日光浴がビタミンDの体内生成を促す
ビタミンDは皮膚が紫外線B波(UVB)を浴びることで合成されます。1日15〜30分程度、顔や腕を日光にさらすだけでもビタミンD生成に有効です。
ウォーキングや軽い屋外体操を日課にすれば、運動効果と日光浴の両方を同時に得られます。
運動は膝周囲の筋力を維持する効果もあるため、関節にかかる負担を軽減してくれます。膝に痛みがある場合は、水中ウォーキングや椅子に座ったまま行う体操など、膝への衝撃が少ない運動を選ぶとよいでしょう。
日光浴と運動の推奨量
| 項目 | 推奨内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 日光浴 | 1日15〜30分、顔や腕を露出 | ビタミンDの皮膚での合成促進 |
| ウォーキング | 1日30分、週5日以上 | 膝周囲の筋力維持と骨密度の保持 |
| 水中運動 | 週2〜3回、30分程度 | 膝への負担を減らしながら全身の筋力を強化 |
定期的な血液検査で栄養状態を把握しておく
ビタミンDの血中濃度は、25(OH)D(25-ヒドロキシビタミンD)という指標で測定できます。20ng/mL未満は「欠乏」、20〜30ng/mLは「不足」、30ng/mL以上が「充足」と分類されるのが一般的です。
ビタミンKについては、血液凝固時間(PT-INR)の測定が一般的ですが、近年は未カルボキシル化オステオカルシンやdp-ucMGPといったマーカーも注目されています。
変形性膝関節症が気になる方は、整形外科や内科の主治医にビタミンDの血液検査について相談してみてください。
変形性膝関節症の予防には偏らない食生活が基本になる
ビタミンDやKだけに注目するのではなく、タンパク質、カルシウム、マグネシウムなどをバランスよく摂る工夫が、骨と軟骨の健康維持には大切です。
とくにタンパク質は筋肉や軟骨の材料となるため、毎食欠かさず適量を摂取するよう心がけましょう。
極端な食事制限やダイエットは栄養不足を招く原因になります。体重管理が必要な場合も、栄養バランスを崩さない範囲で緩やかに行うことをおすすめします。
膝の健康を長く保つためには、毎日の食事を「治療の一部」として意識することが何より大切です。
よくある質問
- ビタミンDが不足すると変形性膝関節症はどのくらい悪化しやすくなりますか?
-
複数の研究報告によると、血中ビタミンD濃度が15ng/mL未満の方は、充足している方と比べて変形性膝関節症の進行リスクが約2倍以上に高まるとされています。
とくに副甲状腺ホルモンの数値も同時に高い場合にはリスクがさらに増大すると報告されています。
ビタミンDの欠乏は膝の骨密度を低下させるだけでなく、軟骨の代謝にも間接的な影響を与えます。気になる方は一度血液検査で25(OH)Dの濃度を確認してみることをおすすめします。
- ビタミンK不足は変形性膝関節症の軟骨損傷にどのように関係していますか?
-
ビタミンKは軟骨内のMGP(マトリックスGlaタンパク質)を活性化し、カルシウムの異常沈着を防ぐ働きを担っています。ビタミンKが不足するとMGPが機能不全に陥り、軟骨に本来沈着すべきでないカルシウムが蓄積して硬くなります。
大規模な縦断研究では、潜在的なビタミンK欠乏のある方は30か月以内に軟骨損傷を発症するリスクが約2.4倍に上昇したと報告されています。
軟骨を柔軟に保つためには、日頃からビタミンKを十分に摂取することが大切です。
- 変形性膝関節症の予防に適したビタミンDの摂取量はどれくらいですか?
-
日本の食事摂取基準では、成人のビタミンD目安量は8.5μg/日(340IU/日)と定められています。ただし骨の健康維持を考慮した国際的なガイドラインでは、血中25(OH)D濃度を30ng/mL以上に保つために1日600〜800IU程度の摂取を推奨しています。
過剰摂取を避けるため、サプリメントを利用する場合は耐容上限量(4000IU/日)を超えないよう注意してください。まずは青魚やきのこ類など、食事からの摂取を中心に考えることが安全です。
- ビタミンKを効率よく摂取できる食品にはどのようなものがありますか?
-
ビタミンK1(フィロキノン)は、ほうれん草、小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。ビタミンK2(メナキノン)は納豆が特に優れた供給源であり、1パックで約240〜380μgを摂取できます。
ビタミンKは脂溶性ビタミンのため、油と一緒に摂取すると吸収効率が高まります。緑黄色野菜を炒め物にしたり、納豆にごま油を少量加えたりする工夫が効果的です。
ただしワルファリンを服用中の方は、摂取量を急に変えないよう主治医にご相談ください。
- ビタミンDとビタミンKを同時に摂ると変形性膝関節症の予防効果は高まりますか?
-
ビタミンDは腸からカルシウムを吸収し、ビタミンKはそのカルシウムを骨に適切に届ける役割を果たします。
2つの栄養素が連携して骨のカルシウム代謝を正常に保つため、同時に十分量を摂取することで骨や軟骨への保護効果が期待できます。
実際に、ビタミンDとビタミンKの両方が充足している方は身体機能の低下が緩やかであるという研究報告もあります。片方だけでなく両方の栄養素を意識して摂取する食習慣を日頃から心がけることが膝の健康維持につながるでしょう。
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