病気ではなく「骨格」が遺伝する|O脚体質の継承と変形性膝関節症のリスク

「親の膝が悪いから、自分もいずれ同じようになるのでは」と不安を感じる方もいるようです。変形性膝関節症は、病気そのものが直接遺伝するわけではありません。
受け継がれるのは、膝関節の形や脚のアライメント(骨の並び方)といった骨格上の特徴です。とくにO脚(内反膝)の傾向を持つ方は、膝の内側に荷重が偏りやすく、長年のうちに軟骨のすり減りが進みやすいことが研究で示されています。
ただし、骨格的な素因があっても、体重管理や筋力トレーニングなどの生活習慣で発症リスクを下げられる余地は十分にあります。
この記事では、遺伝と変形性膝関節症の関係を正しく整理し、O脚体質を受け継いだ方が膝を守るためにできる具体的な対策をお伝えします。
変形性膝関節症は「病気そのもの」ではなく「骨格の特徴」が親から子へ受け継がれる
変形性膝関節症の発症には遺伝的要因が約39〜65%関与しているとされていますが、遺伝するのは「膝が悪くなる病気」ではなく、膝関節を構成する骨の形や脚全体のアライメントといった骨格的特徴です。
親から受け継いだ骨格の構造が、将来的に膝への負担のかかり方を左右すると考えられています。
双子研究が明らかにした遺伝の影響度
英国で行われた双子研究では、一卵性双生児と二卵性双生児の膝のレントゲン所見を比較しました。一卵性双生児のほうが膝の変形パターンの一致率が高く、遺伝的要因の寄与は39〜65%に達することが報告されています。
また、膝関節症の進行に関する別の縦断的双子研究では、骨棘(こつきょく:骨のとげ状の出っ張り)や関節裂隙(れつげき:骨と骨のすき間)の狭小化について、遺伝率が69〜80%に及ぶとの結果も得られています。
環境要因だけでは説明しきれない、遺伝の大きな影響がうかがえるデータです。
遺伝するのは膝の「形」と「骨の構造」
骨格の遺伝で注目されているのが、大腿骨遠位部(太ももの骨の膝側)と脛骨近位部(すねの骨の膝側)の形態です。研究によると、骨の形状は性別や個人によって異なり、その違いが変形性膝関節症の発症リスクに関連することがわかっています。
具体的には、大腿骨と脛骨の接合角度や、骨頭のかたち、骨軸に対する傾きなどが親子間で似る傾向があります。骨の形が似れば、荷重のかかり方も似るため、同じ部位に負担が蓄積しやすくなるでしょう。
変形性膝関節症の遺伝率(部位別)
| 部位 | 遺伝率の目安 | 研究デザイン |
|---|---|---|
| 膝関節 | 39〜65% | 双子研究 |
| 股関節 | 約60% | 双子研究 |
| 脊椎 | 約70% | 双子研究 |
| 手指 | 39〜65% | 双子研究 |
親がO脚なら自分もO脚になりやすいのか
結論から言えば、親がO脚(内反膝)の傾向を持っている場合、子どもも同様の脚のアライメントを受け継ぐ確率は高まります。
ただし、O脚の程度は成長過程での栄養状態や運動習慣、体重などの環境要因にも左右されるため、必ずしも親と同じ角度になるとは限りません。
大切なのは、「親がO脚だから自分も膝関節症になる」と決めつけないことです。骨格の傾向を知ったうえで、適切な予防策を講じることが膝を守る第一歩といえます。
O脚(内反膝)はなぜ変形性膝関節症のリスクを高めるのか
O脚の方は膝の内側に過剰な荷重がかかりやすく、内側の関節軟骨がすり減るスピードが速まることが複数の研究で確認されています。脚のアライメントが正常な方と比べて、変形性膝関節症の発症リスクはおよそ2倍に上ると報告されています。
膝の内側に集中する荷重が軟骨を削る
人が立っているとき、体重は膝関節の内側と外側に分散されます。しかしO脚では、下肢の力学的軸(荷重線)が膝の中心より内側を通るため、内側コンパートメントへの負荷が増大します。
歩行中にはさらに膝の内転モーメント(内側へ押す力)が加わり、内側の軟骨と半月板に繰り返しの圧縮力がかかります。
年月を経てこの偏った荷重が蓄積すると、軟骨の摩耗が進み、やがてレントゲンで関節裂隙の狭小化として確認できるようになります。
内反アライメントと軟骨損傷の関係を示す研究データ
オランダの大規模疫学研究(ロッテルダム研究)では、1,501人の参加者を対象に平均6.6年間追跡しました。
内反アライメント(O脚方向のずれ)を持つ膝は、正常なアライメントの膝と比較して変形性膝関節症の新規発症リスクが約2.06倍に高まっていました。
さらに米国の多施設共同研究(MOST研究)でも、内反アライメントが膝関節症の新規発症リスクを約1.49倍に増加させることが確認されています。
これらの報告は、O脚が単なる見た目の問題ではなく、膝関節の健康に直結する構造的リスクであることを裏付けています。
体重増加がO脚のリスクをさらに加速させる
O脚のリスクは体重によって増幅されます。ロッテルダム研究の解析では、O脚と変形性膝関節症発症の関連は、とくに肥満や過体重の方に顕著であり、標準体重の方ではその関連が弱まる傾向がみられました。
体重が重いほど膝にかかる荷重の絶対量が増え、O脚による内側への偏りがいっそう強調されます。逆に言えば、O脚の傾向があっても体重を適正範囲に保つと、膝にかかる過剰な負荷を軽減できるということです。
O脚(内反アライメント)と変形性膝関節症リスク
| 研究名 | リスク倍率 | 対象 |
|---|---|---|
| ロッテルダム研究 | 約2.06倍 | 1,501人・6.6年追跡 |
| MOST研究 | 約1.49倍 | 2,958膝・30か月追跡 |
| Sharma 2001 | 進行リスク増大 | 230人・18か月追跡 |
遺伝子レベルで見えてきたO脚体質と変形性膝関節症をつなぐ分子経路
近年のゲノム研究により、変形性膝関節症に関連する遺伝子座は300以上にのぼることが判明しています。
なかでも骨や関節の形成に関わる遺伝子の変異が、O脚を含む骨格的特徴と膝関節症リスクの橋渡しをしている可能性が注目されています。
GDF5遺伝子の変異が膝の発達に影響を与える
GDF5(成長分化因子5)は、胎児期の四肢の関節形成に関わるタンパク質をコードする遺伝子です。
日本の研究チームが2007年に発表した報告では、GDF5遺伝子の5’非翻訳領域にあるSNP(一塩基多型:rs143383)が、変形性膝関節症の感受性と有意に関連することが示されました。
このSNPのT(チミン)アレルを持つ方はGDF5の発現量が低下し、関節軟骨の形成や維持に影響を及ぼすと考えられています。
GDF5の発現低下は関節の構造的な脆弱性につながるため、O脚のような荷重バランスの偏りと合わさると、軟骨損傷のリスクが高まりやすくなります。
骨格の形成に関わる300以上の遺伝子座
大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)の進展により、変形性膝関節症との関連が示唆される遺伝子座は300を超えています。これらの遺伝子座の多くは、骨の発生・成長・リモデリング(再構築)や軟骨の代謝に関与する経路上に位置しています。
たとえば、WNTシグナル経路は骨格形成の初期段階から成人の骨・軟骨の恒常性維持まで幅広く関わっており、この経路に含まれるFRZB遺伝子の変異が股関節や膝関節の変形性関節症と関連する報告もあります。
複数の遺伝子が少しずつリスクに寄与する「多因子遺伝」の典型例といえるでしょう。
- GDF5:関節の発生・分化に関与し、SNP rs143383が膝関節症リスクと関連
- COL2A1:2型コラーゲンをコードし、軟骨の構造的強度を左右する
- FRZB:WNTシグナル経路の拮抗因子で、骨格の形態形成に影響する
- DVWA:軟骨の保護に関わり、膝関節症の感受性遺伝子として報告あり
遺伝的リスクは「確定」ではなく「傾向」にすぎない
遺伝子に変異が見つかったからといって、変形性膝関節症を必ず発症するわけではありません。個々の遺伝子変異がもたらすリスク上昇は小さく、環境因子(体重、運動習慣、職業上の負荷など)との組み合わせによって発症の有無が決まります。
スウェーデンの大規模双子研究でも、BMI(体格指数)が遺伝率を修飾することが報告されており、肥満の女性では膝関節置換術に至る遺伝的リスクがとくに顕著でした。
遺伝的な「傾向」を把握することは、生活習慣の改善というかたちで予防に活かすための出発点です。
「うちの家系は膝が悪い」と感じたときに確認したい家族歴の読み解き方
両親や祖父母に変形性膝関節症の方がいる場合、自分自身のリスクがどの程度なのかを正しく評価することが予防の第一歩です。家族歴の情報は、遺伝的な素因の手がかりになるだけでなく、いつ頃から予防を意識すべきかの目安にもなります。
家族歴は膝だけでなく股関節や脊椎にも注目する
変形性関節症の遺伝的素因は、膝だけに限定されるものではありません。
双子研究では、股関節の遺伝率が約60%、脊椎が約70%と報告されており、家系のなかに股関節や腰の変形性関節症を抱える方がいる場合、膝にも同様の遺伝的影響が及んでいる可能性があります。
家族歴を確認するときは、「膝が痛い」という情報だけでなく、「人工関節の手術を受けた」「腰の椎間板が悪い」「股関節の手術をした」といった情報も合わせて整理すると、遺伝的リスクをより正確に把握しやすくなります。
遺伝的リスクが高くても発症を回避できた家族がいる場合
興味深いのは、同じ家系でも発症する方としない方がいるという事実です。
兄弟姉妹研究(sibpair study)では、軟骨体積や骨のサイズに高い遺伝率が認められた一方、実際に画像上の変形性膝関節症を発症するかどうかには、体重や筋力といった後天的な要素が大きく関与していました。
つまり、同じ遺伝的素因を持っていても、体重を適正に保ち、下肢の筋力を維持していた家族は膝の症状が軽かった、あるいは発症しなかったというケースは珍しくありません。家族歴がある方こそ、予防行動の効果を実感しやすいともいえるでしょう。
整形外科で行う膝のアライメント検査とは
自分の脚のアライメントが内反(O脚)寄りかどうかは、整形外科で撮影する全下肢荷重時レントゲン(立位の状態で股関節から足首までを1枚に写す撮影法)で正確に評価できます。
この画像から、大腿骨と脛骨の力学的軸がなす角度(HKA角)を計測し、内反・外反の程度を数値で把握します。
家族に変形性膝関節症の方がいて、ご自身もO脚気味だと感じている場合は、症状がなくても一度アライメント検査を受けておくと安心です。客観的なデータがあれば、今後の経過観察にも役立ちます。
家族歴の確認ポイント
| 確認項目 | 具体的に聞くこと | 関連する遺伝的影響 |
|---|---|---|
| 膝関節 | 人工膝関節の手術歴 | 膝の骨格構造・軟骨代謝 |
| 股関節 | 人工股関節の手術歴 | 骨盤〜大腿骨の形態 |
| 脊椎 | 椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄 | 脊椎の骨・椎間板構造 |
| 脚の形状 | O脚やX脚の傾向 | 下肢アライメント |
O脚体質を受け継いだ人が今日から始める膝の守り方
骨格的にO脚の傾向を受け継いでいても、日常生活のなかで膝への負担を軽減する手段はいくつもあります。体重管理、筋力トレーニング、装具の活用という3つの柱を押さえると、変形性膝関節症の発症や進行を遅らせることが期待できます。
体重管理が膝への負荷を減らす第一歩になる
歩行中に膝にかかる荷重は体重の約2〜3倍に達するとされています。そのため、体重が5kg減れば、膝にかかる力は10〜15kg分軽くなる計算です。O脚の方は内側への荷重集中が起きやすいぶん、体重管理の恩恵を受けやすいといえます。
急激な食事制限ではなく、バランスの良い食事と適度な有酸素運動を組み合わせた緩やかな体重コントロールが望ましいです。BMIを25未満に維持することが、膝の健康を守るうえでの現実的な目標になります。
太ももの筋力を鍛えて膝関節を安定させる
膝関節を支える主要な筋肉は大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)です。大腿四頭筋の筋力が十分にあると、膝関節にかかる衝撃を筋肉が吸収し、軟骨への直接的なダメージを軽減してくれます。
兄弟姉妹研究のデータでは、下肢の筋力にも42〜64%の遺伝率が認められています。筋力が弱い傾向を遺伝的に持っている方は、意識的にトレーニングを行う必要があるかもしれません。
スクワットやレッグプレスなど、太ももを中心に鍛える運動を週2〜3回の頻度で続けると効果的です。
- スクワット:膝がつま先より前に出すぎないよう注意し、浅めから始める
- レッグエクステンション:椅子に座った状態で膝を伸ばし、太もも前面を鍛える
- ウォーキング:1日30分程度の平地歩行で、膝に過度な負担をかけずに筋力を維持する
インソールや装具で膝の荷重バランスを整える
O脚による荷重の偏りを物理的に補正する方法として、足底板(インソール)や膝装具(サポーター)の使用があります。
外側が高くなったウェッジ型インソールを靴に入れると、荷重線がやや外側に移動し、膝の内側への過剰な圧力を分散させる効果が期待できます。
装具の選択は医師や理学療法士と相談のうえで行うことが大切です。市販品で対応できるケースもありますが、O脚の程度や膝の状態によってはオーダーメイドの装具が適している場合もあります。
変形性膝関節症を早期に発見するために医療機関でできる検査
O脚体質で家族歴もある方は、症状が出る前から定期的に検査を受けておくと、変形が軽度なうちに対策を打てる確率が高まります。レントゲンとMRIという2つの画像検査を適切に使い分けると、膝の状態を多角的に評価できます。
レントゲンで膝の隙間と骨の角度を測る
レントゲン検査は、変形性膝関節症の評価において基本となる画像検査です。立位(荷重をかけた状態)で撮影すると、関節裂隙の幅を正確に測定でき、Kellgren-Lawrence分類(KL分類:グレード0〜4)で重症度を判定します。
全下肢の荷重時レントゲンでは、大腿骨骨頭の中心から足首までの力学的軸を描くことで、O脚やX脚の程度を角度として数値化できます。
この検査は痛みもなく短時間で終わるため、家族歴のある方は40代のうちに一度受けておくと参考になるでしょう。
MRIで軟骨や半月板の状態を詳しく確認する
MRI(磁気共鳴画像法)は、レントゲンでは写らない軟骨、半月板、靱帯、骨髄浮腫などを詳細に描出できる検査です。
変形性膝関節症の初期段階では、レントゲン上の変化が乏しくてもMRIで軟骨の微細な損傷が見つかる場合があります。
3D骨形態解析の技術を用いた研究では、レントゲンで変形性膝関節症と診断される少なくとも1年以上前から、MRI上で骨の形状変化が確認できたとの報告もあります。早期発見を目指すうえで、MRIは非常に有用な検査といえます。
早めの受診が治療の選択肢を広げる
変形性膝関節症は進行性の疾患であり、一度失われた軟骨は自然には再生しにくい組織です。だからこそ、軟骨がまだ残っている早い段階で対策を始めることが、将来の治療の選択肢を大きく左右します。
KL分類のグレード2(軽度)の段階であれば、リハビリテーションやインソール、減量指導などの保存的治療で十分に対応できるケースが多いです。
グレード3〜4(中等度〜重度)に進行すると手術療法を検討する必要が出てくるため、「まだ痛くないから大丈夫」と先延ばしにせず、早めの受診を心がけてください。
変形性膝関節症の主な画像検査
| 検査 | 評価できる内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 単純レントゲン | 関節裂隙・骨棘・骨の角度 | 荷重位で撮影し重症度を判定 |
| 全下肢レントゲン | 下肢アライメント(HKA角) | O脚・X脚の程度を数値化 |
| MRI | 軟骨・半月板・靱帯・骨髄浮腫 | 初期変化の検出に優れる |
「遺伝だから仕方ない」で終わらせない|生活習慣の改善で膝を長持ちさせる
遺伝的な骨格の特徴は変えられませんが、日々の生活習慣を見直すと膝関節への負担を大幅に軽減できます。軟骨を健全に保ち、変形の進行を食い止めるために、運動・姿勢・定期検診という3つの軸で膝に働きかけましょう。
適度な運動は軟骨に栄養を届ける
関節軟骨には血管が通っていないため、栄養は関節液から浸透する形で供給されます。適度に膝を動かすと、関節液が軟骨に押し込まれるようにして栄養が行き渡ります。
反対に、安静にしすぎると軟骨への栄養供給が滞り、かえって劣化が進むことがわかっています。
ウォーキングや水中運動、自転車こぎなどの低負荷の有酸素運動は、膝に過度なストレスをかけずに関節液の循環を促します。運動は週に150分以上(1日あたり約30分を5日間)を目安に行うとよいでしょう。
膝に優しい運動と控えたい動作
| 分類 | 推奨される運動 | 控えたい動作 |
|---|---|---|
| 有酸素運動 | 平地ウォーキング・水中歩行 | 長距離のランニング |
| 筋力トレーニング | 浅いスクワット・レッグプレス | 深いスクワット・ランジ |
| 柔軟運動 | ストレッチ・ヨガ | 無理な正座・あぐら |
正座や深いしゃがみ込みを減らすだけでも膝の負担が変わる
日本の生活様式では、正座や和式トイレの使用など膝を深く曲げる動作が多くみられます。膝を深く屈曲させると、膝蓋大腿関節(膝の皿と太ももの骨の間)や脛骨大腿関節への圧縮力が急激に増大します。
O脚の傾向がある方は、椅子とテーブルの生活に切り替える、床に座るときは座椅子を使うといった工夫だけでも膝への負担を減らせます。生活動作を少し変えるだけで、長期間にわたる軟骨への累積ダメージに差が出てきます。
定期的な経過観察で変化を見逃さない
O脚体質や家族歴のある方は、たとえ現時点で痛みがなくても、1〜2年ごとにレントゲン検査を受けて膝の状態をモニタリングしましょう。変形性膝関節症は緩やかに進行するため、年単位の比較が必要です。
定期検査を続けていれば、関節裂隙の幅がわずかに狭くなり始めた段階で気づけます。変化が出始めた時点で生活習慣の修正や治療介入を行えば、進行を遅らせることが十分に可能です。
「遺伝だから」と諦めるのではなく、「遺伝的リスクを知っているからこそ早く動ける」と前向きに捉えてください。
よくある質問
- 変形性膝関節症の遺伝率はどのくらいですか?
-
双子を対象にした研究によると、膝関節における変形性関節症の遺伝率は39〜65%と推定されています。これは、変形性膝関節症の発症しやすさのおよそ半分が遺伝的要因で説明できることを意味しています。
ただし、残りの半分は体重や運動習慣、職業上の負荷などの環境要因が占めています。遺伝率が高いからといって発症が確定するわけではなく、生活習慣の工夫でリスクを低減できる余地は大きいです。
- O脚の骨格的特徴は親から子どもへ遺伝しますか?
-
O脚(内反膝)の傾向は、大腿骨や脛骨の形態・角度といった骨格的特徴として親から子へ受け継がれやすいことが報告されています。
とくに大腿骨遠位部や脛骨近位部の骨の形状は遺伝的な影響を受けやすく、親子間で似た脚のアライメントを持つケースは珍しくありません。
ただし、O脚の程度は成長期の栄養状態や運動歴、体重などにも左右されます。遺伝だけで脚の形状がすべて決まるわけではないため、生活環境の影響も合わせて考慮する必要があります。
- O脚だと変形性膝関節症の発症リスクは何倍になりますか?
-
オランダのロッテルダム研究では、O脚(内反アライメント)を持つ膝は正常なアライメントの膝と比べて、変形性膝関節症の新規発症リスクが約2.06倍に増加すると報告されています。
また、すでに変形性膝関節症がある膝では、O脚が進行リスクを約2.90倍に高めることも示されました。
この関連はとくに過体重・肥満の方に顕著であり、標準体重の方では統計的な有意差がみられませんでした。O脚のリスクを減らすうえで、体重管理が非常に重要であることがわかります。
- 変形性膝関節症に関連するGDF5遺伝子とは何ですか?
-
GDF5(成長分化因子5)は、骨や関節の発生・分化に関わるタンパク質をコードする遺伝子です。2007年に日本の研究グループが発表した論文により、GDF5遺伝子の5’非翻訳領域に存在するSNP(rs143383)が、日本人やアジア人集団において変形性膝関節症と有意に関連することが明らかになりました。
このSNPを持つ方はGDF5の発現量が低下し、関節軟骨の形成や維持に影響が及ぶと考えられています。ただし、この遺伝子変異だけで発症が決まるわけではなく、多数の遺伝子と環境要因が複合的に関わっています。
- O脚の遺伝的素因がある場合、どのような予防策が効果的ですか?
-
O脚の遺伝的素因がある方にとって、もっとも効果的な予防策は体重管理、筋力トレーニング、定期的な検査の3つです。体重を適正範囲に保つと膝の内側にかかる過剰な荷重を軽減でき、大腿四頭筋の筋力を強化することで膝関節の安定性を高められます。
さらに、外側ウェッジ型のインソールを使用すると、荷重線を外側に補正し内側への負担を分散させる効果が期待できます。
家族歴のある方は40代のうちからアライメント検査を受け、経過を観察しておくことが将来の膝の健康を守る有効な手段です。
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