手指が曲がるヘバーデン結節と変形性膝関節症|女性に多い全身性変形性関節症の関連

手指が曲がるヘバーデン結節と変形性膝関節症|女性に多い全身性変形性関節症の関連

「指の第一関節が腫れて痛むヘバーデン結節と診断されたけれど、最近になって膝も痛み出した」というかたは非常に多くいらっしゃいます。

指だけでなく膝や腰など、体のあちこちが痛くなると「私の体はどうなってしまうのだろう」と強い不安を感じるのは当然です。

実は、指の変形と膝の痛みには「全身性変形性関節症」という共通の背景が隠れている場合があります。

この記事では、なぜ複数の関節に痛みが広がるのか、その理由と女性ホルモンや代謝との関係、そして今日からできる対策について専門的な視点から分かりやすく解説します。

目次

手指のヘバーデン結節と変形性膝関節症が同時に起こるのはなぜ?

手指に痛みが出るヘバーデン結節と、膝の痛みである変形性膝関節症が同時に現れることは決して珍しくありません。

なぜなら、これらは単なる使いすぎによる局所的な問題ではなく、体全体に関わる「全身性変形性関節症」という共通の素因を持っている可能性が高いからです。

全身性変形性関節症とはどのような状態か

一般的に変形性関節症というと、使いすぎた特定の関節だけがすり減っていくイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、近年では「全身性変形性関節症(Primary Generalized Osteoarthritis)」という概念が注目を集めています。

これは、特定の関節だけでなく、脊椎、手指、膝、股関節など、全身の複数の関節で軟骨の変性や骨の変形が進行しやすい体質や状態を指します。

もしあなたが、指も膝も痛いと感じているなら、それは個別の怪我や病気ではなく、体全体の関節が変化しやすい時期に差し掛かっているサインかもしれません。

親から受け継ぐ関節の弱さと向き合う

「母も祖母も指が曲がっていて、膝も悪かった」という話をよく耳にします。ヘバーデン結節や変形性膝関節症には、遺伝的な背景が強く関与していることが多くの研究で示唆されています。

特定の遺伝子が、軟骨の強度や修復能力、炎症の起こりやすさに影響を与えているのです。ご家族に関節のトラブルを抱えている人がいる場合、あなた自身の関節も同じような弱さを持っている可能性があります。

遺伝だからと諦める必要はありませんが、自分の体が持つ傾向を正しく把握し、人一倍ケアを心がけることが大切です。

比較項目局所的な変形性関節症全身性変形性関節症
主な原因怪我、過度な使用、体重負荷遺伝、体質、代謝、加齢
発症箇所膝だけ、股関節だけなど単発指、膝、腰など3か所以上
進行の仕方患部の負荷状況に依存する体の内部環境の変化で進む

年齢とともに全身のクッションが減っていく

関節の表面を覆っている軟骨は、水分とコラーゲン、プロテオグリカンといった物質で構成されています。加齢とともにこれらの成分を作り出す能力が低下すると、軟骨は水分を保てなくなり、弾力性を失います。

この軟骨の質の低下は、指先だけの問題ではなく、膝や腰を含めた全身の関節で同時に進行します。

ヘバーデン結節で指のクッションが減っているとき、膝のクッションも同じようにすり減りやすくなっているのです。

全身の軟骨が一斉に摩耗しやすい状態にあると自覚し、関節への負担を減らす生活へ切り替える必要があります。

女性ホルモンの減少が手指と膝の変形を加速させる

女性の体は、閉経前後を境に劇的な変化を迎えます。特にヘバーデン結節と変形性膝関節症の発症には、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が深く関わっています。

関節を守ってくれるエストロゲンの力

エストロゲンというホルモンは、単に生殖機能を司るだけでなく、骨や軟骨、腱などの結合組織を健康に保つ強力な守護神としての役割を担っています。

具体的には、軟骨細胞の破壊を抑えたり、関節内の炎症を鎮めたりする作用があります。

また、痛みを感じる神経の過敏さを抑える働きもあるため、エストロゲンが十分に分泌されている間は、多少の負担がかかっても関節痛を感じにくい状態が保たれています。

ホルモンが減ると関節が壊れやすくなる理由

更年期を迎えて閉経すると、エストロゲンの分泌量は急激にゼロに近づきます。これまで守られていた関節の軟骨や腱は、突然保護者を失ったような状態になり、炎症や変形が一気に進み始めます。

ヘバーデン結節が閉経前後の女性に圧倒的に多いのも、このエストロゲンの急減が引き金となって指の関節にある滑膜(かつまく)が腫れ上がるためです。

同様に、膝関節の軟骨も保護を失うため、日常の動作による摩耗に耐えきれず、変形性膝関節症が進行しやすくなります。

腫れと痛みが強くなる仕組み

エストロゲンが減少すると、関節を包んでいる「滑膜」や、指を動かす「腱」が腫れぼったくなります。これを滑膜炎や腱鞘炎と呼びますが、この腫れこそが強い痛みの原因です。

特に朝起きたときに指がこわばったり、膝が動かしにくかったりするのは、夜間に炎症物質が溜まり、滑膜がむくんでいるためです。

ホルモンの変動によるこの時期特有の炎症は、適切な対処を行わないと、関節の形が変わってしまう変形へとつながっていきます。

年代・時期ホルモンの状態関節への影響
40代(プレ更年期)分泌が不安定になり乱高下指のこわばり、膝の違和感
50代(閉経前後)急激に低下し枯渇するヘバーデン結節の発症、膝痛
60代以降低い状態で安定する骨変形の定着、慢性的な痛み

リウマチと間違えやすい症状を見分けましょう

手指や膝など複数の関節が痛むと、「関節リウマチではないか」と心配になる方が大勢います。全身性変形性関節症と関節リウマチは、治療法が全く異なるため、早期に見分けることが非常に重要です。

朝の手のこわばりは何分続く?

ヘバーデン結節や変形性膝関節症でも、朝起きたときの手のこわばりは起こります。しかし、その持続時間は比較的短く、動き始めると数分から長くても30分程度で緩和する場合がほとんどです。

一方で、関節リウマチによるこわばりは非常に強く、1時間以上、時には午前中いっぱい続くときがあります。

朝、顔を洗ったり着替えたりする動作が困難なほどのこわばりが長時間続く場合は、リウマチの可能性を疑う必要があります。

右手も左手も同じように痛む?

関節リウマチは全身の免疫異常であるため、右手の第二関節が痛めば左手の第二関節も痛むといったように、左右対称に症状が出やすい特徴があります。

対して、全身性変形性関節症の場合は、よく使うほうの手指や、体重のかかり方によって片方の膝だけが強く痛むなど、左右差が見られることがよくあります。

もちろん、変形性関節症でも両手両膝が痛くなる場合はありますが、リウマチほど厳密な左右対称性は示さない傾向にあります。

チェック項目変形性関節症(ヘバーデン等)関節リウマチ
手指の場所第一関節(爪のすぐ下)第二関節や指の付け根
膝の症状歩き始めや階段で痛む安静にしていても痛む
全身症状関節以外は元気なことが多い微熱、だるさ、食欲不振

血液検査でわかる数値の違い

最も確実な判断材料は血液検査です。関節リウマチでは、CRP(炎症反応)やリウマチ因子(RF)、抗CCP抗体といった数値が陽性になります。

しかし、ヘバーデン結節や変形性膝関節症では、局所的な炎症はあっても、血液検査の数値にはほとんど異常が現れません。

「痛いのに検査は正常」と言われた場合は、リウマチではなく変形性関節症である可能性が高いと言えます。不安な場合は自己判断せず、必ず専門医の検査を受けてください。

メタボリックシンドロームが関節の炎症を悪化させる

「太っていると膝に悪い」というのは重さの問題だけではありません。

実は、脂肪組織そのものが関節に悪影響を与える物質を放出していることが分かってきました。体重管理だけでなく、代謝異常の改善も大切です。

脂肪が軟骨を溶かす物質を出している

内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から「アディポサイトカイン」という生理活性物質が分泌されます。

この中には、体に良い働きをするものもありますが、肥満状態になると炎症を引き起こす悪玉物質(炎症性サイトカイン)が大量に放出されるようになります。

この物質は血液に乗って全身を巡り、指や膝の関節に到達して軟骨を溶かす酵素の働きを活発にしてしまいます。

つまり、お腹周りの脂肪が多い状態は、全身の関節に対して常に微弱な攻撃を仕掛けているのと同じなのです。

血糖値が高いと関節が硬くなる

甘いものの食べ過ぎや運動不足による高血糖も、関節にとっては大敵です。血液中の余分な糖分は、体内のタンパク質と結びついて「AGEs(終末糖化産物)」という老化物質を作り出します。

関節の軟骨や靭帯はコラーゲンというタンパク質でできていますが、このコラーゲンが糖化してAGEsに変わると、しなやかさを失い、硬く脆くなってしまいます。

糖尿病やその予備軍の人に変形性関節症が多いのは、この糖化によって関節の質が劣化してしまうからです。

体の火事を消して関節を守る

メタボリックシンドロームの状態は、体の中で常に火事が起きているような「慢性炎症」の状態です。この火種を消さない限り、いくら痛み止めを使っても関節の破壊は止まりません。

食事の内容を見直し、適度な運動を取り入れて内臓脂肪を減らすことは、膝の負担を減らすだけでなく、手指のヘバーデン結節の痛みを鎮めるためにも非常に有効な手段です。

全身の代謝を整えると、結果として関節を守ることにつながります。

  • BMI25以上の肥満傾向にある
  • 健康診断で血糖値が高めだと指摘された
  • 中性脂肪の値が高く、善玉コレステロールが低い
  • 血圧が高く、血管に負担がかかっている

日常生活の姿勢や動作が全身の関節を壊す

ヘバーデン結節も変形性膝関節症も遺伝やホルモンの影響を受けますが、最終的に痛みが出るかどうかは、日々の体の使い方にかかっています。無意識に行っている姿勢や動作の癖を見直しましょう。

背中が丸まると膝と指が悪くなる

一見関係なさそうに見えますが、背中が丸まった猫背の姿勢は、全身の関節連鎖を崩します。

猫背になると骨盤が後傾し、バランスを取ろうとして膝が曲がったままの状態になりがちです。これが変形性膝関節症を悪化させる大きな要因となります。

また、猫背で首が前に出ると、首から腕、指先へとつながる神経や血流が圧迫されます。血行不良は末端の指先の回復力を低下させ、ヘバーデン結節の痛みを長引かせる原因となります。

じっとしていると関節の栄養が止まる

関節の軟骨には血管が通っていません。代わりに、関節包の中にある「関節液」から栄養をもらっています。

この関節液は、関節を曲げ伸ばしして圧力が変わるため、スポンジのように軟骨に出入りします。

しかし、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、このポンプ作用が働かず、軟骨が栄養不足に陥ります。指も膝も、適度に動かし続ける取り組みが栄養補給には必要です。

30分に1回は立ち上がったり、手をグーパーしたりして、関節液を循環させる意識を持ちましょう。

NG習慣手指への悪影響膝関節への悪影響
スマホの長時間操作親指や指先への過剰負荷座りっぱなしによる血流低下
重い買い物袋を持つ第一関節が引き伸ばされる体重以上の負荷が膝にかかる
冷たい床に座る全身が冷えて痛みが強まる正座や横座りで関節がねじれる

足元の不安定さが全身の関節を歪める

足元が不安定だと、その歪みは膝、股関節、背骨を通じて全身に伝わります。ヒールの高い靴や、サイズの合わない靴を履いて歩くと、膝の内側に過度な負担がかかり、O脚変形を加速させます。

また、不安定な足元で転ばないようにと無意識に手に力が入り、指先を強く握りしめて歩く癖がついている人もいます。

足元を安定させるスニーカーや、インソールを活用することは、膝だけでなく全身の緊張を解き、指先への余計な力みを防ぐためにも大切です。

食事とサプリメントで全身の関節を守る方法

失われた軟骨を完全に元通りにするのは難しいですが、食事や栄養補給によって今ある軟骨を守り、痛みを和らげることは可能です。

エクオールが女性の関節を救う

ヘバーデン結節や更年期以降の変形性膝関節症の対策として、今最も注目されている成分が「エクオール」です。

これは大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されてできる物質で、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。

エクオールは、エストロゲン受容体に結合して、関節の炎症を抑えたり、軟骨の保護を助けたりします。

ただし、日本人の二人に一人は体内でエクオールを作れない体質だと言われています。自分が作れる体質かどうか検査キットで調べたり、サプリメントで直接摂取したりすることが推奨されます。

成分名手指への期待効果膝への期待効果
エクオール腫れや痛みの緩和軟骨破壊の抑制
コラーゲン腱や皮膚の弾力維持軟骨の材料補給
オメガ3脂肪酸炎症サイクルの遮断関節のこわばり改善

骨と軟骨を丈夫にするビタミンの力

関節の土台となる骨がもろくなると、その上の軟骨も崩れやすくなります。骨の健康にはカルシウムだけでなく、カルシウムの吸収を助けるビタミンDと、骨への定着を促すビタミンKが必要です。

さらに、近年の研究では、ビタミンDには筋肉の機能を維持し、慢性的な痛みを和らげる作用があることも分かってきました。

魚類やキノコ類、納豆などを意識して食事に取り入れるとともに、適度な日光浴を行うと、骨と軟骨の両方を丈夫に保てます。

体のサビを防いで炎症を抑える食事

体内の「酸化(サビつき)」は、炎症を悪化させ、細胞の老化を早める原因となります。全身性変形性関節症の人は、酸化ストレスが高い傾向にあります。

これを防ぐためには、抗酸化作用の強いビタミンC(果物、野菜)、ビタミンE(ナッツ類、アボカド)、ポリフェノール(緑茶、カカオ)などを積極的に摂る心がけが大切です。

彩り豊かな食事を心がけることは、見た目に楽しいだけでなく、体内の炎症を鎮め、指や膝の痛みを内側からコントロールする助けとなります。

痛みを放置せず整形外科を受診すべきタイミング

「年のせいだから仕方がない」「そのうち治るだろう」と我慢しているうちに、関節の変形が取り返しのつかない状態まで進んでしまうケースがあります。

早期に専門家の介入があれば、変形の進行を遅らせ、手術を回避できる可能性が高まります。

検査で見える骨と軟骨のリアルな状態

痛みや変形の原因を正確に知るためには、レントゲンやMRI、超音波(エコー)検査などの画像診断が必要です。

特に超音波検査は、レントゲンには写らない初期の滑膜炎や、微細な骨の隆起を見つけるのに優れています。

ヘバーデン結節の活動期(炎症が強い時期)の判断に役立ちます。

膝に関しても、軟骨のすり減り具合や骨棘(こつきょく)の形成を確認すると、今の自分のステージに合った適切な治療方針を立てられます。

注意が必要な症状

  • 安静にしていてもズキズキと痛みが続き眠れない
  • 関節が赤く腫れ上がり、熱を持っている
  • 膝が急に動かなくなり、ロックされたように感じる
  • 指の変形が急激に進み、物がつかめなくなった

将来も歩き続けるために専門医とタッグを組む

手指と膝、両方の治療を行う場合、ハンドセラピストのいる整形外科や、全身管理が得意なリウマチ科の医師がいるクリニックを選ぶと安心です。

治療の目的は、単に痛みを取ることだけではありません。10年後、20年後も自分の足で歩き、自分の手で生活を楽しめるように、関節の機能を維持することです。

自己流のケアに限界を感じたら、早めに医師に相談し、薬物療法やリハビリテーション、装具療法などを組み合わせたトータルケアを受けることをお勧めします。

よくある質問

ヘバーデン結節と診断された人は変形性膝関節症にも必ずなりますか?

必ずなるわけではありませんが、なりやすい傾向にあるのは事実です。

ヘバーデン結節を持つ人は、持たない人に比べて全身の軟骨が変性しやすい体質を持っているケースが多いため、膝や股関節など他の関節にも変形性関節症を発症するリスクが高くなります。

しかし、体重管理や適切な運動、早期のケアを行うと、膝の発症や進行を予防することは十分に可能です。

変形性膝関節症のための運動はヘバーデン結節に悪影響を与えますか?

基本的に、膝のための運動が手に悪影響を与えることはありません。ウォーキングや水中運動、エアロバイクなどの全身運動は、血流を改善し、代謝を促すため、むしろヘバーデン結節の痛み緩和にも良い影響を与えます。

ただし、重いダンベルを強く握りしめるような筋力トレーニングは、指の関節に負担をかけるため避けるか、工夫して行う必要があります。

ヘバーデン結節と変形性膝関節症に効く特定の食べ物はありますか?

これを食べれば治るという特効薬のような食べ物はありませんが、大豆製品を積極的に摂ることはお勧めです。

大豆に含まれるイソフラボンは、体内でエクオールという成分に変換されると、女性ホルモンに似た働きをして関節を保護します。

また、抗炎症作用のある青魚(オメガ3脂肪酸)や、骨を強くする乳製品などもバランスよく食事に取り入れてください。

全身性変形性関節症の痛みは一生続くのでしょうか?

痛みは一生続くわけではありません。ヘバーデン結節も変形性膝関節症も、炎症が強い「活動期」には強い痛みを伴いますが、変形がある程度進んで骨が固まると、炎症が落ち着き痛みが和らぐ時期が来ます。

適切な治療と生活習慣の改善によって、痛みをコントロールし、日常生活に支障がない状態を維持することは可能です。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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