歩くと膝が外にブレる「ラテラルスラスト」|変形性膝関節症を急速に悪化させる動作

歩くと膝が外にブレる「ラテラルスラスト」|変形性膝関節症を急速に悪化させる動作

歩行時に膝が外側にガクッとずれる「ラテラルスラスト」は、変形性膝関節症の進行を早める危険なサインであることをご存知でしょうか。

この記事ではラテラルスラストがなぜ起こるのか、その原因からセルフチェックの方法、そして今日からできる具体的な改善策までをわかりやすく解説します。

膝の痛みや違和感を放置せず、正しい知識とトレーニングで自分の足を守る方法を身につけましょう。

目次

ラテラルスラストの正体と今すぐできるセルフチェック

ラテラルスラストとは、歩き始めや足が地面に着いた瞬間に、膝が外側へ向かって急激に横ブレを起こす現象です。

本来、膝はまっすぐ曲げ伸ばしするようにできていますが、この横方向への異常な動きが加わることで関節に過度な負担がかかってしまいます。

まずは、その現象の詳細と、自分の膝がどのような状態にあるのかを確認するポイントについて見ていきましょう。

歩行時に膝が外側へ「カクッ」と逃げる現象

歩いているときの足元をよく観察すると、足が地面に着地した瞬間に膝が「カクッ」と外側に逃げるように動くときがあります。これがラテラルスラストと呼ばれる動作の正体です。

正常な歩行では、膝は体重を支えながらスムーズに前方へと体重移動を行いますが、ラテラルスラストが生じている場合、体重がかかるたびに膝が外側へ押し出されるような力が働きます。

この横ブレは一歩ごとに繰り返されるため、膝関節の内側には通常の何倍もの圧縮力がかかり続けることになるのです。

特にO脚傾向のある人や、膝を支える筋力が低下している人によく見られる動きであり、本人が気づかないうちに膝の寿命を縮めているケースが少なくありません。

痛みが出る前からこの動作が現れるケースも多いため、早めの発見が大切です。

自分の歩き方は大丈夫?確認方法

自分の歩き方を客観的に見るのは難しいものですが、鏡を使ったりスマートフォンの動画機能を活用したりするとチェックできます。

まず、全身が映る鏡に向かって普段通りに歩いてみてください。足が地面に着いた瞬間、膝頭が外側に移動していないかを確認します。

また、階段を降りるときに膝が外に逃げる感覚があるかどうかも重要な判断材料です。

もし自分での確認が難しい場合は、家族や友人に後ろや正面から歩く姿を見てもらい、着地の瞬間に膝が横に揺れていないかを聞いてみるのも有効でしょう。

靴の外側ばかりが極端に減っている場合も、足の外側に過剰な力がかかっている証拠であり、ラテラルスラストを起こしている可能性が高いといえます。

ラテラルスラストのチェック

チェック項目動作の特徴リスクの目安
着地時の膝の動き足をついた瞬間に膝が外側に「カクッ」と動く非常に高い
靴底の減り方かかとの外側だけが極端に削れている高い(O脚傾向)
片足立ちの安定性片足で立つと骨盤が傾き膝が外に逃げる中程度(筋力不足)

なぜ膝が外側にブレてしまうのか?

膝が外側にブレる主な原因は、骨格の変形と筋力バランスの崩れにあります。日本人に多いO脚は、もともと膝の内側に負担がかかりやすい構造をしていますが、そこに筋力低下が加わると骨を支えきれなくなります。

特に重要なのが、骨盤を安定させる「中殿筋(ちゅうでんきん)」と、膝を伸ばす筋肉の内側にある「内側広筋(ないそくこうきん)」です。

これらの筋肉が弱まると、着地の衝撃を受け止める際に膝を正しい位置に保てず、外側へと力が逃げてしまいます。

また、足首の硬さや扁平足などの足部の問題も、地面からの衝撃をうまく吸収できずに膝への負担を増幅させ、ラテラルスラストを引き起こす要因となります。

ラテラルスラストが起こりやすい人の特徴

この現象は、変形性膝関節症の初期段階の人や、過去に膝の怪我をした経験がある人に多く見られます。

特に女性は男性に比べて骨盤が広く、筋肉量が少ない傾向にあるため、膝にかかる力学的負担が大きくなりやすく注意が必要です。

また、急激に体重が増加した人も、膝への荷重が増えて関節が不安定になり、横ブレが生じやすくなります。運動不足で足腰の筋肉が衰えている高齢者も典型的なリスク群です。

さらに、ハイヒールやサイズの合わない靴を日常的に履いていることも、足元の安定性を損ない、膝の横ブレを誘発する原因となります。

これらの特徴に当てはまる場合、今は痛みがなくても将来的に膝のトラブルを抱える可能性が高いといえます。

変形性膝関節症を悪化させる「負のスパイラル」

ラテラルスラストは単なる歩き方の癖ではなく、変形性膝関節症を進行させる強力な悪化因子であると認識しましょう。

軟骨のすり減りが加速するしくみ

変形性膝関節症は、膝のクッションである関節軟骨がすり減ることで発症します。ラテラルスラストがあると、一歩歩くたびに膝の内側の骨同士がゴリゴリと強く押し付けられる状態になります。

これを専門的には「内反モーメントの増大」といいます。通常の歩行でも膝には体重の数倍の負荷がかかりますが、横ブレが生じるとその力が一点に集中し、やすりで削るように軟骨を摩耗させます。

滑らかな軟骨表面が荒れ、次第に骨が露出してくるため、激しい痛みや炎症を引き起こす原因となるのです。

つまり、ラテラルスラストの放置は、自ら軟骨を削りながら歩いているのと同じことだと言えるでしょう。

O脚変形とラテラルスラストの悪循環

O脚とラテラルスラストは、互いに悪影響を与え合う「悪循環」の関係にあります。O脚の人は膝の内側に体重が偏りやすいため、もともとラテラルスラストが起きやすい骨格構造をしています。

そして、ラテラルスラストによって膝の内側の軟骨がすり減ると、O脚の変形がさらに進行してしまいます。

変形が進むと骨の傾きが大きくなり、それによって歩行時の横ブレもさらに激しくなるという負のスパイラルに陥ります。

この連鎖をどこかで断ち切らない限り、膝の変形は加速度的に進んでしまいます。初期の段階でこの動作に気づき、対策を講じることが非常に重要です。

痛みが強くなる連鎖を断ち切るために

膝に痛みが出ると、人は無意識のうちに患部をかばうような歩き方をします。しかし、この「かばう動作」が逆にラテラルスラストを強めてしまうときがあるのです。

痛みを避けようとして身体を左右に揺らして歩いたり、膝を真っ直ぐ伸ばさないように歩いたりするため、周囲の筋肉が正しく働かなくなります。

結果として、痛みがあるから変な歩き方になり、変な歩き方をするからさらに痛くなるという悪循環に陥ってしまいます。

この負の連鎖を断ち切るためには、痛み止めで一時的に痛みを抑えるだけでなく、根本的な原因である「歩き方のブレ」を修正するアプローチが必要です。

サポーターや足底板などの装具を活用し、物理的に膝を安定させるのも有効な手段となるでしょう。

ラテラルスラストと変形性膝関節症の悪循環

段階関節内の状態自覚症状
初期軟骨の表面が摩耗し始める歩き始めや立ち上がり時に違和感がある
進行期軟骨がすり減り骨の隙間が狭くなる歩行時の痛みが増し、O脚が目立つようになる
末期骨同士が直接ぶつかり変形が進む安静時も痛み、歩行が困難になる

このまま放置すると将来どうなる?

「少し歩きにくいけれど、まだ大丈夫」と考えて放置してしまうと、将来的に取り返しのつかない状態になる恐れがあります。

ラテラルスラストは自然治癒するものではなく、加齢とともに悪化する傾向があるからです。

歩行時の安定性低下と転倒リスク

膝の横ブレが大きくなると、歩行時の重心移動がスムーズに行えなくなります。着地のたびに膝が外に逃げるため、体を支える基盤が不安定になり、ふらつきやすくなります。

特に高齢者の場合、この不安定感は転倒事故に直結する危険な要素です。ちょっとした段差につまずいたり、方向転換の瞬間にバランスを崩したりしやすくなるでしょう。

転倒によって大腿骨などを骨折すれば、そのまま寝たきり生活につながるリスクもあります。

ラテラルスラストを改善する取り組みは、単に膝を守るだけでなく、将来の活動的な生活を守るための転倒予防策としても非常に大切です。

膝への負担が限界を超えるとき

私たちの膝関節は、一生のうちに耐えられる負荷の総量がある程度決まっています。ラテラルスラストがある状態での歩行は、その「耐久寿命」を猛スピードで消費しているようなものです。

膝の内側ばかりに過剰な圧力がかかり続けることで、骨が硬くなる「骨硬化」や、骨のトゲである「骨棘(こっきょく)」の形成が急速に進みます。

ラテラルスラスト放置による将来的なリスク

  • 変形性膝関節症の進行速度が早まり、早期に歩行困難になる
  • 膝の不安定感から外出を控えるようになり、全身の筋力が低下する
  • 姿勢が悪化し、腰痛や股関節痛など他の部位にも不調が現れる
  • 最終的には自力歩行が難しくなり、介護が必要な状態になる可能性がある

人工関節置換術が必要になる可能性

これらは体が不安定な関節を何とか安定させようとする防御反応でもありますが、結果として関節の動きを制限し、強い痛みを引き起こす原因となります。

限界を超えて破壊された関節構造は、自然な力では元に戻せません。保存療法やリハビリで症状が改善せず、変形が末期まで進行した場合には、人工関節置換術という手術が必要になります。

ラテラルスラストを放置して変形が高度に進んだケースでは、自分の関節を残す手術が適応外となり、人工関節を選ばざるを得なくなることが多くなるのです。

手術を回避するためにも、ラテラルスラストという「動作の異常」を早期にコントロールすることが大切です。

外出が億劫になり生活の質が低下する

膝の不安感は、精神面にも大きな影響を与えます。「また歩いている途中で痛くなるかもしれない」「膝がガクッとなるのが怖い」という恐怖心から、楽しみを諦めてしまう人が多くいます。

買い物や旅行、散歩といった活動量が減ると体重が増えやすくなり、さらに膝への負担が増すという悪循環に陥ります。

また、社会とのつながりが希薄になると、認知機能の低下やうつ傾向のリスクも高まります。

自由に動ける体を維持することは、QOL(生活の質)を保つ上で何よりも重要です。ラテラルスラストの改善は、単なる膝の治療ではなく、豊かな人生を送り続けるための前向きな取り組みといえます。

自宅でできる!ラテラルスラスト改善トレーニング

膝の横ブレを抑えるためには、膝周りや骨盤周りの筋肉を強化し、関節を安定させることが必要不可欠です。

特別な器具を使わなくても、自宅でできる簡単な運動で改善を目指せます。

お尻の外側「中殿筋」を鍛える

歩行時の骨盤の安定性を担っているのが、お尻の外側にある「中殿筋」です。この筋肉が弱いと、片足立ちになった瞬間に骨盤が傾き、連動して膝が外側にブレてしまいます。

中殿筋を鍛えるには、横向きに寝て上側の足を天井に向かって持ち上げる「ヒップアブダクション」という運動が有効です。

反動を使わずにゆっくりと行い、お尻の横がじんわりと熱くなるのを感じながら繰り返します。また、立った状態で壁に手をつき、片足を真横に上げる運動も効果的です。

骨盤を水平に保つ力を養うと、着地時のふらつきを抑え、膝への横方向の衝撃を軽減できます。

太ももの内側「内側広筋」を強化する

膝関節を内側から支える重要な筋肉が、太ももの前側にある大腿四頭筋の一つ「内側広筋」です。O脚の人やラテラルスラストがある人は、この筋肉が萎縮して弱くなっているケースがよくあります。

内側広筋をピンポイントで鍛えるには、膝の下に丸めたタオルを置き、それを押しつぶすように膝裏で床を押す「パテラセッティング」という運動が安全かつ効果的です。

また、椅子に浅く座り、膝の間にボールやクッションを挟んで押し潰す運動もおすすめです。

内側の筋肉を活性化させて、膝が外側に引っ張られる力に対抗し、関節を正しい位置に保つサポート力を高めます。

足の裏全体を使って正しく着地する

筋力トレーニングと並行して、足の裏の感覚を養うのも大切です。ラテラルスラストがある人は、足の外側に体重が乗りやすく、小指側で地面を蹴る癖がついている場合が多いです。

これを修正するために、足の親指(母趾球)でしっかりと地面を捉える意識を持ちましょう。

裸足で床に立ち、足の指でタオルを手繰り寄せる「タオルギャザー」運動を行うと、足裏の固有筋が鍛えられ、アーチ構造が整います。

しっかりとした土台を作って、地面からの衝撃を効率よく吸収し、膝への不自然な揺れが伝わるのを防ぎます。

自宅でできるラテラルスラスト対策運動

運動名鍛える部位回数・頻度の目安
ヒップアブダクション中殿筋(お尻の外側)左右各20回×2セット(毎日)
パテラセッティング内側広筋(膝の内側)5秒キープ×20回(毎日)
タオルギャザー足裏の筋肉・アーチ左右各10回×2セット(週3回)

インソールと意識改革で歩き方を変える

筋力をつけることと同じくらい重要なのが、実際の歩行動作を変えるための工夫です。

意識だけで変えるのが難しい場合は、道具の力を借りるのも賢い選択と言えるでしょう。

踵から着地するときの注意点

歩くとき「膝をしっかり伸ばして踵から着地しましょう」と指導されるときがありますが、ラテラルスラストがある人にとって、これは逆効果になる場合があります。

膝をピンと伸ばしきった状態で踵着地をすると、地面からの衝撃がダイレクトに膝関節に伝わり、横ブレを誘発しやすくなるからです。

対策として、着地の瞬間に「膝をわずかに緩める(軽く曲げた状態を保つ)」意識を持つと良いです。

膝に少し余裕を持たせると、筋肉がサスペンションの役割を果たし、衝撃を吸収してくれます。

大股で歩くと膝が伸びきりやすいため、少し歩幅を狭くして、足裏全体で優しく着地するようなイメージで歩くと、横ブレを抑えられます。

足底板やインソールで補正する効果

意識しても歩き方が改善しない場合や、すでにO脚変形がある場合は、医療用の足底板(インソール)の使用が非常に効果的です。

特に、足の外側を少し高くした「外側ウェッジ」と呼ばれる形状のインソールを使用すると、物理的に膝の内反(O脚方向への動き)を矯正する力が働きます。

インソール・足底板の効果と選び方

種類特徴おすすめの対象者
医療用足底板個人の足型に合わせて作成。矯正力が高い。変形性膝関節症と診断された人
機能性インソール土踏まずのサポートや衝撃吸収に優れる。予防目的や軽度の違和感がある人
外側ウェッジかかとの外側が高くなっている特殊形状。O脚傾向でラテラルスラストが強い人

靴選びで足首の安定性を高める

これにより、ラテラルスラストの発生源である着地時の横ブレを強制的に抑え込めます。市販のインソールでも一定の効果はありますが、整形外科で医師の処方のもと作成するのが確実です。

足元が安定すると、膝への負担が減るだけでなく、歩行時の安心感も大きく向上します。

また、履いている靴がラテラルスラストを悪化させているケースも少なくありません。柔らかすぎる靴や、かかとのホールド力が弱い靴は、着地時の足を支えきれずに横ブレを許してしまいます。

靴を選ぶ際は、かかと部分(ヒールカウンター)が硬くてしっかりしているものを選びましょう。かかとが安定すると、足首の倒れ込みが防げ、結果として膝の動きも安定します。

専門家の指導で正しい歩行を身につける

自己流の歩き方改善は、時に間違った癖を助長してしまうリスクがあります。

自分のラテラルスラストがどの程度なのか、どの筋肉が弱くてブレているのかを正確に知るためには、理学療法士などの専門家による歩行分析を受けるのが一番の近道です。

リハビリテーションを実施している整形外科では、歩行チェックを行い、個々の状態に合わせた修正方法や運動メニューを指導してくれます。

「鏡を見て歩く練習」や「重心移動の訓練」など、専門的なプログラムを通じて、膝に負担をかけない効率的な歩き方を体に覚え込ませられます。

一生使う自分の足だからこそ、一度プロの目で確認してもらうと良いでしょう。

病院で行われる検査と診断の流れ

ラテラルスラストの疑いがある場合、自己判断で放置せずに医療機関を受診することが大切です。

正確な診断を受けると、現在の膝の状態を把握し、適切な治療方針を立てられます。

骨の変形度合いを確認するレントゲン

最初に行われるのが単純X線(レントゲン)検査です。立った状態で撮影して、体重がかかった時の関節の隙間の狭さや、骨の変形具合(O脚の程度)、骨棘(こっきょく)の有無などを確認します。

特に「立位全下肢撮影」という足の付け根から足首まで全体を撮影する方法では、脚全体のバランス線(ミクリッツ線)が膝のどこを通っているかを正確に計測できます。

これはラテラルスラストが起きやすい骨格構造かどうかを判断する重要な指標となり、変形性膝関節症の進行ステージ(グレード)判定に役立ちます。

実際の動作を評価する歩行分析

静止画であるレントゲンだけではわからない「動きの中での異常」を捉えるのが歩行分析です。

一部の専門的な医療機関では、三次元動作解析装置や床反力計といった特殊な機器を用いて、歩行時の膝の揺れや関節にかかる力の大きさ(モーメント)を数値化して評価します。

これにより、肉眼では捉えきれない微細なラテラルスラストや、それがどのタイミングで発生しているかを詳細に知ることができます。

簡易的な方法として、理学療法士が目視で歩行を観察し、動画を撮影して患者さんと一緒に確認するときもあります。

自分の歩き方を客観的に見ることは、改善への意識を高める上で非常に効果的です。

医療機関での主な検査と確認事項

検査項目わかること目的
単純X線(レントゲン)骨の隙間、O脚の角度、骨棘の有無変形の進行度を診断する
MRI検査軟骨、半月板、靭帯の状態レントゲンに映らない組織の損傷を確認する
歩行分析歩行時の膝の横ブレ、重心の移動動作の問題点を特定しリハビリに活かす

相談するべきタイミング

「痛みはないけれど、歩き方が気になる」という段階でも、受診して相談することは可能です。

むしろ、痛みが強く出る前の予防的な段階で介入することが、将来の変形を防ぐためには理想的と言えます。

具体的には、「歩いていると膝がガクッとなることがある」「靴の外側ばかり減る」「家族に歩き方がおかしいと言われた」といった自覚があるなら、一度整形外科を受診しましょう。

特に「膝専門」の医師がいる病院や、リハビリテーション施設が充実しているクリニックを選ぶと、専門的なアドバイスを受けやすくなります。

日常生活で膝のブレを防ぐちょっとした工夫

トレーニングや治療の時間だけでなく、普段の生活の中に潜む膝への負担を減らす工夫も大切です。何気ない日常動作の積み重ねが、膝の状態を左右します。

階段では手すりを活用する

階段は平地を歩くとき以上に膝に大きな負荷がかかります。特に下り階段では、体重の数倍もの衝撃が膝にかかるため、ラテラルスラストを誘発しやすくなります。

日常生活での膝への負担軽減策

  • 和式トイレではなく洋式トイレを使用する
  • 床からの立ち上がりを避け、ベッドや椅子を活用する
  • 重い荷物は持たず、キャリーカートや配送サービスを利用する
  • 長時間連続して歩かず、こまめに休憩を挟む

無理をして自力で上り下りしようとせず、積極的に手すりやエレベーターを使用しましょう。手すりを使うと体重の一部を腕で支えられ、膝への衝撃を大幅に減らせます。

また、降りるときは「痛くない方の足から先に下ろす」、上るときは「痛くない方の足から先に上げる」という原則を守るだけでも、負担のかかる瞬間をコントロールしやすくなります。

床座りを避けて椅子中心の生活へ

畳の上での生活は、膝を深く曲げる動作が多くなりがちです。特に「横座り(お姉さん座り)」や「あぐら」は、膝関節にねじれの力を加え、O脚変形やラテラルスラストを助長する姿勢です。

可能な限り椅子とテーブル中心の洋式生活に切り替えるのがおすすめです。

椅子に座る際も、足の裏がしっかりと床につく高さのものを選び、深く腰掛けるようにしましょう。

どうしても床に座る必要がある場合は、正座椅子を使ったり、クッションを背中に当てて壁に寄りかかったりして、膝へのねじれストレスを最小限に抑える工夫が必要です。

適正体重を維持する重要性

体重は膝への負担に直結する最大の要因の一つです。歩行時には体重の約3倍、階段昇降時にはそれ以上の力が膝にかかります。

つまり、体重が1kg増えれば膝への負担は3kg以上増え、逆に1kg減らせば負担も大幅に軽減されるということです。

ラテラルスラストがある膝にとって、過剰な体重は破壊力を増幅させる重りとなります。

バランスの良い食事と、膝に負担の少ない運動(プール歩行や固定式自転車など)を組み合わせ、適正体重を維持することは、どんな高価な薬や装具にも勝る強力な治療法となります。

よくある質問

ラテラルスラストは自然に治るのでしょうか?

残念ながら、一度身についた歩行の癖や骨格の変形によるラテラルスラストが、何もしないで自然に治ることはほとんどありません。

加齢による筋力低下とともに悪化する傾向が強いため、筋力トレーニングやインソールの使用、歩き方の意識改善など、能動的な対策を行う必要があります。

変形性膝関節症の人は全員ラテラルスラストがあるのですか?

全員ではありませんが、内側型の変形性膝関節症(O脚変形)の方の多くにラテラルスラストが見られます。

特に変形が進行しているケースや、靭帯が緩んでいるケースで顕著に現れます。

逆に、ラテラルスラストがない変形性膝関節症の方もいますが、ある場合の方が進行が早いことがわかっています。

ラテラルスラストを治すのにサポーターは効果的ですか?

サポーターには、膝の安定性を高め、横ブレをある程度抑制する効果が期待できます。

特に支柱(ステー)が入ったハードタイプのサポーターは、外側への動揺を物理的に制限するのに役立ちます。

ただし、サポーターだけで根本的に治るわけではないため、筋力強化と併用しましょう。

ラテラルスラストの手術が必要なのはどのような状態ですか?

ラテラルスラストそのものを止めるためだけの手術というのは一般的ではありません。

しかし、ラテラルスラストが強く、それによって変形性膝関節症が進行し、保存療法では痛みがコントロールできなくなった場合に手術が検討されます。

具体的には、骨切り術や人工関節置換術などが選択肢となります。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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