加齢で骨にトゲができる「骨棘(こつきょく)」とは?変形性膝関節症の自己防衛反応

加齢で骨にトゲができる「骨棘(こつきょく)」とは?変形性膝関節症の自己防衛反応

膝のレントゲン写真を見て、医師から「骨にトゲができていますね」と告げられたとき、多くの方が「骨が変形して刺さっているから痛いのだ」と恐怖を感じてしまいます。

その言葉の響きから、鋭利な何かが自分の膝の中で悪さをしているように想像してしまうのは無理もありません。

しかし、この「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる骨の出っ張りは、実はあなたを苦しめるためだけに現れた悪者ではないのです。

むしろ、長年の負担によって不安定になった膝関節をなんとか安定させようと、体が必死に面積を広げて支えようとした「自己防衛反応」の結果だと言えます。

この記事では、なぜ骨棘ができるのか、それが痛みの直接的な原因なのか、そして骨棘とどのように付き合っていくべきかを丁寧に解説します。

目次

骨のトゲである骨棘の正体は、実は膝を守ろうとする体の反応

病院で「骨にトゲがある」と言われると、鋭利な針のようなものが膝の内側から突き刺しているイメージを持つかもしれません。

しかし、骨棘の正体は、体が関節を守ろうとして生じた結果であり、必ずしも「トゲ=激痛の犯人」というわけではありません。

骨棘が形成される本当の意味を知れば、過度な恐怖心を持つ必要がないことがわかります。その医学的な実態について詳しく見ていきましょう。

骨棘は不安定になった関節を支えるために体が作った「のりしろ」のようなもの

骨棘ができる最大の理由は、関節の安定化です。加齢や長年の使用によって膝の軟骨がすり減ると、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間のクッションが薄くなり、関節の噛み合わせが悪くなります。

クッションを失った膝は、歩くたびに骨同士がグラグラと揺れ動き、関節として非常に不安定な状態に陥ってしまいます。

人間の体は非常にうまくできており、この「ぐらつき」を感知すると、骨の接地面積を広げて圧力を分散させようと働きます。

具体的には、骨の縁(ふち)に新しい骨を増殖させ、まるで「のりしろ」を作るかのように関節の土台を広げようとするのです。これが骨棘の正体です。

つまり、骨棘は膝が壊れないように必死で支えようとした、体の防御反応の証拠であり、あなたの味方とも言える存在なのです。

トゲという名前がついていますが実際は尖っていないことが多いです

「棘(とげ)」という漢字が使われているため、ウニのトゲのような鋭い針を想像しがちです。しかし、実際の手術や解剖で見る骨棘の多くは、ゴツゴツとした岩のような形状や、なだらかな隆起状をしています。

レントゲンは影絵のようなものなので、角度によっては尖って見える場合がありますが、先端が鋭利に尖って周囲の肉を切り裂いているわけではありません。

もちろん、進行具合によっては不規則な形をしていますが、基本的には関節の隙間を埋めるように、あるいは関節の縁を覆うように増殖します。

「トゲが刺さって痛い」という表現は感覚的には分かりやすいですが、医学的には「トゲが直接突き刺さる痛み」よりも、関節全体の炎症や変形による痛みの方が主原因であるケースが多いのです。

骨棘と一般的な骨の異常との違い

比較項目骨棘(変形性膝関節症)骨腫瘍など
発生の原因関節の不安定性や荷重負荷に対する防御反応遺伝子変異や細胞の異常増殖
形状の特徴関節の縁に沿ってできる、ゴツゴツした隆起骨の内部や表面から不規則に膨らむ
健康への影響関節の動きの制限や炎症の原因となる全身への転移や骨破壊のリスクがある
進行の速度年単位でゆっくりと進行する種類によっては急速に進行する

骨棘そのものは悪性の腫瘍や悪い病気とは無関係なので安心してください

骨が増殖すると聞くと、「骨の腫瘍ではないか」「骨の癌ではないか」と心配される方がいらっしゃいます。

しかし、変形性膝関節症に伴う骨棘は、悪性の腫瘍とは全く別のものです。これは機械的な刺激に対する反応として正常な骨組織が増えたものであり、他の臓器に転移したり、命を脅かしたりすることはありません。

あくまで「加齢性変化」や「摩耗に対する反応」の一部です。顔にシワが増えたり、白髪が増えたりするのと同じように、関節内で起きている経年変化の一つと捉えると、少し恐怖心が和らぐのではないでしょうか。

なぜ骨棘ができるのでしょうか?膝への過剰な負担と軟骨のすり減りが関係している

骨棘は、ある日突然できるものではありません。日々の生活習慣や膝への負担が積み重なった結果、体が環境に適応しようとして発生します。

クッションの役割をする軟骨が減少すると骨が反応して変形を始める

膝関節の表面は、非常になめらかな硝子軟骨(しょうしなんこつ)で覆われています。

この軟骨は、水分を多く含んだスポンジのような構造をしており、歩行時や走行時の衝撃を吸収し、骨同士が直接ぶつからないように守っています。

しかし、軟骨には血管が通っていないため、一度傷つくと自然修復が非常に難しいという特徴があります。

加齢とともに軟骨の弾力性が失われ、摩耗が進むと、その下にある軟骨下骨(なんこつかこつ)に直接的な荷重がかかるようになります。

骨は「圧力のかかる場所は強く、太くなる」という性質を持っているため、過剰な負担がかかった骨の端部分が反応し、骨棘として増殖を開始するのです。これが骨棘形成のスタート地点です。

O脚や肥満といった身体的特徴が骨棘の形成を加速させる要因に

日本人の変形性膝関節症の多くは、内側の軟骨がすり減る「O脚変形」を伴います。O脚になると、体重のほとんどが膝の内側に集中してしまいます。

均等に荷重がかかっていれば耐えられる負荷も、一点に集中することで限界を超え、骨の破壊と増殖のサイクルを早めてしまいます。

そこに拍車をかけるのが「体重」です。肥満は膝にとって最大の敵の一つと言っても過言ではありません。

歩行時には体重の約3倍、階段の昇り降りでは約4倍以上の負荷が膝にかかると言われています。体重が重ければ重いほど、骨が「もっと頑丈にならなければ支えきれない」と判断し、骨棘の形成を促進させてしまうのです。

過去の怪我やスポーツ歴が数十年後の骨棘に影響することも

若い頃に半月板を損傷したり、靭帯を断裂したりした経験がある方は、将来的に骨棘ができやすい傾向にあります。

半月板や靭帯は膝のスタビライザー(安定装置)としての役割を果たしているため、これらが機能を失うと関節が不安定になります。

不安定な関節は、通常の生活動作だけでも骨同士が微細に衝突し合います。この慢性的な微小外傷が積み重なることで、体は関節を安定させようと骨棘を作り出します。

若い頃の怪我が数十年後に骨棘という形で現れるのは、体が長い時間をかけて膝を守ろうとしてきた歴史でもあるのです。

骨棘形成を早めてしまう生活習慣や特徴

  • 床に座る生活や頻繁な正座による膝への過度な圧迫
  • 重い荷物を日常的に持つ仕事や、しゃがみ込み作業の連続
  • 太ももの筋肉(大腿四頭筋)の衰えによる衝撃吸収力の低下
  • 硬いアスファルトの上での長期間のランニング習慣

骨棘ができると実際にどんな痛みや症状が現れるのでしょうか?

「骨棘がある=激痛」と短絡的に考えるのは早計です。実際には骨棘があっても痛くない人もいれば、小さな骨棘で強い痛みを感じる人もいます。

骨棘が引き起こす具体的な症状と、痛みの本当の原因について掘り下げていきます。

骨棘そのものが痛むのではなく周囲の炎症が痛みの主原因

骨棘自体には神経があまり通っていないため、骨棘そのものが痛んでいるわけではありません。

痛みの多くは、骨棘や削れた軟骨の破片が関節を包む袋(関節包)や、関節の内側を覆う滑膜(かつまく)を刺激することで発生します。

異物を感知した滑膜は炎症を起こし(滑膜炎)、痛み物質を放出します。これが「ズキズキする痛み」や「熱感」の正体です。

そして炎症が起きると、それを冷やそう、洗い流そうとして関節液(膝の水)が過剰に分泌され、膝が腫れて重苦しくなるケースもあります。

つまり、骨棘は火種の一つではありますが、燃え上がっている炎(痛み)そのものは、周囲の組織の炎症なのです。

動き始めの違和感や膝が動かしにくくなる可動域制限が出やすくなる

骨棘が大きくなると、物理的に骨の形状が変わるため、関節の動く範囲が狭くなる場合があります。特に、膝を完全に伸ばしきれなくなったり、正座ができなくなったりするのは典型的な症状です。

骨棘がドアストッパーのような役割をしてしまい、骨と骨がぶつかってそれ以上曲がらなくなるのです。

また、朝起きたときや、長時間椅子に座っていて立ち上がろうとした瞬間に、膝が固まったように感じる「動き始めの痛み(スターティングペイン)」も特徴的です。

これは、寝ている間や座っている間に血流が悪くなり、関節内の潤滑が悪くなっている状態で、変形した骨同士が動き出すために起こる摩擦のようなものです。

剥がれ落ちた骨棘が関節ネズミとなって激痛を起こす場合がある

稀にですが、形成された骨棘の一部が衝撃などでポロリと欠けてしまい、関節の中を浮遊するときがあります。これを医学用語で「関節遊離体」、通称「関節ネズミ」と呼びます。

この関節ネズミが、関節の隙間の変な場所に挟まり込むと、突然の激痛とともに膝がロックされたように動かなくなる場合があります(ロッキング現象)。

これは非常に痛みが強く、歩行が困難になる場合もあります。この場合は、自然治癒を待つよりも、内視鏡などで取り除く処置が必要になるケースが多いです。

骨棘の有無はどうやって調べるのか?確定診断までの検査の流れ

膝の違和感が骨棘によるものなのか、それとも他の原因なのかを知るためには、専門的な検査が必要です。

自己判断で湿布を貼り続けるのではなく、一度整形外科でしっかりとした画像診断を受けることが大切です。

レントゲン検査で骨の変形や骨棘の位置を正確に確認

最も基本的かつ重要な検査が、単純X線(レントゲン)撮影です。

立った状態で体重をかけた写真を撮ることで、関節の隙間がどれくらい狭くなっているか、どの位置にどの程度の大きさの骨棘ができているかが明確に分かります。

骨棘は、大腿骨の内側や脛骨の縁、あるいはお皿の骨(膝蓋骨)の周りによく見られます。医師はレントゲン画像をもとに、変形性膝関節症の進行度(グレード)を分類し、治療方針を決定します。

骨棘が見つかっても、関節の隙間が十分に保たれていれば初期段階と判断されるときもあります。

MRI検査で軟骨や半月板などレントゲンに写らない部分の状態を見る

レントゲンは骨を写すのは得意ですが、軟骨、半月板、靭帯、筋肉などの柔らかい組織は写りません。

骨棘がまだはっきりと形成されていない初期の段階や、痛みの原因が骨棘以外の半月板損傷などにある疑いがある場合は、MRI検査が行われます。

MRI検査を行うと、骨の中の浮腫(むくみ)や、滑膜の炎症の程度まで詳しく見れます。

「レントゲンではそれほど悪くないと言われたのに痛い」という場合は、MRIを撮ると隠れた炎症や微細な骨折が見つかるケースがあります。

変形性膝関節症の進行度と主な自覚症状

進行度(グレード)骨棘の状態よくある自覚症状
初期わずかに形成され始める立ち上がりや歩き始めに膝がこわばる。休むと治まる。
中期明確にトゲ状になり確認できる階段の上り下りがつらい。正座が困難になる。膝に水がたまる。
末期巨大化し、骨同士が接触する安静にしていても痛む。O脚変形が目立つ。膝が伸びきらない。

触診や問診で痛みの場所と画像所見を一致させることが重要

画像診断と同じくらい大切なのが、医師の手による触診です。実際に膝のどの部分を押すと痛いのか(圧痛点)、膝を動かしたときにゴリゴリという音(轢音)がするか、腫れや熱感があるかを確認します。

画像に骨棘が写っていても、患者さんが痛がっている場所と一致しなければ、その骨棘は痛みの直接原因ではない可能性があります。

画像という「静止画」の情報と、実際の膝の動きや痛みという「動画・感覚」の情報をすり合わせることで、正確な診断へと導きます。

できてしまった骨棘は消えるのか?保存療法との上手な向き合い方

多くの患者さんが「このトゲを薬で溶かせませんか?」「マッサージで消えませんか?」と質問されます。

しかし、残念ながら一度形成された骨棘は、硬い骨組織であるため、自然に消えたり小さくなったりすることはありません。

重要なのは「骨棘を消すこと」ではなく、「骨棘があっても痛くない状態を作ること」です。そのための具体的な方法をご紹介します。

薬や湿布は炎症を抑えるもので骨棘を溶かすものではありません

整形外科で処方される痛み止めの飲み薬や湿布は、あくまで「炎症」を鎮めるためのものです。これらを使用すると、滑膜の炎症が治まり、痛みを感じにくくすることは可能です。

しかし、骨棘そのものを化学的に分解するような薬は現在存在しません。

ヒアルロン酸注射も同様です。関節の中に油を差すように潤滑を良くし、軟骨の保護や炎症の抑制を期待するものですが、これによって骨の形が元に戻るわけではありません。

治療の目的は、今の膝の状態とうまく付き合い、生活の質を落とさないことにあります。

筋力トレーニングで関節を安定させる取り組みが天然のコルセットに

骨棘が「関節の不安定さ」に対する防御反応であるならば、別の方法で関節を安定させてあげれば、骨棘による痛みや進行を抑えられます。

その最強の手段が筋力トレーニングです。特に太ももの前側の筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」を鍛えることが大切です。

筋肉がしっかり働くと、着地したときの衝撃を吸収してくれるだけでなく、膝関節を正しい位置に引き寄せて安定させてくれます。

まるで自分の筋肉が「天然のサポーター」や「天然のコルセット」のような役割を果たし、骨への負担を劇的に減らしてくれるのです。運動療法は地味で時間がかかりますが、副作用のない非常に有効な治療法です。

足底板(インソール)でO脚の負担を物理的に軽減する方法も

膝の内側に負担が集中して骨棘ができている場合、靴の中敷き(インソール)を使って物理的に重心を変える方法も有効です。

外側が高くなっている特殊な中敷き(外側ウェッジ)を使うと、膝の外側に体重を逃がし、内側の負担を減らせます。

また、硬性のサポーター(装具)を装着すると、歩行時の横揺れを防ぎ、骨棘が周囲の組織に当たるのを防ぐ効果も期待できます。

これらは「保存療法」と呼ばれ、手術をせずに痛みをコントロールする基本の戦略となります。

自宅でできる簡単な保存療法の例

対策の種類期待できる効果注意点
大腿四頭筋訓練膝の安定性が増し、衝撃を吸収する。痛みが出るほど激しく行わない。継続が重要。
減量コントロール物理的な荷重負担を減らし進行を遅らせる。急激なダイエットは筋肉も落とすので注意。
保温・温熱療法血流を改善し、筋肉のこわばりを取る。急に腫れて熱を持っている時は逆に冷やす。
ストレッチ関節の可動域を広げ、柔軟性を保つ。お風呂上がりなど体が温まっている時に行う。

手術で骨棘を取る必要があるのはどんな時?

保存療法を続けても痛みが引かない場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、手術という選択肢が浮上します。

しかし、単に「骨棘だけを削り取る」という手術はあまり一般的ではありません。どのような状況で手術が検討され、骨棘がどう処理されるのかを解説します。

骨棘が物理的に邪魔をして膝が伸びない・曲がらない場合は検討

巨大化した骨棘が関節の動きを物理的にブロックしてしまい、リハビリをしても膝が伸びきらない、あるいは曲がらないという状態(可動域制限)が強い場合は、手術で骨棘を切除することを検討します。

また、骨棘が神経を圧迫していたり、周囲の組織を強く刺激し続けている場合も対象になります。

ただし、骨棘だけを取っても、根本的な「軟骨のすり減り」や「O脚変形」が治るわけではないため、すぐにまた骨棘が再発してしまうリスクがあります。

そのため、他の手術と組み合わせて行われるケースがほとんどです。

骨切り術や人工関節置換術の過程で骨棘も一緒に処理

変形性膝関節症の手術には、自分の関節を残して骨の角度を変える「骨切り術(こつきりじゅつ)」と、傷んだ関節を金属に換える「人工関節置換術(じんこうかんせつちかんじゅつ)」があります。

骨切り術の場合は、O脚を矯正する際に邪魔になる骨棘を取り除くことがあります。

一方、人工関節置換術の場合は、変形した骨の表面を削り取って金属を被せるため、その過程で骨棘もきれいに取り除かれます。

つまり、手術の主目的は「関節の機能を再建すること」であり、骨棘の除去はそのプロセスの一部として行われるのです。

関節鏡手術によるクリーニングの効果は限定的なことが多い

膝に小さな穴を開けてカメラを入れ、関節の中を掃除する「関節鏡手術」というものがあります。この手術で、めくれた軟骨や遊離した骨棘(関節ネズミ)を取り除くことは可能です。

しかし、進行した変形性膝関節症に対して、ただ関節の中を掃除するだけでは、一時的に痛みが取れても長期的にはあまり効果がないという研究データも多く報告されています。

そのため、現在では初期の半月板損傷などが合併している場合を除き、変形性膝関節症に対して安易に関節鏡手術を行うことは少なくなっています。

日常生活でこれ以上骨棘を増やさないための工夫

手術をするほどではないけれど、将来が心配だという方は、これ以上骨棘を増やさない、あるいは悪さをさせない生活習慣を身につけることが大切です。

膝への愛情を持った生活が、10年後のあなたの歩行を守ります。

膝を冷やさず血流を良く保つことが痛みの緩和につながる

膝は皮膚と骨の距離が近く、脂肪や筋肉によるカバーが少ないため、外気の影響を受けやすく非常に冷えやすい部位です。

冷えると血管が収縮し、酸素や栄養が行き渡らなくなるだけでなく、発痛物質が滞留しやすくなります。

サポーターやひざ掛けを利用して常に保温を心がけましょう。入浴時はシャワーだけで済ませず、湯船に浸かって浮力によるリラックス効果と温熱効果を得るのが理想的です。

温めると関節包や筋肉が柔らかくなり、骨棘による刺激を緩和してくれるクッション性が高まります。

和式生活から洋式生活への切り替えを推奨

畳の上での生活は、立ち座りのたびに膝に大きな負担をかけます。特に深く膝を曲げる動作は、関節内の圧力を極端に高め、骨棘の形成を促す可能性があります。

可能であれば、ベッド、テーブルと椅子、洋式トイレといった「洋式生活」へ切り替えることをお勧めします。椅子の生活にするだけでも、膝への負担は大幅に軽減されます。

また、靴もクッション性が高く、紐やマジックテープで足の甲をしっかり固定できるスニーカーを選び、サンダルやヒールの高い靴は避けるようにしましょう。

膝に優しい生活のチェックポイント

  • 住環境:布団からベッドへ、コタツからテーブルへ、和式トイレから洋式トイレへ変更する。
  • 移動時:階段よりエレベーターやエスカレーターを使う。重い荷物はキャリーカートを利用する。
  • 履物:靴底に適度な厚みと弾力があり、かかとが安定するウォーキングシューズを選ぶ。

適度な運動は軟骨に栄養を届けるポンプ作用になる

「膝が悪いから動かないほうがいい」と安静にしすぎるのは逆効果です。軟骨は関節液から栄養をもらっていますが、関節液は膝を曲げ伸ばしすることで循環します。

つまり、適度に動かさないと軟骨は栄養失調になり、さらに弱くなってしまいます。

痛みが強い時の無理は禁物ですが、痛みのない範囲でウォーキングをしたり、水中ウォーキングをしたりする取り組みは非常に有益です。

動かすと関節液が循環し(ポンプ作用)、関節の動きをなめらかに保れます。「安静」と「活動」のバランスをうまくとることが、骨棘との共存の鍵となります。

よくある質問

変形性膝関節症の骨棘は一度できると自然に消えますか?

いいえ、一度形成された骨棘は硬い骨組織であるため、自然に消滅したり吸収されたりすることはありません。

ただし、骨棘があっても周囲の炎症が治まれば痛みは消失するケースが多いため、骨棘を消すことよりも、炎症を抑えて膝の機能を保つことが治療の目標となります。

サプリメント(グルコサミン等)で変形性膝関節症の骨棘の進行は止まりますか?

現在の医学的なエビデンスにおいて、サプリメントが骨棘の形成を止めたり、すり減った軟骨を再生させて骨棘を消失させたりするという確固たる証明はされていません。

一部で痛みの緩和を感じる方もいらっしゃいますが、あくまで補助的なものと考え、適切な運動療法や体重管理を優先しましょう。

変形性膝関節症の骨棘があると言われましたが、運動しても大丈夫ですか?

はい、強い腫れや熱感がある急性期を除き、運動は積極的に行うべきです。

運動を控えて筋力が落ちると、膝の不安定性が増し、かえって骨棘の形成や痛みを悪化させる原因になります。痛みの出ない範囲での筋力トレーニングやウォーキングは、膝を守るために必要です。

変形性膝関節症の骨棘を手術で取るタイミングはいつですか?

骨棘があるという理由だけで手術をすることはありません。

保存療法を十分に試しても痛みが取れず日常生活に支障がある場合や、骨棘が原因で膝が伸びない・曲がらないといった可動域制限が著しい場合に検討されます。多くは人工関節手術などの一環として骨棘が処理されます。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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