膝の水を抜いた後の色でわかる病状|黄色・透明・赤色が示す関節内の状態

膝の水を抜いた後の色でわかる病状|黄色・透明・赤色が示す関節内の状態

膝に溜まった関節液の色を確認することで、関節内部で現在どのような炎症や異常が起きているのかを客観的に判断できます。

透明から淡黄色であれば変形性膝関節症による摩擦が主な原因であり、黄色く濁っていれば痛風や強い炎症、赤色であれば組織の損傷による出血を疑います。

この記事では、それぞれの色が示す具体的な病状と、異常に気づいた際の対処法を網羅的に解説し、納得感を持って治療に臨むための知識を共有します。

目次

関節液の色が物語る膝の状態

抜き取った関節液の色や透明度を確認すれば、関節内で起きている炎症の正体や進行度を正確に把握できます。

医療現場において関節液の視覚的情報は、血液検査の結果を待たずとも緊急性を判断するための重要な指標となります。

正常な状態の関節液が持つ性質

本来の関節液は、軟骨に栄養を届け、動きを滑らかにする潤滑油としての役割を果たしています。健康な状態であれば、色は無色透明か、わずかに straw color と呼ばれる薄い黄色を呈しています。

この液体にはヒアルロン酸が豊富に含まれており、非常に高い粘り気を持っているのが特徴です。

炎症の強さと色調の変化

関節の中で強い摩擦や外部からの刺激が加わると、滑膜から過剰な液体が分泌されます。

炎症が強まるほど、普段は入り込まない血液中の成分や白血球が関節液の中に漏れ出します。その結果として液体の透明度が失われ、色が濃くなったり、不透明な濁りが生じたりするようになります。

色による大まかな分類の考え方

関節液は大きく分けて、透明、濁り、出血(血性)の3つのパターンで評価を行います。

透明度が高い場合は加齢による変化が疑われ、濁りが強い場合は免疫反応や感染が考慮されます。赤色が含まれる場合は、組織が物理的に破綻している可能性が高いため、早急な画像診断が必要です。

視覚的な変化と予測される病状の違い

関節液の色状態主な病状
透明〜淡黄色透き通っている変形性膝関節症
黄色〜濃黄色わずかに濁る慢性炎症・関節炎
白濁〜不透明向こうが見えない痛風・細菌感染

透明から淡黄色は変形性膝関節症の典型例

膝から抜いた水が透き通った薄い黄色である場合、それは変形性膝関節症による典型的な反応といえます。

この状態は関節軟骨がすり減るために生じる削りカスが、周囲の膜を刺激して生じた現象です。

激しい組織の破壊や感染症は起きていないことを示唆しており、比較的落ち着いた病状と判断できます。

軟骨の摩擦が水を作る背景

変形性膝関節症が進むと、表面の滑らかさを失った軟骨同士が激しくこすれ合います。剥がれ落ちた微細な軟骨の破片を体が異物と見なすと、それを取り除こうとして炎症が起きます。

異物を洗い流すために大量の関節液が作られますが、吸収が追いつかなくなるため膝が腫れます。

透明感の有無が示す情報の質

液体の透明感は、内部に含まれる白血球の数が基準値に近いことを表しています。これは自己免疫の暴走や、細菌による深刻なダメージを受けていないことの証明でもあります。

そのため、この段階では筋力トレーニングや注射といった保存的な取り組みが有効に機能します。

粘り気の強さと関節の潤滑機能

透明な関節液であっても、その粘り気がどれほど維持されているかが健康のバロメーターとなります。

指先で触れると数センチ糸を引く程度の粘性があれば、ヒアルロン酸がしっかり機能しています。

その一方で、水っぽくサラサラしている場合は、潤滑機能が低下しており軟骨が傷つきやすい状態です。

変形性膝関節症に関連する水の状態

  • 色は薄い黄色から琥珀色であり、液体を通して文字が読めるほど澄んでいる。
  • 一定の粘り気があり、関節を保護するヒアルロン酸の成分が残っている。
  • 顕微鏡で見ても細菌や尿酸の結晶が確認されず、加齢による摩耗が主因である。

黄色く濁った状態が示唆する炎症の強さ

関節液が不透明に濁り、黄色みが強く出ているときは、関節内で激しい戦闘が起きている合図です。

透明度が失われる理由は、炎症細胞である白血球が大量に動員され、液体中に充満しているためです。

この状態は放置すると軟骨を急速に溶かしてしまう危険があるため、迅速な炎症の鎮静化が重要です。

激しい炎症によって細胞が密集する

関節内で突発的に炎症が悪化すると、血管の壁がゆるくなり、多くの防御細胞が流れ込みます。これらの細胞が液体の中で光を遮るため、見た目には「濁り」として認識されます。

濁りが強いほど関節内の温度も上がりやすく、周囲の組織へのダメージが大きくなっていきます。

痛風や偽痛風による結晶の混入

抜き取った水が牛乳のように白く濁っている場合は、痛風や偽痛風が強く疑われます。これは尿酸やピロリン酸カルシウムの結晶が、関節内で雪のように舞っている状態です。

この結晶が物理的に組織を傷つけ、白血球を興奮させることで、耐え難いほどの激痛を引き起こします。

慢性的な炎症が招く液質の悪化

濁りのある状態が繰り返されると、関節内の環境は常に破壊的なモードに固定されてしまいます。

最初は黄色い濁りであっても、次第に関節液の栄養成分が失われ、スカスカの状態になります。その変化から将来的な変形の進行が予測できるため、濁りに気づいた段階での生活見直しが必要です。

炎症のレベルによる視覚的な変化の目安

炎症の強さ見た目の特徴想定される状況
中等度半透明で黄色が濃い変形性膝関節症の急性期
重度白っぽく濁っている偽痛風・リウマチの悪化
危険ドロドロの膿状化膿性関節炎(感染症)

赤色や褐色は関節内での出血を意味する

膝から抜いた水に赤色や褐色が混じっている場合、それは関節内での出血を意味する重大なサインです。

加齢による水溜まりとは次元が異なり、血管が通っている組織が物理的に破綻したことを示します。そのまま放置すると血液成分が軟骨を腐食させるため、出血源の特定と止血処置が必要です。

外傷や組織の損傷が原因となる場合

転倒や激しい運動の後に膝が腫れ、赤黒い水が抜けたときは、靭帯や半月板の損傷が疑われます。特に前十字靭帯の断裂などは、関節内に多量の出血を伴うケースが多く、早期の処置を要します。

鮮やかな赤色であれば現在進行形の出血であり、褐色であれば数日前の出血が残っている証拠です。

高齢者に見られる非外傷性の出血

ぶつけた記憶がないのに関節液に血が混じる場合は、重度の変形による骨同士の衝突が疑われます。

すり減った軟骨の土台にある骨がむき出しになり、そこから直接出血している可能性があります。

この状況は骨のダメージが深刻であることを示しており、治療方針の再検討を迫られるタイミングです。

出血後の液色と経過の推移

一度出血が起きると、数日から数週間かけて色が赤から茶色、そして黄色へと移り変わります。ヘモグロビンが分解される過程で生じる変化であり、色の濃淡から怪我の時期を推定できます。

もし再診時に再び赤みが強まっているならば、同じ場所で再出血を繰り返している恐れがあります。

血性関節液の色から判断する緊急度

色の見え方原因の推察推奨される対応
鮮やかな赤色急性の靭帯・骨損傷当日中のMRI検査を推奨
赤みがかった黄色軽微な組織のひっかかり数日間の安静と経過観察
暗い褐色・黒ずみ古い出血の残りリハビリ強度の見直し

関節液の検査結果を読み解く指標

肉眼での色確認だけでなく、研究機関や病院での詳しい分析結果を知ると診断は確実なものとなります。

分析では細胞の数やタンパク質の量、糖の濃度といった微細な変化を数値として評価します。これにより、ご自身の膝が現在どのような「火事の強さ」にあるのかを客観的に裏付けられます。

白血球数のカウントと炎症の判定

関節液の中にどれほどの白血球が存在するかは、炎症の種類を特定するための決定的な情報です。

変形性膝関節症では一般的に2,000個以下ですが、これを大きく超える場合は注意が必要です。数万個という桁外れの数値が出た場合は、自分の組織を攻撃する疾患や感染症の可能性を疑います。

成分バランスから見える代謝の異常

液体に含まれる糖分やタンパク質のバランスを調べると、関節の「健康度」が浮き彫りになります。

例えば細菌が入り込むと、彼らが糖を消費するため、関節液内の糖分が著しく低くなります。数値の変動を時系列で追いかければ、受けた治療が正しく効いているかを判断できます。

顕微鏡検査で見つける結晶の正体

抜いた水を特殊な顕微鏡で見れば、肉眼では見えない微細な結晶の形を特定することが可能です。

針状の結晶であれば尿酸(痛風)、長方形の結晶であればピロリン酸(偽痛風)と診断がつきます。

原因となる「トゲ」の正体が判明すれば、それに応じた適切な薬物療法をピンポイントで開始できます。

関節液分析で確認される主な検査項目

  • 白血球の総数:感染や強い免疫反応が起きていないかを判定する。
  • 好中球の割合:細菌感染がある場合に急増する細胞の割合を確認する。
  • グルコース濃度:炎症の強さや細菌の有無を測る指標として用いる。

膝の水を抜く処置のメリットと注意点

膝の水を抜く処置は、痛みを和らげる治療であると同時に、正確な病状を特定するための検査でもあります。

パンパンに溜まった水をそのままにしておくと、その重みや圧力で神経が過敏になり痛みが強まります。

正しい知識を持ってこの処置を受ければ、関節内の環境を速やかにリセットすることが可能になります。

圧迫感の解消による即時効果

膝に水が溜まると関節内の圧力が上がり、お皿の周りや裏側に重だるい痛みが生じます。注射器で余分な液体を吸い出すと、この物理的な圧迫が消えるため、その場で膝が軽くなります。

曲げ伸ばしの制限も緩和されるため、スムーズな歩行を取り戻すための第一歩として有効です。

「抜くと癖になる」という誤解の真相

多くの人が抱くこの不安は、水を抜く行為そのものが再発を招くわけではありません。火事が消えていない(炎症が続いている)のに水を抜いただけでは、また水が溜まるのは当然の結果です。

この現象から「癖になる」と誤認されがちですが、重要なのは抜いた後の炎症コントロールです。

適切な処置頻度と長期的な視点

水を抜く処置は、炎症が落ち着くまでの「つなぎ」の役割であることを忘れてはいけません。

何度も短期間で水が溜まる場合は、筋力不足や体重過多といった根本的な原因への対策が必要です。

医師と相談しながら抜く頻度を徐々に減らしていき、最終的に溜まらない状態を目指すのが理想です。

膝の水を抜く処置の役割分担

役割の種類具体的な内容得られる効果
治療的側面炎症物質の直接除去痛みと腫れの早期緩和
診断的側面液体の色と成分の分析正確な病状把握と方針決定
予防的側面関節内圧の正常化軟骨への過剰負荷の軽減

専門家への相談タイミングと自己判断の危険性

膝の腫れを「いつものこと」と放置せず、体の警告として真摯に受け止める姿勢が重要です。

特に液体の色がこれまでと違ったり、痛みの強さが変化したりした時は、病状が進行した合図かもしれません。

早期に適切な診断を受けることが、将来の手術を回避し、一生自分の足で歩き続ける鍵となります。

放置による軟骨へのダメージ

関節液が溜まった状態が長く続くと、液体に含まれる酵素が健康な軟骨まで溶かし始めてしまいます。

水が溜まるということは、関節内で「酸化」や「摩耗」の火の手が上がっている状況です。早めに消火活動(受診)を行わなければ、取り返しのつかない変形へと繋がっていく危険があります。

感染症を見逃さないためのチェック項目

もし膝が赤く腫れ、触ると熱く、さらに全身の発熱を伴う場合は、一刻を争う事態です。これは細菌が関節内を破壊している「化膿性関節炎」である可能性が極めて高い状態です。

この場合は病院で抜いた水の色も黄色く濁っており、強力な抗生剤治療を即座に開始する必要があります。

自分の膝の「いつもの色」を知る大切さ

水を抜く処置を受けた際は、勇気を出して自分の液体の色を直接確認してみることをお勧めします。

「今日はいつもより黄色が濃いですね」といった会話が、医師との良好な関係を築くきっかけにもなります。

自分自身の体の変化に敏感になると、より高い意識を持ってリハビリに取り組めるはずです。

受診を急ぐべき膝のサイン

  • 膝の腫れ方がこれまで経験したことがないほど急激で大きい。
  • 膝に触れるだけで飛び上がるような激痛がある。
  • 膝の腫れと同時に37.5度以上の発熱がある。

よくある質問

膝の水を抜く時に痛みはありますか?

通常の採血や予防接種で使用する注射針と同じくらいの刺激を感じますが、耐えられないほどではありません。

膝のお皿の周りは比較的感覚が鈍い場所でもあるため、緊張を解いて受ければ数秒で終わる処置です。

痛みに特に不安がある方は、あらかじめ細い針の使用を希望したり、局所麻酔について相談することも可能です。

抜いた水の色が毎回違うのはなぜですか?

関節内部の炎症の強さや、その時々の活動量によって関節液の成分が変化するためです。

例えば、たくさん歩いた後には摩耗粉が増えて黄色が濃くなり、安静にした後は透明に近づく場合があります。

色の変化は膝からのメッセージですので、記録しておくと病状の移り変わりを理解する助けになります。

水が溜まっていないのに膝が痛むのはなぜですか?

膝の痛みの原因は水溜まりだけではなく、筋肉の硬直や神経の圧迫、周囲の靭帯の炎症など多岐にわたります。

水がなくても軟骨のすり減りが進んでいるケースや、骨そのものに微細な亀裂が入っている場合もあります。

腫れがないからといって安心せず、持続する痛みがあるなら詳しい画像検査を受けるべきです。

黄色く濁った水を抜いた後はどう過ごすべきですか?

濁った水は強い炎症の証拠ですので、数日間は安静を第一に考え、激しい運動や入浴は控えてください。

医師から処方された抗炎症薬を正しく服用し、膝を冷やして、火が燃え広がるのを防ぐことが大切です。

無理をして動いてしまうと、せっかく抜いた水がすぐに元の濁った状態で戻ってきてしまいます。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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