変形性膝関節症の末期症状における「安静時痛」|じっとしていても痛い原因

変形性膝関節症が末期に至ると、動いていないときでも膝に強い痛みが生じます。
この安静時痛は、軟骨が消失して骨の表面が露出することや、関節を包む膜に深刻な炎症が起きていることが原因です。
また、神経が過敏な状態になり、わずかな刺激を大きな苦痛として脳に伝えてしまうことも影響しています。
この記事では、なぜじっとしていても痛むのか、その背景にある身体の変化を詳細に解説します。
安静時痛が起こる理由とその本質
安静時痛が起きる最大の理由は、関節内の環境が限界まで悪化し、痛みを感じる受容器が休む暇なく刺激を受け続けているためです。
健康な膝であれば、軟骨が衝撃を吸収し、神経のない層が表面を守っています。しかし末期ではこの防壁が失われ、痛みに対して非常に無防備な状態に陥っています。
関節軟骨の完全な摩耗と骨の露出
末期症状では、クッションの役割を果たしていた関節軟骨がほぼ全域で消失しています。
軟骨がなくなると、その直下にある軟骨下骨という神経の豊富な組織が表面に剥き出しの状態となります。
この露出した骨が関節内の炎症物質に直接触れるため、動かなくても持続的な痛みが引き起こされます。
骨の状態と痛みの相関
| 組織の状態 | 神経の有無 | 安静時の痛み |
|---|---|---|
| 健康な軟骨 | なし | 痛みを感じない |
| 磨耗した軟骨 | なし | 違和感が生じる |
| 露出した骨 | 豊富にあり | 持続的な激痛 |
関節内の内圧上昇による圧迫痛
膝の内部で炎症が強まると、それを鎮めようとして関節液が過剰に分泌されます。これがいわゆる「膝に水が溜まる」状態です。
関節包という袋の中に大量の液が溜まると、内部の圧力は異常に高まります。その影響により、袋の壁にある神経が常に引き伸ばされ、重だるい痛みを感じ続けます。
骨棘形成による周囲組織への物理的刺激
末期には、骨の端がトゲのように肥大する骨棘と呼ばれる変形が顕著になります。このトゲ状の突起が、周囲にある滑膜や靭帯を内側から常に圧迫し、物理的な刺激を与えます。
たとえ膝を固定していても、変形した骨が周辺組織を突き刺すような配置にあるため、痛みが消えることはありません。
炎症反応の慢性化と神経の過敏状態
慢性的な炎症は神経の性質を変化させ、通常では痛みと感じない程度の刺激にも反応する過敏な状態を作り出します。
この現象は神経感作と呼ばれ、末期症状特有の「何もしていなくてもズキズキする」感覚の根源的な要因となります。
滑膜炎の慢性的な継続
関節を包む滑膜は、炎症が起きると赤く腫れ上がり、痛みを引き起こす化学物質を大量に放出します。
末期では、剥がれ落ちた軟骨の破片が常に滑膜を刺激するため、炎症が引くタイミングがなくなります。
この持続的な化学的刺激が、安静にしているときでも神経を浸し続け、不快な痛みを発生させています。
神経の感作と伝達異常
長期にわたって痛み信号が脳に送られ続けると、脊髄や脳の神経回路が痛みに敏感になります。
その結果として、関節内のわずかな温度変化や気圧の変化さえも、脳が強い痛みとして処理するようになります。
この状態になると、物理的な安静を保っていても脳内では「痛い」というアラートが鳴り止まなくなります。
神経感作を招く要因
- 滑膜からの炎症物質の持続的な放出。
- 脳へ痛みを伝える信号の増幅。
- 痛みを抑える身体機能の低下。
炎症性物質の影響
炎症部位では、サイトカインなどの物質が常に生成されています。それらが血管を広げて組織を浮腫ませるため、さらなる圧迫を招きます。
組織が腫れると周囲の感覚神経が圧迫されるという負の循環が生まれます。その影響が安静時の不快感をさらに強固なものへと変えてしまいます。
軟骨消失後の骨レベルでの変化
軟骨がなくなった膝関節では、骨の内部構造そのものが痛みを発しやすい形へと変貌を遂げています。
骨は生きた組織であり、過剰な負荷や炎症に対して、内部の血流や圧力、密度を変化させることで対応しようとします。
骨髄浮腫と骨内圧の上昇
末期の膝を精密に検査すると、骨の内部に水分が溜まって腫れている骨髄浮腫が観察される場合があります。
骨は非常に硬い組織であるため、内部が腫れると逃げ場がなくなり、骨内圧が急激に高まります。
この内側からの強烈な圧力が、骨の中を通る細い神経を刺激し、芯に響くような安静時痛を生じさせます。
骨内部の変化による影響
| 変化の種類 | 物理的現象 | 痛みの感じ方 |
|---|---|---|
| 骨髄浮腫 | 骨の内部の腫れ | 骨の芯が疼く痛み |
| 骨硬化 | 骨密度の異常上昇 | 衝撃が響く重い痛み |
| 微細骨折 | 表面の小さな亀裂 | 脈打つような鋭い痛み |
骨硬化による柔軟性の喪失
負荷に耐えようとして、骨の一部が異常に硬くなる現象を骨硬化と呼びます。硬くなった骨はしなやかさを失い、外部からの振動や自重による圧力を分散できなくなります。
座っているだけでも膝にかかる微かな負荷が、硬い骨によって増幅され、痛みとして脳に伝わってしまいます。
骨の微細な損傷と修復の停滞
末期の状態では、日常の動作で骨の表面に目に見えないほどの小さな傷や亀裂が入るケースがあります。
高齢や血流不足が重なると、この傷の修復が追いつかず、常に怪我をしているような状態が続きます。
修復プロセスに伴う神経の興奮が、じっとしている時間帯の痛みとして現れることは少なくありません。
関節包の肥厚と血流障害の影響
関節を包んでいる関節包が炎症によって厚く硬くなることも、安静時の痛みを深刻にする要因です。
組織が柔軟性を失って関節内の血行が阻害され、痛み物質を押し流す洗浄作用が機能しなくなるためです。
関節包の線維化と拘縮
長引く炎症の結果、関節包はかさぶたのような硬い組織に置き換わっていきます。これを線維化と呼びます。
硬くなった関節包は、膝を動かしていないときでも常に周囲を締め付けるようなストレスをかけ続けます。
この持続的な締め付けが、安静時の重苦しい不快感や突っ張るような痛みの正体となっています。
虚血性疼痛の発生
組織が硬くなって圧力が上がると、細い血管が押し潰されて血流が著しく低下します。筋肉や滑膜が酸欠状態になると、身体は異常を知らせるために強力な痛み信号を発信します。
じっとしていて活動量が低いときほど血の巡りは停滞しやすいため、安静時に痛みが強調される傾向にあります。
血流と組織の変化
- 関節包が線維化し、縮んで固まる。
- 毛細血管が圧迫され、組織が酸欠状態になる。
- 静脈の血液が渋滞し、むくみが慢性化する。
静脈うっ滞と夜間の疼き
夜間に横になっているとき、筋肉のポンプ作用が働かないため、膝周辺の血液が心臓に戻りにくくなります。
血液が膝の周りに溜まるため組織はさらに膨張し、神経を圧迫します。その結果として、夜寝ているとき特有のジンジンとした疼きが生じるようになります。
筋緊張の増大と痛みの悪循環
膝の痛みから守ろうとして、周囲の筋肉が常にこわばってしまう状態も安静時痛を悪化させます。
筋肉が緊張し続けると、その内部で痛み物質が生成され、関節内部の痛みと合わさってより強い苦痛を作り出します。
防御性収縮による筋肉の疲労
強い痛みがあるとき、人は無意識に関節が動かないよう膝周りの筋肉を固めます。これを防御性収縮と呼びます。
24時間筋肉を使い続けている状態と同じであり、筋肉は慢性的な疲労状態に陥っています。
疲労によって蓄積された代謝物質が感覚神経を刺激するため、安静にしていても筋肉由来の痛みが止まらなくなります。
筋緊張による症状
| 状態 | 組織の変化 | 具体的な症状 |
|---|---|---|
| 防御性収縮 | 筋肉の持続的緊張 | 膝周りの重だるさ |
| 筋膜の癒着 | 膜同士の貼り付き | 引きつれるような痛み |
| トリガーポイント | 筋肉内のしこり | 関連する場所への疼き |
筋膜の癒着と滑走不全
筋肉を包む筋膜や、隣り合う筋肉同士が炎症によって癒着してしまうときがあります。癒着した部分は、静止していても常に不自然な引っ張り合いが起きている状態です。
この常に「引きちぎられそうなテンション」がかかっていることが、何もしないときの持続的な痛みを誘発します。
トリガーポイントの形成
過度な緊張が続くと、筋肉の中に過敏な痛みの中心点であるトリガーポイントが形成されます。この点は非常に鋭敏であり、そこを動かさなくても周囲に広がるような鈍い痛みを出し続けます。
膝の安静時痛と思われているものの多くに、この筋肉のこわばりによる影響が含まれていることが判明しています。
睡眠障害を招く夜間痛への対処
安静時痛が最も読者の生活を脅かすのは、夜間の就寝時に現れる夜間痛の状態です。
睡眠が妨げられると、精神的な活力まで奪われてしまうため、物理的な環境調整によって少しでも負荷を減らす取り組みが大切です。
就寝時の姿勢と関節内圧の関係
横になると、立っているときとは異なる角度で膝に重力がかかります。末期ではそのわずかな配置の変化が痛みに繋がります。
膝を完全に伸ばし切った姿勢は、逆に関節内の圧力を高めてしまう場合があります。
最も関節がリラックスできる「遊び」のある角度を見つけ、クッションで固定することが、安静時の苦痛を和らげる鍵となります。
夜間の痛みを軽減する工夫
- 膝の下にタオルを入れ、わずかに曲げた状態を保つ。
- 横向きで寝る際は、両膝の間に厚めのクッションを挟む。
- 寝る直前ではなく、早めの時間に入浴を済ませる。
体温変化が神経に与える影響
布団に入って体温が上昇すると、血管が広がり炎症部位の拍動が強まる場合があります。
心臓の鼓動に合わせて膝がズキズキと響くのは、この血流の変化が過敏な神経を叩いているためです。
温めすぎが逆効果になる時期もあるため、自身の膝の熱感を確認しながら、適切な温度管理を心がける必要があります。
心理的ストレスと痛み信号の増幅
夜の静寂の中では、意識が痛みだけに集中してしまい、痛みのフィルターが機能しにくくなります。
不安やストレスは脳の痛みを抑える物質の分泌を妨げ、実態以上の激痛を感じさせる要因となります。
リラックスできる環境を整え、脳を過度に興奮させないことも、安静時痛のコントロールには重要です。
末期症状における治療の選択肢と心構え
安静時痛が頻繁に起こる段階は、関節の構造的な破壊が進んでいることを示唆しています。
しかし、痛みの全てが「治らないもの」ではありません。現在の状態を正しく把握し、適切な手段を選ぶと、平穏な時間を取り戻しやすいです。
専門医による多角的な診断
今の痛みが、骨の変形によるものか、一時的な炎症によるものかを見極めることが重要です。MRIなどの精密検査を併用すると、外側からは見えない骨内部の浮腫や滑膜の肥厚を特定できます。
原因に応じた取り組みを行うと、無意味な我慢を減らし、効果的な除痛を目指せます。
痛みの管理とQOLの維持
末期の状態であっても、痛みをゼロにすることだけが目標ではありません。まずはぐっすり眠れること、座って食事ができることを優先しましょう。
神経の興奮を抑える薬や、関節内の潤滑を助ける処置など、保存療法でも安静時痛を緩和できる手段は多く存在します。
生活の質を下げないために、どのような場面で一番困っているかを医師に具体的に伝えることが大切です。
手術療法への理解と決断
保存的な取り組みを続けても安静時痛が消えない場合、人工膝関節置換術などの根本的な処置が適応となります。
手術は、痛みの発生源となっている傷んだ組織を物理的に取り除く唯一の手段です。
特に安静時痛は、手術後に劇的に改善しやすい症状の一つであり、新たな人生のスタートを切るための前向きな選択肢と言えます。
よくある質問
- じっとしていても痛いのは病気が進行したサインですか?
-
変形性膝関節症において安静時痛が現れるのは、病期が末期に差し掛かっている重要な指標となります。軟骨が失われ、骨や周囲の組織に炎症が定着していることを示しています。
放置すると神経の過敏化が進み、治療が難しくなるケースもあるため、早めに専門的な判断を仰ぐ必要があります。
- 湿布を貼って安静にしていれば治りますか?
-
湿布には炎症を抑える効果がありますが、末期の安静時痛は骨の変形や内部の圧力上昇が原因である場合が多いため、湿布だけで根本解決するのは困難です。
一時的な緩和には役立ちますが、構造的な問題を抱えている場合は、より踏み込んだ治療が必要となるケースがほとんどです。
- 安静時痛があるときに無理に運動してもいいですか?
-
激しい痛みが安静時にあるときは、組織が強い炎症状態にあるため、無理な運動は避けるべきです。負荷をかけると炎症が悪化し、痛みの負の循環を強めてしまう恐れがあります。
運動療法を行う場合も、まずは痛みを取り除く処置を優先し、専門家の指導のもとで適切な負荷から始めましょう。
- 膝を高くして寝ると楽になるのはなぜですか?
-
膝を心臓より高い位置に置くと、重力の助けを借りて膝周辺に溜まった血液や水分が戻りやすくなるからです。
これによって静脈のうっ滞が改善され、組織の圧迫が和らぐため、ジンジンとした痛みが軽減されます。
就寝時の工夫として、座布団などを利用して緩やかに高さを出すことは非常に有効な手段です。
- 痛くない方の足でかばって生活しても大丈夫ですか?
-
短期的には避けられませんが、長期的には反対側の膝や腰に過剰な負担がかかり、新たな痛みを引き起こす原因となります。
また、痛い方の膝を使わないと周囲の筋肉が急激に衰え、さらに関節の安定性が失われるという悪循環に陥ります。
かばう生活が当たり前になる前に、根本的な痛みの管理を行う必要があります。
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