正座や和式トイレは膝に悪い?日本の生活様式と変形性膝関節症の密接な関係

正座や和式トイレは膝に悪い?日本の生活様式と変形性膝関節症の密接な関係

正座や和式トイレなど、日本の伝統的な生活様式が膝に大きな負担をかけていることをご存じでしょうか。

変形性膝関節症の患者数は国内で約2,530万人にのぼると推計され、その背景には加齢や肥満だけでは説明しきれない「日本特有の生活習慣」があります。

海外の大規模研究でも、しゃがむ動作やひざまずく姿勢を日常的にとる人は膝の軟骨がすり減りやすいことが繰り返し報告されています。

この記事では、整形外科の臨床経験をもとに、膝への負担を減らしながら日本の暮らしを快適に続けるための具体策をお伝えします。毎日の何気ない動作を少し見直すだけで、膝の痛みや進行を防げる可能性は十分にあります。

目次

正座や和式トイレが膝の軟骨をすり減らす本当の理由

膝を深く曲げる動作は、関節面にかかる圧力を急激に高め、軟骨の摩耗を加速させます。日本の日常生活に溶け込んでいる正座や和式トイレのしゃがみ姿勢は、膝関節にとって過酷な負荷を与え続ける動作の代表格です。

膝を深く曲げると関節にかかる力は体重の数倍になる

膝関節は、曲げる角度が深くなるほど関節面同士の接触圧力が増す構造をしています。歩行時には体重の約2〜3倍の力が膝にかかりますが、しゃがんだ姿勢では体重の7〜8倍に達するという報告もあります。

つまり、体重60kgの方がしゃがむと、膝には最大で約480kgもの力が集中する計算です。これが毎日繰り返されれば、軟骨が少しずつ削れていくのは当然といえるでしょう。

正座は膝関節を150度以上も屈曲させる過酷な姿勢だった

正座の姿勢では、膝関節が150度以上の深い屈曲状態に置かれます。この角度は通常の椅子座位(約90度)と比べて圧倒的に深く、膝蓋骨(しつがいこつ=ひざのお皿)の裏側にある軟骨にも強い圧迫がかかります。

長時間の正座を習慣的に続けることで、膝の半月板(はんげつばん=膝のクッション)や靱帯(じんたい)にも慢性的なストレスが蓄積されます。

特に冠婚葬祭やお茶・お花の稽古など、文化的な場面では正座を避けにくい方も多いかもしれません。

膝への負担を姿勢別に比較した目安

姿勢膝の屈曲角度膝への負荷の目安
椅子に座る約90度体重の約1.5倍
洋式トイレに座る約90〜100度体重の約2倍
和式トイレでしゃがむ約130〜150度体重の約7〜8倍
正座約150〜160度体重の約7〜8倍以上

和式トイレのしゃがみ姿勢が軟骨にダメージを与える

和式トイレを使用するとき、膝は130〜150度程度まで屈曲した状態を数十秒から数分間維持しなければなりません。

この深い屈曲は、膝関節の内側(ないそく)と膝蓋大腿関節(しつがいだいたいかんせつ=お皿と太ももの骨の間)の両方に大きな圧力をかけます。

1日に何度もこの動作を繰り返す人は、関節軟骨がすり減るリスクが高まります。中国・北京で行われた大規模調査でも、1日2時間以上しゃがむ習慣のある女性は変形性膝関節症の有病率が約2.4倍に上昇していたと報告されています。

変形性膝関節症は日本人女性に多い|ROAD研究が明らかにした有病率

日本国内の大規模疫学研究(ROAD研究)の結果、40歳以上の日本人における変形性膝関節症の有病率は男性で約42.6%、女性で約62.4%にのぼることが判明しました。この数値は欧米の報告と比べても高い水準であり、日本の生活習慣との関連が指摘されています。

40歳以上の日本人女性の約6割がレントゲン上の変化をもつ

ROAD研究は、日本全国の都市部・山間部・沿岸部という3つの異なる地域で、3,000人を超える住民を対象に行われた調査です。

レントゲンで確認されるKellgren-Lawrence分類(変形性関節症の重症度を4段階で評価する国際基準)のグレード2以上を「膝関節症あり」と定義しました。

その結果、70歳代の女性では約72%、80歳以上では約81%という極めて高い有病率が示されました。自覚症状のない「隠れ膝関節症」の方を含めると、中高年女性の過半数が何らかの膝の変化を抱えている計算です。

欧米よりも日本の有病率が高い背景には生活様式がある

アメリカのFramingham研究では、症状を伴う膝関節症の有病率は約7%とされています。日本のROAD研究における症状性の有病率は約24%で、3倍以上の開きがあります。

もちろん診断基準や調査手法の違いはありますが、この大きな差は単純に遺伝や加齢だけでは説明しきれません。

アジア文化圏のレビュー論文でも、しゃがみ動作や正座など膝を深く曲げる生活習慣が関節症のリスクを押し上げている可能性が強く示唆されています。

肥満だけでなく「膝を酷使する文化」が発症を後押しする

変形性膝関節症の危険因子として肥満は広く知られていますが、体重が標準でも発症する方は少なくありません。

ROAD研究の追加解析では、農林水産業に従事する女性は事務職の女性に比べて膝の関節裂隙(かんせつれつげき=骨と骨のすきま)が有意に狭いことがわかりました。

この結果は、日常的にひざまずいたりしゃがんだりする動作の多さが膝の変形に直結していることを裏づけています。生活様式という視点を抜きにしては、日本人の膝関節症を正しく理解できないでしょう。

日本と欧米の有病率と生活習慣の比較

項目日本欧米
膝関節症有病率(40歳以上)男性42.6%、女性62.4%約14〜19%
主な床座りの習慣正座・あぐら・畳生活椅子中心
トイレの形式和式がまだ残るほぼ洋式
日常の膝屈曲角度130〜160度が頻繁90度前後が中心

しゃがむ・ひざまずく動作が膝の変形を早めると海外研究が示した

世界各地の疫学研究が一貫して、しゃがみ動作やひざまずく姿勢の長時間の反復が変形性膝関節症のリスクを有意に高めると報告しています。日本人の暮らしにも直結するエビデンスを、代表的な研究ごとに整理します。

北京の大規模調査で長時間のしゃがみがリスク要因と判明

北京在住の60歳以上を対象とした「Beijing Osteoarthritis Study」では、25歳時点で1日2時間以上しゃがむ習慣のあった男性は膝関節症のオッズ比(発症の起こりやすさ)が約2.0倍に上昇していました。女性でも同様に2.4倍の上昇が確認されています。

しゃがみ姿勢と膝関節症の関連は、膝の内側(脛骨大腿関節の内側コンパートメント)でとくに強く現れていました。日本で和式トイレを長年使用してきた方にも、同じ影響が及んでいる可能性は高いといえます。

職業的にひざまずく動作が多い人ほど膝関節症になりやすい

イギリスの症例対照研究では、仕事で1日30分以上しゃがむ人の膝関節症リスクはオッズ比6.9と、極めて高い値を示しました。ひざまずく動作が多い場合でもオッズ比は3.4にのぼっています。

さらに2017年に発表されたシステマティックレビューでは、累積5,000時間のひざまずき作業ごとにオッズ比が1.26ずつ上昇するという用量反応関係が確認されました。膝を酷使する時間が長いほどリスクが段階的に増すという明確なデータです。

膝関節症のリスクを高める動作と研究結果

  • 長時間のしゃがみ(1日2時間以上)でオッズ比2.0〜2.4倍(Zhang et al., 2004)
  • 職業上のしゃがみ(1日30分以上)でオッズ比6.9倍(Cooper et al., 1994)
  • 職業的なひざまずき動作でオッズ比3.4倍(Cooper et al., 1994)
  • 累積5,000時間のひざまずきごとにオッズ比1.26倍ずつ上昇(Verbeek et al., 2017)

ROAD研究でも農林水産業の従事者に変形性膝関節症が多かった

日本のROAD研究では、農業・林業・漁業に従事する女性は、事務職の女性に比べて膝関節の内側の裂隙が有意に狭く、骨棘(こつきょく=骨のとげ)の面積も大きかったと報告されています。

職業活動の中でしゃがみやひざまずきが頻繁に含まれることが、関節の変形と強く結びついていたのです。

農作業のように前かがみでしゃがむ作業だけでなく、茶道の正座、仏壇への礼拝時のひざまずき、畳の掃除など日常のあらゆる場面が該当し得ます。「どれか一つ」ではなく「積み重ね」で膝に負担がかかっているという認識が大切です。

和式トイレから洋式トイレへの変更だけで膝への負担は大きく減る

住環境を少し見直すだけで、膝を深く曲げる回数は劇的に減らせます。とりわけ和式トイレから洋式トイレへの変更は、膝の屈曲角度を半分近くまで抑えられる即効性の高い対策です。

洋式トイレなら膝の屈曲角度は半分以下で済む

和式トイレでしゃがむと膝は130〜150度ほど曲がりますが、洋式便座に腰かける動作なら90〜100度程度の屈曲で済みます。この差は、膝にかかる圧力で換算すると数倍の違いになります。

トイレは1日に何度も使用する場所ですから、毎回の負担の差が月単位・年単位で積み重なると、軟骨への影響は無視できません。和式トイレが自宅に残っている方は、洋式への改修を優先的に検討してみてください。

椅子やベッドの導入で深く膝を曲げる場面そのものを減らせる

トイレだけでなく、食卓を座卓からテーブルと椅子に変えるだけでも効果があります。床に直接座る習慣を減らすことで、膝を深く曲げる動作の回数自体が大きく減るからです。

就寝時も、布団の上げ下ろしで腰を深くかがめる動作が必要な布団よりも、ベッドのほうが膝への負担は軽くなります。

寝起きの動作もベッドであれば足を床に下ろすだけで立ち上がれるため、朝のこわばりがある方には特に助けになるでしょう。

住宅改修に介護保険が使えるケースもある

要介護認定または要支援認定を受けている方は、介護保険の住宅改修費制度を利用できます。和式トイレから洋式トイレへの変更はこの制度の対象工事に含まれており、上限20万円(自己負担1〜3割)までの補助が受けられます。

手すりの取り付けや段差の解消なども対象となるため、膝に不安がある方は担当のケアマネジャーや市区町村の窓口に相談するとよいでしょう。改修前に申請が必要な点だけ注意してください。

住環境の改善で期待できる膝への効果

変更内容膝屈曲角度の変化期待される効果
和式→洋式トイレ約130〜150度→約90度1日複数回の深い屈曲をカット
座卓→テーブルと椅子約120〜140度→約90度食事時の膝負担を軽減
布団→ベッド立ち上がり時の深い屈曲をカット朝の動き出しが楽になる
手すり設置体重を腕に分散膝への集中荷重を緩和

畳の暮らしを完全にやめる必要はない|膝にやさしい和室の工夫

和室や畳での生活は日本文化の豊かさそのものであり、すべてをやめる必要はありません。正座を避けつつ和室を活用する工夫を取り入れれば、膝を守りながら心地よい暮らしを続けられます。

座椅子や高座卓で正座を避けながら和室を楽しめる

背もたれつきの座椅子を使えば、正座やあぐらをかかずに和室でくつろぐことができます。脚付きの高座卓(高さ30〜40cm程度のもの)を組み合わせると、膝の屈曲角度をさらに浅く保てます。

最近では和室の雰囲気に馴染むデザインの座椅子や高座卓も増えているので、インテリアとしての調和も心配いりません。来客時にも正座を強いられる場面を減らせるため、おもてなしの場面でも活用できます。

布団からベッドへの切り替えは膝と腰の両方を楽にする

和室にベッドを置くことに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、畳の上に直接置けるロータイプのベッドフレームなら違和感は少ないでしょう。布団の上げ下ろしがなくなると、毎朝の膝と腰への負担が一気に軽減されます。

どうしても布団にこだわりたい場合は、すのこ型の折りたたみベッドを利用するのも一つの手です。高さが15〜20cm加わるだけでも、床からの立ち上がりがずいぶん楽になります。

和室で使える膝にやさしいアイテム

アイテム効果選ぶポイント
背もたれつき座椅子正座・あぐらを回避高さ調節ができるもの
高座卓(脚付き)膝の屈曲角度を浅くする高さ30〜40cmが目安
ロータイプベッド布団の上げ下ろし動作を排除畳対応の滑り止めつき
踏み台(ふみだい)高低差のある場所で膝への衝撃を和らげる安定感のある幅広タイプ

玄関の段差には手すりと踏み台を組み合わせると安全

日本の住宅では玄関に15〜30cmほどの上がり框(あがりかまち)があるケースが一般的です。この段差を昇り降りする際にも膝は深く曲がり、体重がかかります。

手すりを壁に取り付けて体重の一部を腕で支えつつ、中間に踏み台を置いて段差を2段階に分割すると、1回あたりの膝への負荷を半減できます。玄関は外出のたびに通る場所ですから、早めの対策がおすすめです。

変形性膝関節症の進行を食い止める運動療法と体重管理

住環境の改善に加えて、適度な運動で膝まわりの筋力を強化し、体重を適正に保つことが変形性膝関節症の進行予防には欠かせません。無理のない範囲で継続できる方法を選ぶことが成功のカギです。

太ももの筋力を鍛えると膝関節の安定性が高まる

大腿四頭筋(だいたいしとうきん=太ももの前側の筋肉)は、膝関節を支える最大の筋肉です。この筋力が低下すると膝がぐらつきやすくなり、軟骨への偏った荷重が増えてしまいます。

仰向けに寝た状態で片脚をまっすぐ伸ばしたまま10cmほど持ち上げ、5秒間キープして下ろす「脚上げ運動」は、膝に大きな負担をかけずに大腿四頭筋を鍛えられるシンプルな方法です。

左右各10〜20回を1日2セット行うだけでも効果が期待できます。

ウォーキングや水中運動は膝への負担が少なく続けやすい

ウォーキングは体重の1〜1.5倍程度の負荷で済むため、膝にとって比較的やさしい有酸素運動です。1回20〜30分、週3〜5回のペースで続けると、筋力と持久力の維持に役立ちます。

膝の痛みが強い方には、水中ウォーキングや水泳がとくに適しています。水の浮力で体重の負荷が軽くなるうえ、水の抵抗が筋力トレーニングの効果も生み出してくれます。

プールの温水は筋肉や関節のこわばりをやわらげるため、痛みを感じにくい環境で運動を続けやすいでしょう。

体重を5%減らすだけで膝の痛みは大幅に軽くなる

体重が1kg増えるごとに、歩行時の膝への負荷は約3〜4kg増えるとされています。反対に体重を減らせば、その数倍の負荷軽減につながるわけです。

臨床研究では、体重の5〜10%を減量するだけで膝の痛みスコアが有意に改善したと繰り返し報告されています。体重80kgの方であれば4kgの減量で効果が見込める計算になりますから、目標としては現実的な範囲です。

過度な食事制限ではなく、運動と食事の両面から働きかける工夫が長続きのコツといえます。

膝にやさしい運動の例と期待される効果

  • 脚上げ運動(SLR)は大腿四頭筋の筋力維持に効果的で、膝を曲げずに行える
  • ウォーキングは心肺機能の維持にもつながり、1回20〜30分が目安
  • 水中ウォーキングは浮力で膝への荷重を軽減しながら全身を鍛えられる
  • 自転車(エアロバイク)は膝の可動域を保ちつつ有酸素運動ができる

「たかが膝の痛み」で放置しない|整形外科への受診が遅れるとどうなる?

変形性膝関節症は自然に治る病気ではなく、放置すれば確実に進行します。早い段階で整形外科を受診し、正しい診断と治療を受けると、将来の手術リスクを下げることが期待できます。

朝のこわばりが30分以上続くなら変形性膝関節症の初期症状を疑う

朝起きたときに膝がこわばり、動かしにくいと感じる方は少なくありません。このこわばりが数分で解消するなら問題ないことが多いのですが、30分以上続く場合は関節内に炎症が起きている可能性があります。

「年のせいだから仕方ない」と自己判断して受診が遅れるケースは非常に多く見られます。初期であれば運動療法や物理療法だけで症状が改善する場合もありますので、違和感を覚えた段階で一度専門医に相談してみてください。

変形性膝関節症の進行度と主な症状

進行度主な症状治療の選択肢
初期動き始めの痛み、朝のこわばり運動療法、物理療法、生活指導
中期階段昇降時の痛み、膝の腫れ薬物療法、関節内注射、装具
末期安静時の痛み、変形による歩行困難手術療法の検討

階段の上り下りで痛みが出たら軟骨のすり減りが進んでいるサイン

平地を歩いているときは痛くないのに、階段の上り下りで膝に痛みが走る場合、軟骨の摩耗がある程度進んでいる可能性があります。

階段昇降は平地歩行の約2〜3倍の力が膝関節にかかるため、軟骨が薄くなった部分に集中的に負荷が加わりやすいのです。

とくに階段を下りるときの方が痛みを感じやすいのは、着地の衝撃が大きいためです。「階段だけ痛い」という段階が、まさに治療介入の好機といえるでしょう。

早期の診断と保存療法で手術を回避できるケースは多い

変形性膝関節症は「最終的には人工関節にするしかない」と思い込んでいる方もいらっしゃいますが、実際には保存療法(手術をしない治療)だけで症状をコントロールできている患者さんがたくさんいます。

運動療法で膝まわりの筋力を強化し、体重管理で関節への負荷を減らし、必要に応じて消炎鎮痛薬やヒアルロン酸注射を組み合わせると、日常生活に支障のないレベルまで痛みを抑えることは十分に可能です。

大切なのは、軟骨がまだ残っている早い段階で手を打つことです。

よくある質問

変形性膝関節症の人が正座をすると症状は悪化しますか?

すでに変形性膝関節症と診断されている方が正座を続けると、膝の軟骨への圧迫が繰り返されるため症状が悪化するリスクは高まります。正座の姿勢では膝が150度以上屈曲し、関節面にかかる力は体重の7〜8倍にも達します。

法事や茶道など正座が求められる場面では、正座椅子(小さな折りたたみ椅子)を活用すると膝への負担を大幅に軽減できます。周囲にも事情を伝えておけば、無理に正座をしなくて済む場面は増えるでしょう。

変形性膝関節症を予防するために和式トイレを使い続けても大丈夫ですか?

膝に不安がある方には、和式トイレから洋式トイレへの変更をおすすめします。和式トイレでしゃがむ動作は膝を130〜150度屈曲させ、関節に大きな負荷がかかるためです。

洋式トイレであれば膝の屈曲は約90度で済みますので、1日に何度もトイレを利用することを考えると、この差は長期的にかなり大きな影響を及ぼします。

自宅のトイレ改修が難しい場合は、和式便器にかぶせる洋式便座アタッチメントも市販されていますので、まずはそこから試してみてください。

変形性膝関節症でも畳の部屋で生活を続けることはできますか?

畳の部屋で生活を続けることは十分に可能です。座椅子やクッション性のある高座卓を取り入れ、正座やあぐらを避ける工夫をすれば、膝への過度な負担を減らしながら和室での暮らしを楽しめます。

布団で寝ている場合は、畳の上に直接置けるロータイプのベッドフレームへ切り替えると、寝起きの動作が格段に楽になります。完全に洋室化する必要はなく、膝を深く曲げる場面を一つずつ減らしていくという意識が大切です。

変形性膝関節症の膝の痛みを和らげるために自宅でできる運動はありますか?

自宅で手軽にできる運動として、仰向けで行う「脚上げ運動(SLR)」がおすすめです。片脚をまっすぐ伸ばしたまま10cmほど持ち上げて5秒キープし、ゆっくり下ろす動きを左右各10〜20回、1日2セット行ってみてください。

この運動は膝を曲げずに大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛えられるため、膝に痛みがある方でも安全に取り組めます。運動中に痛みが強くなる場合は中止し、整形外科の主治医に相談してから再開するようにしましょう。

変形性膝関節症はどのタイミングで整形外科を受診すべきですか?

膝の痛みや違和感を2週間以上感じている場合、あるいは朝のこわばりが30分以上続く場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。階段の昇り降りで痛みを感じるようになった段階も、受診の目安になります。

変形性膝関節症は放置すると確実に進行する疾患ですが、初期の段階であれば運動療法や生活指導だけで十分に症状をコントロールできるケースが多くあります。「年のせい」と決めつけず、専門医の診断を受けることが、膝を長く健やかに保つための第一歩です。

参考文献

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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