二次性変形性膝関節症とは?加齢性(一次性)との違いと外傷原因の比率

二次性変形性膝関節症とは?加齢性(一次性)との違いと外傷原因の比率

膝の痛みや違和感に悩んでいる方のなかには「自分の膝の症状は加齢のせいなのか、過去のケガが原因なのか」と疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

変形性膝関節症には、加齢が主な原因となる一次性と、外傷や疾患をきっかけに発症する二次性の2つのタイプがあります。

二次性変形性膝関節症は比較的若い年代にも多く、全体の約10〜12%を占めるとされています。前十字靭帯損傷や半月板損傷などの膝のケガが引き金になるケースが大半です。

この記事では、二次性と一次性の違いを明確にし、外傷が原因となる割合や代表的な原因疾患、診断のポイント、日常生活でできる対策までを幅広く解説します。

目次

二次性変形性膝関節症とは何か|一次性との決定的な違い

二次性変形性膝関節症は、外傷や他の疾患が原因で膝関節の軟骨がすり減り、痛みや機能障害を引き起こす病態です。加齢にともなって自然に軟骨が摩耗する一次性とは発症の背景がまったく異なります。

「原因がはっきりしている」のが二次性の特徴

一次性の変形性膝関節症は、長年の関節使用による軟骨の摩耗が原因であり、特定のきっかけを明示できないことがほとんどです。50代以降に発症するケースが多く、肥満や遺伝的な体質も影響しています。

一方で二次性は、前十字靭帯(ACL)断裂や半月板損傷、関節内骨折などの具体的な外傷、あるいは関節リウマチといった炎症性疾患が引き金となります。

原因が明確であるため、発症までの経過を追跡しやすい点が大きな違いです。

二次性は若い世代にも発症する

一次性が中高年に多いのに対し、二次性はスポーツ活動が活発な10〜30代にも見られます。膝の外傷は若年層に多く、受傷後10〜20年の間に約50%の方が変形性膝関節症を発症するという報告もあります。

若い年齢で膝の変形が進むと、日常生活やスポーツ活動への影響が長期にわたるため、早い段階での対応が求められます。

一次性と二次性の比較

項目一次性(加齢性)二次性(外傷性など)
主な原因加齢・肥満・遺伝外傷・疾患
好発年齢50代以降20〜40代にも多い
原因の特定困難な場合が多い比較的容易
進行パターン緩やかに進行受傷後に加速する
全OAに占める割合約88〜90%約10〜12%

放置すると若くても人工関節が必要になることがある

二次性変形性膝関節症は、一次性に比べて進行速度が速いケースが少なくありません。外傷によって関節内の力学バランスが崩れると、軟骨への負担が局所的に集中し、変性が加速するためです。

30代や40代でも人工膝関節置換術が視野に入る場合があり、早期発見と適切な治療介入が将来の膝の健康を大きく左右します。

外傷が原因の変形性膝関節症はどれくらい多いのか|二次性の発症比率

全変形性膝関節症のうち、外傷が原因で発症する二次性の割合は約10〜12%と推定されています。米国の調査では、下肢の症候性変形性関節症のうち外傷に起因するものが約560万人にのぼるとの報告があります。

疫学データが示す外傷由来の膝OAの実態

2006年に発表されたBrownらの研究によると、症候性変形性関節症の約12%が外傷後に発症しています。この数値には膝だけでなく股関節や足関節も含まれていますが、膝が全体のなかで大きな割合を占めています。

日本国内でもスポーツ外傷や交通事故による膝損傷は決して珍しくなく、二次性変形性膝関節症の患者数は潜在的に多いと考えられています。

ACL損傷後に変形性膝関節症を発症するリスク

前十字靭帯(ACL)損傷は、二次性変形性膝関節症の代表的な原因です。ACL損傷後の膝関節症リスクは非損傷膝に比べて約4倍高くなり、半月板損傷を合併すると約6倍にまで上昇するとの報告があります。

手術で靭帯を再建しても、関節症の発症リスクがゼロになるわけではありません。受傷後の適切なリハビリテーションと長期的な経過観察が大切です。

年齢・性別・活動レベルによる差

若年層でスポーツ活動が活発な方ほど、膝外傷のリスクが高くなります。15〜24歳は膝外傷の発生率がもっとも高い年代で、サッカーやバスケットボールといったコンタクトスポーツの選手に多い傾向です。

女性はACL損傷の発生率が男性より高いとされる一方、外傷後の変形性膝関節症は男女ともに見られます。肥満度が高いほど術後の関節症リスクが増す点にも注意が必要でしょう。

外傷の種類膝OA発症リスク発症時期の目安
ACL損傷(単独)約4倍受傷後10〜15年
ACL+半月板損傷約6倍受傷後10〜20年
半月板切除術後約4〜6倍術後10〜21年
脛骨近位端骨折高リスク受傷後5〜15年

二次性変形性膝関節症を引き起こす代表的な外傷と原因疾患

二次性変形性膝関節症の原因は外傷だけに限りません。靭帯や半月板の損傷に加え、関節内骨折や炎症性疾患など、さまざまな病態が関節軟骨の変性を引き起こします。

前十字靭帯(ACL)損傷と膝の不安定性

ACLが断裂すると、膝関節の前後方向の安定性が失われます。脛骨(すねの骨)が前方にずれやすくなり、関節面にかかる力が不均一になります。

そうした力学的な変化が長期間続くと、軟骨の一部に過剰な負荷がかかり、変性が進みやすくなります。再建手術を受けた場合でも、完全に正常な膝の動きを取り戻すのは難しく、手術後の注意深い管理が欠かせません。

半月板損傷と切除術が軟骨に与える影響

半月板は膝関節でクッションの働きをしています。この半月板が損傷すると衝撃吸収能力が低下し、軟骨への直接的なダメージが増えます。

半月板の状態衝撃吸収力OAへの影響
正常十分に機能低リスク
損傷(温存)部分的に低下中リスク
部分切除後大幅に低下高リスク
全切除後喪失非常に高リスク

関節内骨折と膝周囲の骨折

脛骨プラトー骨折(脛骨近位端骨折)や大腿骨遠位部の骨折は、関節面に直接ダメージを与えます。骨折によって関節面の平滑性が失われると、荷重のかかり方が変わり、軟骨の変性が進行しやすくなります。

手術で骨折部をできるだけ正確に整復しても、わずかな段差や角度のズレが残る場合があり、将来の変形性膝関節症リスクを完全に排除するのは容易ではありません。

関節リウマチなど炎症性疾患が軟骨を壊す

関節リウマチや痛風などの炎症性疾患は、滑膜(関節を包む膜)に慢性的な炎症を引き起こし、炎症性サイトカインが軟骨を分解します。外傷とは異なる経路ですが、最終的に軟骨が破壊される点では共通しています。

炎症性疾患が原因の場合は、関節の変形が両膝に対称的に起こるときもあり、一次性や外傷性とはレントゲン画像上のパターンが異なる点が鑑別のポイントです。

なぜ外傷後に膝の軟骨が壊れていくのか|二次性OA進行の仕組み

外傷を受けた膝関節では、受傷直後から炎症反応が起こり、軟骨を分解する酵素やサイトカインが大量に放出されます。こうした生物学的な変化と力学的な不均衡の両方が、二次性変形性膝関節症の進行を後押ししています。

受傷直後に始まる炎症カスケード

膝を損傷すると、関節内に血液がたまる関節血腫が生じます。この血液中にはIL-1β、IL-6、TNF-αといった炎症性サイトカインが含まれ、受傷後24〜48時間以内に急激に増加します。

これらのサイトカインは軟骨細胞に作用し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)やADAMTSといった軟骨分解酵素の産生を促します。受傷直後のこの炎症反応が、のちの軟骨変性への引き金となります。

力学バランスの崩れが軟骨摩耗を加速させる

ACL断裂後の膝は前後・回旋方向の安定性が低下し、本来とは異なる位置に荷重がかかるようになります。半月板損傷がある場合には、衝撃分散機能も失われています。

こうした力学的な変化により、軟骨の特定部位に過剰なストレスが集中します。その結果、軟骨の摩耗が正常な膝よりも数倍速いペースで進むことになるでしょう。

慢性炎症と軟骨変性の悪循環

受傷直後の急性炎症が治まったあとも、低いレベルの慢性炎症が関節内に持続します。壊れた軟骨の断片が滑膜を刺激し、さらなる炎症反応を招くため、「炎症→軟骨破壊→炎症」という悪循環が生じます。

この悪循環を断ち切ることが二次性変形性膝関節症の進行を食い止めるための鍵であり、受傷後早期の適切な対応が将来の膝の状態を大きく左右します。

  • 受傷直後の関節血腫が炎症の起点になる
  • IL-1β・IL-6・TNF-αなどのサイトカインが軟骨分解を促す
  • 力学的不安定性と炎症の相乗効果で変性が加速する
  • 低レベルの慢性炎症が数年にわたり持続する

二次性変形性膝関節症を早期に見つけるための診断と検査

二次性変形性膝関節症は、外傷の既往歴と画像所見を組み合わせて診断します。一次性との鑑別では、発症年齢や変形パターン、左右差なども手がかりになります。

問診で外傷歴を丁寧に聞き取る

診断でまず重視されるのが外傷の既往歴です。過去にACL損傷や半月板損傷を受けたことがあるか、関節内骨折の治療歴があるかを詳しく確認します。

数十年前のケガであっても二次性変形性膝関節症の原因になりえるため、「若いころにスポーツで膝を痛めた」といった情報も見逃さないことが大切です。

レントゲン検査で一次性との違いを見分ける

一次性の変形性膝関節症は内側コンパートメント(膝の内側)に関節裂隙の狭小化が偏るのが典型的なパターンです。

一方、外傷後の二次性では、損傷を受けた部位に応じて外側にも変性が見られるなど、変形の分布が異なります。

画像所見一次性二次性(外傷性)
変形の分布内側に偏りやすい損傷部位に依存
左右差両膝に生じやすい受傷側に顕著
骨棘形成広範囲に出現損傷部位周辺に集中

MRIで軟骨・靭帯・半月板を詳細に評価する

MRIは軟骨の状態や靭帯・半月板の損傷を高い精度で描出できます。レントゲンでは判別しにくい初期段階の軟骨変性や、骨髄浮腫(骨内の炎症による信号変化)も確認できるため、早期発見に有用です。

特にスポーツ外傷後に膝の違和感が続く若い方は、レントゲンだけでなくMRIまで確認してもらうと、二次性変形性膝関節症の兆候を早い段階で捉えられます。

二次性変形性膝関節症の治療選択肢|保存療法から手術まで

治療は症状の程度や年齢、活動レベルに応じて、保存療法と手術療法を使い分けます。二次性であっても治療の基本的な枠組みは一次性と共通しますが、原因への対処が加わる点が大きな違いです。

運動療法と体重管理が治療の土台になる

保存療法の柱は、膝周囲の筋力強化を中心とした運動療法と体重管理です。大腿四頭筋やハムストリングスの筋力を高めると、膝関節への負荷を軽減できます。

特に二次性の場合は受傷後の筋力低下が著しいことが多いため、リハビリテーションで段階的に筋力を回復させる取り組みが症状改善の第一歩となります。

薬物療法で痛みと炎症をコントロールする

痛みが強い時期には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用薬が用いられます。関節内へのヒアルロン酸注射やステロイド注射も、一時的な疼痛緩和に有効です。

ただし、薬物療法はあくまで症状のコントロールが目的であり、軟骨の変性そのものを元に戻す効果は期待できません。痛みを和らげながら運動療法を継続し、膝の機能を維持していく方針が基本となります。

手術が検討されるタイミングとその種類

保存療法で十分な効果が得られない場合は、手術療法を検討します。比較的若い患者さんでは、膝の荷重軸を矯正する高位脛骨骨切り術が選択されることがあります。関節の変形が高度な場合は、人工膝関節置換術が最終的な手段です。

二次性特有の問題として、過去の骨折による変形や軟部組織の瘢痕が手術を複雑にするケースがあります。そのため、治療計画は個々の患者さんの状態に合わせてきめ細かく立てる必要があるでしょう。

治療法対象期待される効果
運動療法全ステージ筋力向上・痛み軽減
薬物療法痛みが強い時期疼痛緩和・炎症抑制
骨切り術若年・片側変形荷重軸の矯正
人工関節高度変形痛み除去・機能回復

二度とあの痛みを繰り返さない|外傷後の膝を守るために今日から変える生活習慣

外傷後の膝を長持ちさせるには、日々の生活習慣の見直しが大切です。適度な運動・体重管理・正しい動作パターンの3つを意識すると、二次性変形性膝関節症の進行を遅らせることが期待できます。

体重管理が膝への負担を直接減らす

体重が1kg増えると、歩行時に膝にかかる負荷は約3〜4kg増加するといわれています。肥満は一次性の変形性膝関節症のリスク因子として広く知られていますが、二次性においても進行を加速させる要因です。

食事内容を見直し、バランスのよい栄養摂取と適度なカロリー制限を心がけると、膝への負担を実質的に減らせます。

膝に負担をかけすぎない運動を習慣にする

  • 水中ウォーキングや水泳で関節への衝撃を抑えながら筋力を維持する
  • 自転車こぎは膝への負担が少なく有酸素運動として効果的
  • スクワットは膝の角度を浅め(90度まで)に調整して行う
  • ジョギングよりもウォーキングを優先する

定期的な受診で変化を見逃さない

外傷後に痛みがなくなったとしても、関節内では緩やかに変性が進んでいる可能性があります。定期的に整形外科を受診し、レントゲンやMRIで膝の状態を確認してもらうことが早期対応につながります。

自覚症状がないからといって安心するのではなく、年に1回程度のチェックを受けることをおすすめします。特にACL損傷や半月板切除の既往がある方は、5年・10年単位での経過観察が望ましいでしょう。

よくある質問

二次性変形性膝関節症は加齢による膝の痛みとどのように見分けられますか?

二次性変形性膝関節症と加齢による一次性とでは、発症のきっかけに明確な違いがあります。過去にACL損傷や半月板損傷、関節内骨折などの膝外傷を経験している場合は、二次性の可能性が高くなります。

画像検査でも手がかりが得られます。一次性は膝の内側に変形が集中しやすいのに対し、二次性は損傷部位に応じて外側にも変性が見られたり、片側の膝だけに変形が偏ったりする傾向があります。

発症年齢も鑑別材料となり、40代以下で膝の変形が進んでいる場合には、外傷歴を詳しく確認することが診断の助けになります。

二次性変形性膝関節症は前十字靭帯を再建すれば防げますか?

前十字靭帯の再建手術は膝の安定性を回復させる効果がありますが、残念ながら変形性膝関節症の発症リスクを完全に取り除くことはできません。複数の研究で、再建術後も10〜20年の期間で一定割合の方が膝関節症を発症することが確認されています。

ただし、手術を受けずに放置した場合と比較すると、再建術には膝の機能を維持し関節症の重症化を遅らせる効果が期待されています。

手術後は適切なリハビリテーションを行い、体重管理やスポーツ復帰のタイミングを慎重に判断することが、長期的な膝の健康を守るうえで重要です。

二次性変形性膝関節症の進行を遅らせる運動にはどのようなものがありますか?

膝への衝撃が少なく、筋力維持に効果的な運動が推奨されています。具体的には、水中ウォーキング、自転車こぎ、ストレッチ、浅い角度でのスクワットなどが挙げられます。大腿四頭筋やハムストリングスを鍛えると、膝関節にかかる負担を分散できます。

逆に、ジャンプ動作や急な方向転換を伴うスポーツは膝への負担が大きく、症状を悪化させる恐れがあるため注意してください。運動は継続することが何より大切ですので、無理なく続けられるメニューを主治医や理学療法士と一緒に組み立てることをおすすめします。

二次性変形性膝関節症は半月板を切除した何年後に発症しやすいですか?

半月板切除術後の変形性膝関節症は、術後10〜21年の範囲で発症することが多いと報告されています。ある21年追跡の研究では、半月板切除を受けた膝の約71%に何らかの画像上の変性所見が認められ、約48%には中等度以上の変形が見られました。

発症までの期間は、切除した半月板の量や、もともとの膝の状態、術後の活動レベルなどによって変わります。切除量が多いほどリスクは高くなるため、現在では可能な限り半月板を温存・修復する方針が広まっています。

二次性変形性膝関節症の発症を予防するために受傷直後にできることはありますか?

膝を損傷した直後は、関節内で急激な炎症反応が起きています。この急性期の炎症をできるだけ早く抑えることが、将来の変形性膝関節症リスクを下げるうえで大切だと考えられています。

受傷直後は速やかに整形外科を受診し、必要に応じて関節内の血腫除去や安静の指示を受けてください。

早期に正確な診断を受け、損傷の程度に合った治療を開始することが、長期的な膝の健康を守る第一歩です。ACL損傷が疑われる場合は、手術のタイミングについても早めに専門医と相談されることをおすすめします。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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