皮下脂肪より内臓脂肪が危険?変形性膝関節症のリスクファクターとしての脂肪の質

皮下脂肪より内臓脂肪が危険?変形性膝関節症のリスクファクターとしての脂肪の質

膝の痛みを抱えて整形外科を受診した際、「痩せましょう」と指導された経験を持つ方は多いはずです。

しかし、体重を落とすことだけに意識が向きすぎると、本来目を向けるべき重要なリスクファクターを見落としてしまう可能性があります。

それは「脂肪の質」です。同じ体重であっても、皮膚の下にある皮下脂肪が多い人と、内臓の周りに脂肪がついている人では、膝関節が受けるダメージの種類が全く異なります。

特に内臓脂肪は、単なるエネルギーの貯蔵庫ではありません。関節に悪影響を及ぼす物質を放出する「活発な臓器」のような働きをします。

この記事では、体重計の数字だけでは見えてこない、脂肪の種類と変形性膝関節症の深い関係について紐解いていきます。

目次

体重計の数字だけに惑わされていませんか?重さよりも怖い脂肪の毒性

膝への負担を考えるとき、私たちはどうしても物理的な「重さ」ばかりを気にしがちです。確かに体重が重ければ重いほど、歩くたびに膝にかかる衝撃は大きくなります。

しかし、変形性膝関節症の進行には、物理的な荷重以上に、脂肪組織そのものが持つ性質が深く関わっています。

BMIが標準範囲内でも膝が痛むのはなぜか

BMI(体格指数)が22前後の標準体型であるにもかかわらず、変形性膝関節症を発症し、強い痛みを訴える方がいらっしゃいます。

これは、膝の痛みが単なる荷重オーバーだけで引き起こされるわけではないことを明確に示しています。

もし重さだけが原因であれば、力士やラグビー選手は全員膝を壊しているはずです。しかし実際には、強靭な筋肉が関節を守り、健康な膝を保っている選手も多く存在します。

逆に、痩せ型で筋肉量が少なく、お腹だけが出ているような体型の方は注意が必要です。膝への物理的な負担は少なくても、軟骨の変性が進みやすい傾向にあります。

これは体内に蓄積された脂肪が、関節に対して化学的な攻撃を仕掛けているためです。

脂肪組織はただのアブラではなく物質を放出している

かつて脂肪組織は、余ったエネルギーを蓄えておくだけの静かな倉庫だと考えられていました。しかし現在では、極めて活発な内分泌器官であることがわかっています。

脂肪細胞は「アディポサイトカイン」と呼ばれるさまざまな生理活性物質を分泌します。脂肪細胞が肥大化すると、この分泌バランスが崩れてしまいます。

その結果、体に良い影響を与える物質が減り、逆に炎症を引き起こす悪い物質が大量に放出されるようになります。

  • アディポネクチン:血管や軟骨を守る善玉物質だが、内臓脂肪が増えると減少する
  • TNF-α:炎症を引き起こし、軟骨細胞の代謝を阻害する悪玉物質
  • インターロイキン-6:関節内の炎症を悪化させ、痛みを増強させる物質
  • レプチン:軟骨の分解酵素を誘導し、関節破壊を促進する可能性がある物質
  • レジスチン:インスリン抵抗性を高め、糖尿病リスクと共に膝への負担を増やす

この「悪い物質」が血液に乗って全身を巡り、遠く離れた膝関節にも到達して悪さをするのです。つまり、脂肪がついているということは、体の中に慢性的な炎症の工場を抱えているのと同じ状態と言えます。

メタボリックシンドロームと膝関節の密接な関係

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めることで知られています。実は、変形性膝関節症とも強い関連があります。

血糖値が高い状態が続くと、体内のタンパク質が糖と結びつきます。そして「AGEs(終末糖化産物)」という老化物質が作られます。

このAGEsが膝の軟骨や半月板に蓄積すると、組織が脆くなり、少しの衝撃でも損傷しやすくなります。

内臓脂肪の蓄積を起点とした代謝異常は、全身の血管だけでなく、膝関節という局所の組織強度も低下させてしまうのです。

そのため内臓脂肪を減らす取り組みは、心臓病予防だけでなく、膝を守るためにも極めて重要です。

膝を内側から攻撃する内臓脂肪の正体とは

内臓脂肪は、胃や腸などの臓器の周りにつく脂肪で、つきやすく落ちやすいという特徴があります。一見すると男性に多いイメージがあるかもしれません。

しかし、閉経後の女性もホルモンバランスの変化によって急激に増えるときがあります。

なぜ内臓脂肪が皮下脂肪よりも変形性膝関節症にとって危険なリスクファクターとなるのでしょうか。ここでは、その攻撃的な性質について掘り下げます。

炎症性サイトカインが軟骨細胞を死滅させる

内臓脂肪が蓄積すると、そこから「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質が大量に放出されます。これらは本来、細菌やウイルスと戦うための免疫システムの一部です。

しかし、過剰に分泌されると自分の体を攻撃し始めます。膝関節においては、これらのサイトカインが軟骨細胞に作用し、軟骨を維持するための代謝バランスを崩してしまいます。

具体的には、軟骨を作る働きを抑制し、逆に軟骨を分解する酵素の産生を促進します。

つまり、内臓脂肪が多い状態では、膝を使っていなくても、体の中から常に軟骨が溶かされるような指令が出続けているのです。

内臓脂肪は関節破壊を加速させるエンジンのようなもの

変形性膝関節症の進行スピードには個人差がありますが、内臓脂肪量はその加速装置として働きます。内臓脂肪レベルが高い患者群は、低い患者群に比べて進行が早いという報告もあります。

特にX線画像上の関節裂隙(膝の隙間)の狭小化がより速く進むことが分かっています。これは、物理的な荷重による摩耗に加え、化学的な炎症が「火に油を注ぐ」状態を作り出しているからです。

膝への負担を減らすために杖を使ったりサポーターをしたりしても、このエンジンのスイッチが入ったままでは十分ではありません。

内臓脂肪というエンジンを停止させることが、進行を食い止めるための鍵となります。

血流に乗って全身を巡る毒素の影響

内臓脂肪から放出される悪玉物質は、直接隣り合う臓器だけでなく、血流に乗って全身に運ばれます。膝関節は血管が乏しい組織ですが、関節を包む滑膜には豊富な毛細血管が存在します。

血液中の炎症物質が滑膜に到達すると、滑膜炎を引き起こします。すると、関節液(膝の水)を過剰に分泌させたり、その質を低下させたりします。

結果として、膝が腫れ、熱を持ち、安静にしていてもズキズキと痛むようになります。

このように、内臓脂肪は局所的な問題ではなく、全身性の炎症疾患の一症状として膝の痛みを引き起こしているのです。

物質名主な作用膝関節への具体的影響
TNF-α強い炎症作用軟骨成分の分解を促進し、再生を妨げる
IL-6免疫反応の調整滑膜の炎症を慢性化させ、痛みや腫れを持続させる
アディポネクチン抗炎症・修復内臓脂肪増加により減少し、軟骨の保護機能が失われる
レプチン食欲抑制過剰になると軟骨細胞を刺激し、変性を誘導する

皮下脂肪は本当に悪者なのか?その意外な役割

内臓脂肪の危険性を強調してきましたが、では皮下脂肪はどうでしょうか。皮膚のすぐ下につくこの脂肪は、見た目のプロポーションには大きく影響します。

しかし、変形性膝関節症のリスクという意味では、内臓脂肪とは異なる側面を持っています。

クッションとしての皮下脂肪の機能

皮下脂肪には、外部からの衝撃を和らげるクッション材としての役割があります。また、体温を保つ断熱材としての役割も担っています。

特に女性の場合、骨盤周りや太ももにつく皮下脂肪は、転倒した際に大腿骨や骨盤を骨折から守るプロテクターのような機能を果たします。

膝関節周囲においても、適度な皮下脂肪は膝をついた時の衝撃を吸収し、滑液包炎などを防ぐ役に立っています。

もちろん過剰であれば重りになりますが、生理的な範囲内であれば、皮下脂肪は体を守るための防具として機能しているのです。

代謝の活発さと悪玉物質の分泌量の違い

皮下脂肪と内臓脂肪の決定的な違いは、その代謝の活発さにあります。内臓脂肪は合成と分解を頻繁に繰り返し、多くの生理活性物質を放出します。

  • 分布場所:皮下脂肪は皮膚の下、内臓脂肪は腹腔内の腸間膜など
  • 代謝活性:皮下脂肪は低く安定、内臓脂肪は高く不安定
  • 炎症リスク:皮下脂肪は低い、内臓脂肪は極めて高い
  • 性差:皮下脂肪は女性に多く、内臓脂肪は男性に多い(閉経後は女性も増加)
  • 減らしやすさ:皮下脂肪は落ちにくい、内臓脂肪は比較的落としやすい

対照的に、皮下脂肪は比較的代謝が穏やかで、エネルギーを長期的に保存することに特化しています。そのため、同じ脂肪量であっても、皮下脂肪からは悪玉サイトカインの分泌量は圧倒的に少ないです。

これが、「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型)」よりも「内臓脂肪型肥満(リンゴ型)」のほうが、変形性膝関節症のリスクが高いとされる大きな理由です。

女性ホルモンと皮下脂肪の関係性

女性に皮下脂肪がつきやすいのは、女性ホルモン(エストロゲン)の働きによるものです。エストロゲンには内臓脂肪の蓄積を防ぎ、皮下脂肪としてエネルギーを蓄える作用があります。

また、エストロゲン自体に軟骨を保護する作用があることもわかっています。しかし、閉経を迎えるとこのエストロゲンが激減します。

そのため、皮下脂肪による保護作用が薄れ、内臓脂肪がつきやすい体質へと変化します。これが、更年期以降の女性に変形性膝関節症が急増する背景の一つです。

若い頃の皮下脂肪は、ある意味で女性ホルモンが正常に働いている証拠であり、関節を守る味方でもあったと言えるのです。

血液に乗って膝軟骨を溶かす「炎症」の恐怖

変形性膝関節症は、長らく「使いすぎによる摩耗」と考えられてきました。しかし現在は「慢性的な炎症疾患」であるという認識が広まっています。

内臓脂肪から始まる炎症の連鎖は、音もなく静かに進行します。気づいた時には軟骨が取り返しのつかない状態になっているケースもあります。

慢性炎症が関節に飛び火する仕組み

内臓脂肪が過剰に蓄積した状態は、体の中で常にボヤ騒ぎが起きているようなものです。これを「慢性炎症」と呼びます。

このボヤ(炎症)によって生じた火の粉(炎症性物質)は、血流に乗って全身を巡ります。膝関節の滑膜などの組織には、これらの物質を受け取るレセプター(受容体)があります。

火の粉が到達するとそこで新たな火災が発生します。本来、膝を守るための滑膜が炎症を起こして腫れ上がってしまいます。

そして、軟骨を栄養するはずの関節液が、逆に軟骨を攻撃する液体へと変質してしまうのです。このプロセスは、膝を酷使したかどうかにかかわらず、24時間休むことなく進行します。

アディポカインが引き起こす軟骨の質の低下

脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称を「アディポカイン」と呼びます。健康な状態では、善玉と悪玉のアディポカインがバランスよく保たれています。

しかし、内臓脂肪が増えると悪玉が優位になります。特に注目すべきは、これらの悪玉アディポカインが軟骨細胞の「質」を変えてしまう点です。

軟骨細胞は本来、コラーゲンやヒアルロン酸を作り出して弾力を保っています。しかし、炎症にさらされ続けると、その産生能力が低下してしまいます。

結果として、スカスカで脆い組織になってしまいます。クッション性が失われた軟骨は、歩行などの日常的な負荷にも耐えられなくなり、急速にすり減っていきます。

痛みに対する感受性が高まるリスク

炎症の影響は、物理的な破壊だけにとどまりません。慢性的な炎症状態にあると、痛みを伝える神経が過敏になることが知られています。

これを「痛覚過敏」と呼びます。通常なら痛みを感じない程度の軽微な刺激でも、脳が強い痛みとして認識してしまい、日常生活に支障をきたすようになります。

内臓脂肪が多い方で、レントゲン上の変形はそれほど強くないのに激痛を訴えるケースがあるのは、このためです。

脂肪由来の炎症物質が、膝の組織だけでなく、痛みのセンサーそのものの感度を狂わせてしまっているのです。

炎症レベル体内の状態膝関節への影響
低(健康)アディポネクチンが豊富軟骨代謝が正常で、修復機能が働く
中(初期)軽度のサイトカイン上昇滑膜が刺激され、時折水がたまったり違和感が出る
高(進行期)全身性の慢性炎症安静時痛、強い腫れ、軟骨の急速な摩耗、痛み過敏

筋肉の隙間に潜む脂肪が膝の安定性を奪う

脂肪の蓄積は、お腹周りや皮下だけの問題ではありません。近年、整形外科分野で注目されているのが「異所性脂肪」です。特に筋肉の中に入り込む脂肪(脂肪浸潤)が問題視されています。

霜降り肉のように筋肉の繊維の間に脂肪が入り込むと、筋肉の質が低下します。その結果、膝を支える力が著しく弱まってしまいます。

サルコペニア肥満という新たな脅威

加齢とともに筋肉量が減少し、筋力が低下することを「サルコペニア」と呼びます。これに肥満が合併した状態が「サルコペニア肥満」です。

見た目は太っているため筋肉があるように見えますが、実際には中身の筋肉がスカスカで脂肪に置き換わっている状態です。

サルコペニア肥満の方は、体重という重荷を背負っているにもかかわらず、それを支えるエンジンである筋肉が錆びついているようなものです。

このアンバランスさが、膝関節への負担を極限まで高めます。そして、変形性膝関節症の発症と進行を強力に後押ししてしまうのです。

  • 膝関節を安定させる支持力が低下し、グラつきが生じる
  • 衝撃吸収能力が落ち、ダイレクトに軟骨へ衝撃が伝わる
  • 瞬発的な動きができなくなり、転倒リスクが高まる
  • 筋肉からの抗炎症物質(マイオカイン)の分泌が減る
  • 基礎代謝が落ち、さらに脂肪が蓄積しやすい体になる

大腿四頭筋に入り込む脂肪の影響

膝を守るために最も大切な筋肉は、太ももの前にある「大腿四頭筋」です。この筋肉の中に脂肪が浸潤すると、筋肉が収縮する力が弱まります。

そして、膝を伸ばす力が低下します。歩行時に膝が完全に伸びきらなくなると、関節面の一部に圧力が集中し、局所的な軟骨の摩耗が進みます。

また、質の悪い筋肉は疲れやすく、長い距離を歩くとすぐに痛みが出たり、膝がガクガクしたりします。

トレーニングをして筋肉をつけようとしても、脂肪が邪魔をして効率よく筋力がつかないのも問題です。

動かないことがさらなる脂肪蓄積を招く悪循環

膝が痛いと、どうしても動くのが億劫になり、活動量が減ります。動かなければ筋肉はさらに衰え、消費カロリーが減るため脂肪はさらに蓄積します。

そして増えた脂肪(特に内臓脂肪や異所性脂肪)が炎症を強め、痛みを悪化させるという「負のループ」に陥ります。

この悪循環を断ち切るためには、痛みがあっても可能な範囲で体を動かす取り組みが重要です。筋肉への脂肪浸潤を防ぐことが大切だからです。

安静にしすぎると、かえって膝の寿命を縮めてしまう皮肉な現実があることを知っておく必要があります。

状態区分特徴膝へのリスク評価
健康な筋肉密度が高く、脂肪が少ない低い(関節をしっかり保護)
単純性肥満脂肪も多いが筋肉も多い中(重さはあるが支える力もある)
サルコペニア痩せていて筋肉が少ない中~高(衝撃吸収能が低い)
サルコペニア肥満筋肉が少なく脂肪が多い極めて高い(支えがなく、炎症も強い)

隠れ肥満を見逃さないためのチェックポイント

自分は太っていないから大丈夫、と思っている方こそ注意が必要です。前述の通り、BMIが正常でも内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」は、変形性膝関節症の隠れた予備軍です。

外見からはわかりにくい体の中のリスクを早期に発見するために、どのような指標を確認すべきかを解説します。

BMIだけでは測れない内臓脂肪レベル

健康診断でよく使われるBMIは、身長と体重のバランスを見る指標です。しかし、体の中身(筋肉と脂肪の割合)まではわかりません。

筋肉質で体重が重い人と、脂肪過多で体重が重い人の区別がつかないのです。膝のリスク管理においては、BMIはあくまで参考程度にとどめるべきです。

より直接的に内臓脂肪の状態を示す指標に目を向ける必要があります。特に、若い頃と体重は変わっていないのに、体型が変化している場合は要注意です。

ベルトの穴がきつくなった、お腹が出てきたという変化は、筋肉が減って内臓脂肪が増えた危険なサインです。

腹囲測定の重要性とメタボ健診の活用

内臓脂肪の蓄積を最も簡易的に推定できるのが「腹囲(ウエスト周囲径)」の測定です。日本では、男性85cm以上、女性90cm以上が内臓脂肪型肥満の目安とされています。

おへその高さで測定したこの数値が基準を超えている場合、CTスキャンで内臓脂肪面積を測ると危険域を超えている可能性が高いと言えます。

この状態は、すでに膝に対して化学的な攻撃が始まっていることを意味します。

毎年の特定健診(メタボ健診)の結果を軽視してはいけません。腹囲の増減を膝の健康のバロメーターとして活用しましょう。

血液検査で見える炎症マーカーと代謝異常

内臓脂肪による悪影響がどの程度進んでいるかは、血液検査の結果からも推測できます。

中性脂肪値(トリグリセライド)が高い、HDL(善玉)コレステロールが低い、血糖値やHbA1cが高めであるといったデータは、内臓脂肪が過剰であることを示唆します。

また、一般的な健診項目には含まれないことが多いですが、「CRP(C反応性蛋白)」という炎症マーカーがわずかに上昇している場合もあります。

これは、体内で慢性炎症が起きている可能性を示しています。これらの数値異常が見られる場合は、膝の痛みがなくても対策が必要です。

将来的な変形性膝関節症のリスクが高いと認識し、早期に対策を打つことが求められます。

チェック項目危険信号解説
腹囲測定男性85cm、女性90cm以上内臓脂肪が確実に蓄積しています
体重変化20歳時より10kg以上増加増えた分の多くは内臓脂肪の可能性大
体型手足は細いが腹だけ出る筋肉不足と内臓脂肪過多の典型例
食後すぐに眠くなる血糖値スパイクが起きており代謝異常の疑い

今日から始める脂肪の質を変えるための生活習慣

内臓脂肪が変形性膝関節症のリスクファクターであることは間違いありませんが、朗報もあります。

それは、内臓脂肪は「つきやすいが、落としやすい」ということです。生活習慣を少し見直すだけで、皮下脂肪よりもはるかに早く減少させられます。

それに伴って炎症レベルも下がり、膝の痛みが軽減する可能性があります。

抗炎症作用のある食事への切り替え

内臓脂肪を減らすだけでなく、体内の炎症そのものを鎮める食事を意識しましょう。

青魚に含まれるEPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸には、強力な抗炎症作用があります。膝の痛みを和らげる効果が期待できます。

逆に、サラダ油やスナック菓子に含まれるオメガ6系脂肪酸の摂りすぎは炎症を促進するため、控える必要があります。

また、糖質の摂りすぎ、特に清涼飲料水に含まれる果糖は、ダイレクトに内臓脂肪に変わるため要注意です。

食物繊維を多く含む野菜や海藻を先に食べる「ベジファースト」を徹底してください。血糖値の急上昇を抑えるのも有効です。

膝に負担をかけずに内臓脂肪を燃やす有酸素運動

脂肪を燃やすには有酸素運動が必要ですが、膝が痛い状態で無理に歩いたり走ったりするのは逆効果です。膝への衝撃が少ない運動を選ぶことが継続の鍵となります。

プールでの水中ウォーキングは、浮力によって体重負荷が大幅に軽減されるため、膝痛がある方に適しています。

また、固定式自転車(エアロバイク)もおすすめです。サドルに体重を預けられるため膝への負担が少なく、大腿四頭筋の強化と脂肪燃焼を同時に狙えます。

1日20分程度、息が少し上がるくらいの強度で続けると、内臓脂肪は確実に減っていきます。

カテゴリ具体的な行動期待される効果
食事果糖ブドウ糖液糖を避ける肝臓での脂肪合成を抑制し、内臓脂肪を減らす
運動水中ウォーキング膝への負担をかけずに脂肪燃焼効率を高める
睡眠7時間以上の睡眠確保食欲抑制ホルモンを正常化し、過食を防ぐ
飲酒休肝日を作るアルコールによる脂肪分解の阻害を防ぐ

ストレス管理と睡眠でホルモンバランスを整える

意外に見落とされがちなのが、ストレスと睡眠の影響です。慢性的なストレスを感じると「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。

これが内臓脂肪の蓄積を促進します。また、睡眠不足は食欲を増進させるホルモン「グレリン」を増やし、満腹中枢を刺激する「レプチン」を減らしてしまいます。

膝の痛みで眠れない夜もあるかもしれません。しかし、入浴で体を温めたり、寝具を工夫したりして、質の良い睡眠を確保することが大切です。

これは脂肪の質を改善し、膝の修復を促すための立派な治療の一つです。

よくある質問

変形性膝関節症の痛みを減らすには内臓脂肪を落とすべきですか?

はい、変形性膝関節症の痛みを緩和するためには、内臓脂肪を減らすことが非常に有効です。

内臓脂肪は炎症を引き起こす物質を放出し、軟骨の破壊を進行させる大きな要因となります。

減量によって膝への物理的な荷重が減るだけでなく、体内の炎症レベルが下がります。その結果、鎮痛薬に頼らなくても痛みが軽くなるケースが多く報告されています。

ウォーキングは変形性膝関節症の内臓脂肪対策として有効ですか?

ウォーキングは内臓脂肪を燃焼させる効果的な有酸素運動ですが、変形性膝関節症の方が行う場合は注意が必要です。

痛みが強い時期に無理に歩くと、かえって関節の炎症を悪化させる恐れがあります。痛みのない範囲で行うか、膝への負担がより少ない水中ウォーキングやエアロバイクなどを活用するとよいでしょう。

実施する際は、クッション性の高い靴を選び、平坦な道を選ぶようにしてください。

どのような食事が変形性膝関節症に悪影響を与える内臓脂肪を増やしますか?

糖質と脂質の過剰摂取、特に精製された砂糖や果糖ブドウ糖液糖を含む甘い飲み物、菓子パン、スナック菓子などは要注意です。

これらは急激に血糖値を上げ、変形性膝関節症のリスクとなる内臓脂肪を増やしやすい食品です。また、揚げ物や加工食品に含まれる質の悪い油も炎症を促進します。

これらを控え、野菜、海藻、青魚などを中心とした和食ベースの食事を心がけてください。

痩せている人でも内臓脂肪が原因で変形性膝関節症になりますか?

痩せている方でも変形性膝関節症になるリスクは十分にあります。

見た目はスリムでも内臓脂肪が蓄積している「隠れ肥満」や、筋肉量が少なく脂肪が入り込んでいる「サルコペニア肥満」の場合が該当します。

炎症物質の影響や筋肉による関節保護作用の不足により、膝へのダメージが進行しやすくなります。体重だけでなく、体脂肪率や腹囲、筋肉の質にも目を向けましょう。

変形性膝関節症の内臓脂肪対策としてサプリメントは効果がありますか?

内臓脂肪を減らす機能を謳ったサプリメントは数多く存在しますが、変形性膝関節症の治療において、それだけで劇的な効果を期待するのは難しいでしょう。

あくまで食事改善と運動療法の補助として活用するのが賢明です。

特定の成分に頼るよりも、生活習慣全体を見直し、根本的な代謝機能を改善することが、結果として膝の健康を守る最短の道となります。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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