高齢女性を襲う「大腿骨内顆骨壊死」とは|変形性膝関節症と間違えやすい急激な膝痛

高齢女性を襲う「大腿骨内顆骨壊死」とは|変形性膝関節症と間違えやすい急激な膝痛

ある日突然、膝の内側に激痛が走り、歩くことさえままならなくなる。そのような症状に心当たりはありませんか。

もしあなたが60代以上の女性で、急激な膝の痛みに悩まされているなら、注意が必要です。それは一般的な「変形性膝関節症」ではなく、「大腿骨内顆骨壊死」という病気かもしれません。

この病気は初期診断が難しく、放置すると急速に悪化する恐れがあります。

しかし、正しい知識を持ち早期に適切な対処を行うと、痛みをコントロールし自分の足で歩き続ける未来を守れます。

この記事では、間違われやすい二つの病気の違いから治療法までを詳しく解説します。

目次

突然の激痛は大腿骨内顆骨壊死かもしれません

膝の痛みを訴える高齢者の中で、ある日突然発症する激しい痛みは、大腿骨内顆骨壊死である可能性が高いと考えられます。

多くの人が「きっと年齢のせいによる変形性膝関節症だろう」と思い込みがちですが、痛みの始まり方や質には明確な違いがあります。

なぜこの病気が起こるのか、そしてなぜ高齢女性に多いのかという背景について、医学的な視点からわかりやすく解説します。

急に膝が痛くなった夜のことを思い出せますか

大腿骨内顆骨壊死の最大の特徴は、発症日時を明確に特定できるほどの「突然の激痛」です。

患者さんの多くは、「〇月〇日の朝、起きたら痛かった」「買い物をしている最中に急にズキッときた」と、痛みが始まった瞬間を鮮明に記憶しています。

これは、徐々に痛みが強くなる変形性膝関節症とは対照的です。

この痛みは非常に強く、夜間寝ている時にも痛む「夜間痛」や、安静にしていても痛む「安静時痛」を伴うケースが珍しくありません。

湿布を貼ったり市販の痛み止めを飲んだりしても改善せず、歩くたびに膝の内側に鋭い痛みが走るため、日常生活に大きな支障をきたします。

もし、「いつから痛くなったか」をはっきり答えられるのであれば、それは単なる加齢による軟骨のすり減りではない病気が隠れているサインかもしれません。

60代以上の女性に多く発症する理由

この病気は、特に60歳以上の女性に多く見られます。その背景には、閉経後のホルモンバランスの変化に伴う骨密度の低下、いわゆる骨粗鬆症が深く関係していると考えられています。

骨が脆くなっている状態で、膝に繰り返し負担がかかって、骨の内部で微細な骨折が生じやすくなるのです。

さらに、日本人の高齢女性はO脚傾向にある人が多く、体重の負担が膝の内側(内顆)に集中しやすいという身体的特徴も影響しています。

長年の家事や労働、あるいは加齢によって膝への負担が蓄積し、ある限界点を超えた瞬間に骨の組織が耐えきれなくなり、壊死という状態を引き起こしてしまうのです。

大腿骨内顆骨壊死と変形性膝関節症の発症パターンの違い

比較項目大腿骨内顆骨壊死変形性膝関節症
発症の仕方ある日突然、急激に発症する数ヶ月から数年かけて徐々に進行する
痛みのきっかけ日時を特定できることが多いいつの間にか痛くなっていたことが多い
好発年齢・性別60歳以上の女性に特に多い中高年以降の男女(女性にやや多い)

骨が壊死してしまう本当の原因とは

「壊死」という言葉を聞くと、骨が腐ってしまうような恐ろしいイメージを持つかもしれませんが、実際には血流が途絶えることで骨の組織が死んでしまう状態を指します。

かつては原因不明の特発性疾患とされていましたが、現在では「軟骨下脆弱性骨折」という概念が有力視されています。

これは、膝の関節面を支えている軟骨の下にある骨(軟骨下骨)が、繰り返される負荷によって微細な骨折を起こすことが始まりです。

その微細な骨折が治りきらないまま負荷がかかり続けることで、局所的な血流障害が生じるという考え方です。

つまり、一度の大きな怪我ではなく、日々の生活の中で知らず知らずのうちに蓄積されたダメージが、ある日突然「骨の壊死」という形で表面化するのです。

変形性膝関節症との決定的な違いを見分ける

膝が痛いという症状だけで自己判断するのは非常に危険であり、適切な治療の開始を遅らせる原因になります。

大腿骨内顆骨壊死と変形性膝関節症は、似ているようでいて、その病態や進行スピードには決定的な違いがあります。

痛みの始まり方がまったく異なる

前述した通り、大腿骨内顆骨壊死は「突然の激痛」で幕を開けますが、変形性膝関節症は「なんとなく膝が重い」「動き始めに違和感がある」といった軽微な症状から始まります。

変形性膝関節症の場合、初期段階では休めば痛みが治まるケースが多く、お風呂に入って温めると楽になるときもあります。

一方、大腿骨内顆骨壊死の痛みは、安静にしていてもズキズキと痛む場合があり、温めても痛みが引かない、あるいは逆に痛みが強まることさえあります。

特に、膝の内側の特定の場所(大腿骨の内顆部分)を押すと強い痛みを感じる「圧痛」が明瞭にあるのが特徴です。

この圧痛点は、変形性膝関節症の広範囲な痛みとは異なり、指で押せるほどのピンポイントな範囲である方が多いのです。

レントゲンでは初期段階で見逃されるリスク

診断において最も注意が必要なのが、初期の大腿骨内顆骨壊死はレントゲン写真に写らないことが多いという点です。

発症から数週間から1ヶ月程度は、レントゲンを撮っても「骨には異常がありませんね」「少し軟骨が減っていますね」と言われ、変形性膝関節症や単なる打撲と診断されてしまうケースが後を絶ちません。

しかし、レントゲンで異常が見えない間も、骨の内部では壊死が進行しています。

適切な診断がつかないまま漫然と痛み止めや湿布で様子を見ているうちに、壊死した部分が押しつぶされて陥没し、関節の変形が一気に進んでしまうときがあります。

そのため、激しい痛みが続くにもかかわらずレントゲンで異常なしと言われた場合は、強く疑う必要があります。

進行スピードが変形性膝関節症よりも早い

変形性膝関節症は、数年から数十年という長い時間をかけてゆっくりと軟骨がすり減り、骨が変形していく病気です。

これに対し、大腿骨内顆骨壊死は、発症から数ヶ月という短い期間で急速に病状が悪化する場合があります。

壊死した骨の部分は強度が著しく低下しているため、体重をかけ続けると容易に押しつぶされてしまいます。

骨が陥没すると、膝の関節面が階段状に段差ができ、それが周囲の軟骨をさらに傷つけることになります。

この負の連鎖により、短期間でO脚変形が進行し、歩行困難な状態に陥るケースもあるのです。だからこそ、早期発見と早期治療が必要なのです。

大腿骨内顆骨壊死の症状セルフチェック

  • ある日突然、膝の内側に激痛が走った
  • 膝の内側を指で押すと、飛び上がるほど痛い場所がある
  • 夜、寝ていても膝が痛くて目が覚めることがある
  • 安静にしていてもズキズキとした痛みが続く
  • レントゲンでは異常なしと言われたが、痛みが治まらない

早期発見のカギを握るMRI検査の必要性

初期の段階で正しい診断を下すためには、より精密な画像検査が必要です。

一般的な整形外科クリニックではレントゲン検査が主流ですが、大腿骨内顆骨壊死の疑いがある場合は、それだけでは不十分です。

なぜMRI検査が必要なのか、そして画像上でどのような変化が見られるのかについて、専門的な視点から解説します。

なぜレントゲンだけでは不十分なのか

レントゲン写真は、骨の形や並びを見るのには適していますが、骨の内部の状態までは映し出せません。

大腿骨内顆骨壊死の初期段階では、骨の形自体は保たれているため、レントゲン上では正常に見えてしまいます。

骨が陥没して変形して初めて、レントゲンで「骨が平らになっている」「影がある」と確認できるようになりますが、その時点ではすでに病気が進行してしまっています。

レントゲンで異常が見つかるのを待っていては、治療のタイミングを逃してしまうことになります。

激しい痛みが続くのにレントゲンで異常がないという事実こそが、逆に骨の内部の異常を疑う重要な手がかりとなるのです。

画像検査による診断精度の違い

検査方法初期段階の検出確認できる内容
レントゲン(X線)困難(ほとんど写らない)骨の形、関節の隙間、進行期の陥没
MRI検査非常に高い精度で可能骨内部の浮腫、壊死範囲、軟骨の状態
骨シンチグラフィー可能だが一般的ではない骨の代謝が活発な部分(炎症部位)

骨髄浮腫という初期サインを見逃さない

MRI(磁気共鳴画像診断装置)を使用すると、レントゲンでは見えない骨の内部の炎症や水腫を鮮明に捉えられます。

大腿骨内顆骨壊死の初期には、MRI画像上で壊死した部分の周囲に「骨髄浮腫」と呼ばれる、骨の中が水浸しになったような信号変化が現れます。

また、壊死した部分と正常な部分の境界線が、特徴的な帯状の低信号領域(Low intensity band)として描出されることがあり、これが確定診断の決め手となります。

MRI検査を行えば、発症直後の初期段階であっても、壊死の有無、位置、そして大きさを正確に把握可能です。それにより、早期の治療方針決定が可能になります。

確定診断までの流れと受診すべき診療科

もし急激な膝の痛みを感じたら、まずは近くの整形外科を受診します。そこでレントゲン撮影を行いますが、異常がないと言われても痛みが強い場合は、医師に「MRI検査を受けたい」と相談しましょう。

すべてのクリニックにMRIがあるわけではないため、設備の整った総合病院や専門の検査機関を紹介してもらう必要があるかもしれません。

専門医は、問診での痛みの発生状況、触診での圧痛部位の確認、そして画像検査の結果を総合的に判断して診断を下します。

特に膝関節を専門とする整形外科医であれば、この病気の特徴を熟知しているため、よりスムーズに診断に至ることができます。

痛みを我慢せず、納得いくまで検査を求める姿勢が、自分の膝を守ります。

保存療法で痛みをコントロールする方法

大腿骨内顆骨壊死と診断されたからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。

壊死の範囲が小さい場合や、陥没が進行していない初期段階では、手術を行わずに症状を改善させる「保存療法」が第一選択となります。

まずは免荷で膝への負担を徹底的に減らす

保存療法の中で最も重要かつ基本となるのが、患部への荷重を避ける「免荷(めんか)」です。

壊死した骨は非常に脆くなっているため、体重をかけると簡単に潰れてしまいます。骨が潰れるのを防ぎ、修復を促すためには、杖や松葉杖を使用して、痛む側の足に体重がかからないようにする必要があります。

痛みが強い時期は、外出を控えて安静を保つことも必要です。家の中でも伝い歩きをしたり、立ち座りの動作をゆっくり行ったりするなど、膝への衝撃を極力減らす工夫が求められます。

この時期に無理をして歩き回ると、骨の陥没を招き、将来的に手術が必要になるリスクを高めてしまうため、徹底した免荷管理が大切です。

薬物療法や注射で炎症を抑えるアプローチ

痛みや炎症を抑えるために、消炎鎮痛剤(NSAIDs)の内服や湿布が処方されます。これらは根本的な治療ではありませんが、強い痛みを取り除き、日常生活を送りやすくするために有効です。

夜間痛がひどい場合には、より強力な鎮痛薬が検討されるときもあります。

関節内の炎症が強い場合には、ヒアルロン酸やステロイド剤を関節内に注射するケースもあります。ヒアルロン酸は関節の潤滑を助け、ステロイドは強力に炎症を鎮める作用があります。

ただし、ステロイドの頻回な注射は感染症のリスクや骨を脆くする副作用も考慮する必要があるため、医師と相談しながら慎重に行います。

最近では、骨粗鬆症の治療薬を使用して骨の強度を高め、壊死の進行を抑制する試みも行われています。

どのような場合に手術が必要になるのか

保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、レントゲンやMRIで骨の陥没が進行していることが確認された場合は、手術療法への切り替えが検討されます。

具体的には、壊死の範囲が大きく自然治癒が見込めない場合や、骨の変形によって歩行機能が著しく低下した場合などが判断基準となります。

手術が必要と判断された場合でも、どの時期にどのような手術を行うかは、患者さんの年齢、活動レベル、全身の健康状態などを考慮して決定されます。

痛みを我慢しすぎて骨の破壊が進んでしまうと、選べる手術の選択肢が限られてしまうケースもあるため、定期的な診察でタイミングを見極めることが重要です。

保存療法の具体的な内容

  • 松葉杖やT字杖を使用した免荷(体重をかけない)
  • 足底板(インソール)の使用による荷重バランスの調整
  • 消炎鎮痛剤(飲み薬・湿布)による痛みの緩和
  • ヒアルロン酸の関節内注射による潤滑補助
  • 骨粗鬆症治療薬(ビスフォスフォネート製剤など)の併用

手術療法を選択するタイミングと術式

保存療法では痛みが取れない、あるいは骨の陥没が進んでしまった場合には、手術による治療が必要となります。

手術にはいくつかの種類があり、患者さんの膝の状態や年齢、生活スタイルに合わせて適切な方法が選択されます。

壊死範囲の大きさが手術の判断基準

手術の方針を決める上で最も重要な指標となるのが、MRI画像で確認できる「壊死範囲の大きさ」です。

壊死している部分が内顆の幅に対してどれくらいの割合を占めているかによって、予後が大きく異なります。

壊死範囲が小さい場合は保存療法で治癒する可能性が高いですが、範囲が広い場合(一般的には内顆の幅の40%〜50%以上)は、高い確率で骨の陥没が進行します。

そのため、早期の手術が推奨される場合があります。

さらに、壊死部分が関節のどの位置にあるかも重要です。体重が最もかかる部分に壊死がある場合は、小さくても痛みや陥没のリスクが高まります。

医師はこれらの画像情報と、実際の痛みや生活への支障度を総合的に判断し、患者さんと相談しながら手術の必要性を決定します。

自分の骨を温存する骨切り術という選択肢

比較的年齢が若く、活動性が高い患者さんや、壊死が内側だけに留まっている場合に検討されるのが「骨切り術(こつきりじゅつ)」です。

これは、すねの骨(脛骨)や太ももの骨(大腿骨)を切って角度を変え、体重のかかるラインを壊死していない外側の健康な軟骨部分に移動させる手術です。

骨切り術の最大のメリットは、自分の関節を温存できる点です。人工関節に比べて術後の可動域制限が少なく、スポーツや正座が可能になる場合もあります。

それに加え、壊死した部分への荷重が減るため、壊死部の修復が期待できるという利点もあります。

ただし、骨が癒合するまでに時間がかかり、リハビリ期間が比較的長くなるという側面もあります。

主な手術方法の特徴比較

手術方法自分の関節リハビリ期間
高位脛骨骨切り術(HTO)温存できる骨癒合まで時間がかかる
単顆型人工膝関節置換術(UKA)一部(外側)温存比較的早い
全人工膝関節置換術(TKA)すべて人工に置換比較的早いが制限あり

人工膝関節置換術を検討すべき段階とは

壊死の範囲が非常に広い場合や、すでに骨の陥没が進んで関節全体の変形が著しい場合、あるいは高齢で早期の社会復帰を望む場合には、「人工膝関節置換術」が選択されます。

これには、壊死している内側の部分だけを人工関節に変える「単顆型(UKA)」と、関節全体をすべて取り換える「全置換型(TKA)」の2種類があります。

単顆型(UKA)は、靭帯や外側の軟骨を残せるため、膝の自然な動きを保ちやすく、傷口も小さくて済みます。回復も早いのが特徴ですが、適応できる条件が限られています。

一方、全置換型(TKA)は、どのような重度の変形にも対応でき、長期的な除痛効果が安定しているという実績があります。

どちらを選ぶかは、膝全体のダメージの程度によって慎重に判断されます。

壊死を悪化させないための日常生活の過ごし方

診断がついた後や保存療法を行っている間、日常生活でどのように過ごすかが、その後の経過を大きく左右します。無意識に行っている動作が膝への負担となり、病状を悪化させているかもしれません。

膝を守り、これ以上の悪化を防ぐために日常生活で心がけるべき具体的なポイントをお伝えします。

杖や足底板を使って膝を守りましょう

「杖をつくのは年寄りくさい」と抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、大腿骨内顆骨壊死において杖は「治療器具」の一つです。

痛む足と反対側の手に杖を持つと、膝にかかる荷重を大幅に減らせます。特に外出時や長く歩く必要があるときは、必ず杖を使用するのがおすすめです。

また、靴の中に「足底板(インソール)」を入れるのも有効です。外側を高くした楔(くさび)状の中敷きを使用すると、膝にかかる体重の軸をわずかに外側にずらせます。

それにより、壊死している内側部分への負担を物理的に軽減し、痛みの緩和と骨の陥没予防に役立ちます。これらは医師の処方により医療保険で作製可能です。

肥満解消が膝の寿命を延ばすことにつながる

膝は、歩行時に体重の約3倍、階段の昇り降りでは約5倍〜7倍もの負荷がかかると言われています。つまり、体重が1kg増えるだけで、膝には数kg分の余計な負担がかかることになるのです。

壊死した脆い骨にとって、過剰な体重は最大の敵と言えます。もし体重が適正値を超えているのであれば、減量は最も効果的な治療の一つになります。

ただし、膝が痛い状態でウォーキングなどの運動で痩せるのは難しく、かえって膝を痛める原因になります。

食事療法を中心として、膝に負担をかけずに摂取カロリーをコントロールすると良いでしょう。体重を減らす取り組みは膝への負担を減らすだけでなく、将来的な再発予防にもつながります。

無理な運動は避けて安静を保つことが大切

健康のためにと、痛みをこらえてウォーキングやスクワットを続けることは、この病気に関しては逆効果です。

骨が脆くなっている時期に負荷をかけ続けるのは、骨折部を無理やり動かしているのと同じであり、骨の崩壊を早めてしまいます。

診断されてから痛みが落ち着くまでの急性期は、基本的に「安静」が治療です。

もちろん、全く動かないと筋力が落ちてしまうため、椅子に座ったまま足首を動かす運動や、プールの中での歩行(水の浮力で負担が減る場合のみ)などは検討できます。

あるいは、理学療法士の指導の下で行う膝に荷重をかけない筋力トレーニングなどに留めるべきです。自己判断での運動は避け、必ず医師の指示に従ってください。

日常生活で注意すべき行動

  • 重い荷物を持っての長距離歩行は避ける
  • 階段の昇り降りは可能な限りエレベーターやエスカレーターを使う
  • 正座や横座りなど、膝を深く曲げたり捻ったりする姿勢を避ける
  • フローリングよりもクッション性のある靴下やスリッパを使用する
  • 立ち仕事の際は、こまめに椅子に座って休憩を取る

自然治癒の可能性と予後について知っておく

大腿骨内顆骨壊死と診断されると、「もう治らないのではないか」「一生歩けなくなるのではないか」と不安になるでしょう。

しかし、すべての症例が悪化して手術になるわけではありません。条件が揃えば、手術をせずに痛みが消失し、元通りの生活に戻れることもあります。

小さな壊死なら自然に痛みが引くケースも

壊死の範囲が小さく、早期に発見されて適切な免荷が行われた場合、多くのケースで症状は改善に向かいます。

壊死した骨が吸収され、新しい骨に置き換わったり、周囲の骨が強化されて安定したりすると、痛みが徐々に治まっていくのです。これを「自然治癒」や「症状の沈静化」と呼びます。

この場合、画像上の壊死の跡は残るケースがありますが、臨床的な痛みはなくなり、日常生活に支障をきたさなくなります。

ただし、痛みが引くまでに数ヶ月から半年程度かかる場合もあるため、焦らずに治療を継続しましょう。

定期的にレントゲンやMRIを撮り、悪化していないかを確認しながら経過を見守ります。

早期治療開始が将来の歩行機能を左右する

予後を良くするために最も大切なのは、やはり「早期発見・早期治療」です。骨が陥没する前に対策を始められれば、自分の骨を守れる可能性は格段に高まります。

逆に、痛みを我慢して放置し、骨が大きく陥没してから受診した場合は、残念ながら手術以外の選択肢がなくなってしまう方が多いです。

一度治癒したとしても、反対側の足に発症するリスクや、数年後に再発するリスクもゼロではありません。

そのため、治療がひと段落した後も、定期的な検診を受け、体重管理や適度な運動を続けるなど、膝をいたわる生活習慣を継続しましょう。それが、生涯自分の足で歩き続けるための鍵となります。

大腿骨内顆骨壊死の予後ステージ

ステージ状態治療の方向性
初期(発症直後)レントゲン異常なし・MRIで浮腫あり免荷による保存療法で治癒を目指す
進行期(陥没開始)レントゲンでわずかな平坦化壊死範囲により手術を検討
末期(変形完成)関節破壊・変形性膝関節症へ移行人工関節などの手術が必要になることが多い

決して諦めずに専門医と二人三脚で歩む

急激な痛みと「骨壊死」という病名にショックを受ける方は多いですが、医学の進歩により、この病気のしくみは解明されつつあります。

治療法も確立されており、適切な治療を受ければ、痛みのない生活を取り戻すことは十分に可能です。

大切なのは、自己判断で諦めたり放置したりせず、信頼できる専門医を見つけ、現在の自分の膝の状態を正しく理解することです。

医師と相談しながら、自分のライフスタイルに合った治療法を選択し、前向きに取り組んでいくことが、解決への一番の近道です。

よくある質問

大腿骨内顆骨壊死はマッサージで治りますか?

大腿骨内顆骨壊死は骨の内部で起きている血流障害や微細骨折が原因であるため、筋肉をほぐすマッサージで根本的に治ることはありません。

むしろ、膝周辺を強くマッサージすると炎症を悪化させたり、患部に不要な刺激を与えたりするリスクがあります。

痛みを緩和する目的で周囲の筋肉を優しくさするのはある程度有効かもしれませんが、治療としての効果は期待できません。

まずは整形外科を受診し、骨の状態を確認しましょう。

大腿骨内顆骨壊死の痛みはいつまで続きますか?

大腿骨内顆骨壊死の痛みの期間には個人差がありますが、適切な安静や免荷を行った場合、数週間から3ヶ月程度で激しい痛みが落ち着いてくる方が多いです。

しかし、骨の陥没が進行している場合や、無理をして歩き続けてしまった場合は、痛みが半年以上続くことや、さらに悪化することもあります。

痛みが長引く場合は保存療法の限界である可能性も考えられるため、再度MRI検査などを行い、治療方針を見直す必要があります。

大腿骨内顆骨壊死に良い食べ物はありますか?

大腿骨内顆骨壊死を直接治す特定の食べ物はありませんが、背景にある骨粗鬆症の改善に役立つ栄養素を摂るのは大切です。

骨の材料となるカルシウム、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨の形成を促すビタミンKなどを積極的に摂取しましょう。

具体的には、乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜、きのこ類などが推奨されます。

また、体重管理の観点から、高カロリーな食事を控える工夫も間接的に膝を守ることにつながります。

大腿骨内顆骨壊死は両足同時に発症しますか?

大腿骨内顆骨壊死が両膝同時に発症することは比較的稀ですが、片方の膝を発症した後、しばらくしてからもう片方の膝にも発症するケースは少なからず見られます。

これは、片足をかばって歩くため、健康なはずのもう片方の足に過度な負担がかかることが一因と考えられます。

また、骨粗鬆症やO脚といった全身的なリスク要因を持っている場合は、反対側も同様に発症しやすい状態にあると言えます。

片側の治療中も、反対側の膝に違和感がないか注意深く観察しましょう。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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