出産・育児が膝の変形に与える影響|妊娠中の骨盤の緩みと長期間の抱っこ負担

出産・育児が膝の変形に与える影響|妊娠中の骨盤の緩みと長期間の抱っこ負担

妊娠中から産後にかけての「膝の痛み」は、単なる疲れではありません。

妊娠によるホルモンバランスの変化や体重増加、そして産後の骨盤の緩みは、将来的な変形性膝関節症のリスクを確実に高める要因となります。

毎日の抱っこや授乳姿勢が膝に与える負担は想像以上に大きく、適切なケアをしないまま放置すると、40代以降に深刻な痛みとして現れる可能性があります。

この記事では、なぜ出産や育児が膝の変形を招くのか、その医学的なメカニズムと、忙しいママでも今日からできる具体的な予防策について解説します。

目次

妊娠中から始まる膝の違和感の原因

妊娠が判明してから出産に至るまでの約10ヶ月間、女性の体は劇的な変化を遂げます。

お腹が大きくなることによる物理的な変化だけでなく、目に見えないホルモンバランスの変動が、膝関節に対して大きな影響を与えているのです。

多くの妊婦さんが経験する「歩きにくさ」や「膝のきしみ」は、単なる体重増加だけが原因ではありません。

リラキシンというホルモンはどのような仕組みで関節を緩めるのか

妊娠中に分泌量が増える「リラキシン」というホルモンは、出産時に赤ちゃんが産道を通りやすくするために働きます。具体的には、骨盤周りの靭帯や関節を緩める作用を持っています。

このホルモンは骨盤だけに作用するわけではありません。全身の関節や靭帯にも影響を及ぼすため、膝関節を支える靭帯もまた、通常より緩みやすい状態になってしまうのです。

靭帯の緩みは膝の安定性を低下させる

膝関節は本来、強固な靭帯によって支えられ、安定した歩行を可能にしています。リラキシンの影響でこの支持力が弱まると、膝はグラグラと不安定な状態になります。

階段の上り下りや、立ち上がる瞬間など、膝に力が加わった際に正常な軌道からズレやすくなります。これが軟骨同士の摩擦や炎症を引き起こすきっかけとなるのです。

妊娠時期主な身体的変化膝への具体的リスク
妊娠初期〜中期リラキシン分泌の増加関節の緩みにより、捻挫や歩行時のふらつきが生じやすくなる
妊娠後期急激な体重増加と腹部の突出重心が前方に移動し、バランスを取るために膝がつねに屈曲気味になる
出産直前骨盤の最大開大と全身のむくみ関節内圧が高まり、少しの動作でも膝内部に強い圧力がかかる

妊娠中の体重増加と重心位置の変化が膝に負荷をかける

お腹の赤ちゃんが成長するにつれて、母体の体重は増加します。一般的に妊娠中は8キロから12キロ程度体重が増えると言われていますが、膝にかかる負担は体重の数倍になるとされています。

さらに問題なのは、単に重くなるだけではないという点です。お腹が前にせり出すことで「重心の位置」が変わり、姿勢を保つために膝に余計な力がかかり続けるのです。

ガニ股歩きは膝の内側に集中的な圧力をかけ続ける

お腹が大きくなると、バランスを取ろうとして無意識のうちに足を開いて歩くようになります。いわゆる「ガニ股」に近い歩き方です。

この歩行スタイルは転倒を防ぐためには有効ですが、膝関節にとっては過酷な環境を作り出します。

足先が外を向き、膝が外に開くことで、体重の負荷は膝の内側一点に集中しやすくなります。この偏った負荷が、内側の軟骨をすり減らす大きな原因となるのです。

O脚傾向の進行と内側軟骨の摩耗について

日本人はもともとO脚の傾向が強いと言われますが、妊娠中のガニ股歩きはこれを助長します。膝の内側に偏った荷重がかかり続けると、内側の軟骨だけが急速に摩耗してしまいます。

これが変形性膝関節症の初期段階と同じメカニズムです。妊娠中の一時的な姿勢変化が、将来的な膝の変形の「引き金」を引いてしまう可能性があることを認識しましょう。

出産後の骨盤の緩みは膝関節にどのようなダメージを与える?

出産を終えれば膝の負担がなくなるかというと、そうではありません。むしろ産後は、開いた骨盤が元の位置に戻ろうとする不安定な時期であり、かつ待ったなしの育児が始まります。

骨盤の歪みは、下半身全体の骨格アライメント(配列)を狂わせ、膝関節にねじれを生じさせる大きな要因となります。

骨盤の傾きは大腿骨のねじれを引き起こす

出産によって大きく開いた骨盤は、産後数ヶ月かけて徐々に戻っていきますが、適切なケアをしないと左右差が生じたり、前傾・後傾したまま固まったりします。

骨盤は太ももの骨(大腿骨)の土台となる重要な部分です。土台である骨盤が傾けば、そこに繋がっている大腿骨も内側や外側にねじれることを余儀なくされます。

この構造的な歪みが、膝への負担を倍増させるのです。

ニーイン・トゥーアウトのリスクが高まる

特に産後の女性に多く見られるのが、骨盤の緩みによって股関節が内旋(内側にねじれる)状態です。

この状態で足を地面につくと、膝は内側に入るのにつま先は外を向く「ニーイン・トゥーアウト」という危険な姿勢になりやすくなります。

このねじれは膝関節のクッションである半月板に強い剪断力(せんだんりょく)を加えます。その結果、半月板損傷のリスクを格段に高めてしまうのです。

産後の靭帯回復遅延と関節の遊びに注意が必要

妊娠中に分泌されたリラキシンの影響は、産後もしばらく続きます。個人差はありますが、関節や靭帯が元の硬さに戻るまでには数ヶ月から半年程度かかると言われています。

この期間はまだ関節に「遊び」がある状態であり、少しの無理が関節のズレを引き起こします。しかし現実は、この回復期に休むことは許されず、赤ちゃんを抱いて立ち座りを繰り返さなければなりません。

骨盤底筋群の機能低下は下半身の安定性を損なう

出産は骨盤の底にある筋肉「骨盤底筋群」に大きなダメージを与えます。この筋肉は内臓を支えるだけでなく、腹圧を高めて体幹を安定させる役割も担っています。

骨盤底筋群が弱まると体幹が安定せず、歩行時や動作時の衝撃を上半身でうまく吸収できなくなります。その結果、地面からの衝撃を膝がダイレクトに受け止めることになり、軟骨の摩耗を早めてしまうのです。

  • 大腿骨・膝への影響:骨盤が前傾すると大腿骨が内側にねじれやすく、膝が過伸展(反り膝)になりやすい状態を作ります。
  • 軟骨へのリスク:膝の前方や内側に過度な圧力がかかり続けることで、軟骨損傷のリスクが増大します。
  • 左右差の問題:骨盤に左右差があると片側の脚にばかり体重がかかり、片方の膝だけ極端に変形が進む原因になります。

毎日の抱っこや授乳姿勢が膝の内側に負担をかける理由とは?

育児中のママにとって、抱っこと授乳は避けて通れない毎日のタスクです。しかし、これらの動作は無意識のうちに膝にとって最悪な姿勢をとってしまいがちです。

愛する我が子のお世話が、皮肉にも膝の寿命を縮める行為になっている可能性があります。

片側に重心を乗せる「休め」の姿勢は危険

抱っこ紐を使っている時や、料理中、あるいは立ち話をしている時、無意識に片方の足に重心を預けて「休め」の姿勢をとっていませんか。

特に子供を抱っこしていると、体重プラス子供の重さが片側の膝一点にかかります。

この時、骨盤は横に突き出され、膝の外側の靭帯が引き伸ばされます。その一方で、膝の内側の軟骨同士は強く押し付け合い、ダメージを蓄積させていくのです。

外側スラスト現象を誘発

歩行時や片足立ちの瞬間に、膝が外側にガクッと横ブレする現象を「外側スラスト」と呼びます。長期間の抱っこで横揺れの癖がつくと、このスラスト現象が常態化しやすくなります。

膝が外にブレるたびに内側の軟骨が衝突を繰り返し、まるでハンマーで叩き続けるかのように関節を破壊していきます。これがO脚変形の進行を早める原因となります。

動作・姿勢膝への負担度具体的なダメージの内容
片足重心での抱っこ高(特に内側)内側軟骨への局所的な圧迫とO脚変形の加速
横座りでの授乳中〜高膝関節のねじれ固定と骨盤の歪みによるアライメント異常
子供を抱いて床から立つ最大体重の約7倍以上の負荷がかかり、半月板損傷のリスクが高い

床座りでの授乳やおむつ替えは膝をねじる

日本の生活様式では、床に座って授乳やおむつ替えを行う方が多いですが、ここにも落とし穴があります。横座り(お姉さん座り)やあひる座り(ペタンコ座り)は、膝関節に極度のねじれを加えます。

特に横座りは、骨盤を歪ませるだけでなく、下になっている側の膝の内側側副靭帯を持続的に伸ばし続けます。これが関節の不安定さを招く要因となるのです。

抱っこ紐の調整不足による前方重心に気をつける

抱っこ紐の位置が低すぎると、赤ちゃんの重みでママの上半身が前傾するか、逆にバランスを取ろうとして過度に背中を反る(反り腰)姿勢になります。

反り腰になると骨盤が前傾し、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が常に緊張した状態になります。この緊張は膝のお皿(膝蓋骨)を関節面に強く押し付ける力を生み、軟骨を摩耗させる原因となります。

体重の増加と筋力低下は変形性膝関節症のリスクを招く

「産後太りが戻らない」という悩みは美容面だけでなく、膝の健康にとって深刻な問題です。

体重は膝への物理的な負荷そのものであり、さらに妊娠・出産による活動量の低下は、膝を守るための筋肉を削ぎ落としてしまいます。

「重くなる」と「支える力が弱くなる」の二重苦が、変形性膝関節症への道を加速させます。体重管理と筋力維持は、膝を守るための最重要課題と言えるでしょう。

体重1キロの増加が膝に与える衝撃の真実を知ってください

歩行時、膝には体重の約2倍から3倍の負荷がかかると言われています。つまり、妊娠中や産後に体重が3キロ増えたとしたら、膝にかかる負担は歩くたびに約9キロも増える計算になります。

階段の上り下りではさらに倍増し、体重の4倍から7倍もの負荷がかかります。この過剰な負荷が毎日数千歩分繰り返されるため、軟骨の摩耗スピードは確実に早まってしまうのです。

妊娠中の安静は大腿四頭筋の萎縮を招く

妊娠中は安全のために激しい運動を控える傾向にあり、つわりや体調不良で横になる時間も増えます。

この期間に、膝を支える最も重要な筋肉である「大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)」が著しく低下します。

大腿四頭筋は、着地の衝撃を吸収するショックアブソーバーの役割を果たしています。この筋肉が弱ると、衝撃が直接骨と軟骨に伝わるようになり、膝の破壊が進んでしまうのです。

内側広筋の弱化と膝の不安定性について

大腿四頭筋の中でも、特に膝の内側を支える「内側広筋」は、運動不足によって真っ先に衰える性質があります。内側広筋が弱まると、膝のお皿が外側に引っ張られやすくなります。

その結果、膝の曲げ伸ばしがスムーズにいかなくなります。産後に膝の力が抜けるような感覚(膝折れ)がある場合、この筋力低下が顕著に現れている証拠と言えます。

脂肪細胞が放出する炎症物質の影響も

近年の研究では、肥満は単なる物理的な重さだけでなく、生化学的な悪影響も及ぼすことがわかってきました。余分な内臓脂肪からは、炎症を引き起こす物質(アディポサイトカインなど)が放出されます。

この物質が血流に乗って膝関節に到達すると、関節内の炎症を悪化させ、軟骨の分解を促進させる可能性があります。体重増加は「物理的破壊」と「化学的炎症」の両面から膝を攻撃するのです。

筋肉名膝関節における役割筋力低下時のリスク
大腿四頭筋膝を伸ばす主力筋であり衝撃吸収の要軟骨が衝撃を直接受け止め、摩耗が早まる
内転筋群太ももの内側にあり骨盤を安定させるO脚が進行しやすくなり、膝内側の負担が増す
中臀筋お尻の横にあり歩行時の横ブレを防ぐ歩くたびに骨盤が揺れ、膝の外側スラストを誘発する

育児中の「しゃがむ・立つ」動作は膝にどれくらい負担?

育児生活は「しゃがむ」と「立つ」の連続です。お風呂に入れる時、散らかったおもちゃを片付ける時、泣いている子供をあやす時。これらの動作は、直立している時とは比較にならないほどの圧力を膝にかけます。

深屈曲動作が半月板にかける圧力は甚大

膝を深く曲げる(深屈曲)動作、例えば正座や和式トイレのような姿勢、あるいはしゃがみ込みの姿勢では、膝関節内部の圧力が極端に高まります。

この時、大腿骨と脛骨(すねの骨)の間にある半月板は、強い力で挟み込まれながら後方に移動します。この状態で急に立ち上がったり方向転換したりすると、半月板に強い負荷がかかります。

繰り返しの動作による金属疲労のような破壊

一回一回の動作では痛みを感じなくても、毎日何十回と繰り返されると、軟骨や半月板には微細な損傷が蓄積していきます。これは金属疲労に似ており、ある日突然限界を超えます。

限界を超えた時、「痛み」として発症します。育児中のママの膝は、まさにこの疲労蓄積の真っ只中にあると言えるでしょう。

日常の動作膝にかかる負荷(体重比)変形性膝関節症リスクとの関連
平地歩行約2〜3倍基本レベルですが、フォームが悪ければリスクとなります。
階段の昇降約4〜7倍子供を抱いての昇降はさらに負荷が増します。
しゃがみ込み・立ち上がり約7〜8倍以上頻繁に行う動作の中で最大級の負荷がかかります。

抱っこしながらの立ち上がりは負荷倍率が跳ね上がる

自分一人の体重で立ち上がるだけでも膝には大きなトルク(回転力)がかかりますが、10キロ近い子供を抱えている場合、その負荷は単純な足し算ではありません。

重心が前方かつ高い位置に移動するため、膝関節を支点としたテコの原理が働きます。その結果、筋肉と関節には何倍もの力が要求されることになるのです。

「中腰」姿勢の持続が招く関節内圧の上昇に注意しましょう

完全なしゃがみ込みだけでなく、中腰(スクワットのような姿勢)での作業も膝には毒です。例えば、ベビーベッドへの寝かしつけや、低い位置での着替えの介助などです。

中腰の姿勢は、膝のお皿と大腿骨の接触面圧を最大化させます。筋肉が常に緊張して関節を締め付けるため、関節液の循環も悪くなり、軟骨への栄養供給が滞る原因にもなります。

産後の膝痛を放置すると将来どうなってしまうのか?

「今は痛いけれど、子育てが落ち着けば治るだろう」という楽観的な考えは、変形性膝関節症に関しては危険です。軟骨は一度すり減ると自然には再生しない組織だからです。

産後に発生した小さなダメージやアライメントの崩れを放置すると、40代、50代と年齢を重ねた時にどのような経過をたどるのか、その進行プロセスを理解しましょう。

初期症状から本格的な変形への進行プロセス

産後の膝痛の多くは、一時的な炎症や筋肉疲労から始まります。

しかし、骨盤の歪みやO脚傾向が改善されないまま過ごすと、数年後には「立ち上がり時のこわばり」や「歩き始めの痛み」が現れます。

これが変形性膝関節症の初期症状であり、この段階ですでに関節軟骨の摩耗は始まっています。早期に対処しなければ、症状は徐々に進行していきます。

更年期とのダブルパンチ

産後のケア不足を引きずったまま更年期を迎えると事態は深刻化します。閉経により女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、軟骨や骨の代謝が落ち、関節を守る機能がさらに低下するからです。

産後のダメージという「下地」がある状態で更年期を迎えることは、変形の進行速度を倍速にさせるようなものです。将来を見据えたケアが不可欠です。

半月板損傷が軟骨摩耗を加速させる

育児中の無理な動作で半月板に小さな傷がつくと、半月板のクッション機能やスタビライザー(安定化)機能が失われます。すると、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合うようになります。

その結果、軟骨の摩耗が急激に進むことになります。半月板損傷を放置することは、変形性膝関節症への特急券を持っているようなものなのです。

活動制限による生活習慣病の悪化も懸念される

膝が痛いと動くのが億劫になり、運動不足になります。すると体重がさらに増加し、筋力がさらに低下するという負のスパイラルに陥ってしまいます。

これは膝だけの問題に留まらず、糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスクも高めます。健康寿命を縮めないためにも、産後の膝トラブルは早期に断ち切る必要があるのです。

  • ステージ1(予兆):産後の膝の違和感や長時間歩行後のダルさを感じますが、レントゲンでは変化が見られないケースも多いです。
  • ステージ2(初期):起床時や動き始めに痛みを感じます。軟骨がすり減り、関節の隙間が狭くなり始めています。
  • ステージ3(進行期):正座が困難になり、階段の昇降時の痛みが強くなります。O脚変形が目立ち始めます。
  • ステージ4(末期):安静時も痛みがあり、歩行が困難になります。人工関節手術が必要になる可能性が高い段階です。

忙しいママでもできる膝を守るための生活習慣とケア

ここまで膝へのリスクについて解説してきましたが、諦める必要はありません。

育児と家事で自分の時間が取れないママでも、日常生活のちょっとした工夫や意識の変化で、膝への負担を大幅に減らせます。

将来の自分のために、今日からできる具体的な対策を実践していきましょう。小さな積み重ねが、数年後の膝の健康を大きく左右します。

膝を守るための靴選びとインソールの活用が効果的

子供を追いかけるためにスニーカーを履く機会が増えると思いますが、ただ柔らかいだけの靴は逆効果になる場合があります。踵(かかと)がしっかりしていて足をホールドしてくれる靴を選びましょう。

また、土踏まずのアーチをサポートする構造の靴を選ぶのも大切です。足元の安定性が増すと、膝へのブレや衝撃を軽減できます。

対策アイテム・習慣選び方や実践のポイント
機能性インソール土踏まずを支え、踵の倒れ込みを防ぐタイプを選びましょう。足首の歪みを補正します。
室内履き(スリッパ)底が薄いものは避け、厚みのあるものを選びましょう。床からの衝撃を吸収します。
靴の履き方踵をトントンと合わせてから紐を締めましょう。足と靴が一体化し、安定して歩けます。

「座り方」と「立ち方」の意識改革を行いましょう

床座り生活は膝にとって過酷です。可能な限り椅子とテーブルの生活(洋式スタイル)に切り替えることをお勧めします。

どうしても床に座る必要がある場合は、正座椅子や厚めのクッションを使いましょう。

膝を深く曲げない工夫をすることが大切です。立ち上がる際は、何かに掴まって腕の力を利用するか、一度片膝を立ててから立つようにし、膝だけに体重を乗せないように意識してください。

隙間時間でできる「パテラセッティング」を試す

特別なジムに行く必要はありません。家事の合間や授乳中にできる「パテラセッティング」という運動が有効です。足を伸ばして座り、膝の裏でタオルや床をグッと押し付けるように力を入れます。

これにより、膝に負担をかけずに大腿四頭筋を強化できます。1回5秒程度力を入れ、それを数回繰り返すだけでも、毎日の積み重ねが膝を守る盾となります。

専門家による骨盤矯正とメンテナンスも検討しましょう

セルフケアには限界があります。産後の骨盤の歪みや膝の違和感が強い場合は、整形外科や専門の理学療法士に相談することを躊躇しないでください。

骨盤ベルトの正しい巻き方を指導してもらったり、個別の状態に合わせたリハビリメニューを作ってもらったりできます。専門家の手を借りることが、最短の解決策になることも多々あります。

よくある質問

変形性膝関節症による膝の痛みは産後いつまで続きますか?

個人差が大きいですが、骨盤が安定しホルモンバランスが整う産後6ヶ月から1年程度で自然に軽快するケースも多くあります。

しかし、適切なケアをせず筋力が低下したまま変形性膝関節症の初期段階に移行している場合は、痛みが慢性化したり数年後に再発したりする恐れがあります。痛みが1ヶ月以上続く場合は早めに専門医へ相談しましょう。

変形性膝関節症の予防のために産後いつから運動を始めても良いですか?

産後1ヶ月検診で医師から許可が出れば、軽いウォーキングやストレッチから開始できます。

ただし、ジャンプを伴う運動や激しいランニングは、骨盤底筋や膝関節への負荷が強すぎるため避けてください。変形性膝関節症のリスクを避ける意味でも、産後3ヶ月以降を目安に徐々に強度を上げることが推奨されます。

まずは膝に負担の少ない「パテラセッティング」などの筋トレから始めましょう。

抱っこ紐の使い方が悪いと変形性膝関節症の原因になりますか?

はい、誤った使い方は変形性膝関節症のリスクを高めます。位置が低すぎると重心が下がり、腰を反らせてバランスを取る姿勢になるため、骨盤が前傾し膝への負担が増大します。

赤ちゃんの位置を高く保ち、体に密着させて重心を安定させる工夫が重要です。これが膝や腰を守り、将来の変形を防ぐことにつながります。

骨盤ベルトは変形性膝関節症の予防に効果がありますか?

直接的に膝を治すものではありませんが、骨盤ベルトで緩んだ骨盤を安定させるのは有効です。結果として大腿骨のねじれを防ぎ、膝への偏った荷重を減らす効果が期待できます。

骨盤のアライメントを整えることは、変形性膝関節症の悪化因子であるO脚やX脚の進行を食い止めるための土台作りとして非常に大切です。

変形性膝関節症と診断されたら授乳中の薬や湿布はどうすれば良いですか?

授乳中であっても使用できる鎮痛薬や湿布は存在しますが、成分によっては母乳に移行するものもあるため自己判断は危険です。

必ず整形外科の医師に授乳中であることを伝え、赤ちゃんへの影響が少ない処方を受けてください。薬物療法以外にも、リハビリや装具療法など授乳中でも安全に行える変形性膝関節症の治療法は多くあります。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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