骨盤が広い女性は膝に負担がかかる?Qアングルの角度と変形性膝関節症のリスク

女性は男性に比べて骨盤が広く、その構造上の特徴が「Qアングル」と呼ばれる角度を増大させることをご存じでしょうか。
この角度が大きくなると、膝のお皿が外側に引っ張られる力が強まり、膝関節の内側に偏った負担がかかりやすくなります。
これが、女性に変形性膝関節症が多い大きな要因の一つです。しかし、骨盤の形を変えることはできませんが、諦める必要はありません。
太ももの筋肉を鍛えたり、足底板を使用したりすると、膝への負担を大幅に減らせます。
この記事では、ご自身の骨盤と膝の関係を正しく知り、将来の膝の痛みを防ぐための具体的な対策をお伝えします。
なぜ骨盤が広いと膝の内側に痛みが走りやすくなるのか
女性特有の広い骨盤は出産に適した構造ですが、同時に膝関節に対して斜めの角度を作り出しやすくなります。
この構造的な特徴が、歩行時や運動時に膝の内側へ過剰なストレスをかけ、軟骨の摩耗を早める直接的な要因となります。
女性の骨盤形状が膝への負担を増やすしくみとは?
女性の体は、妊娠や出産に対応するために、男性と比較して骨盤が横に広い構造をしています。骨盤の横幅が広くなると、骨盤から膝に向かって伸びる大腿骨(太ももの骨)の角度が急になります。
人間の身体は、立ったときに足首を骨盤の真下ではなく、やや内側に寄せてバランスを取ろうとします。そのため、骨盤が広いほど、大腿骨は内側に向かって強く傾斜することになります。
この傾斜が強くなると、膝関節には外側へ逃げようとする力が働きますが、地面に足をついているため逃げ場がありません。その結果、膝関節の内側同士が強く押し付けられるような圧力がかかってしまうのです。
この圧力が日常的に繰り返されるため、膝関節のクッション役である軟骨や半月板に微細な損傷が蓄積していきます。
若い頃は筋肉の柔軟性や筋力でカバーできていたとしても、年齢とともに筋力が低下すると、骨格的な不利がそのまま膝の痛みとして現れやすくなります。
つまり、女性であるというだけで、骨格的に膝への負担がかかりやすい条件を備えているといえるでしょう。
骨盤幅と大腿骨の角度が膝内側にかけるストレス
骨盤の幅と大腿骨の角度の関係は、建物の柱に例えるとイメージしやすくなります。柱が垂直に立っていれば、上からの重さを均等に支えられます。
しかし、柱が斜めになっていると、接合部分の片側に強い力が集中してしまいます。人間の脚もこれと同様です。
骨盤が広く大腿骨の傾斜がきついと、体重という負荷が膝関節の全面に均等にかからず、内側の一部分に集中してかかります。
歩くたびに、体重の数倍もの力が膝にかかりますが、この力が一点に集中するため、その部分の軟骨が集中的にすり減っていきます。
特に日本人はO脚気味の人が多いため、もともとの骨盤の広さに加えてO脚の傾向が合わさると、膝の内側への負担はさらに増大します。
この継続的な偏った荷重こそが、変形性膝関節症の初期段階である軟骨のささくれや摩耗を引き起こす原因なのです。
男女の骨格構造の違いと膝への影響
| 比較項目 | 男性の特徴 | 女性の特徴 |
|---|---|---|
| 骨盤の形状 | 幅が狭く縦長の形状 | 幅が広く横長の形状 |
| 大腿骨の傾斜 | 比較的垂直に近い | 内側への傾斜が強い |
| 膝への荷重分布 | 関節全体に均等 | 関節の内側に集中 |
| 筋肉量 | 多く支える力が強い | 少なく負担が増える |
出産経験と骨盤の変化が膝に及ぼす長期的な影響
出産時には、「リラキシン」というホルモンの作用で骨盤周りの靭帯が緩み、産道が広がります。出産後、骨盤は時間をかけて元の状態に戻ろうとしますが、完全に妊娠前と同じ状態に戻るとは限りません。
育児中の姿勢や抱っこによる負荷、筋力の低下などが重なると、骨盤が歪んだ状態や開いた状態で固まってしまう場合があります。
骨盤が妊娠前よりも開いた状態が続くと、大腿骨の傾斜はさらに強まり、膝への負担が増加します。また、産後の腹筋群の弱化は骨盤の前傾(反り腰)を招きやすく、これが大腿骨を内側に捻る動きを誘発します。
その結果、膝関節の適合性が悪化してしまいます。子育てが一段落した40代、50代になってから膝の痛みが出始めるケースが多いのは、こうした長年の骨盤環境の変化が影響しているのです。
Qアングルの意味と正常値を知れば膝痛の原因が見える
Qアングル(Q角)とは、太ももの筋肉が膝のお皿を引っ張る方向を示す重要な指標です。
この角度が正常範囲を超えると、膝のお皿が外側に脱臼しようとする力が働き、関節の安定性が損なわれて痛みの原因となります。
Qアングルの計測方法と自分でチェックするポイント
Qアングルは、専門的にはレントゲンや分度器を用いて計測しますが、その概念を知ることは自分の膝の状態を把握する上で役立ちます。
具体的には、「骨盤の前面にある出っ張った骨(上前腸骨棘)」と「膝のお皿の中心(膝蓋骨中心)」を結んだ線、そして「膝のお皿の中心」と「すねの骨の隆起部(脛骨粗面)」を結んだ線、この2本の線が交差してできる角度を指します。
自宅で簡易的にチェックする場合、鏡の前に立ち、骨盤の幅と膝の位置関係を確認します。直立した状態で、膝のお皿が正面を向いているか、それとも内側や外側を向いているかを見てみましょう。
もし、つま先を正面に向けたときに、膝のお皿が内側を向いてしまう(ニーイン)傾向がある場合、Qアングルが大きくなっている可能性があります。
また、椅子に座って膝を伸ばしたときに、お皿が外側に動く距離が大きい場合も、Qアングルによる外側への牽引力が強いことを示唆しています。
男女で異なるQアングルの正常値と異常値の目安
Qアングルには男女で明らかな差があり、これが女性に膝のトラブルが多い医学的な根拠の一つとなっています。一般的に、男性のQアングルの正常値は10度から14度程度とされています。
これに対し、女性の正常値は15度から17度程度と、男性よりも大きくなるのが普通です。問題となるのは、この角度が正常範囲を超えた場合です。
一般的にQアングルが20度を超えると、膝蓋骨への異常なストレスが生じ、膝前部の痛みや不安定感、さらには膝蓋骨脱臼のリスクが高まると考えます。
特に変形性膝関節症のリスク評価においては、この角度が大きければ大きいほど、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が収縮した際に、お皿を外側に強く引きつける力が働きます。
そのため、関節面での摩擦や衝突が増えるので注意が必要です。
Qアングルが増大すると膝のお皿はどう動くのか
Qアングルが大きい状態で膝を曲げ伸ばしすると、膝のお皿(膝蓋骨)はスムーズに溝(大腿骨滑車)の上を滑れません。
通常、お皿は太ももの骨の溝に沿って上下に動きますが、Qアングルが大きいと、お皿は常に「外側へ、外側へ」と引っ張られながら動くことになります。
これは、脱線しようとする列車を無理やり線路に戻しながら走らせているような状態です。この外側への牽引力により、お皿の裏側の軟骨と、太ももの骨の表面が強く擦れ合います。
これが長期間続くと、お皿の裏側の軟骨がすり減る「膝蓋軟骨軟化症」や「変形性膝蓋大腿関節症」を引き起こします。
膝の前側、特にお皿の周りに鈍い痛みや、階段の上り下りでゴリゴリという音がするのは、このQアングルが原因であるケースが多いのです。
Qアングルの角度によるリスク分類
| 角度の範囲 | 状態の評価 | 予想されるリスク |
|---|---|---|
| 10度〜14度 | 男性の正常範囲 | 構造的なリスクは低い |
| 15度〜19度 | 女性の正常範囲 | 通常生活では問題ない |
| 20度以上 | 要注意・リスク高 | 膝蓋骨脱臼、軟骨摩耗 |
変形性膝関節症のリスクを高める要因とQアングルの関係
Qアングルの増大だけでなく、O脚や肥満、筋力低下といった要素が組み合わさると、変形性膝関節症の発症リスクは飛躍的に高まります。
これらの要因は互いに悪影響を及ぼし合い、膝の破壊サイクルを加速させます。
O脚やX脚とQアングルの密接な関係とは?
脚の形状、いわゆるO脚(内反膝)やX脚(外反膝)は、Qアングルと密接に関係し、変形性膝関節症のタイプを決定づけます。
一般的に、X脚の人はQアングルが大きくなる傾向があり、膝の外側に負担がかかりやすくなります。
一方、日本人に圧倒的に多いO脚の人は、見かけ上のQアングルは小さく見える場合がありますが、実際には膝関節の内側に強烈な圧縮力がかかっています。
特に問題なのは、骨盤が広く(Qアングルの要素を持ち)、かつ膝から下がO脚になっているケースです。
この場合、大腿骨は内側に傾き、脛骨(すねの骨)は内側に倒れ込むため、膝の内側軟骨にかかる負担は最大化します。
これを「見かけのQアングル」だけで判断せず、脚全体の軸(下肢アライメント)として捉え、どの部分に負担が集中しているかを見極めることが大切です。
変形性膝関節症を進行させる悪循環の要素
- 加齢による関節軟骨の水分量減少と弾力性の低下
- 運動不足による大腿四頭筋の弱体化と支持力の喪失
- 肥満による物理的な関節面への過剰な荷重ストレス
- 過去の半月板損傷や靭帯損傷などの外傷歴
- 遺伝的な骨格形状や軟骨の脆弱性
軟骨の摩耗を加速させる膝関節への偏った荷重
正常な膝関節では、体重は関節面全体に分散してかかります。しかし、Qアングルの異常や脚の変形があると、接触面積が極端に狭くなります。
物理の法則では、同じ力がかかっても、面積が狭くなればなるほど圧力は高まります。
ハイヒールのかかとで踏まれると痛いのと同じ原理で、狭い範囲の軟骨に全体重が集中するため、その部分の軟骨細胞は壊死し、摩耗が急速に進みます。
軟骨がすり減ると、その摩耗粉が関節包(関節を包む袋)を刺激し、炎症(滑膜炎)を引き起こします。これが「膝に水がたまる」状態です。
炎症が起きると、さらに軟骨を溶かす酵素が分泌されるため、偏った荷重を放置することは、自らの膝を自ら壊し続けるサイクルに入り込むことを意味します。
このサイクルを断ち切るには、荷重の偏りを是正する取り組みが最優先となります。
肥満や筋力低下がQアングルの悪影響を増幅させる
Qアングルが大きいという骨格的な特徴だけでは、すぐに変形性膝関節症になるわけではありません。ここに「肥満」と「筋力低下」という環境要因が加わると、発症のスイッチが入ります。
体重が1kg増えると、歩行時の膝への負担は約3kg、階段昇降では約7kgも増加するといわれています。骨格的に不利な状態で過度な体重がかかれば、膝が耐えられないのは明白です。
また、大腿四頭筋、特に膝の内側を支える「内側広筋」の筋力低下は致命的です。この筋肉は、Qアングルによる外側への牽引力に対抗し、お皿を正しい位置に引き戻す唯一のブレーキ役だからです。
運動不足でこの筋肉が痩せ細ると、Qアングルの悪影響がダイレクトに膝関節を直撃し、変形と痛みを急速に進行させてしまいます。
骨盤が広い女性が日常生活で注意すべき動作と習慣
日々の何気ない動作の中に、膝への負担を蓄積させる原因が潜んでいます。
骨盤が広い女性特有の座り方や歩き方の癖を見直し、膝を守るための正しい身体の使い方を習慣化して、痛みの発生を未然に防ぎましょう。
膝への負担を減らす立ち方と歩き方のコツ
立ち姿勢において重要なのは、足の親指、小指、かかとの3点でしっかりと体重を支えることです。骨盤が広い女性は、無意識のうちに重心が外側に逃げやすく、小指側に体重がかかった立ち方になりがちです。
これを防ぐために、意識的に親指の付け根(母指球)で地面を押す感覚を持つことが大切です。
また、膝を完全に伸ばしきる「反張膝(膝が逆側に反る状態)」も膝裏や関節内に負担をかけるため、わずかに膝を緩めた状態で立つのが理想です。
歩行時には、一本の線の上を歩くモデルウォーキングのような歩き方は、骨盤が広い人には膝への捻じれストレスを強めるためお勧めできません。
左右の足の間隔(歩隔)を握りこぶし一つ分ほど空け、つま先と膝が同じ方向を向くように足を出す「二軸歩行」を意識します。
着地はかかとから優しく行い、足裏全体で体重移動をして、最後は親指で地面を蹴り出すと、膝の内側への衝撃を緩和できます。
階段の上り下りで膝を守るための足の使い方
階段は膝への負担が平地の数倍になる場面ですが、足の使い方一つで負担をコントロールできます。上るときは、足裏全体をステップに乗せ、上半身をやや前傾させて、お尻の筋肉を使うように意識して上がります。
膝がつま先よりも前に出すぎると、膝蓋骨への圧力が急増するため、太ももの裏側やお尻で体を持ち上げるイメージを持ちましょう。
下りるときは、膝への衝撃が最も大きくなる瞬間です。ドスンと着地せず、足の指先から着地するようなイメージで、ふくらはぎの筋肉を使って衝撃を吸収します。
また、痛い方の足から下ろすのではなく、「行きは良い良い(良い足から)、帰りは怖い(悪い足から)」の原則とは逆に、下りは「悪い足から出し、良い足で支える」のが基本です。
痛みがない場合は、後ろ足の膝をゆっくり曲げながら(ブレーキをかけながら)前足を静かに着地させることが、太ももの筋力トレーニングにもなります。
椅子からの立ち上がり動作で気をつけるべき点
椅子から立ち上がる動作は、一日に何度も繰り返されます。この時、勢いをつけて反動で立ち上がると、膝関節に瞬間的な強い負荷がかかります。
正しい立ち上がり方は、まず椅子に浅く座り直し、足を肩幅に開いて手前に引きます。そして、お辞儀をするように上半身を前に倒し、重心を足の上に乗せてから、お尻を真上に持ち上げるように立ちます。
この一連の動作において、膝が内側に入らない(ニーインしない)ように注意するのが最も重要です。
骨盤が広い女性は、立ち上がる瞬間に両膝が内側にくっつくような動きをしがちです。これを防ぐため、膝を開く意識を持つか、両膝の間に握りこぶし一つ分のスペースを保ったまま立ち上がる練習をします。
手すりや机に手をついて体重を分散させる工夫も、膝を守る有効な手段です。
横座りやぺちゃんこ座りが膝に与える悪影響
日本の生活様式では床に座る機会が多いですが、「横座り(お姉さん座り)」や「ぺちゃんこ座り(女の子座り・トンビ座り)」は、膝にとって最悪の座り方といえます。
横座りは骨盤を歪ませ、股関節と膝関節を不自然に捻じった状態で固定するため、関節包や靭帯を引き伸ばしてしまいます。
ぺちゃんこ座りは、大腿骨を極端に内側に捻り、Qアングルを人為的に増大させる姿勢であり、膝の内側の靭帯(内側側副靭帯)を緩ませてしまいます。膝を守るためには、床座りよりも椅子座りが推奨されます。
どうしても床に座らなければならない場合は、正座が比較的負担が少ないですが、長時間になると血流が悪くなるため、高い座布団を使ったり、正座椅子を利用したりして膝の曲がり角度を緩くする工夫が必要です。
あぐらも股関節が硬いと骨盤が後傾し腰に悪いですが、膝への捻じれストレスという点では、横座りよりはマシな選択肢といえます。
膝への負担度別・日常動作チェック
| 動作のカテゴリ | 膝に優しい動作(推奨) | 膝に負担をかける動作(避ける) |
|---|---|---|
| 座り方 | 椅子座り、高さのある正座 | 横座り、低い椅子 |
| 立ち上がり | 前傾して重心移動、手すり | 反動、膝を内に入れる |
| 階段 | 手すり使用、一段ずつ | 駆け上がり、一段飛ばし |
| 荷物 | リュックサック | 片手で重い荷物を持つ |
膝の負担を軽減するために今日からできるセルフケア
変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、適切なセルフケアを行うと、痛みの緩和と進行の抑制が期待できます。
特に重要なのは、膝を守る天然のコルセットである筋肉を鍛えることと、関節の柔軟性を保つことです。
太ももの内側を鍛えて膝のお皿を安定させる体操
Qアングルが大きい女性にとって、最も優先すべきは「内側広筋(ないそくこうきん)」の強化です。太ももの内側にあるこの筋肉は、お皿を内側に引き寄せ、正しい軌道に乗せる役割を担っています。
しかし、通常のスクワットや歩行だけでは鍛えにくい筋肉でもあります。効果的な運動として「パテラセッティング(大腿四頭筋セッティング)」があります。
足を伸ばして座り、膝の裏に丸めたタオルを置きます。そのタオルを膝裏でベッドや床に押し付けるように、太ももに力を入れます。
この時、特にお皿の内側の筋肉が硬くなっていることを指で触れて確認します。5秒間力を入れ続け、ゆっくり緩める。これを20回程度繰り返します。
関節を動かさずに筋肉だけを働かせる等尺性収縮運動なので、膝に痛みがあるときでも安全に行える基本のトレーニングです。
自宅でできる膝痛予防トレーニングメニュー
| 運動の種類 | 目的と効果 | 目安の回数・頻度 |
|---|---|---|
| タオル潰し | 内側広筋の強化、安定 | 20回×2セット(毎日) |
| 脚上げ運動 | 大腿四頭筋全体の強化 | 10回×2セット(毎日) |
| 横向き脚上げ | 中殿筋の強化、骨盤安定 | 10回×2セット(週3回) |
| ふくらはぎ | 柔軟性向上、衝撃吸収 | 左右30秒(入浴後) |
股関節の柔軟性を高めて膝への衝撃を和らげる
膝関節は、股関節と足関節(足首)に挟まれた関節です。股関節が硬くなると、歩行時の脚の動きが制限され、その代償として膝関節が過剰に動かされたり、捻じられたりします。
特に骨盤周りの筋肉が硬いと、骨盤の動きが悪くなり、歩くときの衝撃が直接膝に伝わってしまいます。股関節の柔軟性を高めるには、お風呂上がりなど体が温まっている時にストレッチを行うのが効果的です。
床に座って足の裏を合わせ、膝を床に近づけるストレッチや、仰向けに寝て膝を抱え込むストレッチなどで、お尻周りや内ももの筋肉をほぐします。
股関節が柔らかくなると、歩幅が広がり、骨盤を使ったスムーズな歩行が可能になるため、結果として膝への負担が大幅に軽減されます。
足裏のアーチを整えるインソールや靴選びの重要点
足の裏には土踏まず(アーチ)があり、これがスプリングのように働いて着地の衝撃を吸収しています。
しかし、加齢や運動不足でこのアーチが潰れて扁平足になると、衝撃吸収能力が落ち、膝への突き上げが強くなります。
また、扁平足は足首を内側に倒れ込ませるため、下腿(すね)の内旋を誘発し、膝のねじれを助長します。靴選びでは、かかと部分がしっかりとしていて硬く、足首を安定させてくれるものを選びます。
柔らかすぎる靴や、かかとのないサンダルは避けます。また、自分の足に合った医療用インソール(足底板)を作成するのも非常に有効です。
外側が高くなっているインソール(外側ウェッジ)を使うと、O脚による膝内側への荷重ストレスを物理的に減らせます。これは整形外科で処方してもらうことが可能です。
専門家による治療が必要なタイミングと受診の目安
膝の痛みを「年のせいだから」と我慢したり、自己流のケアだけで済ませたりするのは危険です。
変形性膝関節症は不可逆的な変化(元に戻らない変化)を伴うため、取り返しのつかない状態になる前に、専門医の診断と適切な治療を受けることが将来の歩行能力を守る鍵となります。
膝の違和感が痛みに変わる前の早期発見が大切
変形性膝関節症の初期症状は、痛みではなく「違和感」から始まります。
「動き始めになんとなく膝が重い」「正座がしにくくなった」「階段を下りるときに少し怖い」といったサインは、軟骨が悲鳴を上げ始めている証拠です。
この段階ではまだ軟骨の損傷は軽度であり、適切な運動療法や生活改善を行えば、進行を食い止め、痛みのない生活に戻れる可能性が高い時期です。
しかし、このサインを見逃し、「歩き出せば治るから」と放置すると、次第に安静時にも痛むようになり、膝に水がたまるようになります。
さらに進行すると、骨同士が直接ぶつかり合い、激痛で歩行困難になったり、夜も眠れないほどの痛み(夜間痛)が出たりします。
早期受診のメリットは、手術以外の選択肢(保存療法)で十分に症状をコントロールできる期間を長く保てることにあるのです。
整形外科の受診を強く推奨する危険なサイン
- 痛みが2週間以上続き、改善の兆しがない
- 膝が腫れて熱を持っていたり、赤くなっている
- 膝がガクッと崩れるような不安定感がある
- 曲げ伸ばしができず、ロックされたように動かない
- 安静にしていても痛み、夜も眠れない
整形外科で受けるQアングルの精密検査と診断
整形外科を受診すると、問診や触診に加え、レントゲン検査が行われます。
レントゲンでは、骨と骨の隙間(関節列隙)がどれくらい狭くなっているか、骨棘(こつきょく)という骨のトゲができているかを確認し、変形の進行度(グレード)を判定します。
また、必要に応じてMRI検査を行い、レントゲンでは映らない軟骨や半月板、靭帯の状態を詳しく調べます。
Qアングルに関しても、立位での下肢全長レントゲン(骨盤から足首まで撮影するもの)を撮ると、正確な荷重ライン(ミクリッツ線)を計測できます。
これにより、自分の膝のどの部分にどれくらいの負担がかかっているのか、骨盤の広さがどの程度影響しているのかを客観的な数値として知ることができます。
自分の身体の状態を正確に知ることは、納得して治療に取り組むための第一歩です。
保存療法で改善しない場合に検討する次の選択肢
基本的には、薬物療法(痛み止めやヒアルロン酸注射)、物理療法(電気や温熱)、運動療法(リハビリ)といった保存療法から治療を始めます。多くの人はこれらで症状が改善し、日常生活を送れるようになります。
しかし、数ヶ月以上これらの治療を続けても痛みが引かず、歩行や日常生活に重大な支障が出ている場合は、手術療法を検討する段階に入ります。
手術には、自分の骨を温存して形を整える「骨切り術」や、傷んだ関節の表面を金属やポリエチレンで置き換える「人工関節置換術」などがあります。
近年では、筋肉を切らずに行う低侵襲な手術法や、再生医療(PRP療法など)の選択肢も増えています。
手術は怖いものと感じるかもしれませんが、痛みのない生活を取り戻し、旅行や趣味を再び楽しむための前向きな手段でもあります。医師とよく相談し、自分の生活スタイルに合った治療法を選択しましょう。
よくある質問
- 骨盤が広い女性は変形性膝関節症になりやすいのですか?
-
その可能性は高いと言えます。骨盤が広いと大腿骨の傾斜角がきつくなり、Qアングルが増大します。
この結果、膝関節への荷重が不均等になりやすく、特に内側の軟骨に負担が集中するため、変形性膝関節症のリスクを高める要因となります。
ただし、必ず発症するわけではなく、筋力や体重管理によって予防は十分に可能です。
- 変形性膝関節症の痛みを減らすためにQアングルの角度は変えられますか?
-
成人してから骨盤の幅や骨の形状そのものを変えてQアングルの角度を根本的に小さくすることはできません。
しかし、内側広筋などの筋肉を鍛えてお皿の位置を補正したり、インソールを使って足元のバランスを整えたりすると、機能的な負担を減らせます。そうすると、実質的な悪影響を抑えられます。
- 変形性膝関節症と診断されましたが運動はしても良いですか?
-
急性期の強い炎症がある場合を除き、運動は必要です。安静にしすぎると筋力が低下し、かえって症状を悪化させてしまいます。
ただし、ジャンプや急な方向転換を伴う激しいスポーツは避け、水泳やウォーキング、自転車など、膝への衝撃が少なく持続的に行える運動を選んでください。
医師や理学療法士の指導の下で行うのがおすすめです。
- 変形性膝関節症の予防にサポーターは効果がありますか?
-
一定の効果が期待できます。サポーターは膝関節を保温し、適度な圧迫を加えて痛みを和らげたり、心理的な安心感を与えたりします。
また、支柱付きのものは横揺れを防ぎ、関節を安定させる助けになります。
ただし、頼りすぎると筋力が落ちる可能性があるため、運動時には装着し、休息時には外すなどの使い分けが必要です。
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