動かないと膝はもっと悪くなる?廃用性萎縮が招く変形性膝関節症の悪循環

動かないと膝はもっと悪くなる?廃用性萎縮が招く変形性膝関節症の悪循環

膝が痛いからといって、家でじっと座ってばかりいませんか?実はその「安静」こそが、変形性膝関節症をさらに進行させる大きな原因かもしれません。

痛みへの恐怖から動かなくなることで筋肉が急速に衰え、関節への負担が逆に増してしまう「廃用性萎縮」という恐ろしい状態を招いてしまいます。

この記事では、なぜ安静が膝にとって逆効果なのか、そして痛みをコントロールしながらどのように動けば悪循環を断ち切れるのか、具体的な方法を詳しく解説します。

膝を守り、一生自分の足で歩き続けるために、今日からできる小さな一歩を一緒に踏み出しましょう。

目次

安静にしすぎると膝の痛みが増すって本当?廃用性萎縮の正体とは

変形性膝関節症と診断された方の多くが、「膝の軟骨がすり減っているのだから、これ以上使わないように安静にするべきだ」と考えがちです。

しかし、この考え方は膝の健康を守る上で大きな落とし穴となりかねません。もちろん、急性の炎症で膝が熱を持って腫れ上がっている時期には一時的な安静が必要です。

ところが、慢性的に続く痛みに対して過度な安静を長期間続けることは、かえって症状を悪化させる引き金になってしまうのです。

ここで登場する重要なキーワードが「廃用性萎縮」です。これは、長期間にわたって体を使わないこと(廃用)が原因で、筋肉や骨、関節の機能が衰えていく(萎縮)状態を指します。

人間の体は非常に合理的で、使わなければ「必要ない」と判断し、エネルギーを節約するために筋肉を自ら分解し始めます。

特に高齢者の場合、わずか数週間の寝たきり生活や極端な運動不足で、数年分の筋肉量を失うこともあるほど、筋肉の減少スピードは驚くほど速いのです。

なぜ動かないだけで膝関節の機能が低下するのでしょうか

膝関節は、ただ骨と骨が積み重なっているだけではありません。周囲の強力な筋肉や靭帯がゴムバンドのように関節を支え、動きをコントロールして安定性を保っています。

動かない生活を続けると、まずこの「支える力」である筋力が低下します。筋肉が痩せ細ると、膝関節を衝撃から守るクッション作用が失われてしまいます。

その結果、歩くたびに骨と骨が直接ぶつかり合うような大きなストレスがかかるようになります。これが、安静にしていたはずなのに、動き始めたときに以前より強い痛みを感じる理由の一つです。

廃用性萎縮が引き起こす具体的な身体の変化とは

廃用性萎縮は筋肉だけにとどまりません。関節を包む袋である「関節包(かんせつほう)」や靭帯も、動かさないことで硬く縮こまってしまいます。

これを拘縮(こうしゅく)と呼びます。拘縮が起こると膝が真っ直ぐ伸びなくなったり、正座ができなくなったりと、可動域が狭くなってしまいます。

可動域が狭い状態で無理に動こうとすると、狭い範囲の軟骨だけに集中的な負荷がかかり、変形の進行を早めることになります。

さらに、骨自体も重力や振動の刺激を受けないと内部がスカスカになり、骨粗鬆症のリスクも高まります。骨が脆くなると、わずかな衝撃で「軟骨下骨」に微細な骨折が生じ、それが新たな痛みの源になります。

「年齢のせい」と「廃用のせい」を見分ける

多くの患者さんが「年だから筋肉が落ちるのは仕方ない」と諦めています。確かに加齢による筋肉減少(サルコペニア)は誰にでも自然に起こる現象です。

しかし、廃用性萎縮はそれとは異なります。廃用性萎縮は「使わないこと」が直接の原因であるため、年齢に関係なく、適切に使い始めれば回復する見込みがあります。

もしあなたが、一日中ほとんど座って過ごしていたり、痛みを避けるために外出を極端に控えていたりするなら、その筋力低下は年齢のせいだけではありません。

それは活動不足によるものである可能性が高く、つまり自分の行動を変えると改善できる余地が十分に残されているということです。

痛いから動かないは危険?変形性膝関節症が悪化する負のループ

変形性膝関節症の治療において最も恐れるべきは、関節の変形そのものよりも、痛みを起点とした「悪循環(負のループ)」に陥ってしまうことです。

この悪循環に入り込んでしまうと、どんなに良い治療を受けても効果が出にくくなるだけでなく、生活の質(QOL)が著しく低下してしまいます。

最終的には自力での歩行が困難になり、介護が必要な状態になるリスクさえあります。では、その悪循環はどのような流れで進行するのでしょうか。

痛みが活動量を低下させる第一歩

すべては「痛み」から始まります。膝が痛むと、誰でも無意識にその動きを避けようとします。階段を使わずにエレベーターを探す、買い物に行く回数を減らすといった行動です。

こうした「痛みの回避行動」は、一見すると体を守っているように見えますが、実は膝を守るために不可欠な筋肉を自ら削ぎ落とす行為に他なりません。

活動量が減れば、当然ながら1日の消費カロリーも減り、体重が増加しやすくなります。増えた体重は、そのまま膝への物理的な負担増として跳ね返ってきます。

筋力低下がさらなる不安定性を招く

活動量の低下により筋力が落ちると、膝関節の「ぐらつき(不安定性)」が生じます。健康な膝は筋肉が天然のコルセットのように関節を締め付けて安定させています。

筋肉が緩むと、歩くたびに関節が前後左右にブレるようになります。このブレこそが、軟骨の摩耗を加速させる最大の要因なのです。

洗濯機で衣類が偏って回転している状態を想像してください。激しい振動と異音が生じ、故障の原因になります。膝も同様で、不安定な状態で体重をかけ続けることで関節内部が傷つきます。

悪循環の進行ステップ

段階状態患者さんの心理・行動
1. 初期動作時の痛み発生「痛いから今日は家で休もう」と活動を控える
2. 中期活動量低下・廃用性萎縮筋力が落ち、少し歩くだけで疲れや痛みが出る
3. 後期関節不安定性・体重増加膝がグラグラし、体重負荷が増え、さらに痛む
4. 末期活動停止・寝たきりリスク動く意欲を失い、社会的に孤立し、介護が必要になる

精神的な落ち込みが身体の痛みを増幅させる

この悪循環には、心理的な要素も深く関わっています。「動くと痛いかもしれない」「また痛くなったらどうしよう」という不安や恐怖心は、実際の痛み以上に活動を制限させます。

これを「恐怖回避思考」と呼びます。さらに、家に閉じこもりがちになると気分が落ち込み、うつ傾向になるケースも少なくありません。

脳の機能として、精神的に落ち込んでいる状態では、痛みを感じるセンサーが敏感になることが分かっています。セロトニンなどの鎮痛物質が出にくくなるためです。

実際には関節の状態が変わっていなくても、心が弱るろ「より強い痛み」を感じるようになり、ますます動けなくなるというスパイラルに陥るのです。

膝を支える筋肉が落ちるとどうなる?関節への負担が急増する理由

変形性膝関節症のリハビリテーションにおいて、「筋肉をつけましょう」と耳にタコができるほど言われるのには、明確な理由があります。

筋肉は単に体を動かすエンジンではなく、膝関節にとっての最強の「衝撃吸収装置(ショックアブソーバー)」として機能しているからです。

廃用性萎縮によってこの装置が働かなくなると、どのような物理的ストレスが膝にかかるのでしょうか。その影響は想像以上に甚大です。

大腿四頭筋の弱体化と着地衝撃の関係とは

膝を守る上で最も重要な役割を果たすのが、太ももの前にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」です。私たちが歩くとき、踵が地面に着く瞬間に体重の数倍もの衝撃が膝にかかります。

大腿四頭筋は、この着地の瞬間にグッと収縮することでブレーキをかけ、骨に伝わる衝撃を吸収し、分散させています。

廃用性萎縮で大腿四頭筋が細くなると、このブレーキ機能が十分に働きません。その結果、着地の衝撃がダイレクトに軟骨や骨(軟骨下骨)に伝わります。

これは、サスペンションが壊れた車で砂利道を走るようなものです。車体が激しく揺れ、部品がすぐに摩耗してしまうのと同様に、膝の軟骨も急速にすり減っていきます。

膝裏や臀部の筋肉も無視してはいけません

膝の安定には、前側の筋肉だけでなく、裏側の筋肉や股関節周りの筋肉も重要です。例えば、太ももの裏側にあるハムストリングスは、膝が伸びすぎるのを防ぎます。

また、お尻の筋肉(中臀筋など)は、歩行時に骨盤を水平に保つ役割があります。これらの筋肉が衰えると、歩くたびに骨盤が左右に振られ、そのねじれストレスが膝に集中します。

これを「運動連鎖の破綻」と呼びます。膝そのものが悪くなくても、お尻や足首の筋力低下が、結果として膝を壊す原因になってしまうのです。

廃用性萎縮の主な症状まとめ

部位・機能動かないことで起こる変化変形性膝関節症への影響
筋肉筋繊維が細くなり、筋力が低下する膝を支えられず、関節への衝撃が増大する
関節・靭帯組織が硬くなり、動きが悪くなる(拘縮)膝が伸びきらない、曲がらないなど可動域が制限される
神経筋肉を動かす指令が鈍くなるとっさの動きで膝がカクンとなるなど、転倒しやすくなる
循環血流が悪くなり、むくみが生じる老廃物が溜まりやすく、痛みを強く感じやすくなる

軟骨に栄養が届かなくなる?運動不足が関節内環境に与える影響

筋肉だけでなく、関節の中にある「軟骨」そのものにとっても、動かないことは致命的です。実は、関節軟骨には血管が通っていません。

血管がない組織が、どのようにして酸素や栄養を取り込み、老廃物を排出しているのでしょうか。それは、まるでスポンジのような仕組みで行われています。

関節軟骨が栄養を取り込む仕組み

軟骨は、関節液(滑液)という液体から栄養を得ています。私たちが歩いたり、膝を曲げ伸ばししたりして関節に体重(圧力)がかかると、軟骨の中から古い水分や老廃物が押し出されます。

逆に、圧力が抜けた瞬間に、新鮮な酸素や栄養を含んだ関節液が軟骨内に吸い込まれます。この、加圧と減圧の繰り返し(ポンピング作用)こそが、軟骨の生命線です。

動くこと自体が、軟骨にとっての「食事」のようなものだと言い換えることもできるでしょう。

不動が招く軟骨の栄養失調とは

もし、痛みを恐れて一日中座りっぱなしや寝たきりで過ごしたらどうなるでしょうか。膝関節への適度な圧力がかからず、ポンプ作用が停止してしまいます。

すると、軟骨には新鮮な栄養が届かず、徐々に「栄養失調」の状態に陥ります。栄養が不足した軟骨は弾力性を失い、薄く、脆くなります。

脆くなった軟骨は、たまに動いたときのわずかな摩擦でも傷つきやすくなります。「動かないで大事にしていたはずなのに、久々に歩いたら急に悪化した」という現象は、これが原因です。

適度な運動は、筋肉を鍛えるだけでなく、関節液を循環させ、軟骨を生かすためにも絶対に欠かせない要素なのです。

ヒアルロン酸の質も低下してしまう

関節液には、潤滑油としての役割を果たすヒアルロン酸が含まれています。適度に動くことで、関節膜の細胞が刺激され、質の良いヒアルロン酸が分泌されます。

動かない状態が続くと、関節液の粘り気が強くなりすぎたり(ネバネバしすぎて動きにくい)、あるいは分泌量が減って潤滑が悪くなったりします。

朝起きたときに膝がこわばって動かしにくいのは、夜の間に膝を動かさなかったことで関節液の流れが滞っているためです。動き始めると徐々に楽になるのは、ポンプ作用が再開して潤滑が戻るからです。

痛みに敏感になってしまう?長期間の不動が脳と神経に及ぼす作用

変形性膝関節症の痛みは、膝そのものの問題だけでなく、脳や神経系の変化によっても増幅されます。特に長期間にわたって「痛いから動かない」生活を続けていると、神経系に異常が生じます。

脳が痛みを学習し、過剰に反応するようになってしまうケースがあるのです。これを医学的には「痛みの感作(かんさ)」と呼びます。

脳が作り出す「幻の痛み」のリスクとは

通常、痛みは組織が損傷したことを知らせる警告信号です。しかし、慢性的な痛みに対して動かないでいると、脳内の痛みを処理するネットワークが誤作動を起こし始めます。

本来なら痛みとして感じないような些細な刺激(軽く触れる、少し動かすなど)でも、「危険だ!痛みだ!」と脳が判断してしまうのです。これを「アロディニア」とも言います。

また、脳には本来、痛みを抑え込む「下行性疼痛抑制系」というブレーキ機能が備わっていますが、慢性的な運動不足やストレスはこのブレーキを壊してしまいます。

身体のセンサー機能が狂ってしまう

廃用性萎縮が進むと、筋肉や関節から「今、膝がどのくらい曲がっているか」「どのくらい力が入っているか」という情報(固有受容感覚)が脳に正しく届かなくなります。

脳は膝の状態を正確に把握できなくなり、まるで暗闇を歩いているような不安を感じます。その防御反応として筋肉をガチガチに硬直させたり、痛みの信号を強めたりします。

この段階になると、膝のレントゲン画像ではそれほど変形が進んでいないのに、激痛を訴えるという乖離(かいり)現象が起こります。

膝を守るために維持すべき筋肉

  • 大腿四頭筋(太もも前):着地時の衝撃吸収、膝を伸ばす力、膝蓋骨(お皿)の安定化に必要です。
  • ハムストリングス(太もも裏):膝を曲げる動作、歩行時の脚の振り出し制御、前十字靭帯の補助をします。
  • 中臀筋(お尻の外側):片足立ちになった時の骨盤の安定、歩行時のふらつき防止に働きます。
  • 内転筋群(太もも内側):O脚変形の進行抑制、膝を内側から支える役割があります。
  • 下腿三頭筋(ふくらはぎ):地面を蹴り出す力、足首の安定性、膝裏からのサポートを担います。

痛くても動くべき?廃用性萎縮を防ぐための正しい運動の始め方

ここまで、動かないことの弊害をお伝えしてきましたが、「じゃあ、痛いのを我慢して無理やり歩けばいいの?」というと、それは間違いです。

痛みがある状態で無理に激しい運動をすれば、炎症が悪化し、逆効果になります。大切なのは、「関節に負担をかけずに、筋肉を刺激する」運動を選ぶことです。

体重をかけない運動からスタートしましょう

変形性膝関節症の方にとって、体重がかかる(荷重)運動はいきなり行うとリスクがあります。

廃用性萎縮を防ぐための第一歩は、椅子に座ったまま、あるいは寝転がったままできる運動から始めることです。

これなら、膝関節への圧縮力を最小限に抑えつつ、筋肉を収縮させて血流を促し、筋力の低下を食い止められます。

等尺性収縮(アイソメトリック)を活用してください

関節を動かさずに筋肉に力を入れる運動を「等尺性収縮」といいます。最も代表的なのが「パテラセッティング」と呼ばれる運動です。

膝を伸ばして座り、膝の裏に丸めたタオルを置きます。そのタオルを膝裏でベッドに押し付けるように、太ももの前(大腿四頭筋)にグッと力を入れます。

5秒間力を入れて、緩める。これを20回繰り返します。関節をガシガシ動かさないので、軟骨への摩擦ストレスがほとんどありません。

それでいて、大腿四頭筋にはしっかりと力が入るため、筋力維持に非常に効果的です。痛みが強い時期こそ、この等尺性運動を積極的に行う必要があります。

廃用性萎縮を防ぐ段階別運動メニュー

段階運動の種類具体的な方法
痛みが強い時期等尺性運動(関節を動かさない)パテラセッティング(膝裏でタオルつぶし)、ボール挟み運動
痛みが落ち着いている時期非荷重での可動域運動椅子に座って膝の曲げ伸ばし、足首の曲げ伸ばし、プール歩行
痛みが軽い・ない時期軽度の荷重運動平地でのウォーキング(短時間)、スクワット(浅め)、自転車エルゴメーター

「痛み」のラインを見極めることが大切です

運動中や運動後に、「耐えられない痛み」や「翌日まで残る痛み」が出る場合は、負荷が強すぎます。これは炎症を悪化させるサインなので中止してください。

しかし、「動かしている時は少し突っ張る感じがするが、終われば引く」程度や、「痛気持ちいい」範囲であれば、続けても問題ないケースが大半です。

完全に痛みがゼロになるまで待っていると、廃用性萎縮はどんどん進行します。「これくらいなら大丈夫」という安全圏を少しずつ広げていくイメージで取り組んでください。

生活の中でできる工夫とは?膝を守りながら活動量を増やすコツ

特別なリハビリの時間を作るだけでなく、日常生活そのものを「リハビリ」に変えてしまう工夫も大切です。

廃用性萎縮を防ぐためには、一度にたくさんの運動をするよりも、細切れでも良いので「動いている時間の総量」を増やすことが重要です。

座りっぱなしを断ち切りましょう

テレビを見ている時、デスクワークをしている時、30分に1回は立ち上がりましょう。立ち上がるという動作そのものが、スクワットに似た優れた筋力トレーニングになります。

トイレに行く、お茶を入れに行く、窓を開けに行く。そんな些細な動きの積み重ねが、膝の油切れを防ぎ、筋肉を維持します。

CMの間だけ足踏みをする、といった小さなルールを作るのも効果的です。

膝に優しい環境を整えるのも重要

動くのが億劫になる原因を取り除くことも大切です。例えば、床に座る生活(和式)は膝への負担が大きく、立ち上がるのが辛いため活動量が減りがちです。

思い切って椅子とテーブルの生活(洋式)に変えるだけで、立ち座りが楽になり、動く回数が自然と増えるときがあります。

また、家の中に手すりをつけたり、クッション性の高いスリッパを使ったりするのも有効です。靴選びも重要で、靴底がすり減った靴は膝のブレを助長するので避けましょう。

クッション性と安定性のあるスニーカーを室内履きとして使うのも、膝への衝撃を減らす良いアイデアです。

よくある質問

変形性膝関節症は歩けば歩くほど良くなるのでしょうか?

いいえ、歩けば歩くほど良いわけではありません。過度なウォーキングは逆に軟骨の摩耗を早めるリスクがあります。

大切なのは「量より質」です。膝周りの筋力が十分にない状態で長時間歩くと、関節に負担がかかります。

まずは筋トレで支える力をつけてから、痛みが出ない範囲(例えば1日3000〜5000歩程度から)で徐々に歩く距離を伸ばすのが望ましいです。

変形性膝関節症で痛みがあるときは完全に休むべきですか?

痛みの種類によります。膝が熱を持って腫れている「急性炎症期」は安静が必要ですが、それ以外の慢性的な痛みであれば、完全に休むことは推奨されません。

完全に休むと廃用性萎縮が進み、悪循環に陥ります。

痛みが強い時は、椅子に座って足首を動かす、膝に負担をかけずに太ももに力を入れる等の運動を行い、関節を固まらせないようにすることが重要です。

変形性膝関節症の高齢者でも筋肉はつくのでしょうか?

はい、何歳からでも筋肉をつけることは可能です。90代の方でも適切なトレーニングを行えば筋力が増強するという研究データがあります。

ただし、若い頃と同じような激しい運動は必要ありません。

低負荷でも、回数をこなしたり、ゆっくり動かしたりすると十分に効果が得られます。諦めずにコツコツ続けましょう。

変形性膝関節症には温めるのと冷やすの、どちらが良いですか?

基本的には、急な痛みや腫れ、熱感があるときは「冷やす(アイシング)」、慢性的な痛みやこわばりがあるときは「温める」のが効果的です。

温めると血流が良くなり、筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぎやすくなります。

入浴後に膝の調子が良くなるようであれば、温熱療法が合っていると言えます。自分の膝の状態に合わせて使い分けるのがポイントです。

サポーターは変形性膝関節症の筋力低下を招きますか?

頼りすぎると筋力低下を招く可能性がありますが、適切に使えば有効です。

痛みが強くて歩けない時にサポーターを使って歩けるようになるなら、結果として活動量が増え、廃用性萎縮を防げます。

しかし、家の中で座っている時や寝ている時まで着け続けると、筋肉がサポーターに依存して弱まる恐れがあります。「動く時だけ着ける」という使い分けが必要です。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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