IgA血管炎

IgA血管炎

腎疾患の一種であるIgA血管炎(Iga vasculitis)とは、免疫グロブリンAが血管壁に沈着することで炎症を引き起こす疾患です。

炎症は主に毛細血管や小動脈に起こり、全身の臓器に影響を及ぼし、特に腎臓に影響があります。

IgA血管炎は小児に多い疾患ですが、成人にも発症することがあり、男女比はほぼ同じです。

ここでは、IgA血管炎について、原因や症状、診断方法など詳しく解説していきます。

目次

IgA血管炎の病型

IgA血管炎は、病気の状態や症状の重さによって3つのタイプに分けられます。

IgA血管炎の病型分類

病型特徴
軽症型腎機能の低下が軽度で、予後は比較的良好
中等症型腎機能の低下が中等度だが、適切な治療で予後は改善
重症型腎機能の低下が高度で、予後不良のリスクが高い

軽症型IgA血管炎の特徴

軽症型のIgA血管炎では、腎機能の低下が軽度で、全身の症状は比較的軽いことが多く、尿の異常が主な所見です。

中等症型IgA血管炎の特徴

特徴説明
腎機能の低下中等度の腎機能低下が見られる
尿の異常タンパク尿や血尿が持続的に認められる
全身の症状関節の痛みや消化器の症状などを伴うことがある

重症型IgA血管炎の特徴

重症型のIgA血管炎では、高度な腎機能の低下があり、次のような所見が認められることがあります。

  • ネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎を呈する
  • 腎不全になるリスクが高い
  • 全身の症状が重篤化する可能性がある

重症型では、早期からの集中的な治療が必要です。

IgA血管炎の症状

IgA血管炎は、腎臓の毛細血管に炎症が起こる病気で、さまざまな症状が現れます。

紫斑やむくみ

IgA血管炎では、皮膚に紫斑と呼ばれる赤紫色の斑点が出ることがあり、主に下肢に現れますが、腕やお尻に出ることもあります。

また、顔や手足がむくむことも。

関節痛や腹痛

関節の痛みや腫れ、特に足首や膝に症状が出ることがあります。

また、お腹の痛みを訴える方もいて、痛みの強さは人によって異なりますが、激しい痛みを感じることも。

症状特徴
紫斑下肢に赤紫色の斑点が出現
むくみ顔面や手足にむくみが見られる
関節痛足首や膝の痛みや腫れ
腹痛腹部の痛みを訴える

血尿や蛋白尿

IgA血管炎では、尿に血液や蛋白質が混ざる血尿や蛋白尿が見られることがあります。 尿の色が茶色や赤っぽくなったり、泡立ちが目立ったりする場合は注意が必要です。

  • 血尿:尿に血液が混ざり、茶色や赤みを帯びる
  • 蛋白尿:尿に蛋白質が混ざり、泡立ちが目立つ

血液検査での異常

IgA血管炎では、血液検査で炎症反応の上昇や腎機能の低下がみられることがあります。

検査項目異常値の例
CRP上昇
赤沈亢進
クレアチニン上昇
eGFR低下

IgA血管炎の原因

IgA血管炎は、小児に多く見られる腎臓の病気の一つで、原因については、まだ完全に解明されていないのが現状です。

ここでは、IgA血管炎の原因として考えられていることを、詳しく説明します。

免疫システムの異常

IgA血管炎の主な原因は、免疫システムの異常であると考えられています。体内で必要以上に作られたIgA抗体が、血管の壁に付着することで炎症を引き起こし、腎臓などの臓器にダメージを与えてしまうのです。

免疫システムの異常影響
IgA抗体の過剰産生血管壁への沈着と炎症
免疫複合体の形成血管や腎臓の損傷

遺伝的要因

IgA血管炎には、遺伝的な要因も関与している可能性があります。

特定の遺伝子を持つ方では、IgA血管炎を発症するリスクが高くなるリスクがありますが、遺伝的要因だけでは発症に至らないため、他の要因との組み合わせが大切です。

感染症との関連

IgA血管炎の発症には、上気道感染症や皮膚感染症、消化器感染症などが関与しているという報告も。

感染症によって刺激を受けた免疫システムが、IgA抗体の過剰産生を引き起こすと推測されています。

環境要因の影響

環境要因もIgA血管炎の発症に関与していて、特定の薬剤や化学物質への曝露が、免疫システムに影響を及ぼし、IgA血管炎の発症リスクを高めることがあると考えられます。

環境要因影響
特定の薬剤免疫システムへの影響
化学物質IgA抗体の産生促進

IgA血管炎の検査・チェック方法

IgA血管炎は腎臓に影響を及ぼす可能性のある病気で、早期に見つけて検査を行うことが大切です。ここでは、IgA血管炎の検査やチェック方法について詳しく説明いたします。

尿検査の重要性

IgA血管炎では、腎臓の炎症により尿に赤血球や蛋白が混ざることがあります。

検査項目異常所見
尿潜血陽性
尿蛋白陽性

血液検査で確認すべき項目

IgA血管炎の診断には、血液検査も欠かせず、以下の項目を確認します。

  • 血清IgA値の上昇
  • 補体価の低下(C3、C4)
  • 炎症反応(CRP、ESR)の上昇

腎生検の必要性

IgA血管炎による腎臓の障害の程度や広がりを正確に評価するためには、腎生検が必要不可欠で、腎生検では、いくつかの所見が認められることがあります。

所見説明
メサンギウム増殖メサンギウム領域の細胞が増えている
メサンギウムIgA沈着メサンギウム領域にIgAが沈着している
半月体形成糸球体の一部に半月状の細胞増殖がある

定期的な経過観察の必要性

IgA血管炎と診断された場合、定期的な経過観察が欠かせません。主治医と相談のうえ、以下のようなスケジュールで検査を受けてください。

  • 尿検査:1~3ヶ月ごと
  • 血液検査:3~6ヶ月ごと
  • 腎生検:必要に応じて

IgA血管炎の治療方法と治療薬

IgA血管炎の治療には、いくつかの方法や薬剤があります。

IgA血管炎の治療方針

軽症の際は安静と対症療法が中心となりますが、重症の場合は免疫抑制療法が必要になることもあります。

安静と対症療法

軽症のIgA血管炎では、安静と対症療法が基本的な治療法となります。 安静を保ち、十分な水分を摂取することが大切です。

また、痛み止めや解熱剤を使用して症状をやわらげることもあります。

対症療法

  • 降圧薬の投与
  • 利尿薬の投与
  • 腎臓の負担を軽減するための食事療法

免疫抑制療法

重症のIgA血管炎や、腎機能が低下しているときには、免疫抑制療法が選択されることもあり、ステロイド薬や免疫抑制剤が使用されます。

よく使用されるステロイド薬と免疫抑制剤

ステロイド薬免疫抑制剤
プレドニゾロンシクロホスファミド
メチルプレドニゾロンアザチオプリン
ミコフェノール酸モフェチル

免疫抑制療法は、炎症を抑えて腎機能の悪化を防ぐ上で効果的ですが、感染症のリスクが高まるため、慎重な管理が必要です。

腎臓の保護

IgA血管炎では、腎臓の保護も重要な治療目標の一つです。

腎臓の負担を軽減するための薬剤

薬剤作用
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)血圧を下げ、腎臓の負担を軽減
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)血圧を下げ、腎臓の負担を軽減

フォローアップ

IgA血管炎の治療後は、定期的な経過観察が大切で、 腎機能や尿検査、血圧などをチェックし、再発の有無や治療の効果を確認します。

IgA血管炎の治療期間と予後

IgA血管炎は、腎臓に炎症を引き起こし、適切な治療を行わないと重篤な合併症を引き起こすことがあります。 ここでは、IgA血管炎の治療期間と予後について分かりやすく解説しましょう。

IgA血管炎の治療期間

軽症の場合は、数週間から数ヶ月程度の治療で改善することが多い一方、重症では、数ヶ月から数年にわたる長期的な治療が必要になることもあります。

IgA血管炎の重症度別の治療期間の目安

  • 軽症:4〜8週間
  • 中等症:3〜6ヶ月
  • 重症:6ヶ月〜2年以上

IgA血管炎の予後

多くの患者さんは、適切な治療を受けることで完全寛解に至り、良好な予後が期待できるでしょう。 しかし、一部の患者さんでは、慢性腎不全や末期腎不全に進行するリスクがあることも事実です。

IgA血管炎の予後に関する重要なポイント

  • 早期発見と速やかな治療開始が予後改善に欠かせない
  • 定期的な腎機能モニタリングが再発や合併症の予防に重要な役割を果たす
  • 免疫抑制療法が寛解導入と維持に有効なことが多い
  • ステロイド治療に抵抗性の症例では、他の免疫抑制剤の併用を検討する必要がある

IgA血管炎の再発率

IgA血管炎は、寛解後も再発するリスクがあり、再発率は、患者さんの年齢や腎機能障害の程度によって異なりますが、一般的に20〜40%程度とされています。

IgA血管炎患者の長期的な管理

IgA血管炎の患者さんは、寛解後も長期的な管理が欠かせません。

定期的な腎機能検査や尿検査を行い、再発や合併症の兆候を早期に発見すること、高血圧や高脂血症などの危険因子を適切にコントロールすることが大切です。

管理項目頻度
腎機能検査3〜6ヶ月ごと
尿検査3〜6ヶ月ごと
血圧測定毎受診時
脂質プロファイル年1回

薬の副作用や治療のデメリット

IgA血管炎の治療は、炎症を抑え、腎臓の働きの悪化を防ぐために必要ですが、治療薬の副作用やデメリットについても理解しておく必要があります。

ステロイド薬の副作用

IgA血管炎の治療で使用されるステロイド薬は、炎症を抑える効果がありますが、同時に副作用を引き起こすことがあります。

ステロイド薬の主な副作用

  • 体重増加
  • 血糖値の上昇
  • 骨粗鬆症(骨がもろくなる病気)
  • 感染症にかかりやすくなる ・ムーンフェイス(顔のむくみ)

ステロイド薬は、長期間使用したり、高い用量を使用したりすると、副作用のリスクが高まることが知られています。

免疫抑制剤の副作用

免疫抑制剤は、免疫系の活動を抑制することで炎症を抑えますが、副作用として感染症にかかりやすくなることがあります。

免疫抑制剤の種類と主な副作用

免疫抑制剤主な副作用
シクロホスファミド骨髄抑制(血液の成分が減る)、出血性膀胱炎、不妊
アザチオプリン骨髄抑制、肝機能障害、膵炎(すいえん)
ミコフェノール酸モフェチル骨髄抑制、消化器症状、感染症

長期的な影響

IgA血管炎の治療では、長期間にわたってお薬を使用することがあり、長期使用に伴うデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

長期使用によるデメリット内容
薬剤耐性長期間使用すると、お薬の効果が低下する可能性がある
副作用の蓄積お薬が体内に蓄積することで、臓器に負担がかかるリスクが高まる
成長への影響小児の患者さんでは、ステロイド薬が成長を抑制する可能性がある

保険適用の有無と治療費の目安について

IgA血管炎の治療は保険適応です。

一般的な治療費

IgA血管炎の治療費は、症状の重症度や治療期間によって大きく異なります。軽症の場合は、数万円程度で治療が完了する一方、重症の場合は、長期的な治療が必要となるため、数百万円に及ぶことも。

IgA血管炎の治療に関する一般的な費用の目安

治療内容費用の目安
外来診療1回につき数千円〜数万円
入院治療1日につき数万円〜数十万円
免疫抑制療法数万円〜数十万円(月額)
ステロイド治療数千円〜数万円(月額)

医療費助成制度

IgA血管炎の治療費が高額になる場合、医療費助成制度を利用できます。

代表的な医療費助成制度

助成制度対象者自己負担上限額(月額)
高額療養費制度全ての患者所得に応じて設定
自立支援医療(指定難病)制度指定難病の患者所得に応じて設定
小児慢性特定疾病医療費助成制度18歳未満の患者自己負担なし

個々の患者さんの治療費は、上記の目安よりも高額になる場合がありますので、予めご了承ください。また、保険適用の可否や助成制度の利用については、診察時に担当医師に直接ご確認いただくことが大切です。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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