アミロイド腎症とは、体内に異常なタンパク質(アミロイド)が蓄積し、腎臓機能が低下する病気の総称で、初期には軽微な症状しか感じず、進行してから気づくケースが多い特徴があります。
腎臓に沈着したアミロイドが血液ろ過機能を損ない、やがて他の臓器にも影響を及ぼすことがあり、早い段階で専門的な検査を受け、病型や進行度を正確に把握することが重要です。
アミロイド腎症の病型
アミロイド腎症には、アミロイドを産生する基礎疾患やメカニズムの違いによって複数の病型があり、どの病型に該当するかによって治療方針や見通しが変わるため、医師による正確な診断が大切です。
病型分類と基本的な特徴
アミロイド腎症は大きく分けて、免疫グロブリンの軽鎖由来のALアミロイドーシス、炎症性疾患の慢性化によるAAアミロイドーシス、長期透析を受けている患者に見られやすいβ2-ミクログロブリン由来の透析アミロイドーシスなどに区分できます。
病型名 | 主な特徴や背景 |
---|---|
ALアミロイドーシス | 多発性骨髄腫など血液の腫瘍性疾患が関与しやすい |
AAアミロイドーシス | 慢性的な炎症性疾患(リウマチなど)に伴う |
透析アミロイドーシス | 長期間の人工透析によりβ2-ミクログロブリンが蓄積しやすい |
病型の中でも、ALアミロイドーシスとAAアミロイドーシスが腎症を起こす代表的なタイプであり、病型によって合併症の程度や発症のペースに差があります。
ALアミロイドーシスの背景
ALアミロイドーシスは、しばしば多発性骨髄腫などの血液疾患との関連が深く、免疫グロブリンの軽鎖の一部が不安定化してアミロイドを形成し、腎臓をはじめとした全身へ広がります。
多発性骨髄腫との併発がある場合、骨の病変や貧血、易感染性などを伴うことがあり、総合的な管理が必要です。もしALアミロイドーシスの疑いがあるなら、血液検査による免疫グロブリンの異常の有無や骨病変の評価などが求められます。
AAアミロイドーシスの背景
AAアミロイドーシスは、関節リウマチや炎症性腸疾患など、慢性炎症性疾患を長く患っている方に多い傾向があり、体内で持続的に炎症が存在する状態だと、SAA(血清アミロイドA)というタンパク質が慢性的に高まります。
それが安定性を失った結果、アミロイドとして腎臓に沈着しやすくなります。AAアミロイドーシスでは、ベースにある炎症疾患そのもののコントロールが腎臓へのダメージ軽減につながるため、基礎疾患の治療が大切です。
透析アミロイドーシスの背景
透析アミロイドーシスは、長期間の血液透析治療を行っている患者さんに認められることが多く、β2-ミクログロブリンというタンパク質が腎臓だけでなく骨や関節にも沈着し、手根管症候群や関節痛、骨病変などを起こします。
透析治療歴が長くなるほどリスクが高まる傾向があるため、長期透析患者は定期的な検査と状態確認が必要です。
病型名 | 腎臓以外の主な障害 | 透析年数のリスク |
---|---|---|
透析アミロイドーシス | 関節痛、骨病変 | 通常5年以上で増加 |
リウマチ性疾患や血液疾患を伴わない場合でも、人工透析を長く続けているうちにアミロイドが徐々に蓄積し、腎臓や関節へ悪影響を及ぼすことがあります。
症状
アミロイド腎症では、初期には自覚症状が乏しいものの、腎機能の低下が進むと多彩な症状が現れ、腎臓以外の臓器にもアミロイドが蓄積することがあり、さまざまな合併症を起こす可能性があります。
たんぱく尿
腎機能が低下すると、血液から不要物質をろ過する機能が損なわれるため、本来なら体内にとどまるべきタンパク質が尿に漏れ出します。
たんぱく尿が続くと、身体に必要なタンパク質が失われてしまうため、栄養状態が悪化し、全身の抵抗力や筋力が低下しやすくなります。
たんぱく尿は検診や健康診断で発見されることが多いですが、アミロイド腎症では潜在的な進行がしばしば見逃されがちです。
- たんぱく尿が長期にわたると、低アルブミン血症が起こりやすい
- 体力や抵抗力が落ちることで日常生活に影響する可能性がある
- 疲労感やむくみを自覚するきっかけになることもある
アミロイドが腎臓を蝕む速度や程度には個人差があるため、同じたんぱく尿でも原因が異なれば治療方針も変わり、たんぱく尿が認められたら、基礎疾患の精査が必要です。
浮腫(むくみ)
アミロイド腎症は、腎機能の低下による塩分と水分の排出障害により、身体がむくむことがあり、顔や足首、下肢にむくみが生じる方が多く、靴や靴下の跡が強く残る、朝起きたときにまぶたが腫れるなどのサインで気づくことがあります。
むくみはたんぱく質の不足や循環血液量の増加など、多彩な要因で起こりうるため、総合的な視点で原因を見極めることが重要です。
むくみが現れやすい部位 | 原因の例 |
---|---|
顔・まぶた | 低アルブミン血症による水分保持 |
足首・下肢 | 血液循環量増加による鬱滞 |
手指 | 日常的な水分摂取バランスなど |
むくみに伴い、体重が急増したり、まぶたや手足の腫れで不快感を覚えたりするケースもあるため、定期的に体重測定や身体の違和感を記録しておくことが大切です。
腎機能低下による全身症状
アミロイド腎症が進むと、腎機能が大きく落ち込み、血液中の老廃物や毒素が十分に排泄できなくなるため、倦怠感や吐き気、集中力低下などの全身症状が出現します。
貧血も合併しやすく、顔色が悪くなる、疲れやすいなど、日常生活に支障をきたすほど体力が落ちる可能性があります。
- 腎不全の進行による血液中の老廃物蓄積
- アルブミンや血球の産生低下によるエネルギー不足
- 尿毒症による不快感や食欲不振
また、血圧のコントロールが乱れ、高血圧や低血圧の波が激しくなる場合もあり、めまいや頭痛が続くことも考えられます。
他の臓器への症状
アミロイドは心臓や肝臓、消化管、神経系など、全身のさまざまな組織に沈着する可能性があるため、動悸や息切れ、手足のしびれ、下痢や便秘など、多様な症状が同時に発生するケースがあります。
アミロイドの沈着部位や程度によって、日常生活への影響度が大きく変わるため、腎症だけでなく全身の状態を定期的に評価することが大切です。
影響が及びやすい臓器 | 主な症状 |
---|---|
心臓 | 不整脈、心不全様症状 |
肝臓 | 肝臓の腫大、肝機能障害 |
末梢神経 | 感覚異常、四肢のしびれ |
消化管 | 食欲不振、消化不良、便通異常 |
こうした症状が同時多発的に起こる場合、アミロイド腎症が進行している可能性や、他の臓器障害を合併している可能性があるため、専門医の管理や複数科の連携が重要です。
アミロイド腎症の原因
アミロイド腎症は、アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が腎臓の組織に沈着することで起きます。
アミロイドのタイプや産生過程はさまざまであり、背景には多発性骨髄腫をはじめとする免疫系の異常や、リウマチなどの慢性炎症性疾患が関わっていることがあります。
アミロイド形成のメカニズム
アミロイドは、本来は正常なタンパク質が折りたたみ構造の異常によって不溶性の繊維状物質へ変化したものです。
折りたたみ異常が起こる理由は多岐にわたり、免疫グロブリンの軽鎖が異常増殖したり、炎症反応が慢性化したりすることで血中タンパクが変性しやすくなります。
変性したタンパク質は、腎臓を含む全身のさまざまな臓器へ蓄積し、機能障害を引き起こします。
- 正常なタンパク質が、なんらかの要因で変性・不溶化する
- 繊維状のアミロイドが臓器に沈着し、構造を破壊する
- 慢性的な炎症や免疫異常がアミロイド形成を後押しする
アミロイドの蓄積速度や部位は個人差が大きく、基礎疾患の種類や免疫状態、生活習慣などが影響を及ぼす可能性があります。
関連疾患との相互作用
アミロイド腎症は、単独で起こることもありますが、以下のような疾患との関連性が高いとされます。
関連疾患・状態 | アミロイド腎症との関係 |
---|---|
多発性骨髄腫 | 免疫グロブリンの軽鎖がアミロイド生成を増長 |
関節リウマチ | 慢性炎症によるSAAタンパク質の高まり |
慢性感染症(結核など) | 長期の炎症がアミロイド沈着を促進 |
長期透析治療 | β2-ミクログロブリン由来のアミロイド形成 |
多発性骨髄腫がある方は骨の病変や貧血などの症状に目を奪われがちですが、腎臓への負担にも警戒が必要です。
関節リウマチなど慢性炎症性疾患がある方は、関節症状のコントロールだけでなく、定期的に腎機能をチェックするとアミロイド腎症の早期発見につながる可能性があります。
遺伝的素因
アミロイドーシスの中には遺伝性の型も存在し、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異が原因となることがあります。
TTR由来アミロイドは、主に心臓や末梢神経への障害を起こすことで知られていますが、腎臓への蓄積が起こる例もあります。
遺伝性アミロイドーシスの家族歴がある方は、定期的な検査で自分の遺伝子型を調べ、発症の有無を早めに把握することが望ましいです。
生活習慣やその他の要因
アミロイド腎症に直結する生活習慣のリスク要因は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病ほど明確ではありませんが、以下のような要因も悪影響を及ぼす可能性があります。
- 慢性的な過労や睡眠不足による免疫機能の低下
- 激しい炎症状態の放置
- 極端な栄養バランスの乱れ
生活習慣の改善のみでアミロイド腎症を根本的に防ぐことは難しいですが、基礎疾患の管理や定期検査の受診を怠らないよう注意が必要です。
検査・チェック方法
アミロイド腎症を疑う場合、腎機能の状態やアミロイドの種類を特定するために、複数の検査を組み合わせて診断し、血液検査や尿検査、画像検査に加えて、確定診断には腎生検が行われることがあります。
尿検査と血液検査
腎機能のスクリーニングとしては、尿検査と血液検査が代表的で、たんぱく尿や尿中のアルブミン濃度、血中のクレアチニン値や推定GFR(eGFR)などを把握することで、腎臓のろ過機能がどの程度維持されているかがわかります。
さらに、免疫グロブリンの異常や炎症マーカー(CRPなど)の上昇を調べることで、AL型やAA型の可能性を検討できます。
検査項目 | 意味 |
---|---|
尿たんぱく | 腎障害の有無や重症度を推測 |
尿アルブミン | 糸球体障害の早期発見に有用 |
血中クレアチニン | 腎機能を反映、eGFRの計算にも使用 |
CRP | 炎症レベルの把握 |
免疫グロブリン | 多発性骨髄腫などの血液疾患関連を確認 |
血中の電解質バランスや尿素窒素(BUN)の測定も行い、腎臓のろ過・排泄機能に異常がないかを総合的に見極めます。
画像検査の役割
エコー(超音波検査)やCT、MRIなどの画像検査では、腎臓の大きさや形態、血流の状態を観察でき、腎臓自体の萎縮や腫大、結石などの器質的異常の有無を確認することで、アミロイドによる腎障害との鑑別がしやすくなります。
ただし、画像検査だけでアミロイド沈着の詳細を把握するのは難しく、最終的には組織検査が鍵です。
画像検査はあくまでも補助的な位置づけですが、腎臓だけでなく心臓や肝臓、脾臓など、アミロイド沈着が起こり得る他臓器の状態もチェックする意味があります。
- 腎エコーは放射線被曝がなく、簡便かつリアルタイムで観察可能
- CTやMRIはより詳細な構造や臓器の血流評価ができる
- 造影剤を使用する場合、腎機能への負担が懸念されることがある
腎生検による確定診断
アミロイド腎症の確定診断をするためには、腎生検で採取した組織を顕微鏡で調べ、アミロイドの沈着を確認する方法が最も信頼度が高いです。
コンゴーレッド染色などの特殊染色を使ってアミロイドを検出し、電子顕微鏡や免疫染色でアミロイドのタイプを同定し、この結果が治療方針を決める重要な手がかりとなります。
検査方法 | 特徴 |
---|---|
腎生検 | 直接組織を採取して顕微鏡下で観察 |
コンゴーレッド染色 | アミロイド特有の二重屈折像を確認 |
電子顕微鏡 | 高倍率でアミロイド繊維の構造を可視化 |
免疫組織化学染色 | AL型、AA型などアミロイドのタイプ別診断に用いる |
その他の補助検査
アミロイド腎症では、心臓や肝臓、神経など他の臓器にも障害が生じることがあるため、心電図や心エコー、肝機能検査、神経学的検査などが行われることもあります。
また、自由軽鎖(FLC)分析やリウマチ因子測定など、血液中の特定タンパク質の定量検査が病型判定に役立つ場合があります。
- 心エコー:心臓の肥大や弁機能の評価
- 肝機能検査:肝臓へのアミロイド沈着を含めた状態把握
- FLC分析:免疫グロブリン軽鎖の測定、AL型診断の補助
複数の検査結果を照合し、総合的な判断でアミロイド腎症と確定した場合に治療計画を立てることが一般的です。
アミロイド腎症の治療方法と治療薬について
アミロイド腎症の治療は、病型(AL型、AA型、透析アミロイドーシスなど)や疾患の進行度合い、基礎疾患の有無に応じてさまざまなアプローチがとられます。
AL型アミロイドーシスに対する治療
AL型では、免疫グロブリンの軽鎖を産生する根本原因を抑える必要があり、多発性骨髄腫との関連が強い場合は、骨髄腫の治療と同じく化学療法や免疫療法を行うことが多いです。
薬剤としては、メルファランなどのアルキル化剤やステロイド、プロテアソーム阻害剤、免疫調整薬などが組み合わされ、アミロイドの新規形成を抑え、すでに沈着したアミロイドの影響を軽減することを目指します。
治療薬の例 | 作用機序 |
---|---|
メルファラン | DNAをアルキル化し、異常細胞の増殖を抑制 |
ステロイド(プレドニゾロン等) | 免疫抑制作用により腫瘍細胞の活性を減少 |
プロテアソーム阻害剤 | 異常タンパク質の分解機能を阻害して腫瘍細胞を死滅へ導く |
AA型アミロイドーシスに対する治療
AA型は慢性炎症性疾患が原因となることが多いため、まずは基礎疾患の炎症コントロールに重点を置きます。
関節リウマチの場合はメトトレキサートなどの抗リウマチ薬や生物学的製剤を使って炎症を抑制し、SAA(血清アミロイドA)の産生を減らす方針を取り、炎症が落ち着けば、アミロイドの沈着ペースも遅くなります。
医師が血液検査で炎症反応の指標や腎機能を定期的にモニタリングしながら、治療の強度を調整します。
- 基礎疾患の活動を抑制することが腎保護につながる
- SAAレベルを継続的に監視してアミロイド沈着リスクを評価
- 必要に応じてステロイドや免疫抑制薬も検討
透析アミロイドーシスの対処法
透析アミロイドーシスは、長期透析に伴うβ2-ミクログロブリンの蓄積が主な原因です。
透析の効率を高めるために、高性能な透析膜を使用したり、透析時間や回数を見直したりする方法が検討され、透析患者さんの中で、運動療法や食事療法を組み合わせることで、体内の毒素排泄を促し、アミロイド沈着を軽減できる場合もあります。
重症例では腎移植が選択肢となることもありますが、患者個々の状態に合わせた慎重な判断が不可欠です。
対処法 | 具体的な内容 |
---|---|
透析膜の選択変更 | β2-ミクログロブリンを効率的に除去できる膜を使用 |
透析スケジュールの見直し | 週の透析回数や1回の透析時間を調整して蓄積量を減らす |
食事・運動療法の導入 | 体内毒素を少しでも排泄し、筋力低下を防ぐ |
生活習慣の調整と補助療法
アミロイド腎症の進行を食い止めるうえで、薬物療法だけでなく生活習慣の見直しも大切で、塩分や水分管理に注意し、タンパク質の摂取量や栄養バランスをコントロールすることで腎臓への負担を軽減します。
医療機関の管理栄養士などが個別に栄養指導するケースも多く、適度な運動や休息を取り入れて免疫力維持に努めることが大事です。
- 塩分過多にならないよう調理方法を工夫
- 医師や管理栄養士と相談し、タンパク質の過不足を調整
- 有酸素運動やストレッチを習慣化して血行を促す
生活習慣を整えることで、薬物治療の効果を引き出し、腎不全の進行をある程度抑えやすくなります。
アミロイド腎症の治療期間
アミロイド腎症の治療期間は、病型や進行度、患者さんの基礎疾患や全身状態によって大きく変わり、短期間の治療で安定する場合もあれば、長期的に薬物療法や透析を継続して進行を抑える場合もあります。
病型別の治療期間の目安
病型 | 治療期間の傾向 |
---|---|
AL型アミロイドーシス | 多発性骨髄腫などの治療が長期に及ぶことが多い |
AA型アミロイドーシス | 基礎疾患の活動度次第で変動が大きい |
透析アミロイドーシス | 透析継続中は症状管理を長期間継続する必要がある |
AL型の場合、多発性骨髄腫の治療そのものが数カ月から数年単位で実施されるため、アミロイド腎症のコントロールも同様に長期戦になることが多いです。
AA型は、炎症性疾患の活動度を抑えることができれば腎障害も落ち着く可能性がありますが、再燃のリスクもあるため、定期的なモニタリングが欠かせません。
対症療法と寛解導入
多くの患者は対症療法を併用しつつ、基礎疾患のコントロールやアミロイド形成の抑制を目指します。
薬物療法で一時的に症状が軽快しても、再燃や別の臓器へのアミロイド沈着が進む場合もあるので、寛解導入後も数年単位で通院や検査が続くケースが少なくありません。
一度安定しても、免疫状態や炎症反応が大きく動けば、病態が急に悪化するリスクがあります。
- 症状が落ち着いても定期的な検査は継続する
- 炎症マーカーや腎機能指標をチェックし、早期に異常を発見する
- 薬物療法を段階的に減量する際も慎重な判断が必要
透析患者の長期管理
透析アミロイドーシスに限らず、アミロイド腎症で腎機能が極端に低下して透析導入となった場合、基本的には長期的に透析を受けながらの管理が継続します。
透析患者さんは血液検査や体調管理に加えて、骨関節のトラブル、心血管系リスクの評価も並行して行い、腎移植が選択肢に入る場合でも、アミロイドのコントロールが一定水準に達してからでないと移植手術に踏み切れないことがあります。
期間の目安 | 主な管理ポイント |
---|---|
透析導入当初 | 透析スケジュールの最適化、アミロイド症状の軽減 |
長期透析(5年以上) | β2-ミクログロブリン蓄積による関節・骨障害対策 |
腎移植検討時 | 全身状態の評価、移植適応の可否判定 |
一般的な生活への復帰と予後
治療期間中でも、病型や症状の程度によっては日常生活を続けながら通院治療が可能なケースもありますが、アミロイド腎症は再燃や他臓器の障害など不確定要素が多い疾患なので、予後の見通しは個々に異なります。
腎機能を守るために、医師から提案された治療計画に沿ってこまめなチェックを受け、症状変化や体調不良があればすぐに相談する姿勢が大切です。
アミロイド腎症薬の副作用や治療のデメリットについて
アミロイド腎症の治療では、免疫抑制薬や化学療法薬など、作用の強い医薬品を組み合わせることがあり、軽微なものから深刻なものまでさまざまな副作用が生じる可能性があります。
化学療法薬や免疫抑制薬の副作用
AL型アミロイドーシスの治療では、多発性骨髄腫に準じた化学療法や免疫療法を行う場合があり、治療薬には、骨髄抑制による白血球や赤血球の減少、感染症リスクの上昇、吐き気や脱毛などが代表的な副作用です。
ステロイド薬を使用する場合、血糖値の上昇や骨粗鬆症、感染への抵抗力低下などに注意が必要で、症状が強いときは、医療チームと相談しながら薬剤調整や補助薬の追加を検討します。
- 白血球減少や貧血によるだるさ
- 急性感染症や口内炎の発生リスク
- ステロイドによる体重増加や骨密度低下
副作用項目 | 主な症状・注意点 |
---|---|
骨髄抑制 | 白血球・赤血球減少、感染リスク増大 |
消化器障害 | 吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎 |
脱毛 | 投与開始後しばらくして髪が抜けやすい |
ステロイド関連 | 高血糖、骨粗鬆症、易感染性 |
保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
保険適用となる主な検査と費用の目安
アミロイド腎症の診断で行う尿・血液検査、画像検査、腎生検などは、通常は健康保険の対象です。腎生検は入院下で行うことが多く、1~3日の入院費用がかかるケースがあります。
検査項目 | 保険適用の有無 | 費用の目安(3割負担) |
---|---|---|
尿・血液検査 | ○ | 数百円~数千円程度 |
画像検査(CT、MRIなど) | ○ | 数千円~1万円程度 |
腎生検 | ○ | 数万円程度(入院費含む) |
治療薬の費用と保険適用
AL型アミロイドーシスの治療に使われる化学療法薬や免疫調整薬は、保険が適用されますが、高額な薬剤を使用するケースがあるため、1カ月あたり数万円以上の自己負担が発生する場合もあります。
AA型の基礎疾患(リウマチなど)に対する生物学的製剤も高額ですが、こちらも保険が適用されるため、自己負担割合に応じた額での支払いとなります。
透析治療は健康保険の適用対象であり、1回あたりの自己負担は数千円から1万円程度になることが一般的です。
- 化学療法薬:種類や投与量により、月数万円以上の自己負担もあり
- 免疫抑制薬:ジェネリック薬が存在する場合は費用が下がることもある
- 透析:週3回の場合、月あたり数万円程度の自己負担になる場合が多い
追加検査や併用治療の費用
アミロイド腎症では、心臓や肝臓、神経系などの合併症チェックのために追加検査を行うことがあります。
心エコー、神経学的検査、血液中の特定タンパク測定なども保険適用されることが多いですが、それぞれ数千円から数万円です。
併用療法としてリハビリテーションや栄養指導を受ける場合、管理栄養士による個別指導などにわずかな負担が生じます。
追加検査・治療 | 費用の目安(3割負担) |
---|---|
心エコー、神経学的検査 | 数千円~1万円程度 |
血液中の特定タンパク測定 | 数百円~数千円程度 |
栄養指導やリハビリテーション | 数百円~数千円程度の自己負担 |
以上
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