菲薄基底膜病(良性家族性血尿)

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)とは、尿検査で血尿が見つかるにもかかわらず大きな自覚症状に乏しく、長期間ほとんど症状なく経過するケースが多い疾患です。

主に遺伝的な素因が関与し、腎臓の糸球体基底膜が通常よりも薄くなっていることで血尿を生じると考えられています。

多くの場合、慢性的な腎機能低下まで進行しない良性の経過をたどるとされていますが、まれに腎機能が徐々に悪化していく例もあり、早い段階で自分の状態を知り、定期的に腎臓の働きを確認することが大切です。

ここでは菲薄基底膜病の病型から原因、症状、治療法までを幅広く解説し、治療費や保険適用の観点についても触れていきます。

目次

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の病型

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)は、糸球体基底膜が均一に薄くなっているために血尿を生じる病気であり、大半は軽度の血尿のみで経過する良性型が多いです。

腎炎を合併するケースや、症状が進行するケースなど、いくつかの異なる臨床像が報告されています。

単なる血尿のみで経過する型

単に顕微鏡的血尿や肉眼的血尿が見つかるだけで、高度のタンパク尿や腎機能障害を伴わないケースが大半です。

肉眼的血尿が一時的にみられても、検査を重ねるうちに落ち着いてしまうこともあるため、持続的な観察が主な対応になります。

軽度のタンパク尿を伴う型

血尿だけでなく、わずかながらタンパク尿がみられる型では、腎臓にやや負担がかかりやすいとされています。

タンパク尿が続くと糸球体にダメージを与える恐れがあるため、生活習慣の見直しと定期的な血液検査、尿検査によるチェックが重要です。

後年に腎炎を合併するリスク

菲薄基底膜病自体は良性の経過をとることがほとんどですが、一部の患者さんでは加齢や他の要因が重なって慢性腎炎に近い状態に移行し、腎機能の低下をきたすことがあります。

過度に心配しすぎる必要はありませんが、血圧管理や塩分制限など腎臓に優しい生活を心がけると安心です。

遺伝子的素因との関連

家族性血尿という名称が示すように、近親者に同様の血尿を呈する人が複数いるケースがあり、遺伝的な要素を考慮しなければなりません。

もし家系的に血尿の既往がある場合、早めに検査を行い、フォローアップの体制を整えておくと早期に異常変化を見つけやすいでしょう。

菲薄基底膜病に関連する病型と特徴

病型主な症状進行リスク
血尿のみ無症状またはごく軽度の血尿腎機能低下に進展する可能性は低い
血尿+軽度のタンパク尿血尿にタンパク尿が加わる長期的に腎機能がわずかに低下
腎炎合併血尿やタンパク尿だけでなく、腎機能障害も確認される腎不全に移行するリスクがやや上昇

腎機能が安定しているうちは治療介入がほぼ必要ないとされる場合もありますが、血圧管理や生活習慣を整えると将来的なトラブルを防ぎやすくなります。

病型ごとの注意点

  • 血尿のみ:定期的な尿検査で変化をチェックする
  • 軽度タンパク尿:タンパク質摂取量や血圧に注意して腎臓への負担を減らす
  • 腎炎合併:専門医による積極的フォローアップと投薬管理を検討する

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の症状

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の症状は、主に血尿の出現が代表的ですが、血尿の程度や他の症状の有無は個々人で異なります。

症状に乏しいために気づかないケースも珍しくなく、学校検尿や職場の健康診断などで初めて血尿を指摘される方もいます。

顕微鏡的血尿と肉眼的血尿

菲薄基底膜病で最も多いのは、目では確認できないレベルの血尿が持続する顕微鏡的血尿です。検診での尿検査で見つかることが多く、基本的に痛みや排尿時の違和感はないとされています。

まれに、運動後や発熱時などに一過性の肉眼的血尿(赤い尿)が出現する方もいますが、そのあと安定して目立つ症状がなくなる場合が多いです。

血尿の種類

血尿の種類特徴原因の例
顕微鏡的血尿肉眼で確認不可能、尿検査でのみ発見菲薄基底膜病、軽度の糸球体障害など
肉眼的血尿尿がピンク色や赤色、あるいは茶褐色になる尿路結石、膀胱炎、腎臓の炎症や強い運動による一時的出血

菲薄基底膜病の場合、発熱や激しい運動時における一時的な肉眼的血尿のあとは特に大きな症状がなくても腎臓の状態は比較的安定しやすく、深刻な合併症を引き起こす頻度は低いです。

倦怠感やむくみ

良性の経過をとる例ではほぼ感じられないものの、まれにタンパク尿が加わりはじめると、全身の倦怠感や手足の軽いむくみ、まぶたの腫れなどが現れる可能性があります。

これらの症状は腎臓の機能がやや低下すると出現しやすいですが、フィードバックが遅れがちなため、血尿以外にも日頃の体調変化に注目すると早期対処につながります。

高血圧との関連

菲薄基底膜病そのものが直接高血圧を引き起こすわけではありませんが、腎臓に負担がかかり続ける状態が続くと、高血圧が合併しやすくなります。

高血圧と腎機能障害が相互に悪影響を及ぼすことが知られているため、血圧測定は健康管理上重要です。

菲薄基底膜病に伴う症状変化を意識するリスト

  • 無症状の顕微鏡的血尿が続く
  • 発熱や運動後の一時的な肉眼的血尿
  • 軽度のむくみ・倦怠感(タンパク尿増加時)
  • 血圧の上昇傾向(腎負担の蓄積)

大半は自覚症状に乏しいまま経過し、検診の再検査をきっかけに腎臓専門外来を受診して初めて病名を知る方が多いです。

症状と生活のバランス

血尿が見られていても、普段の生活に大きな支障が生じないことが多いのが菲薄基底膜病の特徴です。学生や社会人でも普通に運動や仕事を続けられる場合が多く、定期的な検査を怠らなければ深刻な腎不全へ進行しにくいと報告されています。

ストレスや過度の疲労が長引くと腎臓に悪影響を及ぼす可能性もあるため、適度に休養をとりながら健康維持を意識してください。

症状と日常生活の関係

症状の程度日常生活への影響ケアの重要性
症状ほぼなし仕事や学業に支障なし年に1回程度の検査で経過観察
軽度のむくみ体調不良時の休息が必要になる場合あり医師の指示に従った塩分管理や血圧チェック
顕著な蛋白尿・高血圧生活制限や投薬治療が必要になる可能性あり専門外来でのフォローアップが大切

自分に合った適度な生活管理を行いながら症状の変化を確認し、違和感を覚えたら早めに受診して専門家の意見を仰ぐと安心して過ごしやすいです。

原因

菲薄基底膜病は、遺伝性要因が大きく関与していると考えられ、腎臓の糸球体基底膜が通常よりも薄くなっていることが主要な要因です。

基底膜は毛細血管や糸球体を支える大切な構造ですが、先天的な脆弱性があると微小な出血を起こしやすくなり、血尿として現れます。

遺伝的変異との関連

現代の研究では、コラーゲンの形成にかかわる遺伝子変異が菲薄基底膜病の発症に関係していることが示唆されています。

家族性の血尿は常染色体優性遺伝で伝わることが多いと報告されており、親族に同様の症状がある場合は自分や子どもに血尿がみつかる可能性が高いと推測されます。

遺伝的素因に関わる要点

  • コラーゲン異常による糸球体基底膜の薄さ
  • 親族や兄弟で血尿の既往や診断歴がある
  • 発症年代は小児期~成人早期で確認される例が多い

コラーゲン関連疾患との鑑別

コラーゲン異常が関係する病気として、アルポート症候群が挙げられ、菲薄基底膜病よりも進行しやすい傾向にあり、腎不全や難聴などを伴うことがある別の疾患です。

菲薄基底膜病との決定的な違いは、腎機能の進行的な低下や聴力障害など、全身症状を合併しやすいかどうかの点で、実際に鑑別診断が必要となることもあるため、腎臓専門医の判断が要となります。

アルポート症候群と菲薄基底膜病の比較

特徴菲薄基底膜病(良性家族性血尿)アルポート症候群
血尿ほぼ常在(顕微鏡的血尿が多い)持続的な血尿、しばしば肉眼的血尿も
腎機能の低下速度ゆるやか、またはほぼ進行しない中等度~高度に進行することが多い
合併症基本的に少ない難聴、眼症状などを併発することがある

環境要因の影響

菲薄基底膜病は根本的に遺伝的な変異に起因する部分が大きいとされていますが、生活習慣や環境要因によって症状の進行具合が左右される例も否定できません。

過度な塩分摂取や肥満は腎臓の負担を増やすため、血圧上昇やタンパク尿の増加を通じて症状が悪化しやすいと考えられています。

他の腎疾患との合併の可能性

菲薄基底膜病の患者が、一生涯まったく異常なく血尿だけで過ごす保証はなく、年齢を経ると糖尿病性腎症や慢性腎臓病など、別の腎疾患を合併するリスクも増えます。

こうした二重負担がかかった場合、血尿が見られるだけでなく腎機能の悪化がより顕著になるため、早期の診断と継続的な検査がカギです。

菲薄基底膜病と合併症のリスク

合併症候リスク要因対応策
高血圧塩分過多、肥満、ストレス食事制限、適度な運動、投薬
糖尿病性腎症糖分過多、遺伝的素因、生活習慣血糖コントロール、定期的検査
慢性腎臓病高血圧、糖尿病、加齢複数の生活習慣改善、治療連携
尿路結石水分摂取不足、特定の食事要因、体質水分をこまめにとる、再発防止策

遺伝要因がベースになっている疾患ではあるものの、日々のケアでリスクを最小限に抑えられる可能性があります。

検査・チェック方法

血尿が発見された場合、菲薄基底膜病なのか、あるいは他の腎疾患や尿路系の病気なのかを判別するためには、医療機関での検査が欠かせません。腎臓専門医による評価や、的確な検査を受けることで正しい診断を得られます。

尿検査と血液検査

尿検査では、血尿だけでなくタンパクの有無や尿比重、沈渣検査などを詳細に調べ、菲薄基底膜病の場合、赤血球形態に変形がみられることが多く、糸球体由来の血尿であることが示唆されます。

血液検査では、腎機能を示すクレアチニン値や推定GFR、電解質バランスなどを確認し、腎臓全体の働きが保たれているかどうかを評価します。

尿検査・血液検査でチェックされる主な項目

  • 尿中赤血球形態
  • 尿タンパク定量
  • 血清クレアチニン、eGFR
  • 電解質(ナトリウム、カリウムなど)
  • 血清アルブミン

超音波検査(エコー)

腎臓の形態や大きさ、内部構造を把握するために超音波検査が行われます。

菲薄基底膜病そのものはエコーで特異的な所見を示さないことが多いですが、腎結石の有無や腎実質の萎縮、明らかな腫瘍の存在など、他に血尿の原因となりうる病変を除外できます。

超音波検査で判別が可能な主な病変

病変エコーでの特徴主な症状
腎結石エコー上で高エコー領域として描出される側腹部痛、血尿、排尿痛
腎腫瘍腎内部の腫瘤性病変が検出される血尿、腰痛、体重減少など
多発性嚢胞腎腎全体に複数の嚢胞が見られる腹部膨満感、高血圧、腎機能低下
フィンランド嚢胞比較的小さな嚢胞が散在基本的に症状が乏しい

菲薄基底膜病の確定診断には、これらの他の病変の除外も含めた総合的な診断が欠かせません。

腎生検

稀なケースですが、アルポート症候群などの類似疾患と区別が難しい場合や、腎機能低下が疑われる場合に腎生検を検討することがあります。

腎生検では腎臓からごく小さな組織片を採取し、顕微鏡下で基底膜の厚さを実測し、菲薄基底膜病の場合、病理検査で均一に薄い基底膜が確認されることが多いです。

ただし、生検には出血リスクなどが伴うため、必要性を十分に検討した上で行われます。

遺伝子検査

菲薄基底膜病は特定のコラーゲン遺伝子変異が関係していることが多いとされますが、日常臨床で遺伝子検査を行うことはあまりありません。

研究目的や、アルポート症候群との明確な鑑別が厳密に必要な場合など、特殊な状況でのみ実施されます。

検査手法と必要性

検査手法主な目的行われるシーン
尿検査・血液検査血尿の性状、腎機能評価、他疾患の除外基本的なスクリーニング全般
超音波検査腎臓の形態異常、腎結石や腫瘍などの確認血尿の原因検索、合併症の有無確認
腎生検基底膜の薄さの直接観察、病理診断他疾患との鑑別が難しい場合
遺伝子検査コラーゲン遺伝子変異の特定研究や高度診断、家族内リスク評価

検査を選択するためには、医師との相談が重要で、症状や家族歴などを正しく伝え、必要な検査を受けることで、より正確な診断と対策につなげられます。

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の治療方法と治療薬について

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)は、その名のとおり多くの患者で良好な経過をたどる病気とされ、基本的には定期的な経過観察が中心となる場合が多いです。

積極的な治療が必要となるのは、腎機能障害や高血圧、タンパク尿の顕著な増加などが認められたときです。状態に合わせて、薬物療法や生活指導が行われます。

経過観察と生活指導

血尿が顕微鏡レベルであり、腎機能も正常範囲内にとどまっているなら、主な治療は定期的な検査と生活習慣の見直しです。

塩分やタンパク質の摂取量を適度にコントロールし、血圧の上昇を防ぐことが将来の腎障害リスクを軽減するうえで大切になります。日常生活では無理のない範囲で運動を続け、水分補給や睡眠を十分にとるなど、基本的な健康管理が中心です。

血圧管理のための薬物療法

菲薄基底膜病の患者が高血圧を併発すると、糸球体への負担がさらに高まり、タンパク尿の増加や腎機能の低下を招く可能性があります。

こうした場合、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)やACE阻害薬といった降圧薬を使用して、血圧を正常値内に保つことが重要で、これらの薬には糸球体内圧を下げる作用があり、血圧のみならずタンパク尿の減少にも有用です。

降圧薬の主な例と作用

薬剤区分代表的な薬剤名作用メカニズム
ACE阻害薬エナラプリル、リシノプリルなどアンジオテンシンIIの生成を抑制し血管拡張、腎保護
ARBロサルタン、カンデサルタンなどアンジオテンシンIIの受容体をブロックし血管拡張
カルシウム拮抗薬アムロジピン、ニフェジピンなど血管平滑筋を弛緩し、血圧を低下させる

タンパク尿に対する治療

菲薄基底膜病にタンパク尿が伴う場合、量が多くなるほど腎臓への負担が増しやすいです。

降圧薬の使用によってタンパク尿が減少する効果も期待できるため、高血圧がない場合でも微量タンパク尿が持続するときはACE阻害薬やARBを少量投与することがあります。

タンパク尿が改善することで将来的な腎機能低下リスクが低減すると報告されています。

タンパク尿の改善に寄与するポイント

  • 適度な塩分制限(高血圧予防にもつながる)
  • 肉や魚などタンパク質の摂取量コントロール
  • 適度な降圧薬の使用で糸球体内圧を軽減

透析が必要となるケース

菲薄基底膜病は良性経過が一般的ですが、稀に慢性腎臓病が進行し、末期腎不全に至るケースも皆無ではありません。しかし、これは非常にまれであり、他の疾患が重複したり放置したりした結果として起こりやすいです。

定期的なフォローアップをしていれば、透析が必要になる前に症状の進行を把握できるケースが多く、余程の合併症がない限りは、透析まで進行する可能性は低いとされています。

治療法と主な適応

治療法適応となる状態期待できる効果
経過観察・生活指導血尿のみ、腎機能正常進行予防、リスク管理
血圧管理(降圧薬)高血圧やタンパク尿を伴う場合腎保護、タンパク尿軽減
薬物療法(ACE阻害薬等)タンパク尿が顕著で腎負担が懸念されるタンパク尿減少、腎機能の保護
透析重度の腎機能障害、末期腎不全腎不全による体内毒素の除去、生命維持装置

治療方針は患者さんごとに異なるため、医師との相談のうえ、自身の病状に合った対策を練ることが大切で、腎機能を定期的にチェックし、早期に異常を把握することが良好な経過を保つためのポイントになります。

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の治療期間

菲薄基底膜病は、血尿があっても腎機能が安定している場合、必ずしも積極的な薬物治療を必要としないケースが多いため、治療期間というよりは「観察期間」と捉えられます。

一定期間経過観察を行い、腎機能や血圧、タンパク尿などに変化がなければ、長期にわたり大きな問題なく生活できる可能性も十分にあります。

病初期からの観察期間

菲薄基底膜病と診断された直後は、3か月から6か月ごとに尿検査や血液検査を行い、血尿や腎機能の推移を見極めることが勧められます。この時期に異常変動が見られなければ、徐々に受診間隔を空けながら経過観察を続ける形が一般的です。

成長期の子どもや若年者は、身長や体重の増加、ホルモンバランスの変化などが腎臓へ影響を及ぼす可能性を考慮し、もう少しこまめにチェックする場合があります。

初期観察で意識される主なポイント

  • 血尿の推移(顕微鏡的なのか、肉眼的なのか)
  • タンパク尿や血圧に変化がないか
  • 体格変化や全身状態に大きな影響が見られないか

長期フォローアップと生活管理

初期観察を経て安定している場合は、年1回~2回程度の定期検査で十分と判断されることもあります。

長期にわたって血尿が続いても、日常生活に支障がなければ無理に治療を増やす必要はないとされるケースが多く、血圧や体重管理、塩分制限などの生活習慣改善によって腎臓を保護することが大切です。

生活管理を継続しながら問題が生じれば、再度医療機関に足を運んで検査を受け、必要な治療を検討する流れとなります。

長期フォローアップと主なチェック項目

チェック項目意味チェック頻度(目安)
尿検査(血尿・タンパク尿)病状が安定しているか、腎炎合併していないか6か月~1年に1回程度
血圧測定腎保護のための血圧管理が適切か自宅測定 or 定期受診時
血液検査(クレアチニン、eGFR)腎機能低下が進んでいないか年1回程度
体重・BMI体重増加や肥満による腎負担リスク確認日常管理として随時

腎機能低下が進む場合

長期の観察中に腎機能低下の兆候が認められたり、タンパク尿が増えたりした場合は、降圧薬の導入や他の腎疾患の併発を疑うための検査が行われ、新たな治療を開始することになったとしても、すぐに透析が必要になるケースは稀です。

多くは薬物療法と生活管理で腎機能の悪化を食い止めることが期待されます。

治療期間の目安

菲薄基底膜病においては、「完治を目指すための期間」という概念はあまり当てはまりません。長期の安定を保ちながら、必要に応じて治療を受けたり生活指導を徹底することが中心になります。

腎機能や血圧が安定している場合には、半永久的に治療薬を飲まない選択が可能なことも多いです。

治療期間の考え方

病状治療期間の目安主な対応
血尿のみ定期検査のフォローアップを続ける無治療で経過観察が基本
軽度タンパク尿状態安定まで数か月~1年程度の投薬を検討降圧薬を中心とした管理
高血圧合併長期的に降圧薬を服用する可能性塩分・体重管理も併用
腎機能低下個別の対応が必要、場合により長期治療へより詳細な検査と複数の薬物療法

治療期間は個人差が大きいため一律で定まっていないものの、良性経過が大半であり、長期にわたり安定した生活を送る方も数多くいます。

副作用や治療のデメリットについて

菲薄基底膜病の治療では、そもそも積極的な薬物療法を行わない例が多いですが、高血圧やタンパク尿を合併した際には薬剤を使用することがあります。

薬物療法を選択すると、副作用やデメリットがあることは否定できませんが、医師の指示のもと慎重に使用すれば多くの場合、安全に管理することが可能です。

降圧薬に伴う副作用

ACE阻害薬やARBは腎保護作用が期待される一方で、まれに腎機能が急に悪化したり、高カリウム血症を引き起こすことがあり、また、ACE阻害薬特有の副作用として空咳が生じる場合があります。

症状が強いときは医師に相談して薬の変更や減量を検討してもらうことが必要です。

主な降圧薬の副作用

薬剤区分代表的な副作用対応策
ACE阻害薬空咳、稀に腎機能悪化、高カリウム血症咳が強い場合はARBへ変更、高カリウム対策
ARBめまい、稀に腎機能悪化、高カリウム血症低血圧症状に注意しながら投与量を調整
カルシウム拮抗薬頭痛、顔面紅潮、下肢のむくみ副作用が顕著な場合は別の薬剤に切り替え

薬物治療の継続負担

菲薄基底膜病の場合、血尿があっても深刻な合併症がない限り薬を使わないことも多いですが、降圧薬が必要になると数年単位で続けるケースもあります。

長期間薬を飲み続けることへの抵抗感や費用負担はあるかもしれませんが、血圧が安定すれば腎保護効果が高まり、将来的なトラブルを防ぎやすくなるというメリットがあります。

治療せずに放置するリスク

血尿が顕在化していても、治療までは至らない例が多い菲薄基底膜病ですが、高血圧やタンパク尿などが見られるにもかかわらず放置すると、腎機能低下が進むおそれがあります。

一度失われた腎機能を回復させるのは難しいため、少しでも変化を感じたら適切に対処していく姿勢が大切です。

治療を放置した場合に想定されるリスク

  • 高血圧が進行し全身の血管に負担がかかる
  • タンパク尿の増加による腎機能の持続的ダメージ
  • 疲労感やむくみなどの症状が悪化
  • まれに他の腎疾患を見落として重症化

副作用を最小限にする工夫

適正な薬剤選択や用量調節、定期的な血液検査で副作用リスクは大きく減らせます。医療スタッフと相談しながら、万が一異変を感じたときは早めに伝えてください。

副作用が強いときは薬の変更や休薬を検討できる場合もありますし、日頃から食事や運動を気をつけることで薬の量を減らせることも考えられます。

副作用軽減のポイント

対策具体例
投薬開始時の慎重な設定低用量から開始して身体の反応を観察する
定期モニタリング血液検査(クレアチニン、カリウムなど)や血圧測定を計画的に行う
生活指導の徹底塩分制限、適度な運動、水分バランスの管理など
症状出現時の早期相談副作用を感じたら我慢せず受診して薬剤変更を検討する

薬物療法の恩恵とデメリットをしっかりと理解することで、不安を減らしながら治療を継続しやすくなるでしょう。

菲薄基底膜病(良性家族性血尿)の保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

検査費用の目安

主な検査にかかる自己負担費用

検査内容自己負担の目安(3割負担)コメント
尿検査200円~1,000円程度検査項目数によって変動
血液検査1,000円~2,000円程度腎機能・電解質などをまとめて実施する
超音波検査2,000円~3,000円程度腎臓の形態・合併症の有無を確認

腎生検など特殊な検査を行う場合は検査入院が必要となるケースもあり、その場合はさらに費用がかかりますが、頻繁に行われるものではありません。

治療薬にかかる費用

菲薄基底膜病で降圧薬などを使う場合も、基本的に保険適用で、薬の種類や用量によって費用は変動しますが、1か月あたり2,000円前後から数千円程度になることが多いです。

降圧薬治療の費用

  • ACE阻害薬またはARB1種類の処方で月2,000円前後~
  • 複数の薬を併用すると3,000~5,000円程度になることもある
  • 定期的な通院で処方を受け、効果や副作用を確認しながら使用を継続する

定期的な診察費

菲薄基底膜病の管理では、数か月から半年ごとに定期検査を行うことが多く、診察料や検査料がその都度かかります。軽度で安定している場合でも、年1回程度は受診し、状態をチェックしておきましょう。

診察頻度と費用バランス

診察・検査頻度自己負担目安(3割負担)コメント
3か月ごと2,000~4,000円程度/回血液・尿検査と診察費
6か月または年1回2,000~5,000円程度/回生活習慣の再確認と簡易な検査
腎生検や専門的検査数万円以上になる可能性あり必要なケースは少ないが、判断時は医師と詳細相談

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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