メサンギウム増殖性糸球体腎炎

メサンギウム増殖性糸球体腎炎

メサンギウム増殖性糸球体腎炎とは、糸球体のメサンギウム領域に炎症や細胞増殖が生じることで、血尿やタンパク尿など腎機能の異常が起こる病気疾患です。

慢性の経過をたどることが多いため、定期的な検査を通じて腎機能を把握しながら治療を継続します。

自覚症状が乏しい時期が長く続くこともありますが、実際には腎臓の組織レベルで炎症が進行しているケースもあるため、血尿やむくみなどの初期のサインが見られた場合には早期の受診が望ましいです。

急激に悪化するタイプと、ゆっくりと経過するタイプがあり、それぞれの病態に応じた治療方法が選ばれます。

目次

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の病型

メサンギウム増殖性糸球体腎炎は、糸球体のメサンギウム細胞が増殖し、炎症や免疫反応が起こることで腎機能に影響を及ぼす病気です。

特徴的な所見として、糸球体のメサンギウム領域に細胞や免疫複合体が蓄積しやすい点が挙げられ、これによって血液ろ過の仕組みが乱れる場合があります。

メサンギウム細胞の増殖パターン

メサンギウム細胞が増殖して糸球体の構造が変化すると、毛細血管の配置や血液の通過が一部阻害される可能性があります。通常、腎生検で得られた組織を顕微鏡で観察すると、メサンギウム細胞や基質が増加しているかどうかを確認できます。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎における代表的な組織所見

組織所見内容
メサンギウム領域の細胞増殖メサンギウム細胞と基質が増加して糸球体全体が密になる
免疫複合体の沈着IgAやIgMなどの免疫グロブリンがメサンギウム部位に集まる
毛細血管の狭窄増殖した細胞や基質の圧迫で血管が狭まる可能性
軽度の硬化像長期にわたる炎症で部分的に硬化が生じるケース

メサンギウム部位の増殖がどの程度進んでいるかによって、治療の積極性や使用する薬剤の選択が異なるため、腎生検の結果を詳細に評価することが重要です。

グローバル型と局在型

メサンギウム増殖性糸球体腎炎には、糸球体全体が均一にダメージを受ける「グローバル型」と、糸球体の一部分のみが影響を受ける「局在型」があります。

グローバル型では複数の糸球体にわたりメサンギウムの増殖が認められ、病変が広範囲に及ぶため血尿やタンパク尿の程度が強くなる傾向があります。

局在型の場合は病変が一部の糸球体に留まることが多く、症状が軽度のまま経過するケースも見られますが、局在型でも時間の経過とともに拡大することがあるため油断は禁物です。

免疫学的背景の違い

メサンギウム増殖性糸球体腎炎では、免疫学的背景としてIgA、IgM、IgGなどの免疫グロブリンの沈着パターンが異なります。

IgA優位の場合、IgA腎症との鑑別が必要になり、IgMが多いタイプやC3(補体成分)の沈着が顕著なタイプなどもあります。

主な免疫グロブリン沈着パターン

免疫グロブリン典型的な特徴
IgAIgA腎症に近い病態になることがある
IgMメサンギウム増殖性糸球体腎炎で比較的よく見られる
IgG一部の症例で補体とともに沈着
C3炎症と補体活性化の関連が示唆される

免疫学的な背景の違いは、発症メカニズムや予後に影響する可能性があるため、腎生検結果を総合的に検討し、病型を把握した上で治療戦略を立てることが必要です。

他の糸球体腎炎との比較

メサンギウム増殖性糸球体腎炎と類似した疾患としてIgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。

IgA腎症では、IgAがメサンギウムに沈着することが決定的な特徴で、膜性増殖性糸球体腎炎は内皮下あるいは基底膜に免疫複合体が沈着することが特徴です。

疾患名主な沈着物質主な特徴
メサンギウム増殖性糸球体腎炎メサンギウム領域へのIgMや補体血尿と軽度~中等度のタンパク尿
IgA腎症IgA沈着上気道感染後の血尿、慢性経過
膜性増殖性糸球体腎炎内皮下・基底膜への免疫複合体低補体血症を伴いやすい

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の症状

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の症状は、初期には目立たないことが多いため、健診などで血尿やタンパク尿が見つかって初めて病気を疑うケースが多いです。

一方で、急性症状が強く出る場合もあり、全身の倦怠感やむくみ、尿量の減少などが見られて受診に至ることもあります。

血尿の特徴

血尿には、目で見てわかる肉眼的血尿と、検査でのみ判明する顕微鏡的血尿があります。メサンギウム増殖性糸球体腎炎では顕微鏡的血尿の状態が長期にわたって続きやすく、肉眼的血尿が出ない場合も少なくありません。

血尿に関して留意すべき点

・肉眼的血尿は淡い赤色や茶褐色の場合がある
・タンパク尿と同時に確認されることが多い
・顕微鏡的血尿は症状がはっきり出にくく、発見が遅れることがある

定期的な尿検査で血尿の有無をチェックすることが病状の早期発見に役立つことがあり、尿の状態を把握するうえでは、自宅でも排尿時の色調や尿量を観察しておくと、異変に気づきやすいです。

タンパク尿や浮腫

血尿だけでなく、タンパク尿が持続的に確認される場合もメサンギウム増殖性糸球体腎炎の疑いがあります。

タンパク尿の程度は軽度から中等度のことが多いですが、まれに高度のタンパク尿を伴ってネフローゼ症候群に近い病態を呈するケースもあります。

タンパク尿が増えると血漿中のアルブミンが低下し、血液中の水分が血管外に漏れ出しやすくなるため、むくみ(浮腫)が生じる可能性があります。

タンパク尿の程度と身体的兆候

タンパク尿の程度目安身体的兆候
軽度1g/日以下自覚症状に乏しい
中等度1~3g/日前後若干のむくみや疲労感
高度3g/日超目や足の強いむくみ、体重増加

タンパク尿の程度は病状を知る指標になりますが、浮腫などの症状が出ない場合でも進行している可能性があるため注意が必要です。

全身倦怠感や血圧上昇

腎臓の機能低下は、老廃物や余分な水分をうまく排出できない状態を招き、全身の疲労感につながることがあります。

進行すると血圧が上がりやすくなるケースもあり、高血圧が腎臓の負担をさらに増やす悪循環に陥ることがあるため、血圧管理が大切です。

高血圧が続くことで起こりうる影響

・腎臓の微小血管にさらなるストレスが加わり、糸球体の損傷が進む
・心臓や血管への負担が高まり、動脈硬化のリスクが増す
・倦怠感や頭痛が強くなり、集中力や運動能力が落ちる

血圧が高めの方は、定期的に血圧を測定しながら腎臓の状態もチェックすることが大切です。

腎不全への進行リスク

メサンギウム増殖性糸球体腎炎は、ゆるやかに進行しながら慢性腎臓病(CKD)のステージを悪化させる可能性があります。

無症状のまま長期間経過して、気づいたときには腎機能が大きく下がっているケースも見られるため、定期的な尿検査と血液検査で早期に介入し、進行を抑えることが重要です。

慢性腎臓病のステージ分類

CKDステージGFR値概要
G190以上腎機能正常または高値
G260~89わずかな腎機能低下
G3a45~59軽度~中等度の腎機能低下
G3b30~44中等度~高度の腎機能低下
G415~29高度の腎機能低下
G515未満末期腎不全

メサンギウム増殖性糸球体腎炎は適切な治療と生活管理を行えば悪化を食い止められる場合があるため、症状を軽視せず、早めの対応を心がけてください。

原因

メサンギウム増殖性糸球体腎炎は、さまざまな原因によって糸球体のメサンギウム領域に炎症や免疫反応が起こることで発症すると考えられています。

特定の感染症や自己免疫の異常が関係するケースもあり、原因を追究することで治療方針を立てやすくなる場合があります。

免疫学的要因

多くの場合、免疫複合体がメサンギウムに沈着することが病変を引き起こすメカニズムの基本です。

体内で産生された免疫複合体(抗原と抗体が結合したもの)がメサンギウム部位に集まり、局所的な炎症や細胞増殖が誘発されると推測されています。

自己免疫疾患を有する方や、慢性炎症を抱えている方は、こうした免疫学的異常が起こりやすい傾向があります。

免疫複合体が腎臓に沈着する流れ

・血中に抗原と抗体が結合した複合体が存在する
・これらの複合体がメサンギウムに集まりやすい状況が続く
・メサンギウム細胞が反応して増殖や炎症を起こす
・糸球体全体の構造やろ過能力に影響が及ぶ

免疫学的要因が大きく関わる点が、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の特徴です。

感染症との関連

慢性の感染症、例えば慢性扁桃炎や慢性上咽頭炎、ウイルス性肝炎など、長期間にわたる持続感染が免疫複合体の形成を助長する可能性があります。

感染症との関連が疑われる場合は、その感染源をコントロールすることが病態の改善につながる場合があります。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎と関連が示唆される主な感染症

感染症関連の可能性
慢性扁桃炎IgAの産生亢進による腎障害
B型肝炎免疫複合体の形成を助長
C型肝炎クリオグロブリン血症と関連するケース
慢性上咽頭炎咽頭部の慢性炎症が免疫刺激を継続

感染症を合併している方は、先に感染症の治療や管理を行うことで、腎炎の活動性を抑えられる可能性があり、総合的なアプローチが必要です。

遺伝的素因

遺伝的要因によって発症リスクが高まる可能性も考えられています。同じ家系内で糸球体腎炎を起こしている方が複数いる場合は、何らかの遺伝的素因が存在することもありますが、必ずしも親から子へと明確に遺伝するわけではありません。

複数の遺伝子が関与する多因子遺伝的な様相を呈しているケースも想定されます。

遺伝的素因が疑われる方でも、生活習慣の見直しや感染症の予防などの対策を講じることによって、発症や進展を遅らせることが可能な場合があります。

環境要因と生活習慣

過度なストレスや不規則な生活習慣が免疫バランスを崩し、結果的に腎炎の悪化につながる可能性が指摘されています。

睡眠不足や過労、塩分過多の食生活は血圧の上昇や免疫機能の低下を招くことがあるため、適度な休養と栄養バランスの良い食事、適度な運動が重要です。

生活習慣上の注意点

  • 塩分を控えめにした食生活を心がける
  • 定期的に有酸素運動を行い、体重管理や血圧管理に取り組む
  • 喫煙習慣がある場合は早めの禁煙を検討する
  • 十分な睡眠を確保し、疲労を溜め込まないようにする

環境要因や生活習慣に配慮したうえで、原因となりうる要素を可能な限り軽減することが腎機能の保護につながると考えられます。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の検査・チェック方法

メサンギウム増殖性糸球体腎炎を診断するためには、尿検査や血液検査をはじめとする複数の検査を組み合わせて行い、最終的には腎生検による組織診断が行われることが多いです。

症状が軽度な段階では、一般的な健康診断で偶然に血尿やタンパク尿が見つかることもあります。

尿検査

尿検査は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎を含む腎疾患全般のスクリーニング検査として非常に重要です。尿蛋白定性、尿潜血検査、尿沈渣などを確認し、異常がある場合にさらなる検査を実施して診断の精度を高めます。

尿検査で確認できる主な所見と意義

尿検査項目意義
尿蛋白定性タンパク尿の有無を簡易的に把握
尿潜血血尿を早期発見する指標
尿沈渣赤血球円柱など、腎障害特有の沈渣を確認
比重・pH尿濃縮力や酸性度の参考

尿検査で明らかな異常が認められた場合、検査頻度を増やしたり、さらに詳しい検査を追加したりする流れにつながります。

血液検査

血液検査では、腎機能と全身状態を総合的に評価します。特にクレアチニンや尿素窒素(BUN)などの数値を確認し、GFR(糸球体濾過量)を推定することで、腎臓の働きがどの程度保たれているかを把握します。

免疫学的検査としては、IgA、IgG、IgMといった免疫グロブリン値や補体価(C3、C4)などを測定し、免疫異常の有無を探ることが可能です。

血液検査で重視される主な指標と、異常が疑われる場合の解釈

指標正常範囲の一例異常値の例
血清クレアチニン男性:0.6~1.2mg/dL 女性:0.5~1.0mg/dL上昇で腎機能低下を示唆
BUN10~20mg/dL上昇が顕著であれば腎不全の可能性
IgA100~400mg/dL程度高値が続けばIgA関連腎炎などを考慮
C370~150mg/dL程度低下で補体の消費を示唆

画像検査

腎エコー(超音波検査)によって、腎臓の大きさや形状、腫れや萎縮の有無を非侵襲的に確認できます。

腎生検を行う際は、超音波ガイド下で針を刺して組織を採取する方法をとることが多いため、超音波検査は欠かせない手段です。

さらに詳細な評価が必要な場合はCTやMRIで腎臓の形態や周囲組織の状態を調べるケースもありますが、メサンギウム増殖性糸球体腎炎の診断に直接つながるのは腎生検が主となります。

腎生検による確定診断

腎臓の疾患を正確に特定する最も有力な方法が腎生検です。腎生検では、細い針を使って腎臓の一部組織を採取し、光学顕微鏡や免疫染色、電子顕微鏡を用いて評価します。

メサンギウム領域への免疫グロブリン沈着や細胞増殖の程度、他の糸球体病変があるかどうかを詳細に把握することで、正しい治療方針を立てる材料が得られます。

腎生検の流れ

  • 超音波で腎臓の位置を確認しながら穿刺部位を選ぶ
  • 局所麻酔を行い、腎臓に針を刺して組織を採取する
  • 採取した組織を病理学的検査に回して顕微鏡観察を行う
  • 入院または半日程度の観察を経て安全性を確認する

腎生検における合併症リスクは低いですが、少量の出血などが起こる可能性があるため、術後の安静と観察が重要です。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療方法と治療薬について

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療は、炎症や免疫反応をコントロールしつつ、腎機能を維持することが主な目的です。

軽度の病態であれば経過観察を主体とする場合もありますが、血圧やタンパク尿、免疫学的パラメータを考慮して治療を積極的に進めることも検討されます。

免疫抑制療法

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の多くは免疫複合体の沈着が原因と考えられるため、免疫抑制薬を用いて過剰な免疫反応を抑える戦略をとることが多いです。

ステロイド(プレドニゾロンなど)や免疫調整薬(シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルなど)が用いられ、病態や副作用リスクを見比べながら投与量や期間を調節します。

代表的な免疫抑制薬の特徴

薬剤名主な作用投与形態
プレドニゾロン強力な抗炎症作用内服
シクロスポリンT細胞活性化の抑制内服
タクロリムスカルシニューリン経路の阻害内服
ミコフェノール酸モフェチルDNA合成阻害によりリンパ球増殖を抑制内服

これらの薬剤には感染症リスクの増加や、糖尿病や骨粗鬆症などの副作用が生じる可能性があるため、投与中は定期的な血液検査や身体診察で経過を観察しながら進めることが大切です。

降圧薬の使用

高血圧が腎機能悪化の大きな要因になるため、適切な血圧コントロールも欠かせません。ACE阻害薬やARBなどの降圧薬を用いることで、腎臓の糸球体内圧を下げ、タンパク尿を減らす効果が期待できます。

  • ACE阻害薬(エナラプリル、リシノプリルなど)
  • ARB(ロサルタン、バルサルタンなど)
  • カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)
  • 利尿薬(フロセミドなど)

降圧薬を個別に組み合わせて処方することもあり、血圧だけでなくタンパク尿の推移も見ながら調整します。

食事療法や生活指導

腎臓への負担を減らすため、医師や管理栄養士による食事指導が行われ、特に塩分制限とタンパク制限が推奨されるケースが多く、軽度の病状であっても高血圧やむくみがみられる場合は、厳格な減塩が大切です。

また、肥満や喫煙は腎障害を進行させる要因と考えられるため、適度な運動や禁煙指導が行われる場合もあります。

腎臓を保護するために推奨される食事と注意点

食品・栄養素ポイント
塩分1日6g未満を目安に減塩
タンパク質腎機能によって摂取量を調整
カリウム腎不全が進むと過剰摂取を避ける
水分医師の指示に従いすぎない・少なすぎない適量を守る

食事療法の目安は病状や個人差によって異なるため、専門家の意見を参考にしながら無理のない範囲で継続することが大切です。

感染症対策

免疫抑制薬を使う場合は、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるリスクが増すため、日ごろの体調管理が重要です。

うがいや手洗い、混雑する場所への長時間滞在を控えるなど、基本的な感染防止策を積極的に行うとともに、発熱や咳などがあれば早めに受診する姿勢が必要になります。

免疫機能を抑える治療が長期化する可能性もあるため、定期的なワクチン接種などの検討が行われる場合があります。

治療期間

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療期間は、病状の重症度や反応度合いによって大きく変わります。

早期発見と治療方針がマッチした場合は比較的短期間で安定に向かうこともあれば、再燃を繰り返しながら長期にわたって管理を行うケースもあります。

急性期から慢性期までの流れ

急性期に症状や腎機能悪化が顕著な場合は、ステロイドや免疫抑制薬の投与量を増やして集中的に治療を行い、その後ゆっくりと減量していく流れが一般的です

。急性期を乗り越えたあとも、完全に炎症が鎮静化しているかどうかを血液検査や尿検査でモニタリングし、再燃の徴候があれば再度投与量を調整します。

、急性期から慢性管理期に移行する際の流れ

  • 血尿やタンパク尿が急激に増加 → 免疫抑制薬の積極的投与
  • 腎機能が安定に向かったら徐々に薬剤を減量
  • 血圧や尿蛋白を定期チェックし、微妙な変化を把握
  • 必要に応じて薬の種類を変更または追加

このように、治療期間は症状の沈静化と再燃リスクのバランスを見ながら柔軟に決まります。

治療効果の判断

治療効果を判断する材料として、尿中タンパク量や顕微鏡的血尿の状態、血清クレアチニン値、免疫学的指標の変動などを総合的に評価します。

腎生検を再度行い、組織レベルで炎症の度合いが改善しているかを確認する場合もありますが、体への負担を考慮して、再検査のタイミングを慎重に検討することが多いです。

治療効果の評価に用いる主な指標

指標改善が認められる場合
尿タンパク量大幅に減少し、微量レベルに近づく
血尿肉眼的血尿が消失し、顕微鏡的血尿も軽減
腎機能血清クレアチニンやeGFRが正常範囲または安定
免疫グロブリン過剰だったIgMやIgA値が低下傾向

指標が一定期間安定すると、治療の継続が奏功していると判断しやすくなります。

再燃とリラプスへの対応

メサンギウム増殖性糸球体腎炎は、症状が一時的に治まっても何らかのきっかけ(感染症やストレスなど)で再燃する可能性がある疾患です。

再燃が起きると、再び血尿やタンパク尿が増加したり、腎機能が低下に転じたりするため、早めの薬剤調整や生活指導が求められます。

リラプスを防ぐためには、ある程度の期間にわたって免疫抑制薬や降圧薬を継続し、経過を見守る姿勢が必要です。

長期管理の重要性

血液検査や尿検査で問題が認められなくなっても、短い期間で薬を完全に中止すると再発リスクが高まることがあるため、医師の指示に従った計画的な減量スケジュールが大切です。

慢性腎臓病(CKD)の観点からみても、腎機能が悪化しやすい時期を見逃さないように定期受診を続け、治療期間を短縮するよりも、安定した状態を長期間維持することに重点を置きます。

メサンギウム増殖性糸球体腎炎薬の副作用や治療のデメリットについて

メサンギウム増殖性糸球体腎炎の治療で使用される薬剤は、効果を期待できる一方で、副作用やデメリットを伴うことがあります。

ステロイドの副作用

ステロイド(プレドニゾロンなど)は強力な抗炎症作用を持つため、急性期の腎炎治療や再燃時のコントロールに多用されますが、長期投与による副作用が問題になることがあります。

骨粗鬆症や高血糖、易感染性、消化性潰瘍などが挙げられ、これらのリスクを下げるためには投与量や期間に注意を払い、必要に応じて骨粗鬆症予防の薬剤を併用する場合もあります。

ステロイドの代表的な副作用と対策例

副作用対策例
骨粗鬆症ビタミンDやカルシウムの補充
高血糖血糖値の定期モニタリングと食事管理
易感染性手洗いやうがいなどの感染予防と早期受診
胃腸障害必要に応じて胃酸抑制薬を使用

ステロイドは減量過程でも離脱症状を起こすことがあるため、医師の指示に沿って段階的に量を調整することが大切です。

免疫抑制薬による感染症リスク

シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬を使用すると、Tリンパ球など免疫細胞の働きが抑えられるため、一般的な風邪ウイルスから細菌感染まで、幅広い感染症にかかりやすくなることが懸念されます。

さらに、帯状疱疹やカンジダ症の発症リスクが高まる可能性もあるため、発疹や発熱、皮膚のただれなど、少しでも異変を感じた場合は早めの対応が必要です。

免疫抑制薬使用中に注意したい点

  • 適切なワクチン接種の検討(不活化ワクチンが中心)
  • 発熱時には自己判断で解熱剤だけに頼らず、医師に相談して原因を探る
  • 外出後の手洗い、うがい、マスク着用などの基本的な衛生管理
  • 同居家族や周囲で感染症が流行している場合、不要な接触を最小限にする

免疫抑制薬による効果とリスクを比べて、自身のライフスタイルや職場環境に応じた工夫も求められます。

降圧薬や利尿薬の副作用

腎臓保護の目的で使用される降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)や利尿薬(フロセミドなど)には、低血圧や電解質異常、脱水症状などの副作用が起こる場合があります。

とくにカリウムやナトリウムのバランスが崩れて不整脈につながる可能性もあるため、定期的に血液検査を行いながら、薬の調整を受けることが不可欠です。

降圧薬の代表的な副作用と対処法

降圧薬副作用対処法
ACE阻害薬空咳、低血圧、高カリウム血症必要に応じてARBへ切り替え
ARB低血圧、高カリウム血症血圧の段階的調整とカリウム摂取量管理
利尿薬脱水、低カリウム血症適切な水分補給と電解質管理

血圧が適正範囲内であれば、腎臓の機能を守る効果が期待できますが、必要以上に下げすぎると腎臓に十分な血流が届かないリスクがあるため、こまめなモニタリングが大切です。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

検査費用の目安

保険適用後のおおまかな検査費用

  • 尿検査と血液検査の組み合わせ:約1,000~2,000円前後
  • 超音波検査:約1,500~3,000円前後
  • CTやMRIなどの画像検査:約3,000~7,000円前後
  • 腎生検(入院期間による差が大きい):合計で数万円程度

検査の回数や内容によって大きく変動します。

治療薬の費用

免疫抑制薬やステロイド、降圧薬などの治療薬は、種類や投与量によって費用が異なります。たとえば、ステロイド剤は比較的安価ですが、シクロスポリンやタクロリムスといった免疫抑制薬はやや高額になるケースがあります。

薬剤分類1か月分の自己負担額の例
ステロイド1,000~2,000円前後
シクロスポリン3,000~6,000円前後
タクロリムス3,000~7,000円前後
ミコフェノール酸モフェチル4,000~8,000円前後
降圧薬(ACE阻害薬・ARBなど)1,000~3,000円前後

入院や通院にかかる費用

腎生検や病態悪化による急性期管理のために入院が必要な場合、入院費やベッド代などが追加でかかります。入院期間が短期間で済むケースもあれば、病状が不安定で長期入院を余儀なくされることもあるため、入院費は個人差が非常に大きいです。

区分おおよその費用例
入院(1日あたり)数千円~1万円以上(食事療養費や差額ベッド代を含まない場合)
通院(診察と簡易検査)1回あたり2,000~5,000円程度
定期検査と診察内容によって5,000~1万円以上になることも

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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