高安動脈炎(大動脈炎症候群)

高安動脈炎(大動脈炎症候群)

高安動脈炎(大動脈炎症候群)とは、大動脈やその分枝に慢性的な炎症が生じる疾患で、発熱や血圧差、脈の触れにくさなど多彩な症状を起こす可能性があります。

若い女性に多い疾患という印象がありますが、男性や高齢者で発見されるケースもあり、検査と治療を検討することが重要で、放置すれば血管の狭窄や閉塞、動脈瘤など重い合併症につながる恐れがあります。

目次

高安動脈炎(大動脈炎症候群)の病型

高安動脈炎(大動脈炎症候群)は、大動脈自体やそこから分岐する主要な動脈に炎症が起こる病気ですが、炎症がどの部位に起こるかによっていくつかの型に分類できます。

分類によって症状の出方や合併症のリスクに違いがありますが、どの病型であっても早期発見と治療を意識することが大切です。

全身型と局所型の特徴

高安動脈炎には、大動脈の広範囲にわたって炎症が広がる全身型と、特定の部位だけに炎症が生じる局所型があります。全身型では複数の血管に問題が及ぶため、頭痛や手足の冷え、胸部痛など多面的な症状が現れやすいです。

一方で局所型は、炎症が限局される分だけ自覚症状を初期には感じにくい場合があり、気づいた頃には特定の動脈が狭窄または閉塞に近い状態になっていることがあります。

局所型の場合、症状が限定的に出るため受診が遅れがちです。たとえば左右の腕の血圧が明らかに違うなど、一部の血管だけに異常が出ていることが多く、医師もそれらの差異に注目して診断を行います。

  • 血圧が左右で大きく異なる
  • 手足が冷えやすい
  • 首を動かした際に違和感を覚える
  • 目まいや失神に近いふらつきが起こる

これらの症状が局所型の初期のヒントとなることがありますが、個人差が大きいため注意が必要です。

全身型と局所型の特徴の違い

分類炎症の範囲主な症状受診のきっかけ
全身型大動脈の広範囲に及ぶ発熱、倦怠感、頭痛、胸部痛など多彩全身的な体調不良や血圧異常
局所型一部の分枝に限局する血圧差、手足の冷え、局所的な痛み左右の脈の違いや四肢の冷えの自覚

血管部位による分類

高安動脈炎は、病変がどの血管に生じるかによって詳細に分類されることもあり、大動脈の上行部や弓部に炎症が見られるタイプや、下行大動脈から腹部大動脈にかけて炎症が広がるタイプなど、多様な分類方法があります。

こうした分類は診断や治療の方針を考えるうえで重要です。医師は画像検査や血液検査から判断して、どの血管がどの程度影響を受けているかを明確にします。

血管部位別の特徴としては、大動脈弓部に病変がある場合は頭部や上肢の血管にトラブルが出やすく、胸部大動脈から腹部大動脈にかけて炎症が及ぶと、下肢の冷えや腹部に関する症状が現れやすくなります。

年齢と性別による特徴的な病型

高安動脈炎は若い女性に多いイメージがありますが、実際には中高年や男性でも病型を問わず発症する可能性があります。

若年層では比較的早期に気づきやすい一方で、中高年層は高血圧や他の循環器疾患の影響で見過ごされることがあり、血管病変が進行して発見が遅れることもあります。

若い女性の場合、全身型として発熱や疲れやすさが前面に出て、血液検査で炎症反応が高い数値を示すことが多いです。男性の場合、局所型が多いという報告もあり、症状が限局しているため発見が遅れがちになる傾向があります。

年齢・性別による特徴

  • 若い女性に多いとされるが男性でも発症する
  • 中高年では別の動脈硬化疾患と重なることがある
  • 女性では全身症状(倦怠感や発熱など)が目立ちやすい
  • 男性では特定の血管の狭窄から局所症状が顕在化することがある

病型による合併症リスク

高安動脈炎では、炎症が長期に及ぶことで血管壁が変化し、動脈瘤ができたり血管が詰まったりするリスクが高まります。

全身型では広範囲に血管のダメージが進行し、心臓や腎臓など主要な臓器に負担がかかるリスクがあり、局所型でも、該当する血管に限局して大きな変形が起き重篤な合併症につながることがあります。

特に動脈瘤や高血圧は、大動脈炎の病型に関係なく合併するリスクがあるので、血圧管理や血管の状態チェックを継続して行うことが重要です。


高安動脈炎(大動脈炎症候群)の症状

高安動脈炎は「脈なき病」と呼ばれることもあるように、末梢の動脈の脈が触れにくくなることが特徴のひとつですが、それ以外にも全身的、あるいは局所的な症状が表れる可能性があります。

初期の段階では風邪のような症状と区別がつきにくいため、注意が必要です。

全身症状:発熱や倦怠感など

高安動脈炎の初期に多いのが、発熱や倦怠感、体重減少などの全身症状ですが、風邪やインフルエンザなどの感染症と似ているため、受診が遅れやすい要因です。

病気が進むと、患部の血管付近に痛みを感じる場合がありますが、初期には必ずしも見られません。病気初期に全身倦怠感と発熱が続いているとき、特に若い女性の場合は血液検査で炎症反応や免疫系の異常値を確認することが大切です。

医師は身体所見や家族歴を踏まえて診断に近づきます。

1つの目安として、次のような理由で「単なる風邪ではないかもしれない」と疑う場合があります。

  • 2週間以上続く微熱
  • 強い倦怠感や夜間の寝汗
  • 何となく腕が上がりにくい、脈が弱く感じる
  • 血圧を測ったときに左右で極端に異なる

こうした訴えから高安動脈炎を早期に発見できることがあります。

全身症状の例

症状見られるタイミング判断のポイント
微熱や発熱初期~中期長引く発熱と血液検査の炎症反応
倦怠感初期~中期体力低下、日常生活への支障
体重減少初期~中期食欲不振と合わせて検討
痛み(胸や背中)中期~後期炎症の進行に伴う血管痛

局所症状

高安動脈炎で最も特徴的とされるのが、脈拍や血圧の異常で、炎症が腕に行く動脈に及ぶと、左右の脈拍を触れたときに違いが出たり、血圧を測定したときに大きな差が出たりします。

ときには脈自体が触れにくくなることもあり、一般的には左腕の脈が触れにくいときに高安動脈炎を疑われるケースが多いです。

また、頸動脈や鎖骨下動脈など重要な血管に炎症が広がると、頭痛やめまいだけでなく、意識が遠のくような症状を感じる場合もあります。

こうした局所症状は病気が進むにつれて明確に現れることが多く、初期には軽度の血圧差しか確認できないことがあります。

局所症状のキーポイント

  • 左右の腕で血圧が20~30mmHg以上の差
  • 胸部や背部の脈拍が乱れる(動悸)
  • 髪を洗うなど腕を挙げる動作で疲れを感じやすい
  • 頸部に拍動の違和感が続く

進行度合いによる症状の変化

高安動脈炎は時間が経過すると炎症が血管壁を変化させ、血管が狭窄したり動脈瘤の形成が起こったりすることがあり、進行すると次のような症状が出る可能性があります。

進行ステージ主な変化具体的な症状
初期血管壁の炎症やむくみ微熱、倦怠感、腕のだるさ
中期血管狭窄の進行血圧差、脈の触知困難、頭痛、めまい
後期動脈瘤や高度な狭窄・閉塞胸部痛、失神、脳梗塞や心不全のリスクなど

炎症のピークが過ぎても血管の変形が残り、血流障害を引き起こすケースがあり高安動脈炎は慢性経過をたどることが多いため、症状の度合いや種類が変わっても、定期的なチェックが必要です。

症状が見過ごされやすい理由

高安動脈炎の初期症状は、発熱や倦怠感といった一般的な全身不調である場合が多く、日常生活で見過ごしがちです。また、たとえ脈や血圧に異常があっても、本人が慣れてしまい、検査を受けないまま過ごすことがあります。

中には肩こりや筋肉疲労と思いこんでしまい、医療機関で検査を受けるのが遅れる人もいます。

高安動脈炎の症状は多岐にわたるため、いくつかの症状が複合しているときや、長期間続いているときは自己判断せずに専門的な診断を受けることが重要です。


原因

高安動脈炎は免疫系の異常によって起こる自己免疫疾患のひとつと考えられており、感染症などによるものとは異なります。

ただし、どうして免疫が暴走して自分自身の血管を攻撃してしまうのか、確固たるメカニズムははっきり解明されておらず、いくつかの要因が複合的に作用して発症すると考えられています。

自己免疫機能の乱れ

高安動脈炎は血管炎に分類され、その中でも特に大動脈や大動脈から分枝する主要な動脈に炎症が及ぶ疾患です。免疫機能の乱れが原因と見なされ、体の防御機能が誤作動を起こして血管壁を攻撃する結果、炎症が起こると考えられています。

免疫に関わる細胞が血管壁に集まると、血管に浮腫や腫れが生じ、次第に血管の狭窄を招きます。このように自己免疫が絡むため、他の自己免疫疾患(リウマチなど)を持っている人で症状が重なりやすいという報告もあります。

自己免疫疾患と高安動脈炎の関連

疾患例共通点併発リスク
関節リウマチ免疫系が自己組織を攻撃する高安動脈炎との合併報告あり
全身性エリテマトーデス全身性自己免疫疾患血管炎症状との関連性が示唆
潰瘍性大腸炎炎症性腸疾患免疫機能の異常を伴う可能性

遺伝的素因と環境要因

高安動脈炎に特定の遺伝子の存在が関係していると指摘する研究もあり、一部の人は遺伝的な素因を持つ可能性がありますが、それだけで発症するわけではなく、何らかの環境要因が引き金となると考えられています。

ストレスや生活習慣、ウイルス感染などがきっかけで免疫が過剰反応を起こし、血管炎症へと発展するシナリオが推測されているものの、どの要因がどの程度影響しているかは個人差が大きく、未解明の部分が多いです。

ホルモンバランスの影響

高動脈炎は若い女性に多いという特徴から、女性ホルモンの動きや妊娠・出産と関連があるのではないかと考えられていて、ホルモンバランスの乱れが免疫系に影響し、炎症を助長している可能性があります。

ただし、必ずしも女性のみが発症するわけではなく、男性や中高年でも発症報告があります。

このように、原因には複数の要因が絡んでいることが推測され、医療現場では総合的に状況を捉えながら治療方針を決定します。

予防が難しい理由

インフルエンザや細菌感染のように、ワクチン接種や手洗いなどで直接予防できる疾患ではないため、日常的な健康管理の中で高安動脈炎を防ぐことは難しいです。

遺伝的素因や自己免疫異常の背景があるため、発症を完全に阻止するのは難しく、早期に発見して対処することが重要になってきます。

また、症状が出ないまま血管の炎症が進むケースもあるため、長引く疲労感や血圧差などを感じたときは早めに医療機関で検査を受けることが望ましいです。


高安動脈炎(大動脈炎症候群)の検査・チェック方法

高安動脈炎の診断では、血管の状態を詳しく調べる画像検査や血液検査が中心的な役割を果たし、初期症状だけでは判断が難しい場合が多く、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。

血液検査で炎症と免疫異常を確認

高安動脈炎を疑った際に行う基本検査のひとつが血液検査です。赤沈値(血沈:ESR)やC反応性タンパク(CRP)などの炎症マーカーが高値を示すことが多く、その他にも白血球数や免疫関連の自己抗体に異常が見つかる場合があります。

ただし、炎症値が高いからといって、必ず高安動脈炎というわけではありません。風邪や他の感染症でもCRPが高くなることがあり、高安動脈炎の場合は、慢性的に高値が続く傾向があります。

血液検査でよくチェックする項目

検査項目意味高安動脈炎での特徴
ESR(赤沈)炎症などで赤血球の沈降速度が変化する慢性的な炎症で上昇が持続しやすい
CRP炎症マーカーの代表高値が続くことが多い
白血球数感染や炎症時に増加急性期に増えることがある
免疫関連自己抗体などの異常有無を確認一部の患者で自己抗体が陽性

画像検査による血管の状態の把握

高安動脈炎の診断には、画像検査の情報が欠かせません。レントゲンだけでは詳細はわかりにくいので、CTやMRI、造影検査で血管の形態を詳しく調べます。

特にMRIやCT血管造影(CTA)では、大動脈やその分枝に狭窄や瘤があるかどうかを立体的に確認することが可能です。

近年はPET-CTなどで血管の炎症を可視化することも行われますが、全例に実施するわけではなく、主に炎症の活動性を評価したい場合や、ほかの検査で判断が難しいケースで選択されます。

画像検査の特徴

  • CT・CTA:血管の狭窄や瘤の有無を確認しやすい
  • MRI・MRA:被ばくを避けながら血管の状態を把握しやすい
  • PET-CT:炎症の活動性を評価するときに用いられることがある

血圧測定と脈拍チェックの重要性

高安動脈炎を疑うきっかけとして、左右の腕の血圧差や脈拍の違いが大きいことがあります。診察室で両腕の血圧を測定し、20~30mmHg以上の差があれば、医師は高安動脈炎の可能性を念頭に置きます。

さらに頸部や下肢の脈拍を触知し、その強さやタイミングを確認することも大切です。

簡単な初期スクリーニングとして、医療従事者が脈の触れ方を左右比較するだけでなく、患者自身が家庭用血圧計で左右の腕の血圧を測定し、継続的に記録をとることも、診断の精度を高める手がかりになります。

合併症の有無をチェックする検査

高安動脈炎による血管病変は、心臓や腎臓にも大きな負担をかけることがあり、心エコー検査や腎機能検査で合併症の兆候がないかを調べることがあります。

心エコー検査は大動脈弁の逆流や心臓自体の動きに異常がないかを確認し、腎機能検査や尿検査では血流が不十分になることで生じる異常を見つけられる方法です。

こうした検査を組み合わせて高安動脈炎の全体像を把握し、合併症のリスクも評価することで、治療計画を立案しやすくなります。


治療方法と治療薬について

高安動脈炎の治療は、炎症を抑えながら血管のダメージを最小限に食い止めることを目指し、主にステロイドや免疫抑制薬を使い、炎症の活動期をコントロールしながら症状や合併症を予防します。

血管が狭窄した場合や動脈瘤が形成される場合は、外科的な処置を検討することもあります。

ステロイド療法の基本

高安動脈炎治療の中心的な選択肢として、ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を用いる方法があり、ステロイドは強力に炎症を抑える作用があり、急性期の症状をコントロールするうえで重要です。

特に活動期が強いときに用いられ、高用量のステロイドを点滴あるいは内服で開始し、症状の改善や炎症マーカーの低下を確認しつつ徐々に減量していきます。

ステロイド療法の流れ

  1. 初期に中~高用量のステロイドを内服または点滴
  2. 炎症がおさまってきたら減量を開始
  3. 可能な範囲で低用量に移行し、長期維持療法を検討

ステロイドは炎症を抑えながら合併症リスクを低減するうえで強い味方となりますが、副作用もあり、注意深く投与量を調整する必要があります。

ステロイド療法の利点と課題

主要な利点注意すべき課題
強力な抗炎症作用副作用(糖尿病、骨粗鬆症など)
急性期の症状改善に有用長期投与時の感染症リスク
他の薬剤との併用で効果増強可能減量スケジュールの慎重な設計が必要

免疫抑制薬の併用

ステロイドだけでは炎症のコントロールが難しい、あるいはステロイドの副作用を軽減したいときに、メトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制薬を併用することがあり、免疫の過剰反応を抑え、長期管理を安定させる役割を担います。

ただし、免疫抑制薬を使用すると感染症のリスクが上がるため、定期的な血液検査や医師との相談が欠かせません。ステロイドと免疫抑制薬をうまく組み合わせることで、薬の用量を抑えつつ良好なコントロールを狙う方針をとることがあります。

免疫抑制薬の活用ポイント

  • ステロイドの減量をサポートする役割がある
  • 免疫機能を抑えるので感染症に注意
  • 長期服用で肝機能障害や骨髄抑制に留意

外科的治療の検討

高安動脈炎が進行して動脈瘤が大きくなったり、血管の狭窄が高度になった場合、バイパス術やステント留置などの外科的処置を検討することがあります。

特に胸部や腹部の大動脈に大きな瘤が生じて破裂リスクが高いと判断された場合は、手術による修復が必要です。

また、狭窄が原因で臓器や四肢への血流不足が顕在化し、日常生活に支障をきたす状況なら、血管内治療(ステントや血管形成術)を選択することもあります。

外科的治療を実施するかどうかは、病変の位置や患者さんの全身状態、炎症の活動性などを総合的に検討して決定します。

リハビリや生活習慣の見直し

薬物や外科的処置だけでなく、日常生活の中で血圧コントロールや適度な運動、栄養バランスへの配慮が必要です。

ステロイドの長期使用は血糖値の上昇や骨粗鬆症のリスクを高めるため、食生活の見直しや運動を心がけると副作用を軽減しやすくなります。

血流をスムーズに保ち、心肺機能を維持するためにも、ウォーキングや軽めのストレッチを取り入れることが推奨されるケースがあります。

医師や理学療法士と相談しながら、無理のない範囲でリハビリを継続すると、長期的な体力維持に役立ちます。


高安動脈炎(大動脈炎症候群)の治療期間

高安動脈炎の治療は短期集中で終わるものではなく、炎症の活動性をコントロールしながら長期にわたって経過観察する必要があります。

個人差が大きく、一概に「何年」と断定することは難しいですが、炎症が落ち着くまでに数カ月から数年かかります。

炎症活動期と寛解期

高安動脈炎は活動期と寛解期を繰り返す特徴があり、活動期には炎症が強く、ステロイドの用量を増やしてでも炎症を抑えることが必要です。

一方、寛解期に入れば薬を減量するなどして体への負担を減らしつつ、定期的な検査で再燃リスクをチェックします。

活動期と寛解期の移行は個人差がありますが、治療を始めてからおよそ数カ月以内に症状が落ち着くケースもあれば、なかなか炎症が抑えきれず1年以上続くケースもあります。

おおまかな治療期間

治療開始~数カ月高用量ステロイドで炎症を抑える
半年~1年免疫抑制薬の併用・ステロイドの減量調整
1年以降寛解期に入れば維持量での管理、定期的な画像検査

個人差を生む主な要因

治療期間には以下のような個人差を生む要因があります。

  • 病気の進行度と炎症の強さ
  • 年齢や性別、基礎疾患の有無
  • 免疫抑制薬への反応性や副作用の出方
  • 生活環境やストレス、生活習慣

これらの要素によって同じ治療プランでも効果や再燃リスクが異なります。

長期的なフォローアップの必要性

高安動脈炎の特徴として、炎症が収まったと思っても数年後に再燃することがあり、長期にわたるフォローアップが必要となります。

医師は定期的に血液検査でCRPやESRなどの炎症マーカーをチェックし、画像検査で血管の狭窄や瘤の有無を確認しますが、患者さん自身も血圧や脈の異常を感じた場合は早めに受診することが推奨されます。

治療期間を短くできるかどうかは、早期発見や治療への反応度合いに大きく左右されるので、少しでも気になる症状があれば受診し、医師の指導のもとで治療と生活管理を継続すると、合併症のリスクを下げながら寛解を目指しやすいです。


高安動脈炎(大動脈炎症候群)薬の副作用や治療のデメリットについて

高安動脈炎の治療薬は、炎症をコントロールする目的でステロイドや免疫抑制薬といった免疫系に作用する強力な薬が中心になるため、副作用のリスクは無視できません。

副作用や治療面でのデメリットを知り、医師や薬剤師とよく相談しながら対処することが重要です。

ステロイドの副作用

ステロイドは高安動脈炎の症状を改善する反面、長期使用によって次のような副作用が出現しやすくなります。

  • 骨粗鬆症:骨量が減って骨折リスクが高まる
  • 糖尿病悪化:ステロイドは血糖値を上げる作用がある
  • 体重増加・むくみ:満月様顔貌(ムーンフェイス)と呼ばれる顔つきの変化
  • 感染症リスクの増加:免疫力が弱まる

副作用を軽減するために、カルシウムの摂取や運動で骨密度を保つ努力を行ったり、血糖コントロールに注意を払ったり、感染症予防に気を配る必要があります。

ステロイド使用に伴う主な注意点

副作用例予防・軽減策
骨粗鬆症カルシウム・ビタミンDの適度な摂取、運動
高血糖血糖値の定期的チェック、食生活の工夫
ムーンフェイスむくみ対策、適度な塩分制限
感染症リスク増加手洗いやうがい、感染源との接触を避ける

免疫抑制薬の副作用

免疫抑制薬は、免疫の過剰反応を抑える目的で使いますが、同時に正常な免疫機能も弱める可能性があるため、感染症にかかりやすくなったり、肝機能や腎機能に負担がかかったりすることがあります。

また、薬によっては血液中の白血球や赤血球などの値を大きく変動させ、貧血や易感染性が生じるので注意が必要です。

医師は定期的に血液検査を行い、異常があれば薬の種類や用量を見直します。薬の効果と副作用リスクのバランスを取りながら、できるだけ安定した治療を続けられるように調整します。

治療による生活の制限

ステロイドや免疫抑制薬の副作用対策として、感染を防ぐために人混みを避けたり、過度な運動を控えたりと、生活上の制限が出る場合があります。

特に骨粗鬆症のリスクが上がっている場合は、重い荷物を持つことを避けるなど、転倒や骨折につながりそうな行動への警戒が必要です。

日常生活の制限

  • 感染予防として人混みや生ものの摂取に注意
  • 骨粗鬆症のリスクがあるため過度な衝撃や転倒に注意
  • 定期通院や検査のスケジュール調整
  • 食事制限(塩分や糖分のコントロール)

治療デメリットと向き合う意義

副作用や生活制限などデメリットはありますが、高安動脈炎の炎症を抑え、血管のダメージや合併症を防ぐために薬物治療は重要です。

治療を受けなければ動脈瘤の発生や血管閉塞など、生命にかかわるリスクが高まる可能性があるので、医師や薬剤師と相談しながら、副作用対策を徹底することでリスクを低減できる場合も多いです。


高安動脈炎(大動脈炎症候群)の保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

ステロイドや免疫抑制薬の薬代

プレドニゾロンを1か月分内服で処方した場合、医療保険(3割負担)で2,000~3,000円程度ですが、用量が増えれば費用も増加し、点滴ステロイドの導入が必要な場合はさらに費用がかさみます。

免疫抑制薬のメトトレキサートやアザチオプリンなども保険が適用され、同様に服用量や種類によって月ごとの費用に差が生じます。概算で3割負担の場合、5,000円前後です。

薬の種類1か月あたりの概算費用(3割負担)備考
ステロイド(内服)2,000〜3,000円程度用量や頻度で変動
免疫抑制薬3,000〜6,000円程度種類や体重、服用量で変化

画像検査や血液検査の費用

定期的に行うCTやMRI、造影検査には、検査ごとに数千円から数万円の費用がかかり、特に造影剤を使う検査は検査代が高くなる傾向があります。

保険適用後の自己負担額でも、CT検査で3,000~6,000円程度、MRI検査で5,000~10,000円程度、造影検査では1万円前後になるケースもあります。

血液検査は炎症マーカーや免疫の状態をチェックするため頻繁に行う可能性が高く、1回あたり2,000円前後の自己負担になることが一般的です。

  • CT検査:3,000~6,000円
  • MRI検査:5,000~10,000円
  • 造影検査:8,000~12,000円前後
  • 血液検査:1,000~2,000円程度

外科的処置や血管内治療の費用

バイパス手術やステント留置が必要な場合は、手術料・入院料などの費用が加わり、大動脈のバイパス手術は複雑で入院期間も長くなるケースがあるため、保険適用後でも数十万円の自己負担が生じます。

血管内治療でステントを入れる場合、ステントの種類にもよりますが、自己負担が10万円を超え、手術後にはリハビリも必要で、リハビリテーションの費用も加算されます。

治療法自己負担目安(3割負担)入院期間備考
バイパス手術数十万円程度2週間~数週間術式や部位により変動が大きい
ステント留置10万円以上の可能性1週間前後~使用するステントの種類で費用変化
合併症治療(心臓など)状況による病状による他の合併症の程度によって変化

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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