結節性多発動脈炎(PAN)とは、中小動脈を中心に血管の炎症と損傷が生じる疾患で、全身の臓器や組織にさまざまな症状が現れることが特徴です。
名称からもわかるように、多発的に結節状の病変が形成されることがあり、ときには重篤な合併症を引き起こすケースがあります。
病気について詳しく知ることで、早期に対応する意識を高め、適切な治療と生活上の対策を行いやすくなります。
結節性多発動脈炎(PAN)の病型
結節性多発動脈炎(PAN)の病型を正しく理解することは、個々の病態を見極める上で大切です。血管炎は多くの種類に分類されますが、PANはその中でもさまざまな動脈を侵すという特徴的な病態を持っています。
古典的な病型と特徴
結節性多発動脈炎は、基本的には中小動脈が標的となる炎症性疾患です。古典的には、腎臓や消化管、皮膚などの複数の臓器で炎症が起こり、血管がこぶのように膨らむ結節形成や動脈瘤が確認されることがあります。
病巣が多発しやすいのも特徴で、炎症が進行すると血管が狭窄し、血流が悪くなった領域の組織や臓器が虚血や壊死の状態になる可能性があります。
病型分類
病型分類 | 対象となる血管規模 | 主な特徴 |
---|---|---|
古典的PAN | 中小動脈が中心 | 動脈瘤や結節状病変が複数部位にわたる |
小血管炎の一部 | 細小血管も侵される場合あり | 臓器ごとの特徴的な炎症がみられることもある |
HBV関連PAN | B型肝炎ウイルス感染による | HBV感染と関連しながら動脈炎が発症する |
一口に「結節性多発動脈炎」と言っても、実際には炎症が及ぶ血管の種類や原因、ウイルスとの関連などで病型が異なり、治療内容にも違いが出てきます。
全身性のパターンと限局性のパターン
結節性多発動脈炎は全身の動脈に広がるパターンと、特定の臓器や部位に限局して炎症が起こるパターンがあります。
限局性の場合はその部位に集中して症状が表れやすく、全身性の場合は多様な症状が同時期または時期をずらして出る傾向がみられます。
全身性パターンの場合は腎臓や心臓、神経系などの複数の臓器が侵されるため、早期診断と治療が大切で、限局性の場合でも、局所の動脈炎が拡大すると全身的な問題に発展する可能性があるため、慎重な経過観察が必要です。
病型に応じた合併症の違い
古典的なPANは腎血管障害に代表されるように、腎臓や消化管の動脈に多くの病変を生じるパターンが多く報告されています。
一方、限局性のPANは脳血管や皮膚に炎症が偏る場合があり、脳出血や皮膚潰瘍などの合併症リスクが高まることがあります。
またHBV関連PANでは、血液検査でB型肝炎ウイルスに関連する異常値が認められる点が特徴的であり、この場合の治療方針はウイルス抑制と血管炎制御の二本立てが大切です
病型によっては炎症があまり強くない場合もあれば、非常に急速に悪化する場合もあるため、主治医の診断や検査結果と照らし合わせながら病状を管理する意識が必要になります。
病型を把握する意義
PANの病型は治療薬の選択や治療戦略を決定するうえで大切で、炎症の程度や分布、基礎疾患の有無などを総合的に評価したうえで、ステロイドや免疫抑制剤などを中心とする薬物療法を検討することが多いです。
また、動脈瘤を形成している場合には、破裂を防ぐための外科的アプローチや塞栓術が必要になることもあります。
病型と治療方針の関連
病型 | 治療方針の主軸 | 注意点 |
---|---|---|
古典的PAN | ステロイド、免疫抑制剤 | 動脈瘤のモニタリングが重要 |
HBV関連PAN | 抗ウイルス療法+免疫抑制剤 | ウイルス増殖抑制が最優先 |
限局性PAN | 局所治療+基礎薬物療法 | 炎症範囲の拡大を防ぐ |
結節性多発動脈炎(PAN)の症状
PANが疑われる背景には、多岐にわたる症状の存在があり、中小動脈を中心に炎症が生じることで血流障害が起こり、臓器ごとの機能障害が発生します。
単一の症状だけでは判断しにくいため、複数の症状が合わさっているかどうかを注意深く観察する姿勢が必要です。
初期に出やすい症状
PANの初期には、疲れやすさや微熱、体重減少などの全身症状が見られることが多いです。特に微熱や倦怠感、食欲不振など、どれも体調不良のサインとしては日常的に起こりうるものなので、見過ごされやすい面があります。
- 長期的な倦怠感や微熱
- 体重減少や食欲低下
- 皮膚の発疹や斑点
こうした症状が長期間続く場合、何らかの慢性炎症を疑い、医療機関への受診してください。
PANに多い初期症状
初期症状 | 概要 |
---|---|
微熱・倦怠感 | 風邪のような症状が長く続く |
体重減少 | 食欲低下や慢性炎症の影響 |
発疹 | 皮膚の紅斑や紫斑が現れることがある |
関節や筋肉の痛み | 四肢や関節部分に痛みやこわばりが生じる |
初期症状は非特異的であるがゆえに、原因不明の体調不良が続く場合には考慮する必要があります。
進行によって現れる症状の例
炎症が進むと、血管の狭窄や動脈瘤の形成が臓器の血流不足を起こし、より明確な臓器障害が見られる可能性があります。
腎臓に影響が及ぶと尿の異常や血圧の上昇、消化管に影響が及ぶと腹痛や消化不良、神経系に影響が及ぶとしびれや麻痺などの神経症状が出やすくなります。
- 腎機能障害による高血圧やむくみ
- 腹部痛や下痢、吐き気などの消化器症状
- 手足のしびれや感覚異常、脳血管障害
全身のさまざまな場所に症状が出るため、ほかの疾患と区別がつきにくい一面があります。
進行時に注意したい特徴
- 持続的な高血圧や蛋白尿が検査で判明する
- 皮膚に潰瘍や皮下結節が見える
- 心筋梗塞や狭心症と似たような胸部症状が出る
- 肝機能障害や呼吸障害を伴うケース
こうした症状が組み合わさるほど、PANを強く疑う材料になります。
皮膚や神経系の多彩な症状
皮膚症状としては、紅斑や紫斑、結節性の腫瘤が出現することがあり、押すと痛みを伴うことも少なくありません。
神経系に出る症状としては、末梢神経障害が代表的で、足先や指先のしびれ、感覚異常、筋力低下など、日常動作に影響を与える異常が起こり得ます。
脳血管に動脈炎が及んだ場合には、頭痛や意識障害、脳出血など急性かつ重篤な症状を引き起こす懸念があります。神経学的な症状は多様であり、早期に医師の診断を仰がないとさらに悪化することがあり、注意が必要です。
皮膚・神経症状の発現部位と特徴
症状の種類 | 主な発現部位 | 特徴 |
---|---|---|
皮下結節や紫斑 | 四肢や体幹 | 疼痛を伴う場合が多く、慢性化しやすい |
末梢神経障害 | 手先や足先など末端部 | 感覚麻痺や痛み、痺れが継続的に起こる |
中枢神経系症状 | 脳血管周辺 | 頭痛、意識障害、けいれんなど |
皮膚と神経に関連する異常が複合的に出現しやすい点は、PANの特徴のひとつです。
症状の変動と早期受診の大切さ
結節性多発動脈炎の症状は一時的に軽快したり、急に悪化したりと変動が激しいことが少なくありません。
通院のタイミングを逃してしまうと、急激な臓器障害が起こり得るため、症状の変化をこまめにメモするなどして医師に報告すると治療判断に役立ちます。
原因不明の発熱や倦怠感、皮膚異常や神経症状が長引く場合には、一度専門家の診察を受けることが重要です。
原因
結節性多発動脈炎(PAN)は、血管に対する自己免疫反応が大きく関与すると考えられていますが、複数の要因が絡み合う複雑なメカニズムを持っています。
自己免疫疾患のカテゴリーに属することが多いものの、一部ではウイルス感染との関連も示唆されています。
自己免疫反応と炎症
人体には、異物や病原菌に対抗するための免疫システムが備わっていますが、何らかのきっかけで自分自身の組織や血管を攻撃する自己免疫反応が起こる場合があります。
この過剰な免疫反応が血管壁に炎症をもたらし、中小動脈に強い炎症反応を誘発することがPANの発症メカニズムのひとつです。
自己免疫反応と血管炎の関連
要素 | 内容 |
---|---|
自己免疫反応 | 自分の身体の組織を誤って攻撃 |
血管壁の炎症 | 動脈に炎症が集中しやすい |
炎症による障害 | 血管瘤や血流障害を引き起こす |
免疫調節の乱れ | 他の臓器への影響を拡大させる |
免疫の乱れは、遺伝的要因だけでなく環境因子やストレス、感染症などとの複合的な関連が疑われています。
ウイルス感染との関連
B型肝炎ウイルスとPANとの関連は古くから指摘されていて、ウイルス感染に伴い免疫系が過剰に反応し、その副次的な影響で血管壁が攻撃される可能性が示唆されています。
特にHBV感染を持つ人で、急激に血管炎が発症した場合にはHBV関連PANを考慮します。この場合は抗ウイルス療法を併用し、ウイルスの抑制と血管炎の制御を同時に行うことが必要です。
遺伝的要因と環境要因
PANを発症しやすい遺伝的傾向があるかどうかはまだはっきりしていませんが、自己免疫疾患に関連する特定の遺伝子や免疫学的素因が影響を与えていると考えられます。
また、喫煙や過度な飲酒、ストレスの多い生活、感染症リスクの高い環境などが、発症や病状の悪化を促す可能性があります。
- 生活習慣(喫煙、飲酒など)
- 慢性的なストレス
- 過去の重度感染症
複数のリスク要因が重なったときに発症確率が高まる可能性は否定できません。
メカニズム解明の課題
PANを引き起こすメカニズムはまだ完全に解明されているわけではありません。
中小動脈に選択的に炎症が集まる理由、自己免疫反応とウイルスなどの外因性因子のかかわり方、個々の患者さんによって病型や重症度が異なる理由など、不明点は残っています。
研究の進展によって、より効果的で副作用の少ない治療戦略を打ち立てることが望まれますが、現時点では早期発見と既存の薬物療法の組み合わせが治療です。
主な発症原因
要因 | 具体例 |
---|---|
自己免疫機序 | 遺伝的素因や過剰な免疫反応 |
ウイルス感染 | B型肝炎ウイルス(HBV)との関連 |
環境要因 | ストレス、喫煙、過度な飲酒など |
未解明の要素 | 特定できない因子の複合的な影響 |
原因が多岐にわたるため、診断時には病歴や生活習慣、ウイルス感染歴など多面的な視点で評価していくことが必要です。
検査・チェック方法
PANは症状が多彩であるため、診断には総合的な検査が必要で、血液検査や画像検査、組織生検などを組み合わせて、医師が総合的に診断を下すのが一般的です。ここでは代表的な検査と、その目的や特徴について解説します。
血液検査
結節性多発動脈炎は炎症反応が高まっていることが多いため、血液検査ではCRP(C反応性タンパク)や赤沈(ESR)が上昇しているケースが見られます。
また肝機能や腎機能の数値が異常を示している場合もあります。さらに自己抗体の有無を調べることで、ほかの自己免疫疾患との鑑別を行うことも大切です。
- CRP、ESRの上昇
- 白血球増加や貧血
- B型肝炎ウイルスマーカー(HBsAgなど)
血液検査は身体への負担が少ない基本的な手法として頻繁に用いられます。
血液検査の主な指標
検査項目 | PANとの関連性 |
---|---|
CRP、ESR | 炎症の程度を推測 |
白血球数・分画 | 感染や炎症に対する身体反応の確認 |
B型肝炎ウイルス抗原・抗体 | HBV関連PANを示唆するマーカー |
肝・腎機能検査 | 臓器障害の有無をチェック |
画像検査
結節性多発動脈炎では、動脈瘤や血管狭窄を発見するために画像検査が非常に重要で、造影検査やCT、MRIなどで血管の状態を詳細に把握します。
血管造影検査では、細い動脈の拡張やこぶ状の膨らみを映し出し、診断の確定に大きく貢献します。
- CTやMRIで臓器の血流状態を評価
- 血管造影で動脈の瘤や狭窄部位を特定
こうした画像情報は、治療方針や治療部位の特定にも直結するため、診断プロセスで重要です。
- 造影CT:動脈に造影剤を注入して血管像を撮影する
- MRI:血管内や周辺組織を断層画像で把握
- PET:全身の炎症活動性を評価可能
組織生検
血管や炎症のある組織の一部を採取して、顕微鏡で観察する検査が組織生検です。
確定診断を得るために大切な検査であり、血管壁の変化や炎症細胞の浸潤具合などを直接確認でき、腎臓や皮膚、筋肉など、症状が顕著な部分から生検を行うことが多いです。
侵襲的な検査であるため、リスクや実施の難易度を医師と相談して決定する必要があります。
組織生検の利点と注意点
観点 | 内容 |
---|---|
利点 | 病理学的診断が得られ、炎症の確定ができる |
注意点 | 全身状態や対象部位によってはリスクが伴う |
対象臓器 | 腎臓、皮膚、筋肉、消化管など症状が強い部位 |
PANの典型的な炎症所見を得られれば確定診断に近づきますが、その前後で画像検査や血液検査との照合が欠かせません。
その他の検査
神経症状がある場合は神経伝導速度検査や脳MRI、消化管症状がある場合は内視鏡検査などを行うことがあり、臓器別の検査を並行して進めることで全身的な病態を評価します。
多彩な症状を呈する場合は、各診療科での専門的な検査を受けることが有用です。
結節性多発動脈炎(PAN)の治療方法と治療薬について
PANは適切な治療を行うことで症状の進行を抑えられる可能性があります。免疫機能の暴走を制御し、炎症を軽減するためにステロイドや免疫抑制薬を使用するケースが多く、症状や合併症の有無によっては追加の治療手段を検討します。
ステロイド療法の役割
ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)は強力な抗炎症作用を持ち、PANの代表的な治療薬として位置づけられています。炎症が激しい急性期には高用量のステロイドを投与し、症状や炎症の指標が安定してきたら徐々に減量する方法が一般的です。
内服薬だけでなく点滴での投与も選択されることがあります。
ステロイド薬の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
主な使用目的 | 抗炎症・免疫抑制 |
投与経路 | 経口、点滴静注 |
使用期間 | 急性期から軽快期まで継続的に投与、症状に応じて調整 |
注意点 | 長期使用で副作用リスクあり |
高用量ステロイド療法は炎症を素早く抑える点で有効ですが、体重増加、糖尿病の悪化、骨粗しょう症などの副作用に気をつける必要があります。
免疫抑制剤との併用
重症例やステロイドだけでは炎症を十分にコントロールできない場合は、免疫抑制剤を併用し、シクロホスファミドやメトトレキサートなどが代表的であり、自己免疫反応を抑える作用が期待できます。
複数の薬剤を組み合わせることによってステロイドの使用量を減らし、副作用リスクを抑えることが目標です。
- シクロホスファミド:強力な免疫抑制作用を持ち、急性期に用いられやすい
- メトトレキサート:関節リウマチなどの自己免疫疾患でも使用実績あり
- アザチオプリン:長期管理目的で使用する場合がある
併用療法を行う際は、薬剤相互作用や肝腎機能への負担を考慮し、綿密な血液検査とフォローアップが必要になります。
主な免疫抑制薬
薬剤名 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
シクロホスファミド | 強力な免疫抑制作用を持つ | 急性期の重症例 |
メトトレキサート | 関節リウマチ治療でも使用頻度高 | 軽度~中等度の炎症コントロール |
アザチオプリン | 比較的副作用が少なめ | 長期的な維持療法 |
抗ウイルス治療
HBV関連PANが疑われる場合には、B型肝炎ウイルスの活動性を抑えるための抗ウイルス治療が重要な位置づけを持ちます。抗ウイルス薬によりHBVの増殖を制御しつつ、ステロイドや免疫抑制薬で血管炎そのものを抑えるアプローチを取ります。
単独の免疫抑制ではウイルスが増殖しやすくなる恐れがあるため、HBVマーカーの監視が欠かせません。
血漿交換や免疫グロブリン療法
重症で急性期の炎症が激しい場合や、免疫反応が極めて強いと判断されるケースでは、血漿交換や大量免疫グロブリン療法が検討されることがあります。
血漿交換は血液中の有害な免疫複合体や炎症物質を直接除去する方法であり、免疫グロブリン療法は外部から免疫調節機能を持つ成分を補充する方法です。
ただし、これらの治療は全てのPAN患者さんに行うわけではなく、個々の病態に応じて検討されます。
血液浄化療法
方法 | 内容 | 対象 |
---|---|---|
血漿交換 | プラズマ成分を機械で除去・置換する | 重症の免疫複合体関連病態 |
免疫グロブリン療法 | 大量の免疫グロブリンを点滴投与する | 重症例や急性増悪が疑われる場合 |
結節性多発動脈炎(PAN)の治療期間
PANの治療期間は症状の重症度や再燃の有無、合併症などによって大きく異なります。急性期の炎症を強力に抑え込む期間と、その後の維持療法の期間を合わせると、長期にわたり投薬を続けるケースが多いです。
むやみに薬を中断すると再燃する恐れがあるため、自己判断ではなく医師の指示に従った服薬計画を守ることが大切です。
急性期から寛解までの流れ
急性期には高用量ステロイドや免疫抑制剤を併用し、強い炎症反応を抑え込むことを目指します。症状が落ち着くと薬剤の用量を減らしながら寛解へ移行し、炎症がコントロールできた状態を維持する形で治療を続けます。
- 治療初期:高用量ステロイドの投与(数週間〜数か月)
- 中間期:症状に応じてステロイド減量と免疫抑制薬併用(数か月〜1年程度)
- 維持期:低用量ステロイドまたは免疫抑制薬で再燃予防
治療期間の目安
時期 | 期間の目安 | 主な治療内容 |
---|---|---|
急性期 | 数週間~数か月 | 高用量ステロイド、併用免疫抑制 |
中間期 | 数か月~1年程度 | ステロイド減量+免疫抑制薬 |
維持期 | 数年に及ぶことも | 低用量ステロイド、再燃予防 |
再燃リスクとフォローアップ
治療が進むと一時的に症状が落ち着いても、再燃するケースがあります。ステロイドの投与量が急激に減ると炎症がぶり返すことがあり、こうしたリスクを回避するためには段階的な減量と定期的な検査が必要です。
- 血液検査による炎症マーカー(CRP、ESR)の監視
- 画像検査(CTやMRI)による動脈瘤や狭窄のチェック
- 微細な症状変化の報告(倦怠感、痛み、皮膚異常など)
再燃を早期に発見できれば、ステロイドの量や免疫抑制剤の種類を調整して対処しやすくなります。
結節性多発動脈炎(PAN)薬の副作用や治療のデメリットについて
治療薬を使用して炎症を抑えることはPANにとって重要な方法ですが、同時に副作用やデメリットについて理解を深め、必要に応じて対策を行うことが求められます。
ステロイド薬の副作用
ステロイドは強力な抗炎症作用を持ち、急性期の症状コントロールには欠かせない薬ですが、長期・高用量の服用では下記のような副作用が起こりやすくなります。
- 血糖値の上昇や糖尿病の悪化
- 骨粗しょう症や骨折リスクの増加
- 免疫力の低下に伴う感染症リスク
- 体重増加や満月様顔貌(ムーンフェイス)
副作用を抑えるために、正しいタイミングでステロイドの減量や免疫抑制剤との併用を検討し、定期的に血液検査や骨密度検査などを行います。
ステロイドの主な副作用と対応策
副作用内容 | 対応策 |
---|---|
糖尿病や高血糖 | 血糖値管理、食事指導 |
骨粗しょう症 | ビタミンDやカルシウム補給、運動 |
体重増加 | 食事管理、適度な運動 |
免疫低下 | 予防接種の検討、感染症対策 |
免疫抑制薬のリスク
免疫抑制薬は、自己免疫反応を抑える一方で、正常な免疫機能も低下させる恐れがあり、感染症にかかりやすくなるだけでなく、長期使用では肝機能や腎機能への負担が懸念される場合もあります。
血液検査で白血球数や肝機能指標を定期的にチェックし、異常が見られた場合には投与量の調整や薬剤の変更を検討します。
- 感染症リスクの上昇
- 肝機能障害や腎機能障害
- 抗がん剤の一種でもある薬剤の場合、吐き気や脱毛などの副作用
患者さんの体質や併存疾患などを考慮しながら、複数の免疫抑制薬を使い分けることが少なくありません。
免疫抑制剤使用時の注意点
項目 | 注意点 |
---|---|
肝腎機能検査 | 投与中の定期チェックで早期異常発見 |
血球数のモニタリング | 白血球減少や貧血などの確認 |
日常生活での感染対策 | 手洗い、うがい、人混みの回避など |
結節性多発動脈炎(PAN)の保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
主な治療費の目安
PANの治療費は、使用する薬剤や検査内容、治療期間によって大きく左右され、ステロイド薬は比較的安価なものから、免疫抑制剤の中には高額な薬剤もあります。
一般的な治療費の例
項目 | 1か月あたりの目安 | 備考 |
---|---|---|
ステロイド薬 | 2,000~5,000円程度 | 用量や薬の種類で差がある |
免疫抑制剤 | 3,000~10,000円程度 | 種類によってはさらに高額になる可能性あり |
血液検査 | 2,000~4,000円程度/回 | 治療初期は頻回に行う場合が多い |
画像検査(CT等) | 5,000~15,000円程度/回 | 造影検査を伴う場合は費用が上乗せされることも |
血管造影検査 | 10,000~30,000円程度/回 | 検査の目的や範囲により変動が大きい |
通院診察費用 | 1,000~3,000円程度/回 | 診察料金と基本検査料金の合計 |
これらはあくまでも目安であり、実際の費用は医療機関や処方内容、患者さんの病状に左右されます。
手術や介入治療が必要な場合
動脈瘤の形成などによって外科的介入やカテーテル治療が必要になるケースもあります。血管の塞栓術やステント挿入術などは比較的高額な医療費となる場合があるため、費用を把握したうえで治療計画を立てることが必要です。
- 血管造影検査と塞栓術を同時に行う場合
- 動脈瘤破裂の緊急手術
- 病変が複数部位に及んだ際の連続手術
処置内容 | 費用目安(3割負担) | 主な目的 |
---|---|---|
動脈瘤の塞栓術 | 5万円~15万円程度 | 破裂リスクのある動脈瘤の処置 |
ステント挿入術 | 10万円~20万円程度 | 狭窄や瘤をカバーし血流を確保 |
外科的血管修復術 | 15万円以上のことも | 大規模な血管損傷に対処 |
以上
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