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肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)

肥厚性瘢痕 ひこうせいはんこん

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん hypertrophic scar)とは、怪我や手術などによってできた皮膚の傷が治っていく経過で、通常よりも皮膚が盛り上がってしまう状態のことです。

盛り上がるだけでなく色調の変化も伴うため、その見た目が問題になることも少なくありません。

ここでは肥厚性瘢痕の原因や特徴などについて詳しく解説していきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の症状

肥厚性瘢痕による皮膚の変化や感じる症状はさまざまです。

皮膚の肥厚:まずは、病気の名前のとおり皮膚が盛り上がって(肥厚して)いきます。この時、皮膚が硬く分厚くなって周囲の皮膚よりも盛り上がり、特徴的な見た目を形成。

色調の変化:傷や皮膚の盛り上がりに沿って、ピンク~赤や紫などの色に変化します。瘢痕組織に血管が増加することで生じる症状です1)。色の変化によって周囲の皮膚との境界がはっきりし、肥厚性瘢痕が目立ちやすくなります。

肥厚性瘢痕
引用元:日本皮膚科学会

その他の症状:皮膚の盛り上がりや色調の変化以外に、かゆみや痛み、チクチクする感覚が出ることがあります。

また、肥厚性瘢痕が出来た場所は皮膚の柔軟性/伸縮性が失われおり、肥厚性瘢痕が関節をまたぐ場合は、関節が動かしにくくなることも。

肥厚性瘢痕ができる場所や大きさによっては、日常生活やスポーツなどの活動に支障をきたす可能性があります。

幸いなことに、肥厚性瘢痕は良性疾患で放置していても命の危険はありません。

好発部位・時期

通常、肥厚性瘢痕が生じやすい部位は上半身で、特に胸や背中、肩、腕といった部位に起こりやすいです。また、関節にまたがる場合も生じやすいと言われています2)

肥厚性瘢痕は傷が出来てから、1~2ヶ月程度で生じるのが一般的です。

 参考文献

1) Thomas AM, Evolution of silicone therapy and mechanism of action in scar management. Aesthetic Plast Surg. 2008;32(1):82-92.
2) Rei O, et al. Keloids and Hypertrophic Scars Can Now Be Cured Completely: Recent Progress in Our Understanding of the Pathogenesis of Keloids and Hypertrophic Scars and the Most Promising Current Therapeutic Strategy. J Nippon Med Sch. 2016;83(2):46-53.

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の原因

肥厚性瘢痕が形成される原因は一つではなく多岐にわたります。ここでは、肥厚性瘢形成の背景にある要因や、関与する可能性のあるメカニズムについて詳しく説明いたします。

引用元:日本皮膚科学会

皮膚深部までの外傷であること

外傷には、怪我だけでなく手術の傷も含まれます。皮膚の深部まで達する傷が治癒していく過程で、過剰なコラーゲンが産生されることがあり、これが肥厚性瘢痕の原因の一つです。

皮膚のテンション

肥厚性瘢痕は、創傷の機械的/物理的な緊張が主な原因です3)。機械的な刺激や圧に対する反応が、線維芽細胞内のカルシウム濃度やシグナル伝達に影響し、結果として創部肥厚に寄与していると考えられています4)

そのため、特に関節近傍や胸、背中といった皮膚の緊張が高い場所では、皮膚の引っ張る力が働きやすく過剰なコラーゲンが生成され、肥厚性瘢痕の好発部位に。

遺伝的要因

はっきりとした遺伝子は特定されていませんが、一部の人種(アメリカ先住民など)において肥厚性瘢痕を生じる率が高いことから遺伝的な要因も関与していることが示唆されています5)

肥厚性瘢痕の形成には、上記の要因の他にもさまざまな要因が関与すると考えられ、慢性的な皮膚の摩擦や緊張、火傷、全身の炎症、感染などが、瘢痕の過剰な形成を促進する可能性も6)

 参考文献

執筆の根拠にした論文等

3) Caglayan Y, et al. Mechanical receptor-related mechanisms in scar management: a review and hypothesis. Plast Reconstr Surg. 2010;126(2):426-434.
4 )Hayakawa K, et al., Actin stress fibers transmit and focus force to activate mechanosensitive channels.J Cell Sci. 2008;121:496–503.
5) Callie MT, et al. Genetic Risk Factors for Hypertrophic Scar Development. J Burn Care Res. 2013 Sep-Oct; 34(5): 477–482.
6) Wang ZC, et al. The Roles of Inflammation in Keloid and Hypertrophic Scars. Front Immunol. 2020;11:603187.

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の検査、鑑別診断など

肥厚性瘢痕は外見上の特徴や、形成される経緯などから比較的容易に診断できることが多いですが、ケロイドとの鑑別が問題になることがしばしばあります。

ここでは肥厚性瘢痕の診断方法や、ケロイドとの違い、見分け方などを詳しく説明しましょう。

視診

肥厚性瘢痕は外見が特徴的なため、まずは皮膚を詳しく観察することで診断できます7)。以下の表は視診の際の主なチェックポイントをまとめたものです。

チェックポイント特徴
ピンクや赤、時に紫色といった色調
形状周囲の健常皮膚よりも隆起し、盛り上がっている
境界明確で、周囲の皮膚との区別が容易
大きさ損傷した範囲内での盛り上がり
発症時期損傷を受けてから1〜2ヶ月で認め、6ヶ月程度までに症状が完成

ケロイドとの違い

肥厚性瘢痕とケロイドはよく間違えられやすい疾患で、どちらも過剰なフィブリノゲンとコラーゲン産生から生じる隆起した瘢痕です8)

肥厚性瘢痕は損傷した皮膚と同じ場所に限られますが、ケロイドは、傷の範囲を超えて広がっていきます。

引用元:日本皮膚科学会

また肥厚性瘢痕は時間の経過とともに自然に退縮していくことが多いですが、ケロイドは自然退縮しません。以下は違いをまとめた表です。

特徴肥厚性瘢痕ケロイド
範囲傷の部分にできる傷の範囲を超えてできる
消退時間経過とともに自然に退縮自然退縮しない
炎症弱い強い
病理所見真皮網状層における膠原線維の蓄積(平行パターン)と軽度の炎症所見を認める真皮網状層における硝子化した膠原線維の無秩序な蓄積と高度な炎症所見を認める

肥厚性瘢痕とケロイドの原因

どちらの疾患も表皮の下にある真皮層にまで達する深い傷から生じます。

具体的な発生メカニズムは現時点で完全には解明されていないものの、全身性の炎症や、機械的なストレス、創面への張力の増大などが重要な一因であることが報告9)

肥厚性瘢痕とケロイドの疫学

ケロイドが形成されやすい方の典型的な特徴の一つに、皮膚の色が黒いことが挙げられ、最も有病率が高いのはアフリカ系、次にアジア系やヒスパニック系が続きます。

双子での発生例や、数世代にわたる家族の存在などの報告があり、遺伝的要因も指摘10)

肥厚性瘢痕形成の発生率は、32~72%と報告によって幅があります。原因別にみると、外科手術後では39%~68%、熱傷後では33%~91%です11)

ケロイドと肥厚性瘢痕はともに、11~30歳の若年層で発生する傾向があり、これは若年層では表皮のターンオーバー速度が速く、コラーゲン産生が増加するためと考えられています12)

肥厚性瘢痕とケロイドの病態

通常、傷が治る過程には炎症期、増殖期、リモデリング期があります。

炎症期ではサイトカイン(IL-6,8,10)による炎症調節が行われますが、このときにサイトカインのバランスが崩れると肥厚性瘢痕やケロイドが起こりやすくなる可能性が。

増殖期には、TGF-βなどの増殖因子が放出されて線維芽細胞が活性化し、コラーゲンが産生され、この時のTGF-βの調整異常が肥厚性瘢痕やケロイドの瘢痕形成につながると言われています。

肥厚性瘢痕ではコラーゲン産生が3倍、ケロイドでは20倍増加し、より大きく異常な瘢痕を形成8)

引用元:Clearly Basics

肥厚性瘢痕とケロイドの組織学的所見

組織学的には、肥厚性瘢痕もケロイドも表皮や真皮乳頭層には大きな変化はなく、真皮網状層において変化が起こります。肥厚性瘢痕では平行なパターンで組織化されたコラーゲン線維の増加が。

この時コラーゲン線維はケロイドよりも細く、I型コラーゲンと比較してIII型コラーゲンの数が多いです。ケロイドとは対照的に、肥厚性瘢痕には筋線維芽細胞とα-平滑筋アクチンがあります13)

一方ケロイドは、正常瘢痕組織と比較して肥満細胞の数が多いことが特徴です。そのため炎症所見は肥厚性瘢痕よりも強く認めます。

また、正常の真皮組織は乳頭層と網状層がありますが、ケロイド組織ではこれらの区別は難しく、肥厚性瘢痕ではコラーゲンが平行に配列していますが、ケロイド組織ではコラーゲンが無秩序に配列しているのが特徴です14)

肥厚性瘢痕とケロイドの発症時期や治療

ケロイドは受傷後約3ヶ月前後で出現し、改善することなく増殖していきます。ケロイドは切除しても再発率が高く治療が難しいです。

ケロイド
引用元:日本皮膚科学会

肥厚性瘢痕は、受傷後ヶ1月程度で発症し、6ヶ月くらいから退縮し始めます。切除した場合、再発率は低く、ケロイドより治療が容易です。

正確な診断や評価を行うことで、肥厚性瘢痕の状態を正確に把握することができ、患者さん一人一人に合わせた最適なケアやアドバイスが提供可能となります。

参考文献

執筆の根拠にした論文等

7) Jacky E. Hypertrophic scar management. Br J Nurs. 2022;31(20):S24-S31.
8) Berman B, et al. Keloids and Hypertrophic Scars: Pathophysiology, Classification, and Treatment. Dermatol Surg. 2017;43 Suppl 1:S3-S18.
9) Ogawa R. Keloid and Hypertrophic Scars Are the Result of Chronic Inflammation in the Reticular Dermis. Int J Mol Sci. 2017;18(3)
10) Glass DA. Current Understanding of the Genetic Causes of Keloid Formation. J Investig Dermatol Symp Proc. 2017;18(2):S50-S53.
11) Lawrence JW, et al. Epidemiology and impact of scarring after burn injury: A systematic review of the literature. J. Burn. Care Res. 2012;33:136–146.
12) Mahdavian DB, et al. Formation of hypertrophic scars: evolution and susceptibility. J Plast Surg Hand Surg. 2012;46(2):95-101.
13) Arno AI, et al. Up-to-date approach to manage keloids and hypertrophic scars: a useful guide. Burns. 2014;40(7):1255-66.
14) Jumper N, et al. Functional histopathology of keloid disease. Histol Histopathol. 2015;30(9):1033-57.

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の治療方法と治療薬

肥厚性瘢痕の治療は、瘢痕の大きさ、部位、症状の程度などに応じて選択されます。

閉鎖療法

閉塞性ドレッシング材で病変部を覆う治療法です。

エビデンスレベルの高いシステマティックレビューでは、閉鎖性ドレッシング材であるシリコンジェルシートを含むさまざまな治療法を比較し、シリコンジェルシートは肥厚性瘢痕の発生率を有意に下げると報告されています15)

シリコンジェルシート

圧迫療法

患部に圧を加える治療法です。圧迫することで皮膚は菲薄化し、コラーゲン線維の凝集性を下げられます。

圧迫により機械的なレセプターが働き、細胞外マトリックスの維持に作用。さらに、アポトーシスを誘導することが考えられています16)

ある研究では、圧迫療法を受けた方の60%が、75%~100%の改善を示したと報告。

ステロイド

ステロイドには注射や貼付剤があります。ステロイドの作用でコラーゲンの合成を減少させ17)、炎症を抑えることで効果を発揮。

治療は通常、数カ月間程度、瘢痕組織が平坦になるまで続けられます。

外科的切除後の補助療法としてもよく使われますが、ステロイドを長期に使用すると、皮膚の萎縮などの副作用の可能性があるので注意が必要です。

外科的切除

外科的に肥厚性瘢痕が生じている部位を切除する治療法です。外科的切除に加えて補助療法(ステロイドや放射線療法など)を施行した例での再発率は0%~8.6%という報告が18-20)

外科的切除時の再発リスクを低くするためには、創を優しく扱うこと、創床への緊張を最小化するように適切に縫合すること、創閉鎖部への緊張を緩和するために埋没縫合を併用することなどがポイントとなります。

また、術後のケアとしては、圧迫包帯が有効です。

凍結療法

凍結療法では、患部を過度に冷却することで細胞内に氷の結晶が誘導され、細胞内や細胞膜に損傷を与えることで効果を発揮します21)

接触あるいはスプレーにより凍結療法を行い、寛解率は68~81%と高く再発率も2%と低いですが、複数回の治療が必要です。

ただし、メラノサイトは線維芽細胞よりも低温に対して感受性が高いため、メラノサイトにより効果が大きく出てしまい、著しい色素沈着が起きてしまうことも22)。他の副作用としては水疱形成や、局所の疼痛などがあります。

放射線療法

放射線療法は外科的切除後に再発予防目的に用いられることが多いです。

効果の正確なメカニズムははっきりわかっていませんが、in vitroの研究では細胞周期を阻害することにより、線維芽細胞の増殖を抑制することが示されています23)

ある研究では、834例の患者が放射線療法で治療され、再発率は9.6%であったと報告24)。放射線療法は、妊娠している方や12歳未満の小児、甲状腺など放射線感受性の高い部位の治療には推奨されていません

また、治療後数年経ってから放射線誘発性の悪性腫瘍が発生する可能性がありますが、肥厚性瘢痕を含む良性腫瘍に対する放射線治療では線量が小さいため、リスクは小さいと考えられています25)

レーザー療法

レーザー治療も行われることがありますが、レーザーにもいろいろな種類があり、全てが効果的というわけではありません。

最も報告が多いのは585-nmのパルスダイレーザー(Vビームなど)で、複数回照射することで赤みや隆起の改善効果が期待できます。

フラクショナルレーザーやCO2レーザーについて報告はあるものの、あまり一般的ではありません26)レーザー治療は補助的な手段として選択されることが多いです。

その他の治療法

上記以外にも以下の治療薬について、有効とする報告があります。

治療薬説明
インターフェロン多くのプロセスに関与するサイトカインでコラーゲン合成と線維芽細胞増殖を阻止する可能性27)
5-FU線維芽細胞の増殖およびTGF-bによるI型コラーゲンの発現を阻害28)
イミキモド尖圭コンジローマや日光角化症の薬ですが、肥厚性瘢痕にも効果ありとする論文と効果がないという論文が混在29,30)
タクロリムス免疫抑制薬で、アトピー性皮膚炎などに使用
シロリムスマクロライド系抗菌薬で、in vitroで血管平滑筋細胞増殖とコラーゲン合成を阻害することが報告さ31)
レチノイン酸ビタミンA及びその誘導体の総称で、皮膚のターンオーバーを促進させ、肥厚性瘢痕の治療や予防に効果的だとする報告32,33)
ボツリヌス菌線維芽細胞の細胞周期に影響を及ぼし、かゆみや紅斑、柔軟性が改善したとする報告34)
たまねぎ抽出物海外では市販されており、個人輸入で入手可能で(商品名:Mederma)、ランダム化比較試験で有効性が報告35)
リザベン(トラニラスト)アレルギー反応を抑制したり、コラーゲン合成を抑制する効果があり、日本では保険適応がありますが、海外ではほとんど使用されていない。
柴苓湯(漢方薬)線維芽細胞の増殖を抑制し、炎症を抑える作用があると考えられていますが、はっきりとしたメカニズムは不明で、海外ではほとんど使用されていない

ご紹介した治療法の中には、保険が適用されず自費診療での対応になったり、日本では選択することができない治療法も含まれます

Mederma

どのような治療を選択するかは、患者さんの瘢痕の状態や部位、大きさなどにもよるため、専門医の診察が必要です。

参考文献

執筆の根拠にした論文等

15) O’Brien L, et al. Silicone gel sheeting for preventing and treating hypertrophic and keloid scars. Cochrane Database Syst Rev 2013: CD003826.
16) Peyton SR, et al. Extracellular matrix rigidity governs smooth muscle cell motility in a biphasic fashion. J Cell Physiol 2005;204:198–209.
17) Hochman B, et al. Intralesional triamcinolone acetonide for keloid treatment: a systematic review. Aesthetic Plast Surg 2008;32:705–709.
18) Chaudhry MR, et al. Ear lobe keloids, surgical excision followed by radiation therapy: a 10-year experience. Ear Nose Throat J 1994;73:779–81. 
19) Sclafani AP, et al. Prevention of earlobe keloid recurrence with postoperative corticosteroid injections versus radiation therapy: a randomized, prospective study and review of the literature. Dermatol Surg 1996;22:569–74. 31. 
20) Akita S, et al. Combined surgical excision and radiation therapy for keloid treatment. J Craniofac Surg 2007;18:1164–9.
21) Har-Shai Y, et al. Intralesional cryosurgery enhances the involution of recalcitrant auricular keloids: a new clinical approach supported by experimental studies. Wound Repair Regen 2006;14:18–27.
22) Shepherd J, Dawber RP. The historical and scientific basis of cryosurgery. Clin Exp Dermatol 1982;7:321–8
23) Ji J, Tian Y, et al. Ionizing irradiation inhibits keloid fibroblast cell proliferation and induces premature cellular senescence. J Dermatol 2015;42:56–63.
24) Shen J, et al. Hypofractionated electron-beam radiation therapy for keloids: retrospective study of 568 cases with 834 lesions. J Radiat Res 2015;56:811–7
25) McKeown SR, et al. Radiotherapy for benign disease; assessing the risk of radiationinduced cancer following exposure to intermediate dose radiation. Br J Radiol 2015;88:20150405.
26) Rafael Leszczynski, et al. Laser therapy for treating hypertrophic and keloid scars. Cochrane Database Syst Rev. 2022;9(9):CD011642.
27) Tredget EE, et al. Transforming growth factor-beta in thermally injured patients with hypertrophic scars: effects of interferon alpha-2b. Plast Reconstr Surg 1998;102:1317–28; discussion 1329–30.
28) Darougheh A, Asilian A, Shariati F. Intralesional triamcinolone alone or in combination with 5-fluorouracil for the treatment of keloid and hypertrophic scars. Clin Exp Dermatol 2009;34:219–23.
29 )Berman B, Kaufman J. Pilot study of the effect of postoperative imiquimod 5% cream on the recurrence rate of excised keloids. J Am Acad Dermatol 2002;47:S209–11.
30) Cacao FM, et al. Failure of imiquimod 5% cream to prevent recurrence of surgically excised trunk keloids. Dermatol Surg 2009;35:629–33.
31) Park J, et al. Sirolimus inhibits plateletderived growth factor-induced collagen synthesis in rat vascular smooth muscle cells. Transplant Proc 2005;37:3459–62.
32) Janssen de Limpens AM. The local treatment of hypertrophic scars and keloids with topical retinoic acid. Br J Dermatol 1980;103: 319–23.
33) Kwon SY, et al. Comparative effect of topical silicone gel and topical tretinoin cream for the prevention of hypertrophic scar and keloid formation and the improvement of scars. J Eur Acad Dermatol Venereol 2014;28:1025–33.
34) Xiao Z, et al. Treatment of hypertrophic scars with intralesional botulinum toxin type A injections: a preliminary report. Aesthetic Plast Surg 2009;33:409–12.
35) Koc E, et al. An open, randomized, controlled, comparative study of the combined effect of intralesional triamcinolone acetonide and onion extract gel and intralesional triamcinolone acetonide alone in the treatment of hypertrophic scars and keloids. Dermatol Surg 2008;34:1507–14.

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の経過や治療期間

肥厚性瘢痕の一般的な経過は、外傷や手術、火傷などで傷ができてから4~8週間の間に比較的急速に傷に沿って皮膚が盛り上がり、色調も変化することが多いです。

この変化は6ヶ月程度まで続くことがあり、その後に徐々に退縮していきます。退縮のプロセスは数年程度かかることが通常です。自然退縮してきれいに治る人もいれば、瘢痕となって目立つ傷跡が残ってしまう場合もあります。

それぞれの治療法の治療期間については厳密には決められていませんが、治療終了の目安は肥厚性瘢痕の皮膚の盛り上がりがなくなり、ある程度外見が目立たなくなったら終了です。

完全に傷跡が見えなくなるくらい(周りの皮膚と同化)までキレイに治すことは困難で、外科的切除などの治療法では、一度治ったと思っても再度症状が出現することもあります。

その際は、前回と同じ治療でいいのか、もしくは別の治療を試したほうがいいのか、主治医に相談し納得のうえで治療を受けることが大切です。

薬の副作用や治療のデメリット

どのような治療法や薬も、良い効果だけでなく副作用やデメリットもあり、肥厚性瘢痕の治療も例外ではありません。

治療薬の主な副作用、デメリット、注意点

以下の表では、肥厚性瘢痕の治療に使用される主要な薬剤と、それぞれの副作用を示しています。

治療薬主な副作用・デメリット・注意点
閉鎖療法エビデンスレベルが低い報告が多く、過度な期待は禁物
圧迫療法安全な治療法だが、効果が乏しいという研究も36)
ステロイド毛細血管拡張、皮膚の萎縮、色素沈着、色素沈着低下37)
外科的切除切除する時のテクニックによって再発率が変わるので、再発を防ぐために補助療法を併用することが一般的
凍結療法水疱、局所痛、色素沈着低下または色素沈着
放射線療法リスクが小さいことが報告されているものの、原理的に放射線誘発性腫瘍が発生するリスクが
レーザー療法疼痛、萎縮、紅斑、毛細血管拡張、色素沈着、再生、色素沈着(皮膚の色が濃くなる)、色素脱失38)
インターフェロン比較的高率でインフルエンザ様症状を認め39)、その他注射部位の疼痛や炎症
5-FU注射部位の痛み、潰瘍形成、灼熱感、色素沈着40)
レチノイン酸催奇形性、小児に投与した場合の骨端線早期閉鎖41)
ボツリヌス複数回の治療が必要になるのでコストが高く42)、重篤な副作用として、まれにアナフィラキシーショックやボツリヌス中毒が43)

肥厚性瘢痕の治療には多くの選択肢がありますが、それぞれの治療法や薬には副作用やデメリットが伴います。

患者さん自身の体質や瘢痕の状態に応じて、主治医と相談しながら自分に合った最適な治療方法を選択することが大切です。

参考文献

執筆の根拠にした論文等

36) Alexander A, et al. The effectiveness of pressure garment therapy for the prevention of abnormal scarring after burn injury: a meta-analysis. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2009; 62(1):77-84.
37) Sadeghinia A, et al. Comparison of the efficacy of intralesional triamcinolone acetonide and 5-fluorouracil tattooing for the treatment of keloids. Dermatol Surg 2012;38:104–9.
38) Haedersdal M. Cutaneous side effects from laser treatment of the skin: skin cancer, scars, wounds, pigmentary changes, and purpura—use of pulsed dye laser, copper vapor laser, and argon laser. Acta Derm. Venereol. Suppl. (Stockh). 207, 1–32 (1999).
39) Lee JH, et al. Effects of interferon-alpha2b on keloid treatment with triamcinolone acetonide intralesional injection. Int J Dermatol 2008;47:183–6.
40) Nanda S, et al. Intralesional 5-fluorouracil as a treatmentmodality of keloids. Dermatol Surg 2004;30:54–6; discussion 56–7.
41) David M, et al. Adverse effects of retinoids. Med Toxicol Adverse Drug Exp. 1988 Jul-Aug;3(4):273-88.
42) Robinson AJ, et al. Keloid scars and treatment with botulinum toxin type A: the Belfast experience. J Plast Reconstr Aesthet Surg 2013;66:439–40.
43) Henryk W, et al. The whole truth about botulinum toxin – a review. Postepy Dermatol Alergol. 2020; 37(6): 853–861.

保険適用について

肥厚性瘢痕の治療には健康保険の適用になるものとならないものがあります。

保険適用となる治療

  • リザベン(有効成分名:トラニラスト):1日3回内服する薬で、カプセルや顆粒状のものがあります。他にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎に保険適応。
  • ステロイド:病変部にステロイド注射をしたり、塗り薬やテープ状のステロイド剤があります。
  • 手術療法:肥厚した部分を切除する手術で、切除や縫合のやり方に工夫が必要です。
  • 放射線療法:手術と一緒に行うことが一般的です。

保険適用外の治療

  • レーザー治療
  • 圧迫療法
  • 凍結療法
  • ボツリヌス注射
  • レチノイン酸
  • その他、日本で肥厚性瘢痕やケロイドに対して保険適応がない薬(インターフェロン、タクロリムスなど)

治療を受ける前に確認すべき事項

最後に、治療を受ける前に確認すべき点を挙げます。皮膚科専門医と相談し、以下の点を確認してください。

  • 治療方法と経済的負担
  • 治療の効果と期間、治療ゴール
  • 副作用やリスク

これらの点を慎重に検討し、ご自身に最適な治療方法を選んでください。

免責事項

当院の医療情報について

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ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

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