052-228-1280 WEB予約 LINE予約

あせも(汗疹 かんしん)

あせも 汗疹 かんしん

あせも(汗疹 かんしん miliaria, heat rash)とは、特に暑い季節に発生しやすい湿疹症状の一つで、汗によって赤みやかゆみといった不快な症状をもたらします。

汗疹はエクリン汗腺の詰まりが原因で、汗腺が未熟な赤ちゃんや子どもによく見られるものです。

この記事では、あせも(汗疹)の原因、特徴、そして日常生活でできる予防策など、詳しく解説していきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

あせも(汗疹)の病型

あせも(汗疹 かんしん miliaria, heat rash)は、汗を分泌するエクリン汗腺と呼ばれる汗腺の閉塞が原因で起きる皮膚疾患です。

エクリン汗腺では、真皮の深層(分泌部)から分泌された汗が管(導管)を通って皮膚表面へ排泄されています。

導管は皮膚を垂直に上行し、表皮をらせん状に通って汗孔に開いており、導管のどの部位で閉塞されているかによって病型が3つのタイプに分かれます。

汗疹の病型

病型閉塞部位と特徴
水晶様様汗疹(miliaria crystallina)角層内あるいは角層直下で導管が閉塞し、小水疱を形成し、汗疱と呼ばれることも(痒みや赤みはない)
紅色汗疹(miliaria rubra)表皮の顆粒層付近で導管が閉塞し、紅いブツブツ(小丘疹)をもたらし、赤みに加えて強い痒みが特徴
深在性汗疹(miliaria profunda)表皮真皮接合部で導管が破綻し、汗が真皮で貯留し、扁平な丘疹の多発を認める

あせも(汗疹)の症状

あせも(汗疹)の症状は、病型によっても異なります。

  • 水晶様汗疹:成人や、新生児によく認めるタイプで、1-2mm大の破れやすい小水疱を認めます。赤みや痒みは通常なく、数日以内に消失するのが一般的です。
  • 紅色汗疹:汗疹の最も一般的なタイプで、炎症反応を伴い強い赤みや痒みが。発汗時に悪化し、より強い痒みをもたらします。

    小児の場合は鼠径部やわき、首といった部位にできやすく、成人では首や背中など衣服が擦れる部位に認めやすい傾向に。
  • 深在性汗疹:まれなタイプで、比較的大型の扁平な丘疹が特徴です。無症状の場合もありますが痒みを伴うこともあります。何度も紅色汗疹を繰り返すと深在性汗疹に発展し、主に体幹が好発部位です。

その他の症状

汗腺の閉塞により、無汗症と言って汗が出ない症状を認めることがあります。汗は体温を調整する作用があるため、患部が広いと体温調整がうまく行えずに熱疲労や熱中症などのリスクが高まることに。

あせも(汗疹)の原因・リスクファクター

あせもは、エクリン汗腺の導管の閉塞が原因ですが、閉塞しやすい要因がいくつかあります。

あせものリスクファクター

原因特徴
過剰な発汗・高温多湿激しい運動により多量の汗をかくと汗腺が塞がりやすく
通気性の悪い衣服皮膚を圧迫し、汗の流れを妨がれることであせもを引き起こしやすい
皮膚の摩擦繰り返しの摩擦により、汗腺が塞がれることが
新生児・乳幼児汗腺が未熟のため、導管が閉塞しやすくなる
偽性アルドステロン症などの疾患電解質異常をきたす一部の疾患では、汗中のナトリウムが喪失し、あせもを引き起こすことが
薬物ベナタネコール、クロニジンなど、副作用によって発汗を誘発

あせも(汗疹)の検査・チェック方法

あせもは特徴的な見た目から通常、視診によって診断が可能ですが、いくつか鑑別が必要な疾患があります。

あせも
引用元:https://www.whattoexpect.com/first-year/baby-care/baby-skin-care/heat-rash.aspx
  • 単純ヘルペスまたは水痘などのウイルス性発疹またはウイルス感染症
  • 皮膚カンジダ症またはその他の真菌性皮膚感染症
  • 細菌性または粃糠性毛包炎
  • 新生児ざ瘡
  • 新生児中毒性紅斑
  • 薬疹、特に急性の全身性滲出性膿疱症
  • 節足動物咬傷
  • 皮膚リンパ球腫または皮膚T細胞偽性リンパ腫

これらの疾患との鑑別目的に、皮膚生検(組織の一部をくり抜き病理組織を確認する)が行われることもあります。

また、あせもの診断にはダーモスコピーが有用です。大きな白色の球とそれを取り囲む少し暗色のhalo(白色水疱)を認めます。

あせも(汗疹)の治療方法と治療薬

あせもは汗によってもたらされる疾患なので、発汗、及びエクリン汗腺の閉塞をできる限り予防するケアが大切です。

有効な対策

  • 暑い季節や汗をかきやすい環境では、頻繁に汗を拭く、シャワーを浴びる。
  • 通気性の良い衣類を選ぶ。
  • 体を冷やし過ぎないよう注意しながら、エアコンや扇風機を適切に使用。
  • 包帯やパッチなど密着性のあるものをできる限り除去。
  • 特に乳幼児の場合は、こまめに汗を拭き取る。

これらのことを、普段の生活で意識してみましょう。

汗疹(あせも)の治療法

汗疹(あせも)の治療方法は病型によって異なります。

水晶様汗疹は、通常24時間以内に治癒するため、経過観察となるケースが多いです。

一方、炎症を伴う紅色汗疹や深在性汗疹などは炎症の改善目的にステロイド外用薬を塗布します。また、膿疱を伴うケースでは二次感染が起こっている可能性があり、必要に応じて抗菌薬が処方されることも。

深在性汗疹は外用薬で改善が乏しいことがあり、海外ではイソトレチノインの内服が試されるケースもありますが、日本では一般的な治療ではありません。

あせも(汗疹)の治療期間

あせもは個々の状況や治療方法により治療期間が異なりますが、ケアと治療により1〜2週間で改善を認めることが多いです。

汗疹でも水晶様汗疹は無治療でも24時間以内に症状の改善を認める一方、深在性汗疹では、丘疹を持続して認めることも多く、治療期間が長引きます。

治療期間における注意点

  • あせもの治療期間は、個人の皮膚の状態や生活環境に大きく変わる。
  • 症状が悪化する場合や予想よりも長引く場合は、医師の診察を受ける。

薬の副作用

あせも(汗疹)治療薬の副作用

あせもの治療に使用されることがあるステロイド外用薬は、多くの皮膚科疾患で使用される薬ですが、副作用もあります。

ステロイド外用薬の主な副作用

副作用説明
過敏症発赤、そう痒感、刺激感が起こることが
感染症真菌症や細菌感染症を生じることが
ステロイドざ瘡ニキビ様の発疹が出ることも
皮膚の萎縮・菲薄化長期使用によって皮膚が薄くなる
毛細血管拡張長期使用によって細い血管が目立つように
眼症状目周りに塗る際に眼圧が上がる緑内障や白内障のリスク

あせも治療薬の安全な使用には、副作用を理解することが大切です。また、薬だけでなく日常生活でのスキンケアや環境管理にも注意を払ってください。

保険適用の有無と治療費の目安について

あせも(汗疹)の治療に用いられるステロイド外用薬や抗菌薬は、健康保険が適用されます。一方、イソトレチノインの内服は保険外治療となります。

治療費の目安

あせもの治療費は、使用する薬剤や使用期間などによって異なりますが、一般的な3割負担の場合

  • 初診料:850円
  • 再診料:220円
  • 軟膏(リドメックス軟膏 10g1本):約40円

使用されるステロイド外用薬は、重症度や部位、年齢などによって変わります。

具体的な治療方法や費用については、医療機関に直接ご相談ください。

参考文献

Heat-related skin disease. Journal of the Korean Medical Association. 2019 Apr 1;62(4):187-92.

Gauer R, Meyers BK. Heat-related illnesses. American family physician. 2019 Apr 15;99(8):482-9.

Giersch GE, Belval LN, Lopez RM. Minor heat illnesses. Exertional heat illness: A clinical and evidence-based guide. 2020:137-47.

Ćurić M, Zafirovski O, Spiridonov V, Ćurić M, Zafirovski O, Spiridonov V. Heat and health. Essentials of medical meteorology. 2022:183-99

Laliberte R. Problem Solved: Heat Rash. Prevention. 2020 Aug 1;72(8):44-6.

Wodu DP, Weli VE, Nwagbara MO. Thermal Comfort Characteristics and Its Effects on Health Status of Occupants of Residential Building Typology in a Sub-Humid Tropical Climate. Atmospheric and Climate Sciences. 2020 Feb 6;10(2):258-71.

Funamoto KZ, Furuhashi MA, Muta K, Ozawa N, Nakaoji K, Hamada K, Kikuchi K, Tagami H, Funamoto KZ, Furuhashi MA. Physiological skin characteristics of infants and children compared to those of women. Cureus. 2021 Nov 25;13(11).

Ardiansyah TF, Mellaratna WP. MILIARIA. Jurnal Ilmu Kesehatan dan Gizi. 2024;2(1):286-92.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次