バクチオールは「植物由来のレチノール代替成分」として、近年スキンケア分野で注目を集めています。シワやハリの改善、毛穴ケア、抗炎症といった多角的な効果が研究で報告されており、敏感肌の方にも使いやすい穏やかな性質が大きな魅力です。
一方で「バクチオールは本当に効果があるの?」「レチノールと何が違うの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。この記事では、バクチオールの基本情報から期待できる効果、使い方のコツ、注意点までを、エビデンスをもとにわかりやすく解説します。
妊娠中や授乳中の方の使用についても触れていますので、成分選びの判断材料としてお役立てください。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
バクチオールとは何か|植物が生んだレチノール代替成分
バクチオールは、マメ科の植物「オランダビユ(Psoralea corylifolia/補骨脂)」の種子から抽出されるメロテルペンフェノールという天然化合物です。レチノール(ビタミンA誘導体)と構造はまったく異なりますが、遺伝子発現の調節において類似した働きを持つことがわかっています。
アーユルヴェーダから現代スキンケアへ
補骨脂はインドの伝統医学(アーユルヴェーダ)や中国の漢方で古くから利用されてきた植物です。皮膚疾患や炎症の緩和を目的に使われてきた歴史があります。
バクチオールが化合物として初めて単離されたのは1966年のこと。その後、2014年にChaudhuriらの研究でレチノールに似た遺伝子発現パターンが確認されたことで、スキンケア成分としての関心が一気に高まりました。
化粧品成分としての位置づけ
バクチオールは現時点で日本の医薬部外品の有効成分としては認可されていません。化粧品の配合成分として使用されており、化粧品成分表示名称は「バクチオール」です。INCI名(国際命名法)は「Bakuchiol」と表記されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 由来植物 | オランダビユ(Psoralea corylifolia) |
| 化学分類 | メロテルペンフェノール |
| INCI名 | Bakuchiol |
| 医薬部外品認可 | なし(化粧品成分) |
| 英語表記 | Bakuchiol(発音:バクチオール) |
レチノールと似た遺伝子発現パターン
バクチオールがレチノール代替成分として注目される根拠は、遺伝子発現の類似性にあります。2014年の研究では、ヒト皮膚モデルを用いた実験で、バクチオールがレチノールと同様にI型・III型・IV型コラーゲンやアクアポリン3(水分を通す細胞膜のタンパク質)の発現を促進したと報告されています。
ただし、バクチオールはレチノイド受容体(RARやRXR)を介さない経路で作用すると考えられており、その点がレチノールとの大きな違いといえるでしょう。
バクチオールに期待できる効果|シワ・毛穴・ニキビへのアプローチ
バクチオールには、シワやたるみの改善、毛穴の引き締め、ニキビの予防、さらには抗炎症・抗酸化といった多方面での効果が期待されています。ただし、化粧品成分としての配合濃度における効果であり、医薬品のような即効性を保証するものではありません。
シワ・ハリの改善に関するエビデンス
2019年にBritish Journal of Dermatologyに掲載された二重盲検臨床試験では、バクチオール0.5%クリームを1日2回、12週間塗布した群と、レチノール0.5%クリームを1日1回塗布した群を比較しました。その結果、シワの面積や色素沈着の改善において両者に統計的な有意差はなかったと報告されています。
コラーゲン産生を促すことでハリ感を向上させる作用が期待されており、2022年のBluemkeらの研究でも、バクチオールがI型・VII型コラーゲンおよびフィブロネクチン(肌の弾力を支えるタンパク質)の発現を増加させることが確認されました。
毛穴やニキビへの働き
バクチオールには抗菌作用があり、ニキビの原因菌に対する抑制効果が報告されています。皮脂分泌の調整にも関与する可能性があり、毛穴の目立ちやニキビ予防のケアとして取り入れる方が増えています。
レチノールと同様にターンオーバー(肌の生まれ変わり)を整える作用が期待されるため、毛穴まわりの角質肥厚にもアプローチできると考えられています。
抗炎症・抗酸化で肌をいたわる
バクチオールの特筆すべき長所は、レチノールには見られない強い抗酸化力を持つ点です。2022年のBluemkeらの研究では、レチノールに比べて高い抗酸化活性を示し、炎症性物質であるPGE2やMIF(マクロファージ遊走阻止因子)の産生を有意に抑制したと報告されています。
紫外線による肌ダメージの軽減にもつながる可能性があり、日常的なスキンケアにおけるエイジングケア成分として注目されているのも頷けます。
| 期待される効果 | 関連する作用 |
|---|---|
| シワ・ハリ改善 | コラーゲン産生促進 |
| 毛穴ケア | ターンオーバー正常化 |
| ニキビ予防 | 抗菌・皮脂調整 |
| 肌荒れ防止 | 抗炎症・抗酸化 |
| 色素沈着の軽減 | メラニン生成抑制 |
バクチオールの使い方とスキンケアへの取り入れ方
バクチオールは朝晩問わず使用でき、レチノールのような「慣らし期間」が不要な点が大きな利点です。美容液やクリームなどさまざまな剤形で配合されており、自分の肌悩みや生活スタイルに合わせて選べます。
どんな化粧品に配合されている?
バクチオールは美容液(セラム)に配合されるケースが多く、次いでクリームや乳液、アイクリームなどに使用されています。化粧水タイプの製品も存在しますが、バクチオールは脂溶性(油に溶けやすい性質)のため、オイルベースや乳液タイプの製品との相性がよいといえます。
配合濃度は製品によって異なりますが、臨床試験で使用された濃度は0.5%~1%程度です。パック(シートマスク)やハンドクリームなど、幅広い製品カテゴリーに広がりつつあります。
朝も夜も使えるのがバクチオールの強み
レチノールは紫外線で分解されやすいため夜の使用が推奨されますが、バクチオールにはそうした光安定性の問題が少ないとされています。朝のスキンケアにも安心して組み込めるでしょう。
使う順番としては、洗顔後に化粧水で肌を整えてから、バクチオール配合の美容液やクリームを塗布するのが基本です。朝に使う場合は、紫外線対策として日焼け止めを最後に重ねることを忘れないでください。
| タイミング | 使い方のポイント |
|---|---|
| 朝 | 化粧水→バクチオール美容液→日焼け止め |
| 夜 | 化粧水→バクチオール美容液→クリーム |
| 初めて使う場合 | 慣らし期間は基本不要だが、少量から試す |
相性の良い成分・避けたい組み合わせ
バクチオールと併用すると効果が高まるとされる成分はいくつかあります。
ナイアシンアミド(ビタミンB3)は、バクチオールと同様に肌のバリア機能をサポートし、色素沈着の軽減にも寄与するため、組み合わせとして優秀です。

ビタミンC誘導体との併用も注目されています。抗酸化作用の相乗効果が期待でき、朝にビタミンC美容液、夜にバクチオールというルーティンも一つの選択肢でしょう。ヒアルロン酸やペプチドとの併用も問題ありません。

一方、AHA(グリコール酸など)やBHAなどのピーリング成分と同時に使用すると、肌への刺激が増す場合があります。別のタイミングに分けて使うか、肌の状態を見ながら慎重に組み合わせるのが望ましいでしょう。レチノールとの併用については、朝にバクチオール・夜にレチノールと分けることで、双方の利点を活かせるという意見もあります。
バクチオールを使う際に知っておきたい注意点
バクチオールはレチノールに比べて刺激が少ないとされていますが、すべての人に合うわけではありません。副作用やアレルギーのリスク、使用を控えたほうがよいケースについて押さえておきましょう。
副作用や刺激のリスクは低いが、ゼロではない
2019年のDhaliwalらの臨床試験では、レチノール群に比べてバクチオール群では皮むけや刺激感の報告が有意に少なかったと報告されています。また、2020年のDraelosらの研究では、敏感肌(湿疹・酒さ・化粧品不耐症)を持つ60名の女性を対象にバクチオール配合製品を4週間使用し、良好な忍容性が確認されました。
とはいえ、植物由来の成分である以上、アレルギー反応が起こる可能性は否定できません。初めて使用するときは、腕の内側などでパッチテストを行うことをおすすめします。
使用を避けたほうがよい人
マメ科植物にアレルギーのある方は、バクチオールの使用に注意が必要です。原料であるオランダビユ(補骨脂)はマメ科に属するため、既知のアレルギーがある場合は皮膚科医に相談してから使用を検討してください。
妊娠中・授乳中の方については、バクチオールはビタミンA誘導体ではないため、レチノールのようなリスクは理論上低いと考えられています。ただし、妊娠中の方を対象とした大規模臨床試験は行われていないため、使用前にかかりつけの産婦人科医や皮膚科医に確認するのが安心です。
化粧品配合成分と処方薬の違いを知る
バクチオール自体は現時点で日本の処方薬として使用されておらず、あくまで化粧品成分としてスキンケア製品に配合されています。レチノイド系の処方薬(トレチノインやアダパレンなど)は、バクチオールとは作用の強さや副作用プロファイルが大きく異なります。
シワやニキビに対して医療レベルでの治療が必要な場合は、化粧品成分だけに頼らず皮膚科を受診してください。
- マメ科アレルギーの方は使用前に医師へ相談
- 妊娠中・授乳中は念のためかかりつけ医に確認
- 赤みやかゆみが出たら使用を中止して受診
- 化粧品の効果には限界があり、症状がつらいときは皮膚科へ
バクチオールとレチノールの違い|似た成分との比較
バクチオールはしばしばレチノールと比較されますが、化学構造も作用経路も異なる別の成分です。両者の強みと弱みを正しく把握して、自分の肌に合った選択をすることが大切です。
レチノールとバクチオールを正面から比べる
レチノールはビタミンAの一種で、レチノイン酸受容体を介して細胞に働きかけます。長年にわたる臨床研究の蓄積があり、シワ改善やニキビ治療における有効性のエビデンスは豊富です。ただし、皮むけ・赤み・乾燥といった副反応(いわゆるA反応やレチノイド反応)が起きやすく、紫外線への感受性も高まります。
バクチオールはレチノイン酸受容体を介さない経路で作用し、同等のシワ改善効果を示しつつも刺激が少ない点が魅力です。朝晩使える光安定性や、抗酸化・抗炎症作用を併せ持つ点も、レチノールにはないメリットでしょう。
ナイアシンアミドやビタミンC誘導体との立ち位置の違い
バクチオールはナイアシンアミドやビタミンC誘導体とも比較されることがありますが、それぞれ作用の方向性が異なります。ナイアシンアミドはバリア機能強化やセラミド産生促進が主な働きで、ビタミンC誘導体はメラニン生成抑制と抗酸化が得意分野です。
バクチオールはコラーゲン産生促進と抗炎症・抗酸化を兼ね備えた「マルチに働く成分」という立ち位置であり、競合というよりも相補的な関係にあるといえます。
バクチオール・レチノール・主要美容成分の比較
| 比較項目 | バクチオール | レチノール |
|---|---|---|
| 由来 | 植物(オランダビユ) | ビタミンA誘導体 |
| 刺激性 | 低い | やや高い(A反応) |
| 使用可能時間帯 | 朝・夜どちらも | 夜が推奨 |
| 抗酸化作用 | あり(高い) | 限定的 |
| エビデンスの蓄積 | 近年増加中 | 豊富 |
| 妊娠中の使用 | 理論上リスク低(要相談) | 非推奨 |
目的に合わせた成分の使い分けが効果的
目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることで、より効果的なスキンケアにつながる場合もあります。
たとえば、エイジングケアを重視するならバクチオール、美白や透明感を求めるならビタミンC誘導体、バリア機能の回復ならナイアシンアミドが向いています。
まとめ|バクチオールを正しく活用するために
バクチオールはレチノールに似た効果を持ちながら、刺激が少なく使いやすい植物由来のスキンケア成分です。敏感肌の方やレチノールが合わなかった方にとって、有力な選択肢になり得るでしょう。
- 植物由来のメロテルペンフェノールで、レチノールと似た遺伝子発現パターンを持つ
- シワ・ハリ改善、毛穴ケア、抗炎症・抗酸化など多方面に効果が期待される
- レチノールに比べて刺激が少なく、朝晩問わず使用できる
- ナイアシンアミドやビタミンC誘導体との併用も可能
- 植物由来とはいえアレルギーのリスクはあるため、パッチテスト推奨
バクチオールはあくまで化粧品成分であり、深いシワやひどいニキビなど医療的な対応が必要な肌トラブルには限界があります。気になる症状がある場合は、自己判断に頼らず皮膚科を受診してください。
よくある質問
- バクチオールは敏感肌でも使える?
-
バクチオールはレチノールに比べて刺激が少ないため、敏感肌の方にも使いやすい成分とされています。2020年に行われた臨床試験では、湿疹や酒さなどの敏感肌を持つ被験者にも良好な忍容性が確認されました。
ただし、すべての方に合うとは限りません。初めて使うときは少量を腕の内側でテストし、異常がないことを確認してから顔に使用するのが安心です。
- バクチオールとレチノールは一緒に使える?
-
バクチオールとレチノールの併用は可能とされています。朝にバクチオール、夜にレチノールという使い分けが一般的です。バクチオールの抗酸化・抗炎症作用が、レチノールの刺激を緩和する可能性も指摘されています。
ただし、両方を同時に高濃度で使用すると肌に負担がかかることもあるため、肌の調子を見ながら少しずつ取り入れることをおすすめします。
- バクチオールは妊娠中や授乳中に使っても大丈夫?
-
バクチオールはビタミンA誘導体ではないため、レチノールのような催奇形性のリスクは理論上低いと考えられています。レチノールが妊娠中に非推奨とされる理由は、ビタミンAの過剰摂取が胎児に影響を及ぼす可能性があるためです。
とはいえ、妊娠中の方を対象とした十分な臨床データは存在しません。安心して使いたい場合は、かかりつけの産婦人科医や皮膚科医に事前に相談するのが賢明でしょう。
- バクチオールに「効果がない」と感じる原因は?
-
バクチオールの効果を実感するまでには、少なくとも4~12週間の継続使用が必要とされています。臨床試験でも評価時点は4週間後や12週間後に設定されており、数日で目に見える変化を求めるのは難しいでしょう。
製品の配合濃度が低い場合や、肌悩みが化粧品でカバーできる範囲を超えている場合にも、効果を感じにくいことがあります。期待する変化が得られないときは、皮膚科医に相談して適切な治療法を検討してみてください。
- バクチオールはビタミンCと併用して問題ない?
-
バクチオールとビタミンC(ビタミンC誘導体)の併用は一般的に問題ないと考えられています。どちらも抗酸化作用を持つため、組み合わせることで相乗効果が期待できるという見方もあります。
朝のスキンケアにビタミンC美容液を使い、夜にバクチオール配合のクリームを重ねるといった使い分けもよい方法です。同時に重ねる場合は、水溶性の製品を先に塗り、油溶性の製品を後に使う順番を意識してみてください。
参考文献
Dhaliwal, S., Rybak, I., Ellis, S. R., Notay, M., Trivedi, M., Burney, W., Vaughn, A. R., Nguyen, M., Reiter, P., Bosanac, S., Yan, H., Foolad, N., & Sivamani, R. K. (2019). Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. British Journal of Dermatology, 180(2), 289–296. https://doi.org/10.1111/bjd.16918
Chaudhuri, R. K., & Bojanowski, K. (2014). Bakuchiol: A retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects. International Journal of Cosmetic Science, 36(3), 221–230. https://doi.org/10.1111/ics.12117
Bluemke, A., Ring, A. P., Immeyer, J., Hoff, A., Eisenberg, T., Gerwat, W., Meyer, F., Breitkreutz, S., Klinger, L. M., Brandner, J. M., Sandig, G., Seifert, M., Segger, D., Rippke, F., & Schweiger, D. (2022). Multidirectional activity of bakuchiol against cellular mechanisms of facial ageing – Experimental evidence for a holistic treatment approach. International Journal of Cosmetic Science, 44(3), 377–393. https://doi.org/10.1111/ics.12784
Draelos, Z. D., Gunt, H., Zeichner, J., & Levy, S. (2020). Clinical evaluation of a nature-based bakuchiol anti-aging moisturizer for sensitive skin. Journal of Drugs in Dermatology, 19(12), 1181–1183. https://doi.org/10.36849/JDD.2020.5522
Bacqueville, D., Maret, A., Noizet, M., Duprat, L., Coutanceau, C., Georgescu, V., Bessou-Touya, S., & Duplan, H. (2020). Efficacy of a dermocosmetic serum combining bakuchiol and vanilla tahitensis extract to prevent skin photoaging in vitro and to improve clinical outcomes for naturally aged skin. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 13, 359–370. https://doi.org/10.2147/CCID.S235880
Puyana, C., Chandan, N., & Tsoukas, M. (2022). Applications of bakuchiol in dermatology: Systematic review of the literature. Journal of Cosmetic Dermatology, 21(12), 6636–6643. https://doi.org/10.1111/jocd.15420
Goldberg, D. J., Robinson, D. M., & Granger, C. (2019). Clinical evidence of the efficacy and safety of a new 3-in-1 anti-aging topical night serum-in-oil containing melatonin, bakuchiol, and ascorbyl tetraisopalmitate: 103 females treated from 28 to 84 days. Journal of Cosmetic Dermatology, 18(3), 806–814. https://doi.org/10.1111/jocd.12896
