アルガンオイルは、モロッコに自生するアルガンツリーの実から抽出される植物性オイルです。オレイン酸やリノール酸、ビタミンEを豊富に含み、保湿と抗酸化の両面からスキンケアに活用されています。
「化粧品の成分表示で見かけるけれど、本当に肌によいの?」「どう使えばいいの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、皮膚科専門医監修のもと、アルガンオイルの効果や正しい使い方、見落としがちな注意点やデメリット、ホホバオイルなど類似成分との違いまで、研究データを交えて丁寧に解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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アルガンオイルとは?モロッコ生まれの美容オイルの基本情報
アルガンオイルは、北アフリカ・モロッコ南西部の半砂漠地帯にのみ自生するアルガンツリー(学名:Argania spinosa)の種子核から得られる植物油です。化粧品成分としてはもちろん、食用としても800年以上の歴史があります。
モロッコの乾燥地帯だけに育つアルガンツリーの希少な実
アルガンツリーはサポテ科に属する常緑樹で、モロッコとアルジェリアのごく限られた地域にしか自生しません。樹齢200年を超えるものもあり、ユネスコの生物圏保存地域にも指定されています。
1本の木から採れるオイルはわずかで、果実の種子核を圧搾して抽出します。化粧品用のアルガンオイルは非焙煎の核から低温圧搾(コールドプレス)で得られ、加熱しないことで有効成分の損失を抑えているのが特徴です。
化粧品の成分表示で見かける「アルガニアスピノサ核油」
化粧品の全成分表示においては「アルガニアスピノサ核油」という名称で記載されます。英語表記では”Argania Spinosa Kernel Oil”です。
分類上は植物性油脂に該当し、エモリエント成分(肌をやわらかく整える成分)として広く配合されています。
アルガンオイルの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化粧品成分表示名称 | アルガニアスピノサ核油 |
| INCI名 | Argania Spinosa Kernel Oil |
| 原料植物 | アルガンツリー(Argania spinosa) |
| 主な脂肪酸組成 | オレイン酸43〜49%、リノール酸29〜36% |
| 主な抗酸化成分 | γ-トコフェロール、ポリフェノール、フィトステロール |
| カテゴリ | 保湿・抗酸化 |
医薬部外品の有効成分としては認可されていない
アルガンオイルは日本において医薬部外品の有効成分としては認可されていません。化粧品原料として使用される成分であり、薬機法上は「化粧品」の枠組みで取り扱われます。
そのため、市販のスキンケア製品に配合されている場合も、あくまで化粧品としての保湿やエモリエント効果を訴求するものです。治療目的の使用については皮膚科医に相談することをおすすめします。
アルガンオイルに期待できる3つの美肌効果
アルガンオイルが肌に与える影響として、保湿・抗酸化・抗炎症の3つが代表的です。いずれもオイルに含まれる脂肪酸やビタミンE、ポリフェノールなどの成分がかかわっていると考えられています。
肌のうるおいを守るエモリエント効果
アルガンオイルの約80%は不飽和脂肪酸で占められています。とくに多いのがオレイン酸(43〜49%)とリノール酸(29〜36%)で、この2つが肌の保湿に大きく寄与します。
オレイン酸は肌なじみがよく、角質層にすばやく浸透して水分の蒸散を防ぐ働きがあります。
一方のリノール酸は、角質層のバリア機能を構成するセラミド1リノレートの材料になる脂肪酸です。乾燥肌ではこのセラミドが減少していることが知られています。
リノール酸を外用で補うことで、バリア機能の回復が期待できるとされています。
Boucettaらの臨床試験では、閉経後女性がアルガンオイルを60日間外用した結果、経表皮水分蒸散量(TEWL)が低下し、表皮の水分量が増加したと報告されています。
同グループの別の研究では、アルガンオイルの塗布によって皮膚弾力性(R2、R5、R7パラメータ)も改善する傾向が確認されました。
こうした知見はまだ限られたサンプルサイズでの結果であり、大規模試験による追検証が待たれる段階です。それでも、日々のスキンケアに取り入れることで乾燥を防ぎ、肌のやわらかさを保つサポートになる可能性は十分にあるといえるでしょう。
ビタミンEやポリフェノールがもたらす抗酸化効果
アルガンオイルの不けん化物(油脂に溶けにくい微量成分)には、γ-トコフェロール(ビタミンEの一種)やポリフェノール、フィトステロールが含まれています。
γ-トコフェロールはオリーブオイルに多いα-トコフェロールよりも、フリーラジカル(活性酸素)の除去能力が高いとの報告もあり、肌の酸化ダメージを軽減する可能性が示唆されています。
またフィトステロールのうち、アルガンオイルに特徴的なスピナステロールとスコッテノールには、紫外線などによる脂質の過酸化を抑える働きがあると考えられています。
こうした抗酸化成分の相乗効果によって、肌の老化サインにアプローチできるかもしれません。
炎症をやわらげるリノール酸のちから
リノール酸は保湿だけでなく、炎症性プロスタグランジンの産生を調節するアラキドン酸経路にもかかわっています。Ben Menniらの研究では、アルガンオイルとその微量成分に抗炎症活性があることが動物実験で示されました。
肌荒れやニキビなどの炎症性トラブルを抱える方にとって、穏やかな炎症抑制効果は魅力的でしょう。
ただし、化粧品としての使用では医薬品のような即効性は期待できません。日常的なスキンケアの中で肌コンディションを整える、という位置づけで取り入れるのが適切です。
なお、Dobrevの臨床研究では、アルガンオイルを含む皮脂コントロールクリームを4週間使用したところ、被験者の95%で皮脂量の減少と脂っぽさの改善が認められました。
アルガンオイル単体の効果かどうかは不明ですが、皮脂バランスの調整にも寄与する可能性を示唆する興味深いデータです。
アルガンオイルの主な有効成分と期待される効果
| 成分 | 含有割合 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| オレイン酸 | 43〜49% | エモリエント、浸透促進 |
| リノール酸 | 29〜36% | バリア修復、抗炎症 |
| γ-トコフェロール | 約715mg/kg | 抗酸化 |
| フィトステロール | 不けん化物の約20% | 抗酸化、肌保護 |
顔・髪・全身に使えるアルガンオイルの賢い取り入れ方
アルガンオイルは、フェイスケアからヘアケアまで幅広い用途に対応できるオイルです。配合される化粧品の種類や塗布のタイミングによって、得られる恩恵が変わってきます。
美容液からシャンプーまで、配合アイテムは多彩
アルガンオイルを含むスキンケア製品は、フェイスオイル(美容オイル)、乳液、クリーム、クレンジングオイルなど多岐にわたります。ピュアオイルとして単体で販売されるケースも少なくありません。
ヘアケア分野でも人気が高く、シャンプー、トリートメント、ヘアオイルに配合されることが増えています。髪のキューティクルを保護し、パサつきを抑える効果が期待できるためです。ボディクリームやネイルオイルに配合される製品も見かけます。
朝と夜、いつ使うのが正解?
基本的に朝晩どちらでも使用できます。夜の使用であれば、洗顔後に化粧水で肌を整えたあと、乳液やクリームの前に少量を手のひらで温めてから顔全体に薄くなじませましょう。
手のひらの体温でオイルを温めることで伸びがよくなり、肌への浸透感が高まります。
朝に使う場合は、ごく少量(1〜2滴)にとどめましょう。オイルの量が多すぎると化粧崩れの原因になるためです。日焼け止めの前に薄く塗布すれば、乾燥対策と保護膜形成を両立できます。乾燥が気になる部分だけに部分使いするのも有効な方法です。
ヘアケアとしては、タオルドライ後の濡れた髪に毛先を中心につけるのが一般的です。頭皮マッサージに使う場合は、シャンプー前に数分間なじませてから洗い流す方法がよいでしょう。
アルガンオイルの使い方ガイド
| 使用部位 | タイミング | 使い方のポイント |
|---|---|---|
| 顔 | 朝晩 | 化粧水→オイル1〜2滴→乳液・クリーム |
| 髪 | 入浴後 | タオルドライ後、毛先中心に少量 |
| 頭皮 | シャンプー前 | 頭皮にオイルをなじませて数分マッサージ |
| 全身 | 入浴後 | 水気が残るうちにボディ全体へ薄く伸ばす |
相性の良い成分と避けたい組み合わせ
アルガンオイルは、水溶性の保湿成分と組み合わせることで効果を高められます。たとえばヒアルロン酸やセラミドを含む化粧水のあとにオイルを重ねると、水分を肌に閉じ込める「蓋」として機能しやすくなるでしょう。


ビタミンC誘導体との併用も抗酸化効果を補い合う点で好相性です。

一方、レチノール(ビタミンA誘導体)と同時に使う場合は、オイルの油膜がレチノールの浸透を妨げる可能性があります。
レチノールを先に塗り、浸透を待ってからオイルを重ねるとよいでしょう。
知っておきたいアルガンオイルの注意点とデメリット
天然由来のオイルとはいえ、すべての方の肌に合うとは限りません。使用前に知っておくべきリスクと注意点をまとめました。
かぶれや赤みが出るケースもある
植物由来の成分である以上、アレルギー反応を引き起こす可能性はゼロではありません。初めて使うときはパッチテストを行いましょう。二の腕の内側など目立たない部分に少量を塗り、24〜48時間ほど様子を見てください。
かゆみ、赤み、湿疹などが生じた場合はすぐに使用を中止し、皮膚科を受診することをおすすめします。
アルガンオイルはナッツ由来の成分であるため、ナッツアレルギーのある方はとくに慎重になる必要があります。マンゴーやカシューナッツなどウルシ科の果実にアレルギーがある方も交差反応の可能性を念頭に置いてください。
アルガンオイルの使用を避けたほうがよい人
以下に当てはまる方は、使用前に医師に相談してください。ナッツ類に対するアレルギー歴がある方、脂漏性皮膚炎など皮脂の過剰分泌による肌トラブルを抱えている方、そして重度のニキビで治療中の方です。
オイル全般が肌に合わないタイプの方も存在します。とくにオレイン酸はアクネ菌のエサとなりうるとの指摘もあり、ニキビが悪化するリスクは否定できません。
脂性肌の方が大量に使用すると毛穴詰まりの原因になることがあるため、使用量は控えめにしたほうが安心です。
化粧品のアルガンオイルと処方薬は別もの
アルガンオイル自体は処方薬として使われる成分ではありません。ただし、肌トラブルで皮膚科を受診すると、処方薬としてヘパリン類似物質やステロイド外用薬など別のアプローチが提示されることがあります。
化粧品のアルガンオイルは日々のスキンケアとして肌コンディションを維持するもの、処方薬は治療を目的としたものです。
両者を混同せず、肌トラブルが深刻な場合は自己判断に頼らず受診してください。
- 初回使用時は必ずパッチテストを実施する
- ナッツアレルギーの方は使用を控える
- 脂性肌やニキビ肌の方は少量から試す
- 酸化したオイルは肌への刺激になるため開封後は早めに使い切る
- 肌トラブルが改善しない場合は皮膚科を受診する
アルガンオイルとホホバオイル・他のオイルはどう違う?
植物由来の美容オイルは種類が多く、「どれを選べばよいかわからない」という声をよく耳にします。アルガンオイルと混同されやすいオイルとの違いを整理しました。
ホホバオイルとの違い|構造そのものが異なる
もっとも比較されるのがホホバオイルです。ホホバオイルは正確にはオイル(油脂)ではなく「液体ワックスエステル」に分類されます。
人間の皮脂にも含まれるワックスエステルと組成が近いため、肌なじみがよく酸化しにくい点が特徴です。

一方アルガンオイルはトリグリセリド(油脂)であり、リノール酸やビタミンE含有量の多さが持ち味です。バリア修復や抗酸化を重視するならアルガンオイル、さっぱりとした使用感や酸化安定性を重視するならホホバオイル、という選び方が目安になるでしょう。
オリーブオイルとの違い|脂肪酸バランスが違う
オリーブオイルもオレイン酸が主成分ですが、リノール酸の含有量はアルガンオイルより少なめです。
またアルガンオイルにはβ-シトステロールが含まれず、代わりにスピナステロールとスコッテノールという独自のフィトステロールを含みます。この違いが抗酸化プロファイルの差につながっています。
テクスチャーの面ではオリーブオイルのほうがやや重く、ベタつきを感じやすい傾向があります。スキンケア専用のオリーブスクワランを選べば使用感は軽くなるでしょう。
ただしその場合、アルガンオイルに含まれるγ-トコフェロールやリノール酸の恩恵は得られません。用途と好みに合わせて選びましょう。
美容オイル3種の比較
| 比較項目 | アルガンオイル | ホホバオイル |
|---|---|---|
| 分類 | 植物油脂(トリグリセリド) | 液体ワックスエステル |
| 主な脂肪酸 | オレイン酸、リノール酸 | エイコセン酸、エルカ酸 |
| ビタミンE含有量 | 多い(γ-トコフェロール) | 少なめ |
| 酸化安定性 | やや酸化しやすい | 非常に安定 |
| 使用感 | しっとり、やや重め | さらっと軽い |
それぞれの良さを活かした使い分けが賢い選択
どのオイルが「一番よい」という話ではなく、自分の肌質や求める効果に合わせた使い分けが大切です。
乾燥肌やエイジングケアを重視するならアルガンオイル、敏感肌で刺激を避けたいならホホバオイル、コストパフォーマンスや入手しやすさを重視するならオリーブスクワランなど、目的別に検討してみてください。
まとめ
アルガンオイルは、モロッコ原産の植物オイルとして保湿・抗酸化・抗炎症の面からスキンケアに貢献してくれる成分です。以下に、この記事の要点を整理します。
- アルガンオイル(アルガニアスピノサ核油)はオレイン酸とリノール酸が主成分で、肌のバリア機能をサポートする
- γ-トコフェロールやポリフェノールなどの抗酸化成分を含み、酸化ストレスから肌を守る働きが期待できる
- 臨床研究では皮膚の水分量向上や弾力性改善が報告されているが、化粧品としての効果には個人差がある
- ナッツアレルギーの方や脂性肌の方は使用にあたって注意が必要で、パッチテストが推奨される
- ホホバオイルなど他の美容オイルとは成分構造が異なるため、肌質や目的に応じて使い分けることが大切
肌の乾燥や荒れが長期間続く場合、あるいはアルガンオイルの使用で異常が生じた場合は、自己判断で対処せず皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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