マリオネットラインやほうれい線などのいわゆる「口元のたるみ」は、30代以上で多くなるお肌悩みのひとつです。
口元のたるみの原因は幅広く、タイプに応じた改善策が必要です。正しくケアしないと、かえって悪化する場合もあります。
この記事では、口元のたるみについて、引き上げる方法やマリオネットラインを消す方法、美容医療について解説します。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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口元のたるみ・マリオネットラインの原因
口元のたるみやマリオネットラインは、コラーゲン・エラスチンの減少や脂肪の増減・変形などが原因で起こります。
- コラーゲンやエラスチンの減少
- 脂肪の増減や変形
- 筋肉の低下
- 骨の萎縮
マリオネットラインと似ているお悩みに、「シワ」があります。シワが皮膚の表面に刻まれた “折り目” のようなものであるのに対し、マリオネットラインは皮膚がたるんだ結果、できてしまう溝のようなものです。
つまり、シワは皮膚が原因なのに対し、マリオネットラインやほうれい線は皮膚だけでなく、脂肪や筋肉、骨など顔の組織全体が原因となって起こる老化現象とも言えます。
コラーゲンやエラスチンの減少
20代までの若い方特有の肌のハリは年齢とともに徐々に失われていき、横顔のラインがどんどん曖昧になり、できてほしくない部分に嫌な線ができていきます。
これは、お肌の柱のような役割をしている「コラーゲン」や「エラスチン」が、20代後半を皮切りに少しずつ減少し、皮膚を支えられなくなってくるためです。
建物に柱が無くなってしまうと、崩れてしまうイメージをしていただくとわかりやすいですね。
皮膚のたるみ方は、顔の部位によって差が出るのが特徴です。たるみ方に差が出ると境界線(溝)ができてしまい、これがマリオネットラインやほうれい線となってしまうのです。
- マリオネットライン…たるみやすい頬下部分と、たるみにくい口周り部分の境界線
- ほうれい線…たるみやすい頬上部分と、たるみにくい口周り部分の境界線
- ブルドッグライン…マリオネットラインが進行してしまった境界線⇒たるみが強い部分と弱い部分の境目が“線”になって現れる
脂肪の増減や変形
顔に過度に皮下脂肪がついてしまっていると、口元がたるみやすいです。これは、コラーゲンを分解したり、皮膚の老化を促したりする皮下脂肪の作用に起因しています。
また、加齢で皮下脂肪の形が変形すると肌に凹凸ができてしまい、こちらもたるみを助長するとされています。
逆に皮膚に脂肪が少なすぎると、顔が瘦せ老けた印象をあたえやすくなってしまう恐れもあるため、年相応に適度に脂肪がついた状態を維持することが大切です。
筋肉の低下
表情筋には、顔の皮膚を引っ張る役割もあります。加齢による筋力低下や表情筋を使わない生活は、口元のたるみやマリオネットラインを悪化させる要因になります。
表情筋を鍛えると、口元のたるみだけでなく、顔全体の若返りに繋がることが医学的に証明されています。
骨の萎縮
加齢や栄養不足による骨の萎縮により、たるみが悪化する場合があります。
今までは「顔のたるみ=お肌の問題」と考える傾向がありましたが、最近では、頭蓋骨の萎縮は顔の老化に関係すると注目されつつあります。
口元のたるみ・マリオネットラインの改善を目指せる美容医療
口元のたるみ・マリオネットラインは、スキンケアや生活習慣の工夫で改善する可能性はあるものの、それだけでは劇的な変化は難しいです。
効果的に改善したいのであれば、ソフウェーブやポテンツァなど、美容医療の介入を検討しましょう。
- ソフウェーブ
- ポテンツァ
- ハイフ
- 口角ボトックス
- ヒアルロン酸注入
ソフウェーブ
ソフウェーブは、真皮層の浅い部分に超音波による熱を与え、お肌のたるみやシワの改善、引き締め効果を実感できる機器です。
似ている機器には、ハイフやサーマクールなどがあります。
ソフウェーブはより浅い部分に効率よく熱を伝えられるため、即効性・安全性に優れている特徴を持ちます。
ソフウェーブを動画で解説
ポテンツァ
ポテンツァは、微細な針とラジオ波による熱を用いて、たるみ・小じわ・毛穴の開き・ニキビ・肝斑など幅広いお肌の悩みにアプローチできる機器です。
お肌を適度に傷つけ、自然治癒力を引き出してコラーゲンやエラスチンの生成を促すほか、熱によるお肌の引き締め効果によりハリ効果が期待できます。
また、ポテンツァは悩みに合わせてカートリッジ(チップ)を使い分けられるのが特徴で、たるみ治療には針を使わないチップが使われる場合もあります。
ハイフ
ハイフもソフウェーブと同じく、超音波による熱をお肌に当て、たるみを改善する効果が期待できる機器です。
ハイフは、より肌の深い部分(筋膜や皮下脂肪)に熱を当てる点が他の器機との大きな違いです。
年齢とともに緩みやすくなる筋膜を引き締め、お肌の深部からのリフトアップが期待できるほか、皮下脂肪を減らしてたるみを改善できます。
ハイフを動画で解説
口角ボトックス
ボトックスは、表情筋を緩め、筋肉の働きで出来る大きなシワ(溝)の解消を目指す治療法です。
マリオネットラインを作ってしまう口周りの筋肉の中には、口を下に引っ張る「口角下制筋」があります。この筋肉をボトックスで緩めると、マリオネットラインを薄くする効果が期待できます。
ボトックスを動画で解説
ヒアルロン酸注入
以前は、ヒアルロン酸注入といえば、マリオネットラインやほうれい線に沿って直接注入するのが一般的でした。
最近では、線そのものではなく、たるみによってできた影部分を補う形で注入する方法がよく選択されています。そのほうが、顔全体のバランスが整い自然な若返りに見えるためです。
口元のたるみの引き上げに筋トレは有効?
口元のたるみやマリオネットラインの解消には、筋トレを利用したインナーケアも有効に働いてくれます。
たるみ改善の筋トレと言えば、顔の筋トレをイメージされる方も多いかもしれませんが、表情筋のトレーニングだけでなく身体を使った筋トレもマリオネットラインに有効です。
筋トレはたるみにも有効に働く1)
筋トレは、筋肉そのものを鍛える以外にも、成長ホルモンの生成を促してくれたり、骨を強くしてくれたり、基礎代謝を高めてくれる効果があります。
成長ホルモンが出ると皮膚のターンオーバーが活発になり、コラーゲンやエラスチンが増え、たるみの改善が期待できます。また、骨の強化は顔のコケによるたるみを予防する効果も。
最近の研究では、筋トレ運動をすることで身体から分泌される「マイオネクチン」という物質が、たるみやシワの改善に有益であるという報告も挙がっています。
表情筋は意識して使う程度でも十分
表情筋の運動に関しては、特に注力してトレーニングを行うというよりも、日々意識して表情を使うようにする程度でも十分です。
よく笑うように心がける、口角をできるだけ上げて過ごすようにするなど、小さなことから意識してみましょう。
顔の筋肉をピンポイントで鍛えるよりも、程よい運動とバランスの良い食事を心がけ、顔を含めた身体全体の筋肉や脂肪量を整えるとたるみ改善に効果的です。
口元のたるみやマリオネットラインを悪化させないための注意点
口元のたるみやマリオネットラインは加齢とともに誰にも起こる現象ですが、日常生活にちょっとした工夫や習慣を取り入れるだけで、ある程度の悪化を食い止められます。
紫外線予防
紫外線は肌のコラーゲンやエラスチンを変性させ老化を加速させる性質があります。
たるみをこれ以上悪化させないためには、紫外線を避け、できる限りコラーゲンやエラスチンを減らさないように心がけましょう。
日焼け止めを塗ることはもちろん、こまめに塗りなおしたり、帽子や日傘を習慣的に使ったりするのも有効です。
適切なスキンケア
肌が健康な状態であれば、ハリが出てきて肌がたるみにくくなります。また、肌が健康になるとターンオーバーも適切に行われるため、コラーゲンやエラスチンの生成もスムーズになります。
使用する化粧品は、保湿力が高く、コラーゲンの減少を抑えるビタミンCやレチノイドが配合されたものがおすすめです。
アンチエイジングを意識した食事2)
食事でのインナーケアでも、口元のたるみの悪化を防げます。
身体内部からコラーゲンやエラスチンを減少させるのは、“酸化と糖化”です。身体の酸化と糖化に繋がる食事を避け、逆に予防する食品を積極的に摂取するようにしましょう。
揚げ物や加工肉、砂糖がたっぷり入った清涼飲料水やお菓子など
抗酸化作用のあるブロッコリーやニンジンなどカラフルな緑黄色野菜、バナナなど。糖化を予防するには食物繊維の積極的な摂取、玄米・ライ麦パンなどを主食にするなどが有効です。
適度な運動
運動は身体だけでなく、肌のたるみを改善する効果があるとわかっています。
運動で分泌される成長ホルモンの働き・代謝の向上・骨の強化、どれも顔のたるみを改善するのに有効な働きを持っています。
運動は美容だけでなく身体の健康にも繋がるため、ぜひとも取り入れていただきたい習慣です。時間がない方は、自宅でできる筋トレやストレッチでも問題ありません。
まとめ
マリオネットラインをはじめとする口もとのたるみの原因には、肌のコラーゲンやエラスチンの減少のほかに、脂肪・筋肉・骨格などが深く関わっています。
改善方法として効果的な美容医療は、ソフウェーブ・ポテンツァ・ハイフ・口角ボトックス・ヒアルロン酸注入などです。
自分の口元のたるみが、ハリ不足によるものなのか、脂肪の増加によるものなのか、痩せこけによるものなのか、一度専門医の診断を受けてみてください。
自分で行えるたるみ改善方法には、筋トレや運動・スキンケアや紫外線予防・食事などがあります。
美容医療ほどの即効性はないものの、継続することでだんだんと線が目立ちにくくなるほか、たるみ予防にも役立つことばかりであるため、美容医療に加えて、ぜひ取り入れてみてくださいね。
口元のたるみの引き上げ・マリオネットラインの改善でよくある質問Q&A
参考文献
1) 体や顔の「たるみ」 解消はまず筋肉改善からー日本経済新聞
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXNASFK05038_W2A900C1000000/
2) J-stage「皮膚のアンチエイジング」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/18/3/18_121/_pdf/-char/ja
NILFOROUSHZADEH, Mohammad Ali, et al. Efficacy evaluation of endolift laser for treatment of nasolabial folds and marionette lines. Skin Research and Technology, 2023, 29.10: e13480.
MESS, Sarah Ann. Lower face rejuvenation with injections: Botox, Juvederm, and Kybella for marionette lines and jowls. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open, 2017, 5.11.