赤ら顔の皮膚科での治療はどんな内容？塗り薬や飲み薬、レーザーについてや保険適用まで解説

赤ら顔にはいくつかのタイプがあり、その原因や治療方法もさまざまです。

本記事では、赤ら顔の皮膚科での治療について、塗り薬や飲み薬の種類、レーザについて解説しています。

保険適用の有無にも触れているため、赤ら顔治療にご興味のある方はぜひご一読ください。

赤ら顔の症状と原因

「赤ら顔」と聞くと、頬や鼻あたりがポッと明るくなる様子が思い浮かびますが、実は赤ら顔には非常に多くの種類や原因があり、疾患や原因を見極めるのは医者であっても容易ではありません。

例えば、お酒を飲んで一時的に顔が赤くなる現象、ニキビがたくさん出来て顔が赤く見える現象、ホルモン分泌の異常が原因で頬に赤い斑点ができる現象…それぞれ全く違うものですが、これらは全て赤ら顔と表現されます。

原因と仕組みが理解できれば、対策のためにすべきことが自然と見えて来るようになります。

赤ら顔の種類と特徴

顔の赤みは、皮膚の炎症・血管の拡張・血流が良くなるのいずれか、また複数が起こった時に見られる現象です。

これは、どのタイプの赤ら顔であっても違いはありません。

そして、赤ら顔は大きく分けると、①身体を守るために皮膚でおこる反応、②皮膚疾患によるもの、③身体の内部でおこる反応、④全身疾患によるもの、の4つに分類できます。

これだけ聞いてもイメージが掴みにくいため、もう少し具体的に解説していきます。

①身体を守るために皮膚でおこる反応

日焼けした部分の皮膚が赤くなる、老化により細胞が変異して血管が拡張し皮膚の下に透けて見える（毛細血管拡張症）などがあります。

誰にでも起こるごくありふれた生理的反応であるため、軽度であれば治療は必要ありません。

②皮膚疾患によるもの

皮膚に何らかの病的な疾患が起こって赤みを帯びるタイプの赤ら顔です。

皮膚疾患が原因の赤ら顔は、保健医療による治療が受けられます。

赤ら顔を起こす皮膚疾患の例	症状
光線過敏症	少し日光を浴びるだけで皮膚に強い炎症をおこしてしまう。
接触性皮膚炎	化粧品、シャンプー、洗剤などが顔に触れると赤みや痒みがおこる。
脂漏性皮膚炎	鼻周辺や額が赤くなりやすい。フケや痒みが見られるのも特徴。
アトピー性皮膚炎	アレルギー反応による皮膚炎。
酒さ	頬や鼻によくみられる。火照りや刺激を感じる場合も。一過性の赤ら顔が条件に応じて出現するが悪化すると赤みが慢性化。
ニキビ	面皰（コメド）を持つのが特徴。炎症や炎症後の色素沈着により赤く見える。
皮膚血管腫	血管の奇形による血流の増加で赤く見える。

③身体の内部でおこる反応

ホルモンバランスや自律神経の影響によっておこる赤ら顔もあります。

治療の有無や方法はケースバイケースです。具体的には、更年期のホットフラッシュ・自律神経失調・精神的な緊張が挙げられます。

また、辛いものや熱いものを食べた際に顔が赤くなったり発汗したりする現象も、この反応にあたります。

④全身疾患によるもの

例えば、膠原病・細菌感染・ウイルス性発疹・ホルモンの分泌異常といった全身疾患には、一部症状に赤ら顔があります。

この場合は、赤ら顔にではなく、疾患へアプローチした治療が主なものになります。

原因となる生活習慣や環境要因

赤ら顔の種類を一通り確認したところで、だんだんと、赤ら顔の原因となる要因が見えてきたのではないでしょうか。

先述したとおり、赤ら顔は「炎症・血管の拡張・血流が良くなること」が根本的な原因です。

炎症

皮膚の炎症を抑えるための免疫細胞を患部に行き渡らせるため、血管を一時的に拡張した際に皮膚が赤く見える。

⇒菌の異常繁殖、化粧品や金属などによるかぶれ、アレルギー、アトピー、炎症ニキビ、日焼け

血管の拡張

皮膚の毛細血管が過度に開いてしまったり増殖してしまった際に赤く見える。

⇒ニキビ跡や色素沈着、酒さ、小鼻や頬周辺に網目模様の赤みが広がる毛細血管拡張症、赤あざ

血流が良くなること

寒暖差や緊張、お風呂上りや飲酒後に顔の血管が一時的に拡張し、顔が赤く見える。

⇒温度変化、飲食物、自律神経、緊張、高血圧

赤ら顔を治すには何から始める？

疾患やあざが原因の赤ら顔を除けば、そのほとんどは自身の生活上での心がけ次第で、ある程度は改善できます。
※ただし、自力の完治や大幅な改善は難しいです。

真っ先に取り組める方法としては、赤ら顔を誘発させてしまう習慣をやめる、スキンケアを工夫するなどがあります。

しかし、先述したとおり赤ら顔の原因は非常に多岐にわたり、複数の原因が混在しているケースも少なくありません。検討外れの治療をして悪化してしまうケースもあります。

生活習慣やスキンケアの改善をしても一向に良くならない場合は、早めに皮膚科医に相談するようにしてください。

生活習慣の改善ポイント

生活習慣で気をつけるポイントは、炎症をおこす要因を取り除くこと、血流を過度によくするような習慣を避けることです。

炎症タイプの赤ら顔の方は、自分がどんな物質にかぶれやすいのか、アレルギー反応をおこしやすいのか、ニキビをできやすくしているのか気づいていない方も意外に多くいらっしゃいます。

現在使用している化粧品や塗り薬、シャンプーを見直してみると、肌に良かれと思って使用していたものが実は炎症をおこす原因になっていたというのもよくあるお話です。

まずはできるだけ使用する製品をシンプルにしてみて、炎症の原因を探り、取り除くというのもひとつの方法です。

また、脂漏性皮膚炎や酒さタイプの赤ら顔の方は、皮膚への摩擦や過度な運動やサウナ、刺激のある飲食物で血流が良くなり赤ら顔を誘発しやすくなるため、こういった要因をできるだけ遠ざけるのも有効でしょう。

更年期によるもの、自律神経の乱れやホルモンバランスによる赤ら顔も、ストレス対策や規則正しい生活により、ある程度の改善が見込めます。

自宅でのスキンケアの基本

赤ら顔へのスキンケアの基本は、やさしい洗顔・できるだけシンプルな成分・たっぷりの保湿です。

どんな皮膚疾患を持っているかによって、適したスキンケア剤は少しずつ異なってきますが、基本的にはどんなタイプの赤ら顔であっても、刺激となる成分は避けるようにします。

また、肌のバリア機能維持のために、保湿成分を配合しているものを選ぶのもポイントです。

スキンケア方法

洗顔時は弾力のあるたっぷりの泡で肌をやさしく包み込むように洗います。皮膚を手で直接触れず泡をクッションにして洗うイメージです。

洗い流す水も冷たすぎたり熱すぎたりはNG。30℃前後のぬるま湯を手ですくってすすぎましょう。

洗顔後スキンケア剤を塗る際もゴシゴシと摩擦するのはNG。赤ら顔の場合は強いパッティングもおすすめしません。

スキンケア剤は手に広げ、ハンドプレスするようにやさしく塗布しましょう。

スキンケア剤の選び方

肌の刺激になるアルコール、ピーリング成分を配合したものは避けてください。

また、赤みが強い場合は美容成分のレチノールやアスコルビン酸も刺激になりやすいため、落ち着くまでは避けた方が無難です。

スキンケア剤を選ぶ際のひとつの目安としては「低刺激・敏感肌肌用」と書かれているものを選ぶ方法があります。

低刺激・敏感肌用のスキンケア剤は、肌に刺激となる成分の使用をできるだけ控え、肌のバリア機能を回復させるためのセラミドやヒアルロン酸を配合しているものが多いためです。

他にも、肌と同じphである弱酸性の製品、マイルドに洗えるアミノ酸洗浄成分を配合した製品も赤ら顔のスキンケア剤として向いています。

製品の中には、「ニキビの方向け」「酒さの方向け」というように、お悩みに応じた製品が展開されている場合もあります。

皮膚科ではどんな治療が受けられる？

赤ら顔を皮膚科で治療する場合、多くのケースで塗り薬や飲み薬の処方が選択されます。

また、生活習慣やスキンケアは赤ら顔と切っても切れない関係にあるため、指導や指示を受ける場合もあります。

塗り薬の種類と使用方法

ステロイドや抗菌薬など、皮膚疾患に応じた塗り薬が選択されます。塗り薬にはステロイド剤や軟膏、クリームがありますが、擦り込まず、やさしく伸ばして塗るようにします。

1日に塗る回数やタイミングは決まっているため、指示された回数だけ使用するようにしましょう。

基本的には1日1～2回程度塗り、症状が改善すれば1日1回、だんたんと頻度を少なくしていきます。

塗り薬が複数処方されている場合は、医師から説明された順序を守って使用します。特に説明がなければ、塗る面積が広い塗り薬から順に塗ってください。

疾患	塗り薬の種類
接触性皮膚炎	ステロイド
脂漏性皮膚	ステロイド、抗菌薬
アトピー性皮膚炎	ステロイド、保湿外用薬
ニキビ	抗菌薬、過酸化ベンゾイル、アダパレン
酒さ	メトロニダゾール、アゼライン酸

飲み薬が必要となるケース

症状によっては外用薬とともに飲み薬（内服薬）が処方されます。

皮膚疾患の中でも炎症反応が重度に見られる場合に、炎症を落ち着かせる目的で抗菌薬を処方されるケースが多いです。

また、接触性皮膚炎やアレルギー反応が原因の場合は抗ヒスタミン薬が処方される場合もあります。

身体のほてり血流が原因で赤ら顔が起こっている場合やホルモンバランスや自律神経の不調で赤ら顔を誘発している場合には、漢方を使って緩やかに症状を改善していく治療というのもあります。

疾患	飲み薬の種類
脂漏性皮膚、ニキビ、酒さ	抗菌薬、漢方薬
接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎	抗菌薬、抗ヒスタミン薬

軟膏とクリームの使い分け

外用薬には軟膏、クリーム、ローションタイプのものがあり、皮膚の症状や部位に応じて使い分けられます。

赤ら顔にまつわる皮膚疾患の治療には軟膏とクリームが選択される機会が多いため、今回はこの2種類の違いや使い分けについて解説します。

軟膏

効果のもとになる成分に油脂性のワセリンを混ぜた塗り薬。

べとつき感はやや強めですが、皮膚への刺激がほとんどなく、傷がある部位を保護したり皮膚を柔らかくする作用があります。

基本的にはどのような皮膚疾患にも使用できます。

クリーム

効果のもとになる成分に水と油を乳化させたものを混ぜた塗り薬。水を含んでいるためさらさらとしてのびがよく、使用感がよいのが特徴です。

皮膚に吸収されやすいため、皮膚の深いところに浸透させたい時に使用されます。使用がよいものの刺激がややあるため、傷がある部位には適していません。

どちらを使用するかは症状次第

赤ら顔はできるだけ皮膚への刺激を避けるのが望ましいため、刺激の少ない軟膏が選択されやすい傾向にあります。

ただし、広範囲に塗布するタイプの塗り薬に関しては、よりのびやすいクリームが適している場合もあります。

皮膚の状態や治療方針に合ったものが選択されるため、医師の指示に従うようにしましょう。軟膏やクリームの要望がある場合は、事前に医師に相談できます。

治療期間の目安

基本的にはずっと同じ薬を長期間使用するのは避け、症状に応じて、塗り薬の種類や塗る頻度を調節していきます。

特にステロイド薬は長期間使用すると、皮膚が薄くなったり敏感になったりといった副作用が起こるリスクが高まるため、快方に向かえばだんだんと使用頻度を抑えていくようにします。

一見症状が見えなくなったとしても、皮膚内部に炎症が残っているケースもあるため、薬を中止するタイミングは医師の指示に従うようにしましょう。

皮膚科でのレーザー治療は効果がある？

赤ら顔の一部症状では、レーザー治療が選択できるものもあります。

ただし、各皮膚疾患ガイドラインでは、外用薬や内服薬での治療の推奨度の方がレーザー治療よりも高くなっているため、レーザー治療はあくまでも補足的に取り入れるものとしてご理解ください。

適応となる症状

赤ら顔のレーザー治療で適応となる症状としては、炎症後紅斑、毛細血管拡張症、酒さ、赤あざがあります。

炎症後紅斑は、かぶれやニキビの炎症が鎮静化したあとに血管が拡張して色素沈着をおこしてしまったもの、毛細血管拡張症と赤あざは血管細胞の変異で血管が拡張してしまったものを指します。

酒さに関しては、血管拡張を原因とする赤みに効果があります。

メリット・デメリット

赤ら顔は通常の治療だけでは改善までに時間がかかりやすいです。

例えば、ニキビ跡による炎症後紅斑は時間の経過とともに自然に消失していくものではありますが、半年から長くて2年ほど跡が消えないケースもあります。

そういった場合レーザー治療を行えば比較的短期間で赤みが消失します。

毛細血管拡張症に関しても自然完治が難しい疾患とされていますが、レーザー治療を行えば赤みの改善が期待できます。

このように、通常の治療では赤みを消すのが難しかったり、時間がかかったりする赤みにも効果がある点がレーザー治療の大きなメリットです。

しかし、赤みにまつわるレーザー治療のほとんどは保険適用外となっているため、治療費が高くなってしまう点がデメリットと言えます。

治療の流れと回数

レーザー治療に必要な回数は、疾患の種類や症状の程度によって異なるため一概には言えません。

しかし、1回の照射できれいに消失するケースはほとんどなく、満足のいく結果を得られるためには複数回の照射が有効です。

一般的には3～10回ほどで満足のいく結果が得られるとされていますが、毛細血管拡張症の場合は、少ない回数でも効果が出やすい傾向にあります。

症状	回数の目安
酒さ	5～10回
毛細血管拡張症	1～5回
赤あざ	3～10回
ニキビ跡	3～10回

赤みのレーザー治療は、2週間～1ヶ月間隔での照射が可能です。回数を重ねるごとに治療効果が上がるため、継続的な治療がカギになります。

医療保険適用の範囲

炎症が原因で起こっている赤ら顔の多くは、保険適用内での治療が可能になっています。

また、血管の拡張が原因でおこっている赤ら顔については一定の条件をクリアすれば、Vビームによるレーザー治療が保険適用内で行えます。

炎症タイプ赤ら顔の多くは保険治療が可能

接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、酒さ、ニキビなど皮膚の炎症にまつわる赤ら顔治療については保険適用内で治療が行われます。

ただし、保険適用内でできる治療は外用薬・内服薬での治療に限られ、保険適用できる薬剤の種類についても限りがあります。

レーザー治療やピーリング、一部の薬剤については保険適用外となるため、注意しましょう。

疾患名	皮膚科治療薬	保険適用
脂漏性皮膚炎	ステロイド外用薬	〇
接触性皮膚炎	抗菌薬	〇
	ステロイド外用薬	〇
アトピー性皮膚炎	ステロイド外用薬	〇
	保湿外用薬	〇
	その他の軟膏	〇
酒さ	ブリモニジン	×
	オキシメタゾリン	×
	イベルメクチン	×
	イオウカンフルローション	〇
	抗菌薬	〇
	アゼライン酸	×
	メトロニダゾール※ロゼックスゲル	〇

一部のVビーム治療は保険適用内

狭い範囲の毛細血管拡張症、血管腫による赤あざについては保険適用内でVビーム治療が受けられます。

ただし、保険適用はあくまでも「治療」を目的とした行為のみです。治療の必要性が認められなければ美容目的の自由診療となってしまう点には注意が必要です。

保険適用が認められるかどうかは医師の判断に委ねられます。また、照射範囲や照射頻度にも制限があり、1回に照射できる範囲は180㎠まで、3ヶ月の間隔を開けての照射としている点にもご留意ください。

保険適用のVビームの方が小さな負担で利用できる半面、条件や制約が多くなってしまうのが難点です。

できるだけ早く赤みを解消したい場合は、面積制限なく2週間おきに照射可能な自由診療の方がスムーズに治療を進められる可能性が高いです。

まとめ

赤ら顔の治療の基本は外用薬や内服薬の処方が選択され、いずれも保健適用内での治療が可能です。

レーザー治療や一部の処方薬は保険適用外となりますが、毛細血管拡張症や赤あざに関しては条件付きで保険適用となる場合があります。

また、自宅でのスキンケアや生活環境の改善でも赤ら顔をある程度改善できます。

肌の炎症の原因になる化粧品や衣類、食べ物を避け、刺激の強い食べ物、血流を過度に良くしてしまうサウナや運動を避けるなどの方法があります。

赤ら顔はゆっくりと改善していく傾向にあるため地道な取り組みが大切です。

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皮膚科領域の薬の使い方 – 皮膚科Q＆A（公益社団法人日本皮膚科学会）

岩井製薬株式会社　軟膏とクリームの違い

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