軽度の酒さは治療が必要？悪化させないための注意点

一時的な顔の赤みや、火照りに症状がどとまる“軽度の酒さ”であれば、日頃のケアや日常生活の心がけ次第で悪化をある程度食い止めることも難しくありません。

本記事では、軽度の酒さの治療について解説。症状や見分け方、悪化させないための注意点などを紹介しています。

軽度の酒さの特徴

酒さは、頬や鼻の周辺に赤みを生じる皮膚疾患で、赤ら顔とも呼ばれます。

顔が赤くなる皮膚疾患は数多くありますが、酒さは単なる赤みだけでなく、ブツブツとした盛り上がりや毛細血管の広がり、皮膚の火照りや乾燥など症状が多岐にわたるのが特徴です。

一般的な酒さとの違い

酒さは症状に応じて4つのタイプに分けられ、複数のタイプが混在することもしばしばです。

顔面中央部分の赤みや火照り、ピリつきやかゆみはほとんどの方に見られる症状で、鼻瘤（びりゅう※団子鼻のような組織の変形）や目に結膜炎ができるタイプもあります。

酒さの分類	詳細
紅斑毛細血管拡張型（こうはんもうさいけっかんかくちょうがた）	鼻、頬、あご、眉間など顔の中央部分に赤みが見られる。小鼻の脇や頬などにチリチリとした毛細血管、火照りやかゆみが見られる。
丘疹膿疱型（きゅうしんのうほうがた）	赤みのある毛穴の周りにブツブツとした盛り上がり（丘疹）ができる。丘疹は膿をともなう場合も。
鼻瘤腫型（びりゅうがた）	酒さが長期化して鼻の皮膚がゴツゴツと厚くなり団子鼻のようになる。こぶのように膨らんだ鼻では毛穴が開き皮脂が出やすくなる。
眼型（がんがた）	比較的稀なタイプの酒さ。目の充血や腫れなど結膜炎のような症状が見られる。

軽度の酒さは、この4つのタイプのうち紅斑毛細血管拡張型の初期状態にあてはまります。

見落としやすい初期症状

酒さの症状は皮膚炎やニキビと似ているため、初期時期に酒さであることに気づけず、知らず知らずのうちに症状が悪化してしまうというのもよく聞くお話です。

また、ちょとした気候変動やお肌のゆらぎ、更年期障害でも顔はすぐに赤くなるものなので、一時的に赤くなっているだけなのか疾患によるものなのかの境界がつきにくい点も、酒さの初期症状を見落としてしまう一因と考えられます。

自己判断のポイント

酒さは他の皮膚疾患との見分けがつきにくく、自己判断どころか医師の診断でさえ難しいと言われています。

また、酒さが進行していくと、他の皮膚疾患を合併したり症状が多様化したりして、より酒さの見分けや悪化の要因の判断がつきにくくなってしまう事態も考えられます。

症状の見極め方

酒さは症状の出かたの個人差が大きく、症状が落ち着いたり悪化したりを繰り返す特徴を持ちます。

また、軽度と中度の境界線が曖昧だったり、他の疾患と間違えてしまったりと症状の見極めがつきにくいです。

症状の見極めは難しいものの、医療領域で用いられている分類や指標を参考に慎重に判断していきます。

軽度と中度の境界線

酒さの症状の中でも、比較的軽度な症状としては、環境や生活習慣によっておこる一時的な顔の赤みやほてりです。

こちらが中度になっていくと、赤みや火照りの頻度が広範囲かつ常態化していき、炎症感が強くなり、かゆみやピリつきなどがおこります。

また、頬や鼻のまわりには薄い毛細血管が網目模様のように広がります。

境界線の判断には、医療領域で用いられている4つの段階が参考になります。

酒さの症状の段階	詳細
酒さ前駆期（1期）	頬と鼻が赤くなる。赤くなる時間が長くなり、皮膚がチクチクとしてくる。
血管期（2期）	赤みや火照りの頻度が常態化。皮膚の刺激感、腫れ、かゆみが強くなる。細いモヤモヤとした毛細血管の広がりが鼻や頬に見える。
炎症期（3期）	血管貴の症状とともにポツポツとした吹き出物（丘疹）が見られる。膿をともなう場合もある。
進行期（4期	鼻の皮膚が厚くゴツゴツとしてくる。団子鼻のようになる。

酒さの軽度と中度の境界線としては、1期から2期が目安です。

要注意のサイン

酒さは症状のひとつの判断ポイントには、2002年に実施された酒さエキスパートのコンセンサス会議で提起された診断基準が参考になります。

主症状のうち1つでも当てはまれば酒さを疑い、さらに副症状を1つ以上確認すれば、より強く酒さを疑うのが適当とされています。

つまり、主症状のいずれかに加え、副症状がどれかひとつでも当てはまれば、それは要注意のサインです。

誤認しやすい肌トラブルとの違い

酒さとよく似た症状を持つ皮膚疾患には、ニキビや皮膚炎があります。

いずれも皮膚に赤みを帯びるため、酒さを見た目はよく似ていますが、症状や原因は全く異なるものです。

酒さと似ている皮膚疾患	症状	酒さとの違い
尋常性ざ瘡（ニキビ）	毛穴が詰まりアクネ菌が増え、炎症がおこる。	毛穴の毛細血管の広がりはおこらない。面皰（白ニキビ）ができる。
口囲皮膚炎眼囲皮膚炎開口部皮膚炎	ステロイド剤や歯磨き粉のフッ素などでおこる皮膚炎。	口や目の周りを中心にできる。唇ギリギリの周囲には症状がでない。
接触性皮膚炎	塗り薬や化粧品、シャンプー、金属などの刺激によりおこる皮膚炎。	顔だけでなく身体にもおこる。原因になる物質に触れたところに症状がおこる。
脂漏性皮膚	皮膚の常在菌であるマラセチア菌げ原因と言われている。	頭皮にも炎症がおこる。鼻周辺や額など皮脂が多いところにできやすい。

この他にも、酒さと混同しやすい皮膚疾患がいくつかあります。

また、疾患は単体ででなく、同時並行で起こっていたり、ある疾患が他の疾患を誘発していたりといったケースも考えられます。

軽度段階での対応が重要な理由

酒さの治療は長期戦であるため、早期発見、早期治療が重要です。

早期発見のメリット

実は酒さというのは、現在のところ根本的な原因がわかっていません。

ただ、酒さを誘因してしまう要因と症状を落ち着ける働きのあるお薬についてはわかってきているため、酒さを引き起こしてしまう要因を回避しつつ、治療によって酒さ症状をコントロールしていくことはできます。

放置するリスク

酒さが重度になってしまうと治療にかなりの時間を要してしまうばかりか、鼻瘤まで進行すると薬では完全な改善が困難になってしまいます。

鼻瘤を元の状態に戻すためには、皮膚を削ぎ落す手術が必要であるため、ひどい状態になってしまう前に治療を開始しましょう。

顔ダニと軽度酒さの関係

「顔ダニと酒さには関連性があるのではないか？」と随分と昔から議論はあるものの、未だ明確な関連性についてはわかっていません。（尋常性痤瘡・酒皶ガイドライン 2023にも顔ダニと酒さの関与について明記はありません。）

そもそも顔ダニとは？

顔ダニとは節足動物（クモの仲間）の一種です。

人の顔面の毛包部に生息しており、ニキビの中に多く生息する特徴からニキビダニとも呼ばれることもあります。

ニキビにだけでなく、健康な皮膚にも寄生しており、皮脂を好みます。

ほとんどの人の顔面に生息していて、その数は1人につき200万匹ほどだそうです。

同じような名前を持つ布団やカーペットにいるようなダニとは全く別の生物であり、基本的に悪さをするようなものではありません。

顔ダニと酒さが関係していたとしても、あらゆる因果関係が考えられるため、現時点ではその関係性を明確に判断するのは難しいです。

ですので、顔ダニを減らすというような自己治療をむやみにしようとせず、医師の方針や指示に従うようにしましょう。

軽度の酒さに適したスキンケア

普段あたりまえのように何気なく行っているスキンケアでも、酒さを誘引したり悪化させたりする原因になっている可能性があります。

逆に、正しいスキンケアを行えば、酒さの改善や原因を回避できます。軽度の酒さの時からスキンケアに気を付ければ、悪化予防にも繋がります。

刺激を与えない基本ケア

酒さのスキンケアでは「清潔」「シンプル」が重要なポイントです。

また、乾燥や紫外線も酒さを悪化させる要因であるため、保湿や紫外線予防にも気を配ります。

洗顔

熱すぎず冷たすぎない30℃くらいのぬるま湯で優しく洗います。洗顔料はしっかりと泡立てて、もこもこの泡で肌を包み込むように。肌と手の間に泡をすべらせるイメージです。

洗顔後にタオルで顔を拭く際もタオルをポンポンと優しく押し当てるようにして水分を拭きとります。

保湿

皮膚の乾燥は酒さの悪化につながるといわれています。

これは、皮膚が乾燥すると肌のターンオーバーが上手くいかなくなり、バリア機能が低下しまうことが背景にあります。

酒さの改善には肌のバリア機能の回復が重要とも言われているため、特に洗顔後や冬場にはこまめな保湿をこころがけます。

紫外線予防

紫外線も酒さを悪化させる代表的な要因です。帽子や日傘、日焼け止めを使って紫外線を避けるようにしましょう。

避けるべき製品

初期の酒さではスキンケアが改善や予防に果たす役割が大きくなりますが、どのようなスキンケア製品を選べばいいかわからないといったお声もよくいただきます。

酒さは外部からの刺激が症状を悪化させてしまうため、できるだけ低刺激なものを選ぶようにしてください。

パッケージに書かれている「低刺激・敏感肌用」の表記は、酒さに適したスキンケア製品を選択する上でのひとつの目安になります。

また、製品を選ぶ際には自分の肌状態に適した保湿剤が配合されているものを選ぶのもポイントです。

肌タイプ	適した保湿剤タイプ
脂性肌	保水成分が主体の保湿剤
乾燥肌	保水成分と油性成分が主体の保湿剤

肌バリア機能の維持方法

酒さは、外的な刺激が悪化の引き金になってしまいやすいです。

そこで、強い味方になってくれるのが肌のバリア機能の存在。肌のバリア機能がしっかりと働いていれば、外的な刺激から肌を保護してくれるため、刺激になる要因を少しでも減らせます。

肌のバリア機能を維持するためには、肌のターンオーバーを整えるのが一番の近道です。

軽度段階での治療選択

軽度の酒さであれば、自身で行うスキンケアや生活習慣で症状が治まる場合があります。

しかし、なかなか快方に向かわない場合はためらわずに医療機関へ受診するようにしましょう。

生活改善で改善できる範囲

スキンケアを見直し、皮膚の刺激となるような生活習慣を遠ざける工夫からはじめてみてください。刺激になりうる要因としては、紫外線、温度変化、刺激の強い化粧品や食品などがあります。

また、ストレスも酒さ悪化の原因と言われているため、できるだけストレスのない生活を心がけます。

ステロイド使用の是非

顔の赤みや炎症の治療にステロイド外用剤が用いられるケースはめずらしくありません。

ステロイド処方が適切な皮膚疾患はもちろんありますが、酒さの方にステロイドを用いてしまうと、症状が悪化してしまう恐れがあります。

もし現在ステロイドを使用していて酒さが疑われる場合、ステロイドの使用をいったん休止し様子をみるか、酒さ治療に適した外用剤に切り替えるようにします。

ステロイド酒さと呼ばれる状態

皮膚に赤みがある際にステロイド外用剤を塗ると一時的に良くなるものの、ほどなく炎症が再燃します。

繰り返し使用しているうちに再燃までの感覚がだんだんと短くなり、ついにはステロイド外用剤を塗っても改善しない、または悪化する状況になっていきます。

これをステロイド酒さ、酒さ様皮膚炎と呼びます。

医療機関受診の判断基準

酒さでお悩みの方はたとえ軽度であったとしても、生活習慣の見直しで良くならない場合はためらわずに医師に相談してください。

酒さは他の疾患と混同しやすく、もしかすると酒さではなく他の疾患である場合や、酒さと他の疾患が合併しているケースも考えられます。

酒さの治療を動画（YouTube）で解説

酒さの治療について詳しく見る（名古屋のこばとも皮膚科） 

軽度を維持するための生活習慣

酒さを軽度なままで維持するために必要な日常の予防、気を付けたいポイントについてまとめています。

日常的な予防策

日常的にできる予防策としては、スキンケア・保湿・紫外線対策があります。

また、飲食するもの、運動習慣、ストレス対策、月経時期のケアに気を付けるのも有効です。

酒さの予防策	詳細
刺激の少ないスキンケア	低刺激、敏感肌用のスキンケア剤を使用する。ぬるま湯を使い、こすらず優しく。
こまめな保湿	乾燥は酒さの敵。バリア機能を維持するため、保水と油分を上手く使い分けて保湿。
紫外線対策	紫外線が刺激になり酒さが悪化するほか、ターンオーバーを乱す原因にも。日焼け止めも低刺激なものを選ぶ。帽子や日傘も使おう。
飲食物に気を付ける	アルコール、熱い食べ物、香辛料の摂りすぎは酒さを悪化させるため、ほどほどに。
運動習慣	激しい運動は血管を拡張させ酒さを誘発させるため、軽い運動からはじめる。
ストレス対策	気分転換や趣味の時間をつくるなど。
月経時期のケア	ホルモンバランスの乱れが酒さを悪化させるケースがあるため、月経症状がひどい場合は婦人科に相談する。

環境要因への対処

生活習慣だけでなく、季節の変わり目や花粉などの外部的な環境要因も酒さが悪化してしまう原因になりえます。

環境要因を変えるのはなかなか難しいですが、なるべく遠ざけるような工夫をしたいところです。

たとえば、カーディガンやストールを使用する、重ね着をするなど、体温調節がしやすい服装を選ぶと急激な外気温の変化にもある程度対応できます。

特に冬場は室内外の寒暖差が激しく酒さが悪化しやすいため要注意です。

花粉症時期には、マスクやメガネを使った花粉症対策などがあります。

まとめ

酒さのなかでも軽度の酒さは、紅斑毛細血管拡張型タイプの酒さのうち、酒さ前駆期（1期）と呼ばれる段階のものを指します。

具体的な症状には、一時的な顔の赤みや火照り、かゆみ、毛細血管の広がりなどがあります。

酒さの症状の見極めは医師でも難しく、酒さに似た皮膚疾患も多数存在するため、症状が気になる場合は早めの皮膚科受診が望ましいです。

酒さを悪化させないためには、刺激の少ないスキンケアや保湿、紫外線対策を心がけるようにします。

酒さを悪化させる要因を避けるのも重要で、具体的にはアルコールや香辛料といった刺激になる食べ物を避ける、血流を一気に上げるような激しい運動やサウナを避けるなどが方法として挙げられます。

ホルモンバランスの乱れも酒さを悪化させる原因になるため、ストレスの少ない規則正しい生活を心がける、月経症状がひどい場合は婦人科に相談するなどの方法も有効でしょう。

参考文献

尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023

田邉洋, et al. ニキビダニ症の 1 例. 天理医学紀要, 2023, 26.2: 123-131.

山崎研志. 酒皶の発症メカニズムとその最新知見: 自然免疫機構の皮膚疾患に与える影響. 日本皮膚科学会雑誌= The Japanese journal of dermatology, 2011, 121.13: 2852-2854.

山﨑研志. 赤ら顔と自然免疫. 日本香粧品学会誌, 2016, 40.1: 20-23.

中村健一. VI. 内科医が心得るべき皮膚疾患の落とし穴. 日本内科学会雑誌, 2021, 110.12: 2560-2566.

MSDマニュアル家庭版-酒さ-

MSDマニュアル家庭版-にきび（ざ瘡）-