酒さを起こしやすい方の体質改善のポイント～毎日の小さな習慣で作る、揺るぎない肌基盤

近年酒さにお悩みの方が増えてきている印象ですが、酒さは単なる皮膚トラブルではなく、体質との関係性も深いです。

皮膚科での治療が効果的ですが、同時に、毎日の習慣で酒さを改善する体質改善も欠かせません。

当ページでは、酒さを起こしやすい体質の特徴から、スキンケアや体質改善の方法までを解説しています。

酒さとは

酒さは、炎症性の皮膚疾患です。30代後半から50代くらいの間に発症する方が多く、「赤ら顔」の一つとして知られています。

初期症状として10分以上続く一時的な顔の赤みやほてりなどが繰り返し起こりますが、この段階で酒さを疑う方は少ない、繰り返すものの放っておいても消えるので治療が必要なものと思わないなどの理由で、症状が進んでから来院される方が多いです。

症状の特徴と発症する原因

酒さの典型的な症状には、主に顔の中心部に広がる肌の赤み、ニキビのような小さなブツブツ、顔のほてりなどがあります。

また、酒さの症状が影響して毛穴が開いて見えるケースも多いです。実際にダーモスコピーといった顕微鏡で見てみると、開いた毛穴と周りが赤くなっているような状態がよくみられます。

酒さの症状	特徴
赤み	ほほ、鼻を中心とした顔の赤み
ブツブツ	ニキビのような小さな丘疹、膿を持った膿疱
ほてり	赤みが現れているときの顔の熱感
毛細血管拡張	チリチリとした枝状の細かな血管が透けて見える
ゴワゴワした肌質	重症例では皮膚が厚くなったり硬くなったりする
刺激感	ヒリヒリ、チクチクした感じやかゆみ

共通して赤みが認められますが、ブツブツがない方もいれば、目の周りに症状が現れる方もいます。

酒さの原因は、現在のところ完全には明確になってはいません。

ただ、悪化因子は分かっていて、紫外線や暖房、アルコールや香辛料、激しい運動などで症状が現れたりひどくなったりします。

酒さになりやすい体質の特徴

酒さになりやすい人は、体質に共通した特徴があります。

肌の色が濃い人よりも、色白さんのほうが酒さを発症しやすいです。また、もともと皮膚が薄い人は皮膚の表面から毛細血管が透けて見えやすいため、顔の赤みが目立ってしまいます。

好発年齢は30～50代ですが、20代から一時的な顔の赤みやほてりが現れる人も多いです。

一般的な治療法と限界点

酒さは完治が難しい（難治性）疾患ですので「一生治らない」と思っている方もいますが、治療や生活習慣の改善、体質改善などによってあまり目立たない程度まで症状を抑えることも可能です。

一般的な治療法として外用薬と内服薬がありますが、どの方法を選んでも治療期間は長めになります。

外用薬や内服薬で改善しない場合や毛細血管拡張に対しては、レーザー（Vビーム）やIPL（BBL）を照射するケースもあります。

治療への反応は個人差がありますし、いちど改善しても再発する可能性がある疾患ですので「日常生活に支障がない程度まで症状を抑える」を治療のゴールと考えていただくと問題ないかと思います。

症状が落ち着いてからもメンテナンスが必要ですので、根気強く治療を行いましょう。

誤解だらけの酒さケア

酒さをケアするためには、スキンケアはもちろんですが、生活習慣にも気をつけなければなりません。

スキンケア商品選びの落とし穴

ビタミンCのような美白成分は肌の刺激となりやすい傾向があるため、酒さの方は注意が必要です。

また、酒さのブツブツをニキビと勘違いしてピーリング成分の含まれた化粧品を使う方もいますが、これも酒さを悪化させる原因となります。

間違った生活習慣の影響

間違った生活習慣は、酒さを悪化させる原因となります。

とくに注意したいのが、紫外線対策です。紫外線は酒さを悪化させる代表的な原因ですので、寒い時期であっても毎日日焼け止めを使用するようにしてください。

また、アルコールは血管を拡張させて顔の赤みを強くしてしまいます。たまに付き合いで飲酒するくらいであればそこまで問題にならないかと思いますが、酒さを悪化させないためにも頻度や量を抑えるようにしましょう。

なぜ一時的な改善で終わるのか

スキンケアや生活習慣の工夫をして一時的に酒さが改善しても、すぐに赤みが戻ってしまうケースも多いです。

肌の炎症を根本的に改善できているわけではない、新たに血管が拡張・増殖してしまう、悪化させる原因を取り除けていないなどの理由から、ちょっとしたきっかけで酒さが再発してしまうときがあります。

酒さの症状に合わせた治療、ご自身でできるスキンケアや生活習慣の改善、悪化因子の除去などの総合的なアプローチを続けていくのが大切です。

肌の奥で起きていること

赤みやブツブツを認める酒さは、肌の奥で炎症と血管の拡張・増殖が起きています。

血管が拡張するしくみ

酒さの方は免疫が亢進している状態で、マクロファージ（免疫細胞）が活性化します。マクロファージには血管新生因子を産生する働きがあるため、刺激を受けると血管を拡張させたり新たな血管を作ったりします。

また、カテリシジン（抗菌ペプチドの一種）や血管内皮増殖因子（VEGF, 血管内皮細胞の増殖を促すタンパク質）などの過剰発現が認められ、血管拡張や血管新生などにつながります。

さらに、酒さの方は毛細血管の動きを調節する（指令を与える）神経に異常が起こっている可能性も考えられ、肌には毛細血管がたくさんあるため、血管が拡張したときに赤みが目立ちやすいです。

炎症を引き起こす本当の原因

酒さの炎症は、環境因子と遺伝因子の複雑な相互作用によって起こります。

環境因子とは紫外線や食生活、誤ったスキンケアなどの外からの影響を指し、遺伝因子とは体質や肌質などの親から子へ受け継がれる性質です。

自然免疫と獲得免疫の調節不全によって酒さの発症と悪化を引き起こす可能性があり、最近の研究ではToll 様受容体、好中球、マクロファージ、サイトカイン（どれも免疫反応に関わるもの）が酒さで見られる炎症カスケード（炎症連鎖）の中心であると示唆されています。

また、セリンプロテアーゼ（タンパク質を分解する酵素の一種）活性の増加とカテリシジンが酒さの炎症を促進すると分かっています¹⁾。

遺伝や体質との深い関係

体質は遺伝するケースもありますが、両親や祖父母に酒さがある方は発症リスクが高いです。

海外で行われた双子の調査では、遺伝が酒さに関係していたものが約46％でした²⁾。

また、胃腸障害、心血管疾患、アレルギー、自己免疫疾患、神経血管障害（片頭痛）などとの関連も指摘されています。

酒さは皮膚血管の異常と炎症反応の調節不全が引き起こすものですので、体質的な理由から他の疾患を併発していても不思議ではありません。

毎日の食事で変わる肌質

肌質を改善するためには、外から塗るアプローチだけではなくインナーケアも大切です。

全米酒さ協会によって行われた調査では、73％の患者さんが食事を変えたら酒さが悪化する頻度が減ったという結果が出ています³⁾。

血管拡張や炎症が特徴の酒さでは、血管を強くする食材や炎症を抑えるメニューをふだんの食生活に取り入れていきましょう。

ただし、酒さに良い食材であっても、人によっては刺激となるケースがあります。そのため、少しずつ様子を見ながら取り入れるようにしてください。

血管を強くする食材選び

血管はタンパク質でできていますので、血管を強くするためにはタンパク質を積極的に取り入れるようにします。なかでもエラスチンやコラーゲンは、血管をしなやかにするタンパク質の一種です。

栄養素	食材例
タンパク質（エラスチン・コラーゲン）	牛すじ、鶏の手羽先、鮭、イワシ、アジ、マグロ、カレイ
カリウム	海藻類、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、里芋、山芋、納豆、枝豆
ビタミンC/E	キウイ、イチゴ、ナッツ類、大豆
水溶性食物繊維	ひじき、大麦、オートミール、ゴボウ、らっきょう、オクラ、しいたけ

塩分を摂りすぎるとナトリウム濃度が高くなり、血管が受けるダメージが大きくなります。塩分の摂りすぎに注意するのはもちろんですが、ナトリウムを排出するカリウムが多く含まれる海藻類や緑黄色野菜などを意識して摂るのが大切です。

毛細血管の外側の壁細胞は活性酸素に弱い性質がありますので、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEにも着目して食材選びをしましょう。

さらに、水溶性食物繊維は血管内の悪玉コレステロール（LDLコレステロール）を低下させて、血管を強くする作用があります。

炎症を抑える具体的なメニュー

炎症を抑える栄養素には、オメガ3脂肪酸（DHA・EPA）、ビタミンA/Cなどがあります。具体的な食材は、豆類、発酵食品、ベリー類、アボカド、葉物野菜、ナッツ類などです。

油は種類によっては身体の炎症を助長しますが、オメガ3脂肪酸（DHA・EPA）は炎症を抑制する働きがあります。

また、ミントティーやルイボスティーのようなハーブティーにも抗炎症作用があるため、毎日のリラックスタイムに取り入れるのもおすすめです。

オートミールとベリー類を組み合わせると血管を強くしながら炎症を抑える効果があります。

オートミールでつくるパンケーキにブルーベリーを添える、オートミールを牛乳やアーモンドミルクで浸して（オーバーナイトオーツ：1晩浸したまま寝かせる）好きなフルーツとくるみやアーモンドを乗せる、オートミールにオクラや納豆、めかぶや山芋を乗せるなど、ご自身が美味しいと思えるメニューを探してみましょう。

避けるべき食習慣

酒さと食習慣に関する研究はたくさん行われていて、食事が酒さを悪化させるトリガーになると分かっています。

酒さで避けるべき食習慣として、アルコールや熱い飲み物、辛い食べ物は有名ですので、聞いたことがある方も多いでしょう。ただ、ほかにも酒さを悪化させる食習慣があります。

血管拡張作用があるシナマルデヒドを含む食べ物、アレルギーや炎症などに関わるヒスタミンを多く含む食べ物、慢性炎症や肌バリア機能の低下に関与している脂肪分の多い食べ物は、酒さを悪化させる原因です。

悪化原因と言われる食べ物を一切口にしないのは現実的ではありませんが、ふだんの食習慣を見直してなるべく避けるようにしましょう。

心とカラダのバランス調整

酒さの症状を上手くコントロールするためには、心と身体のバランス調整が欠かせません。

質の良い眠り、ストレスの軽減、身体を温めすぎない運動習慣を心がけてください。

質の良い眠りのつくり方

質の良い眠りをつくるためには、体内のリズムを保つ工夫が必要です。

具体的には、毎日規則正しい時間に起きるようにします。起きる時間がバラバラだと体内リズムが一定になりませんので、休みの日でも同じような時間に起きるのが大切です。

目覚めたら朝日を浴びるクセをつけるのも有効です。朝日を浴びるとセロトニンが活性化して、体内時計を調節したり良質な睡眠を促したりするメラトニンが夜にかけて生成されます。

曇りの日でも十分な光量がありますので、天候に関わらず起きたらカーテンを開けるようにします。

さらに、質の良い眠りのためには、寝る前のスマホやタブレットはNGです。スマホやタブレットに使われている光のなかでもブルーライトは、体内リズムに影響してスムーズな入眠を妨げてしまいますので気をつけましょう。

ストレスと上手に付き合うコツ

ストレスは、酒さを悪化させる原因の一つでもあります。

ただ、変化が多く慌ただしい時代ですので、どうしてもストレスフリーな日常を送るのは難しいです。ストレスと上手に付き合うには、早めにストレスのサインに気づくのがポイントです。

ストレスのサインには、気分の落ち込み、ちょっとしたことで驚いたり泣きたくなったりする、イライラするなどが挙げられ、人との交流を避けるようになる方もいます。

ご自身の気持ちの動きがいつもと違うと感じたら、音楽を聴いたり、アロマを楽しんだり、友達と会って気分転換をするなどの工夫が必要です。

また、何もしない時間を作るのも、立派なストレス対策になります。お仕事が忙しい方や小さなお子さんのいる方だと、なかなかストレス発散の時間が取れないかと思います。周りに協力してもらいながら、少しずつでもリラックスできる時間を作っていきましょう。

体を温めすぎない運動習慣

適度な運動は、心と身体のバランスを整えます。

体温が急激に上がるような激しい運動は酒さの悪化因子となりますので、身体を温めすぎない運動習慣を身につけるのがベストです。

ウォーキングやストレッチ、エクササイズや体幹トレーニングは、身体を温めすぎずにできる運動としておすすめです。

肌に優しい日常習慣

超敏感肌の状態である酒さでは、肌に優しい日常習慣を意識すると顔の赤みがひどくなってしまうのを避けられます。

朝と夜の温度差対策

酒さは寒暖差で悪化するケースがあります。冬の寒冷刺激や暖房はとくに注意が必要で、室内と外気の温度差が大きければ大きいほど症状が悪化しやすいです。

また、季節の変わり目でも朝と夜の温度差が顔の赤みを引き起こしている例がみられます。温度差で赤みを悪化させないためには身体の温度を一定に保つのが重要で、体温調整に欠かせないのが自律神経の働きです。

窮屈な服は身体にストレスをかけて自律神経が乱れてしまうので、締め付けすぎないサイズ感の服を選ぶのも効果的です。

朝と夜の温度差が激しい時期は、予想気温の推移をこまめにチェックしつつ、気候に合わせて調節しやすい服を着るようにしましょう。

正しい洗顔の見直し

洗顔頻度が高い、洗浄剤の量が多い、といった2つが、酒さの発症に大きく関連していると分かっています6)。

過度な洗顔は酒さを悪化させる要因になりますので、朝と夜の1日2回までにします。たっぷりの泡を滑らせるようにクルクルと優しく洗うのが基本です。

シャワーで直接お湯を当てると摩擦になるといったウワサも耳にしますが、シャワーは垂直にかかる力、摩擦は平行に加わる力を指しますので、そこまで神経質にならなくても良いかと思います。

シャワーの摩擦よりも気にしてほしいのが洗顔時の温度とすすぎ残しです。少しぬるいと感じる32～36℃のお湯で十分にすすぐようにしてください。

季節に合わせたシンプルスキンケア

最近は成分で化粧品を選ぶ方が増えています。改善したい肌悩みごとにスキンケア商品を選んでいくと、いつの間にかたくさんの化粧品を塗ることになってしまって、それが原因で酒さが悪化している方もたくさん診ています。

肌に良い成分を取り入れたら取り入れただけ症状が改善するわけではないので、季節に合わせたシンプルなスキンケアを行いましょう。

ワセリンはブツブツが少なく乾燥が強いタイプの酒さに効果的ですが、ブツブツが多かったり脂漏性皮膚炎と併発している方、皮脂が多くなる夏には、ワセリンではなくナイアシンアミドやアゼライン酸などが含まれたタイプの化粧品がおすすめです。

明日からできる改善ステップ

肌質は遺伝もありますので、急にガラッと変えるのは難しいです。ただ、コツコツと毎日継続して取り組むと少しずつ変えられます。

さいごに、明日からできる体質改善ステップを見ていきましょう。

まずは取り組む3つのこと

紫外線は酒さの悪化因子の第一位です。日焼け止めはSPF30以上、PA+++以上のものを選ぶようにしてください。

敏感肌用や紫外線吸収剤の含まれないノンケミカルの日焼け止めは、肌の刺激となりにくいです。塗る量も重要ですので、中指と人差し指の指2本分を目安に顔全体にムラなく塗るようにします。

酒さの治療における最初の重要なステップが、悪化因子の除去です。さらに、外用薬、内服薬、レーザーやIPL施術と続きます。そのため、悪化因子を除去しないと皮膚科で治療をしても、いたちごっこのようになり赤みがなかなか改善しません。

また、酒さの方はバリア機能が低下している状態ですので、保湿をして肌のバリア機能を高めるようにしましょう。

続けやすい工夫とコツ

酒さに良いからといって、あれもこれもと一度に取り入れようとしてしまうと、結局は続かずに終わってしまいます。

何に対しても言えますが最初に頑張りすぎると続かないですし、逆にそれがストレスにつながってしまうので、まずは紫外線対策、悪化因子の除去、保湿の3つに取り組み、その後1カ月に1つずつ、自分に合ったものだけ、のように無理のない範囲で肌質改善をしていきましょう。

まとめ

酒さには「なりやすい体質」があります。ただ、毎日の小さな生活習慣の積み重ねで炎症しにくい肌基盤づくりも可能です。

酒さの症状が悪化するのはすぐですが、改善するまでにはある程度の時間がかかりますので、根気強く体質改善に取り組んでいきましょう。

参考文献

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