日光皮膚炎(日焼け、sunburn)とは、皮膚が過剰な紫外線にさらされることによって引き起こされる炎症反応です。
紫外線の暴露から数時間程度で皮膚の赤み、熱感、痛み、そして時には水ぶくれを伴うことがあります。
ここでは、日焼けの予防や対策について詳しく解説していきましょう。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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日光皮膚炎(日焼け)の症状
日光皮膚炎(日焼け、sunburn)の症状は軽度であれば赤みや熱感程度ですが、重症化すると水疱形成を認めることがあり、日焼けのしやすさ(skin typeによる)や紫外線の強さ、紫外線への露出時間などによっても変わります。
病理所見(症状のある部位を採取し顕微鏡で観察すること)では、sunburn cell(角化細胞のアポトーシス、ケラチノサイトの空胞化)の出現。さらに、真皮血管周囲の浮腫、炎症細胞浸潤、壊死、表皮下水疱などがみられます。
日焼け症状の進行
- 赤み(紅斑):数時間後 日光皮膚炎における最も一般的な症状は赤みです。紫外線によって皮膚が損傷を受けると、身体は修復のために血流を増加させ、赤みとして皮膚表面に現れます。
赤みとともに熱感を伴うこともあり、紫外線に曝露して数時間後から出現するのが一般的です。赤みは12-24時間後をピークとし、その後徐々に軽快します。 - 浮腫:数時間〜半日後 赤みは次第に浮腫状に。これは真皮血管周囲の浮腫に伴うもので、炎症細胞の浸潤も認めます。腫れは、特に顔や手足などの露出した部分に顕著に現れる傾向が。
- 痛み、ひりひり感:数時間〜半日後 日焼けした皮膚は触れると痛みを感じることがあり、この痛みは、皮膚が損傷を受けたことによります。
さらに、日焼けした部分はひりひりとした不快な感覚を伴うことが一般的です。日焼けの程度が深刻であればあるほど強く現れ、特に皮膚が敏感な人ではより顕著に感じられることがあります。 - 水ぶくれ(水疱)の形成:半日〜1日程度 非常に強い日焼けをしたとき、表皮ダメージによって表皮下に水ぶくれが形成されることがあります。
- 皮膚の乾燥と剥離、色素沈着:数日程度 日焼けの炎症が落ち着くと、皮膚が乾燥しその後かさぶたが剥離することがあり、これは、紫外線によって皮膚の表層が損傷され、新しい皮膚細胞が生成される過程で起こります。
かさぶたの剥離は通常、日焼けから数日後に見られる現象で、炎症後色素沈着を伴うことが多いです。
日光皮膚炎(日焼け)の病態・リスクファクター
日焼けの原因は過度な日光暴露によるものです。中でも、紫外線のUVBが日焼けの主な原因と考えられています。
紫外線の種類と影響
地表に届く紫外線は、主にUVAとUVBの2種類です。
- UVA:UVAは波長が長く、皮膚の深い層まで到達します。深い真皮層にある膠原線維(コラーゲン)や弾性線維(エラスチン)を傷つけるためシワやたるみなど皮膚の老化を早める原因になります。
- UVB:UVBは皮膚の表面層に作用し、赤みや水ぶくれなどの日焼けの症状を引き起こし、日焼けを起こす力で比べると、UVAの600−1000倍強いです。
皮膚の老化の原因になるのはもちろんのこと、UVAと違いDNAを傷つけるので、皮膚がんのリスクを高めると言われています。
日焼けでは、特にUVBが大きく関与しており、UVB光線にさらされるとDNAに直接吸収され、チミン-チミンシクロブタン二量体を形成し、細胞のアポトーシスを誘導。
その際、炎症に関与するプロスタグランジンや活性酸素、ブラジキニンなどの炎症マーカーを放出し、血管拡張や赤みといった炎症所見を引き起こします。
リスクファクター
日焼けの起こりやすさの要因
原因 | 説明 |
---|---|
紫外線の強さ | 1年のうち4-8月に紫外線量が多く、1日の中では10-14時に紫外線が多い |
露出時間 | 長時間の太陽光への露出が日焼けのリスクを高める |
皮膚のタイプ | 色白や日焼けしやすい肌質の人は、日焼けしやすい傾向 |
地理的要因 | 海岸や山岳地域、赤道付近など、紫外線が強い地域では日焼けのリスクが高まる |
反射効果 | 水面や砂、雪などが紫外線を反射し、日焼けリスクが高く |
不十分な遮光 | 日焼け止めの塗り忘れ、塗り直し、物理的遮光の有無などで日焼けのしやすさは大きく変わる |
Fitzpatrick Skin Phototype(フィッツパトリックの肌タイプ)と日焼け
1975年トーマス・フィッツパトリックという医師が、異なる肌色と紫外線に対する反応の分類法を開発し、現在でも広く使用されています。
- タイプI: 色白で焼けやすく、日焼けしない。
- タイプⅡ:焼けやすく、日焼けしにくい白い肌。
- タイプⅢ:焼けやすく、日焼けしやすい白い肌。
- タイプIV:ほとんど焼けず、日焼けしやすい、明るい褐色またはオリーブ色の肌。
- タイプV:褐色肌で、通常は火傷せず、容易に日焼けする。
- タイプVI:非常に焼けにくく、紫外線を浴びると黒くなる黒色肌。
フィッツパトリック分類におけるタイプI~IIIの人は、紫外線を遮蔽するためのメラニン色素が少ないため、日焼けしやすい傾向に。日本人はタイプⅢ〜Ⅳが多く、焼けやすい人と焼けにくい人に分かれます。
日光皮膚炎(日焼け)の検査・チェック方法
紫外線曝露によって発生または悪化する皮膚疾患はまとめて「光線過敏症」と言います。光線過敏症にはいくつかの種類があり、紫外線によってもたらされた炎症反応(日焼け)が光線過敏症ではないか鑑別を要することも。
光線過敏症の例
- 色素性乾皮症
- ポルフィリン症
- 色素欠乏症
- 光毒性反応
- 光アレルギー反応
- 日光じんま疹
- 多形日光疹
など
光線過敏があるかないかは、光線照射テスト、光パッチテスト、内服照射試験など、照射する光線に対する反応を調べることで判断できます。
日光皮膚炎(日焼け)の治療方法
スキンケアで注意すること
日焼けの治療では、まず患部を冷却してください。冷たい布や冷却パックを使用して患部を冷やすることで、炎症をやわらげます。広範囲にわたる日焼けの場合はシャワーが有効です。
また、炎症によって皮膚のバリアの機能が低下すると、水分の蒸発が促進されるため、スキンケアでは保湿が重要になります。
日焼けにより皮膚が非常に敏感になっているため、患部を刺激しないように注意が必要です。患部をこすったり、強く洗ったりすることは避け、優しく洗浄しましょう。
皮膚科で行う治療
皮膚の痛みや炎症には、副腎皮質ステロイド外用薬を使用します。この時、Very Strong以上の強さのものが選択されることが多いです。
痛みがひどく外用薬が塗れないときはスプレータイプの薬を使用したり、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンなどNSAIDS)・アセトアミノフェン(カロナール)の内服を併用することもあります。
また、痒みがある場合は抗ヒスタミン剤の内服も。
水ぶくれを引き起こしている場合は第2度熱傷に準じて、部位によっては水疱をピンセットなどで潰したうえで外用治療を行います。
内服・外用薬にはそれぞれ副作用もあるので、使用量や使用期間については、医師に指示された量と期間を守りましょう。使用中に異常を感じた際は、使用を中止し、速やかに専門医を受診してください。
日焼けによる皮膚の修復を助けるためには、水分補給が必要です。十分に水分を摂取をすると、体の水分バランスが保て、皮膚の自然な治癒力の助けになります。また、栄養バランスの取れた食事も、皮膚の健康を維持するために大切です。
日光皮膚炎(日焼け)の治療期間
日光皮膚炎(日焼け)の治療期間は、症状の程度によって大きく異なります。軽度の日焼けであれば数日から1週間程度で回復することが多いですが、重度のとき(水疱形成を認める場合など)は数週間以上かかることも。
- 軽度の日焼け:数日~1週間
- 中度の日焼け:1週間~2週間
- 重度の日焼け:2週間以上
日光皮膚炎の治療期間中には、以下の点に注意が必要です。
- 継続的な皮膚のケア:日焼けした部位をしっかり保湿するなどしてケア。
- 日光への再露出の避ける:治療中は日焼け止めを塗るなどして日光への再露出を避け、回復を早める。
- 症状の進行に注意:症状が悪化したときは、早急に医師の診断を受ける。
保険適用の有無と治療費の目安について
日光皮膚炎(日焼け)の治療では、健康保険が適用されます。
選択される治療方法や治療期間によっても費用は変わりますので、詳しくはお問い合わせください。
参考文献
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あたらしい皮膚科学 第3版 P229 日光皮膚炎/日焼け
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