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美容皮膚科で行われるピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質を化学的に溶かして除去する施術です。
皮膚科で行われるピーリングは、エステで受けられるピーリングとは目的が全く異なるものとして扱われています。そのため、エステサロンで安易にピーリング施術を受けてしまうと、思ったような効果が得られない可能性も。
この記事では、皮膚科でのピーリングについて、効果や値段、エステとの違いを解説します。
副作用やリスク、保険適用の有無についても触れているため、ピーリングを検討されている方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ピーリングの効果
ピーリングは文字通り、皮膚の表面を“むく”、つまり角質層の表面を剥がしたり溶かしたりする施術です1-2)。
もう少し具体的に言うと、角質層の表面を剥いて肌に軽度の炎症を起こし、再生力を促進させ、肌を整える仕組みがピーリングです。
ピーリングに期待できる効果は、施術の種類によって多少異なるものの、おおむね次のようなものがあります。
- ターンオーバーの正常化
- 肌の表面がなめらかになる
- 肌のトーンがアップする
- ニキビ・ニキビ跡の改善
- 小さいシミ・くすみの改善
- 毛穴の開き・キメの改善
- 小じわの改善
ターンオーバーの正常化
ターンオーバーとは、肌の生まれ変わりのことです。通常、約28日周期で古い角質が剥がれ落ち、新しい細胞が生まれてきます。
しかし、加齢や紫外線、ストレスなどの影響で、ターンオーバーが乱れ、古い角質が肌に残ってしまいます。
ピーリングで古い角質を除去すると、肌のターンオーバーが正常化し、新しい細胞が生まれやすくなります。
肌の表面がなめらかになる
- ごわつき・ザラつきがなくなる
- 化粧ノリがアップする
固くなった角質層により肌がゴワついている方は、ピーリングで固い角質層が取り除かれ肌表面がなめらかになる効果が期待できます。
また、肌表面がなめらかになると化粧水の浸透がアップし、化粧ノリが向上します。
肌のトーンがアップする
角質層が古く固くなってしまっていると、肌がくすんで見えやすくなります。ピーリングでは余分な角質層が取り除かれ、本来の肌の色味が戻り、トーンが上がったように感じます。
また、ピーリングを行うことで、肌への摩擦刺激によって血行が促進されます。血行が促進されると、肌細胞に酸素や栄養が行き渡りやすくなり、肌の透明感がアップします。
ニキビ・ニキビ跡の改善
ニキビは毛穴の詰まりが原因で起こる皮膚疾患です。古い角質が毛穴に詰まると、皮脂が過剰に分泌され、ニキビの原因となります。
ピーリングで古い角質を除去することで、毛穴の詰まりを解消し、ニキビの発生を予防できます。
また、軽度の炎症を起こし、自然治癒力を高めてお肌の再生を促すのも、ニキビ改善の助けとなります。
ニキビ跡（ニキビが治った後に残る赤い色素沈着）は、メラニン色素の過剰生成が原因です。ピーリングで古い角質を除去すると、ターンオーバーが正常化し、メラニン色素の排出が促進されます。
小さいシミ・くすみの改善
シミの原因となるメラニン色素は、古い角質に蓄積されます。ピーリングで古い角質を除去すると、シミが目立ちにくくなります。
ただし、ピーリングにより一度薄くなったシミでも紫外線や刺激により再び濃くなる可能性がある点、肝斑は刺激により悪化の可能性がある点には慎重になる必要があります。
毛穴の開き・キメの改善
古い角質が毛穴に詰まると、毛穴が開いて目立ってしまいます。ピーリングで古い角質を除去すると、毛穴の詰まりが解消され、毛穴の開きを改善します。
また、ピーリングは皮脂の分泌を抑制し、毛穴の詰まりを予防できます。
さらに、ピーリングの「古い角質を除去する」「ターンオーバーを正常化する」効果により、キメが整い、なめらかな肌触りになります。
小じわの改善
古い角質が肌に残っていると、肌表面がゴワゴワし、小じわが目立ってしまいます。ピーリングで古い角質を除去することで、肌表面がなめらかになり、小じわが目立ちにくくなります。
軽度の炎症で肌の自然治癒力が高まる際には、コラーゲンやエラスチンの生成も活性化するとされているため、ピーリングでのある程度の小じわの改善も見込めます。
※ただし、深いシワを改善するまでは至りません。
ピーリングの種類
これまで日本で行われてきたピーリングは、ピーリング剤の化学変化により角質層表面を剥がす「ケミカルピーリング」が一般的でした。皮膚科でもエステでも、ピーリングといえば、ケミカルピーリングが行われてきました。
今でもピーリングの主流がケミカルピーリングであることに変わりありませんが、現在ではピーリング剤ではなく、水圧やレーザーなどを用いた「マシンピーリング」を行うクリニックも増えてきています。
ここでは、エステと皮膚科のピーリングの違い、ケミカルピーリングとマシンピーリングの違いといった「ピーリングの種類」と、その特徴・効果をご紹介します。
エステと皮膚科のピーリングの違い
ケミカルピーリングにおけるエステと皮膚科のピーリングの決定的な違いは、ピーリング剤中の薬剤の濃度差です。
皮膚科のピーリング剤の方が高濃度のものが使用できるため、得られる効果も高くなります3)。
また、全てのピーリング施術に共通するエステと皮膚科の違いは、“施術の目的”です。
皮膚科のピーリングは医療行為にあたるため、肌質の改善やトーンアップといった美容目的だけでなく、ニキビやシミ、小じわなど皮膚疾患の改善を目的として行われます1,3)。
対してエステでのピーリングは、肌をやわらかくしたり肌の老廃物を取り除いて肌トラブルを予防したりと、あくまでも肌のメンテナンスを目的として行われるものです。
ケミカルピーリング
ピーリング剤に使用される薬品にもいくつか種類があり、肌状態やお悩みに応じて種類や濃度を組み合わせるのが一般的です。
現在、日本で用いられている代表的なピーリング剤は以下の3つです。
AHA（アルファヒドロキシ酸）
AHAとは、野菜や果物に含まれている酸全般を指す言葉です。サトウキビやたまねぎに含まれるグリコール酸や青りんごに含まれるリンゴ酸をはじめとし、乳酸、酒石酸、クエン酸などさまざまなものが含まれます。
中でもグリコール酸や乳酸は、角質層を溶かすのではなく細胞同士のつながり剥がしてマイルドピーリングを行える点、低濃度でも効果を発揮できる点から、ケミカルピーリングに高頻度で使用されています。
サリチル酸マクロゴール
単体では溶解作用が強すぎるサリチル酸にマクロゴールを組み合わせて安全性を高くしたピーリング剤です。AHAよりも溶解作用が強いため、皮脂分泌を原因とした毛穴トラブルやニキビ治療に用いられます。
トリクロロ酢酸
サリチル酸よりも高い剥離度を持つため、深い部分からのピーリングが可能ですが、ダウンタイムや副作用のリスクが高くなります。欧米人ではよく使用されているピーリング剤であり、日本で使用される機会はあまりありません。
マシンピーリング
肌質的に、ケミカルピーリングが不向きな方や、副作用が強く出てしまう方へ向けてご案内する場合もあります。
代表的なマシンピーリングは以下の3つです。
ハイドロピーリング
水流の力を使い肌の老廃物や古い角質を除去します。
水が摩擦を軽減してくれるためお肌を傷つけにくいメリットを持ちます。ピーリングと同時に美容成分の導入ができます。
レーザーピーリング
クリニックによって使用するレーザーの種類は異なりますが、基本的な原理は、レーザーを当てて熱エネルギーで毛穴の汚れや老廃物を飛ばすものです。
また、軽度な炎症によるお肌の再生力の向上、脱毛効果なども期待できます。
クリスタルピーリング
金属粉を肌に吹きかけると同時に吸引し、毛穴の汚れや老廃物、古い角質を除去するもの。角質を削り取るようなイメージです。
肌が傷つきやすいイメージがありますが、出力が調整できるため、肌が弱い方でも治療できます。
ピーリングを受けられる部位
ピーリングは適した方法さえ用いれば、ほとんどの全身に利用できる施術です。
ただし、クリニックによって対応している部位・対応外の部位があるため、自分がピーリングを受けたい部位に対応しているかどうかは事前にチェックしておきましょう。
ピーリングを受けられる部位と適したピーリング方法、どのような効果が見られるかを以下にまとめて紹介しています。
顔
| 部位 | 効果 | ピーリングの種類 |
|---|---|---|
| 顔全体（目と口以外） | 古い角質の除去 肌質改善 小さなシミやシワ改善 ニキビの改善 | 基本的にどのピーリングでも対応可能 |
| 目・口の周り | トーンアップ 小さなシワ改善 | クリスタルピーリング ハイドロピーリング ※ケミカルピーリングに対応していないクリニックが多い |
| 首・デコルテ | 基本的にどのピーリングでも対応可能 |
ボディ
| 部位 | 効果 | ピーリングの種類 |
|---|---|---|
| 【上半身】 脇、二の腕、ひじ、乳輪、背中、手 | 肌がやわらかくなる 黒ずみの解消 トーンアップ | ケミカルピーリング ※背中、二の腕にはハイドロピーリングやクリスタルピーリングに対応しているクリニックもある。 |
| 【下半身】 ひざ、手、おしり、Vラインまわり | ケミカルピーリング |
皮膚科でのピーリングの値段
皮膚科でのピーリングは自由診療扱いであるため、クリニックによって値段に違いがあります。一般的には、1回5000円～1万5000円程度で行っているところが多いです。
保険適用について
ピーリング治療は保険適用外で、施術を受ける場合は自由診療扱いとなります。
ニキビ治療を目的としたピーリングであっても保険適用外となってしまうため、ニキビ治療を保険適用内で受けたい場合は、保険適用内の治療を選択するようにしましょう。
ピーリングの値段の相場
ピーリングは自由診療扱いであるためクリニックによって料金に差がありますが、相場は以下のとおりです。
| 種類 | 料金（1回あたり） |
|---|---|
| ケミカルピーリング | 顔：5000円～1万5000円 ボディ：1万5000円～3万円 ※1部位あたり ※範囲が広くなると料金は高い傾向 |
| ハイドロピーリング | 顔：1万5000円～2万5000円 ボディ：2～3万円 ※ハイドロピーリングのボディは首、デコルテ、背中、頭皮に対応しているところが多い |
| レーザーピーリング | 顔：2～3万円 ※顔以外に対応しているクリニックはあまりない |
| クリスタルピーリング | 顔：1万～1万5000円 ボディ：1万～2万円 ※1部位あたり ※範囲が広くなると料金は高い傾向 ※対応しているのはデコルテ、背中あたりまで |
ピーリングのデメリットは？
ピーリングは比較的ダウンタイムや副作用が少ない施術として知られていますが、デメリットや気を付けるべき点があります。
ピーリングに不向きな方がいる
ピーリングは角質層を溶かしたり、剥がしたり、削ったりする施術です。
少なからずお肌への負担が考えられるため、肌質によってはピーリング施術に不向きな方がいらっしゃいます。
ピーリングが不向きな可能性がある方4)
- 肌が弱い方
- 傷跡が残りやすい方
- 治療中の病気がある方
- 妊娠、授乳中の方
- アトピー性皮膚炎の方
- 紫外線を浴びる機会の多い方
また、ピーリング後の肌は角質層が除去されて紫外線が浸透しやすい状態であるため、身体や肌に紫外線の影響が懸念される人はより注意が必要です。
治療中の病気がある方のピーリングの可否は、担当の医師に相談して判断を仰ぎましょう。
施術後のケアに気を付ける必要がある1,4)
ピーリング後は、肌が通常よりも薄くなった状態です。紫外線が肌に浸透しやすく、乾燥しやすく、肌のバリア機能も低下しやすい状態になっています。
色素沈着や肌トラブルを起こしやすい状態とも言えるため、紫外線予防や保湿には普段以上に気をつける必要があります。
ダウンタイムは2～3日程度
ピーリングのダウンタイムは個人差があるものの、通常は2～3日程度です4)。
施術後から数日間は、炎症による赤みや火照りを感じる場合がありますが、次第に消失していきます。
副作用・リスク
ピーリングの副作用やリスクには次のようなものがあります1,2,4)。
赤みや皮膚のピリつき
施術直後から数日間は、若干の赤みや皮膚のピリつきを感じます。これは、角質層が剥がれた際の炎症によるものです。
2～3日もすれば次第に炎症による赤みやピリつきは引いていきますが、もし炎症がおさまらない・水ぶくれのようなものが見られる場合は医師に相談してください。
色素沈着
肌への刺激が強すぎてしまうと色素沈着のリスクが高まり、まれに色素沈着が起こる可能性があります。
色素沈着を起こしやすい体質の方や、傷が残りやすい方は事前に医師に伝えるようにしましょう。
皮膚バリア機能の低下
角質層には肌を守る役割があるため、角質層が取り除かれ一時的に肌のバリア機能が低下してしまいます。特に、乾燥や紫外線には注意しましょう。
シミや肌トラブルのリスクを高めてしまうため、ピーリング後の保湿と紫外線予防は念入りに行ってください。
まとめ
ピーリングは角質層の表面を取り除く施術であり、肌を明るくなめらかにし、ニキビや小さなシミやシワの改善効果が期待できるものです。
ピーリングにはピーリング剤の化学変化で角質層を溶かしたり剝がしたりするケミカルピーリングの他に、物理的に角質層を削り取るマシンピーリングがあります。
皮膚科とエステのピーリングは手法がよく似ているものの、薬剤濃度や機械出力が根本的に異なり、皮膚科での施術の方が効果を実感しやすいです。
また、皮膚科はお悩みの改善や治療を目的としているのに対し、エステはあくまでも肌のメンテナンス目的である点も明確な違いとして挙げられます。
皮膚科でのピーリングは比較的、副作用やリスクが少ない施術ではありますが、角質層が取り除かれ一時的に無防備な肌状態となってしまうため、保湿や紫外線予防といったアフターケアは重点的に行うようにしましょう。
また、肌が弱い方や色素沈着しやすい方は副作用のリスクが高まってしまうため、事前に医師に相談するほか、肌に負担をかけにくいハイドロピーリングやクリスタルピーリングといったマシンピーリングの選択も有効です。
皮膚科のピーリングでよくある質問Q&A
参考文献
1) 日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン（改訂第 3 版）https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913831_1.pdf
2) マルホ皮膚科セミナー「第118回日本皮膚科学会総会⑧ケミカルピーリングの注意点」https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200106.pdf
3) 日本皮膚科学会「ケミカルピーリングQ&A」https://www.dermatol.or.jp/qa/qa25/index.html
4) ケミカルピーリング, 日本エステティック研究財団 http://www.jerf.or.jp/kenkohigai/index4.html