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ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)|酒さ治療薬

ロゼックスゲル

ロゼックスゲル0.75%(一般名:メトロニダゾール)は、赤ら顔をもたらす酒さという炎症疾患に対して初めて保険が適用となった外用薬です。

この薬は、微生物の活動を抑え、炎症反応を軽減する作用を持ちます。

この記事では、ロゼックスゲルについて、有効成分、使用法など詳しく解説していきましょう。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

ロゼックスゲル(メトロニダゾール)の有効成分と効果、作用機序

酒さ(しゅさ、rosacea)は顔の頬を中心に赤みやほてりをもたらす皮膚炎症疾患で、近年その症状で悩む患者さんが増えていますが、これまで保険で処方できる薬がありませんでした。

ロゼックスゲルはもともとがん性の皮膚潰瘍に対して使われていましたが、2022年に酒さに対して初めて保険が適用された薬です。

有効成分

ロゼックスゲル0.75%に含まれる有効成分は「メトロニダゾール」です。

原虫や菌作用に対する抗菌作用に加え、炎症を抑える効果も有し、酒さのような炎症を伴う皮膚疾患に対して効果を発揮します。

メトロニダゾールの基本情報

特性説明
化学名2-(2-methyl-5-nitro-1H-imidazol-1-yl)ethanol
分子式C6H9N3O3
薬理作用抗菌作用、抗炎症作用
適応症状酒さ(赤ら顔)
適用部位
処方形態ゲル

作用機序

メトロニダゾールはいくつかの作用機序によって酒さの改善をもたらすと考えられています。

  • 抗原虫・抗菌作用: 嫌気性の条件で原虫や細菌のDNAに作用し、合成と修復を阻害。酒さではデモデックス(Demodex folliculorum)という主に皮脂腺に寄生する「ニキビダニ」が一因で、メトロニダゾールはニキビダニを減らす効果があります。
  • 抗炎症作用: ヒト好中球から生成される活性酸素の生成を抑えることにより、活性酸素がもたらす炎症を軽減する効果があります。
  • 免疫抑制作用:酒さではTNF-αと呼ばれる自然免疫が関与していることが指摘され、メトロニダゾールはTNF-αの産生を抑制することによる免疫抑制作用を有しています。

効果

酒さでは多様な症状を認めます。

  • 紅斑、毛細血管拡張:頬を中心に赤みが見られ、火照りを伴う場合が多い
  • 紅色丘疹(ブツブツ)、膿疱:ニキビのような赤い丘疹や膿疱が多発
  • 皮膚の隆起(腫瘤):鼻を中心に凸凹を認めることがある
  • 眼症状:眼瞼炎や結膜炎を認めることがある
引用元:Verywell Health

ロゼックスゲルの酒さに対する効果

  • 赤み(紅斑)の軽減: メトロニダゾールは炎症を抑えることで、顔の赤みを軽減します。ただし、毛細血管拡張の改善は難しいです。
  • ブツブツ(丘疹)の改善: 酒さの炎症性の丘疹も抗炎症作用によって改善されることが期待されます。
  • 皮膚状態の正常化: 皮膚の慢性的な炎症状態が和らぐことで、皮膚のバリア機能の回復が促され、より健やかな状態に近づきます。

特にロゼックスゲルが効果的なのは丘疹や膿疱といった症状です。丘疹や膿疱ではニキビダニの増加が大きく関与していると考えられています。

メトロニダゾールの抗原虫作用により、ニキビダニの減少に伴い丘疹や膿疱、また毛包周囲の紅斑の改善をおよそ3ヶ月程度で認めることが多いです。

反対に、毛細血管の拡張に対する効果は乏しく、ロゼックスゲルだけで赤みを完全に改善させることは難しいと言われています。

ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)の使用方法と注意点

次に、ロゼックスゲルの使用方法について解説します。

使用方法

酒さ治療では、ロゼックスゲルを1日2回、洗浄し清潔にした患部に朝と夜、適量を塗布。

一方、がんに伴う皮膚潰瘍に対しては潰瘍面を清拭後、1日1〜2回、ガーゼなどに伸ばして貼付するか、患部に直接塗布した後にガーゼなどで保護します。

注意点

ロゼックスゲルの使用にはいくつかの注意点があります。

  • 直射日光を避ける: ロゼックスゲルは紫外線照射によって効果が減弱する可能性があるので、治療部位に直射日光が当たらないように注意し、可能な限り適宜日焼け止めを使用。
  • 目や口の周りを避ける: ゲルが目や口、その他の粘膜に触れないように注意。
  • 使用期間: 添付文書上、ロゼックスの使用期間は12週まで。主治医の指示に従って適切な期間使用。

これらの注意点を守ることでロゼックスゲルの効果を適切に得ることができます。

適応対象となる患者さん

ロゼックスゲル(一般名:メトロニダゾール)の適応対象となる皮膚状態

  • がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減
  • 酒さ

適応外となる場合

ロゼックスゲルは効果的な治療薬ですが、以下の患者さんには使用することができません。

  • 妊娠3ヶ月以内の女性
  • 脳、脊髄に器質性疾患のある方
  • メトロニダゾールまたはロゼックスゲルの成分に対して過敏症の既往歴がある方

これらの条件に該当する場合は、他の治療選択肢を検討する必要があるため、必ず事前に医師に申し出てください。

特定の年齢層の患者さんの使用

ロゼックスゲルの適応疾患であるがん性の皮膚潰瘍及び酒さは、通常成人で認める疾患であるため、小児に用いるケースは極めてまれです(小児に対する安全性については臨床試験を実施していない)。

また、ご高齢の方は一般的に皮膚だけでなく全身の生理機能が低下しており、薬剤の吸収率などが変わってくる可能性があるため注意が必要になります。

ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)の治療期間

ロゼックスゲル(メトロニダゾール)の適切な使用期間は、個々の患者さんの症状によって異なりますが、ここでは一般的な治療期間について解説します。

引用元:NHS

一般的な治療期間の目安

これまでの報告では、ロゼックスゲルを使い始めておよそ3週間以内で効果を実感し始め、3ヶ月程度で炎症性皮疹の消失を認めることが一般的とされています。

ロゼックスゲル(メトロニダゾール)の治療期間の目安

期間説明
〜3週効果を実感したり刺激感を確認
〜3ヶ月丘疹・膿疱の改善や消退を認める
〜3年酒さの症状が悪化しにくくなる

中断や治療の終了時の考慮事項

添付文書において、ロゼックスゲルの推奨使用期間は12週です。これは臨床試験が12週で行われたことに基づいており、それ以降の使用についても大きな副作用などの問題はないと考えられています。

通常、酒さに伴う丘疹・膿疱については12週間の治療までに改善を認めることが多く、その時点で再度症状を評価し、必要に応じて治療の継続や他の治療法への切り替えを考慮することが多いです。

突然の治療の中断は、症状の再発に繋がるリスクがあるため、主治医と十分に相談されることをおすすめします。

スキンケア、生活習慣

ロゼックスゲルによる治療に加え、酒さの改善にはスキンケアや生活習慣の見直しも非常に大切です。酒さは、急激な寒暖の差や紫外線などにより症状が悪化することが知られています。

スキンケアでは肌質も考慮した敏感肌用の化粧品の使用が推奨されており、こうしたケアによって治療期間が変わってくることも。

ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)の副作用やデメリット

ロゼックスゲル(一般名:メトロニダゾール)には、頻度は少ないですが副作用もあります。

ロゼックスゲルの副作用の概要

ロゼックスゲルの一般的な副作用

  • 接触皮膚炎(赤み、腫れなど) 3%程度
  • 乾燥やかゆみ 3%程度
  • つっぱり感 1%程度

これらの症状は軽度であり、多くの場合、治療の継続により軽減することが多いです。

副作用発生時の対応

ロゼックスゲルの使用によって乾燥を認める場合は、肌質に合わせた適切な保湿ケアを行いましょう。

  • 乾燥肌(皮脂少ない、角層水分量低下あり):化粧水+乳液+クリームなど
  • 脂性肌(皮脂多い、角質水分量低下なし):化粧水+油分の少ない乳液など
  • 乾燥性脂性肌(皮脂多い、角質水分量低下あり):化粧水+乳液(保湿成分多めのもの)

スキンケアアイテムを選ぶ際は、アレルギー試験などが行われた低刺激性のものが一般的に推奨されます。また、赤みや腫れなど接触皮膚炎が疑われる場合は使用を中止したうえで速やかに主治医に相談してください。

ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)で効果がなかった場合の対応

ロゼックスゲル(メトロニダゾール)は多くの酒さの患者さんに有効な治療薬ですが、すべての方に効果があるわけではありません。

効果が見られない場合、他の治療選択肢を考慮することが必要です。

ステロイドからの切り替えによる増悪時

厳密には酒さとは異なりますが、ステロイドを長期に使用することで赤ら顔をきたす「酒さ様皮膚炎、ステロイド酒さ」と呼ばれる症状があり、ステロイドからロゼックスゲルに切り替えることで一時的に症状の悪化を認めることがあります。

通常、悪化時期を乗り越えると症状が自然に治まってきますが、どうしても痒みが強い場合などは一時的に非ステロイド外用薬(プロトピック軟膏やコレクチム軟膏など)を併用することも。

ただしこれらの薬も酒さ様皮膚炎の原因となる可能性があるため、一時的な使用にとどめ、テトラサイクリン系の抗炎症作用を有する抗生剤の内服を併用することがあります。

抗生剤内服

テトラサイクリン系の内服薬の併用は、ロゼックスゲル単剤よりもより効果が高まる傾向にあることがこれまでの報告で明らかになっています。具体的には以下の薬剤を処方することが多いです。

  • ミノサイクリン(ミノマイシン)
  • ドキシサイクリン(ビブラマイシン)

いずれも酒さにおいて保険適用ではありませんが、ロゼックスゲル単剤で効果を認めにくい場合に併用を検討することがあります。

イベルメクチンへの変更

ロゼックスゲルと同様、抗原虫(寄生虫)作用や抗菌作用を有するイベルメクチンの外用も、海外を中心に酒さの治療によく用いられている薬です。

これまでの報告で0.75%メトロニダゾールと比較して1%イベルメクチンの方がより効果が早く、ブツブツ(丘疹・膿疱)に対する効果が高いことが分かっています。ただし、日本では保険適用外です。

アゼライン酸への変更

酒さに有効な成分の一つにアゼライン酸もあります。ニキビの改善効果、炎症後色素沈着や肝斑の改善効果もあり、抗炎症作用も有する成分です。

15%アゼライン酸と0.75%メトロニダゾールでは、効果に大きな差はないと言われていますが、人によっては刺激を感じることがあるため注意が必要です。

レーザー療法や光治療

上記治療はいずれもブツブツ(紅色丘疹・膿疱)や赤みの軽減をもたらす効果がありますが、紅斑の改善には時間が要することと、毛細血管拡張に対しては効果が乏しいことから、レーザーや光治療を併用することがあります。

ヘモグロビンに吸収度の高い波長であるパルス色素レーザー(Vビーム)やロングパルスYAGレーザー(ジェネシスなど)、IPL(光治療)を用いることが多いです。

他の治療薬との併用禁忌

ロゼックスゲル(一般名:メトロニダゾール)と併用が禁忌となる薬はありませんが、併用に注意が必要な薬はいくつかあります。

ロゼックスゲルと併用注意の薬剤

薬剤説明
ワルファリン等のクマジン系薬剤出血のリスク増加
ジスルフィラム精神症状が現れる可能性
リチウムリチウム中毒が現れるリスク
5-FU5-FUの作用が増強されることが
ブスルファンブスルファンの作用が増強されることが
シクロスポリンシクロスポリンの作用が増強されることが
フェノバルビタール本剤の作用が減弱する可能性

アルコールに関して

アルコールを含む薬剤との併用は、顔面のほてり、吐き気、頭痛、腹痛などの副作用を引き起こす可能性があります。アルコールは一部の咳止めシロップや消毒薬に配合されることがあるため注意しましょう。

また、ロゼックスゲルを使用中の飲酒は避けてください。

保険適用について

ロゼックスゲル0.75%(メトロニダゾール)に対して保険が適用される疾患

  • がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減
  • 酒さ

薬価は、102.2円/gです。ロゼックスゲルは15gと50gの2つのタイプがあり、それぞれの薬剤費は以下となります。

15g:1,522円/本(3割負担で459.9円/本)

50g:5,110円/本(3割負担で1,533円/本)

保険の適応を受けるためには専門医による診察が必要となりまた、薬剤費に加えて初診料あるいは再診料、処置料などがかかります。

詳しくはお問い合わせください。

参考文献

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REBORA, Alfredo. The management of rosacea. American Journal of Clinical Dermatology, 2002, 3: 489-496.

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