リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）｜ステロイド外用薬

リンデロンVGとは、皮膚の炎症やアレルギー反応などに効果のあるステロイド外用薬と抗生物質の合剤です。

リンデロンVGは通常のステロイド外用薬で使用できないびらんや、感染症状を伴う病変にも使用できることが大きな特徴になります。

ここではリンデロンVGについて詳しく解説していきましょう。

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）の有効成分、作用機序

リンデロンVGは、皮膚の炎症による赤みや腫れなどの症状に二次感染を伴うケースに、特に効果を発揮する外用薬です。

有効成分 

リンデロンVGには、主に2つの有効成分が含まれています。

有効成分	濃度	主な働き
ベタメタゾン吉草酸エステル	0.12%	合成ステロイドで高い抗炎症作用
ゲンタマイシン	0.1%（力価）	広範囲な抗菌作用

ベタメタゾン吉草酸エステルは合成ステロイドの一つで、炎症をもたらす物質の放出を抑制し、皮膚の炎症を鎮める効果が。

リンデロンVGにはベタメタゾン吉草酸エステルが0.12%配合されている、軟膏・クリーム・ローションの3つの剤型があります。

ゲンタマイシンが配合されていないリンデロンVも、同じくベタメタゾン吉草酸エステル0.12%です。

ステロイド外用薬は強さによってランクが分かれており、リンデロンVGは5段階のうち上から3番目の「強い(strong)」クラスに分類されます。

ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質で、細菌の増殖に必要なタンパク質の合成を阻害することで抗菌作用を発揮します¹⁾。

作用機序

リンデロンVGの有効成分ベタメタゾン吉草酸エステルと抗生物質のゲンタマイシンは、それぞれ以下のような作用機序を持っています^2)〜5)。

ベタメタゾン吉草酸エステル

• 細胞質の受容体に結合したのちに細胞核に移動し、炎症の原因となるさまざまな物質の生成を抑えることにより、炎症を引き起こすサイトカインや化学物質の放出が抑制され、皮膚の炎症反応が軽減されます。
• 免疫細胞の機能を抑える働きも持っており、これにより皮膚への免疫反応が減少し、炎症をやわらげます。
• 血管収縮作用もあり、その効果は同じstrongクラスの強さであるフルオシノロンアセトニド(フルコート)よりも強いといわれています。

ゲンタマイシン

• アミノグリコシド系の抗生物質は、タンパク質の合成を阻害することで増殖を抑える他に細胞膜に障害を与えることにより殺菌作用を発揮します⁶⁾。
  
  この殺菌作用は濃度により、1回に高用量を投与することで効果は高まります。多くの細菌に対する効果を持つ成分で、特に黄色ブドウ球菌のようなグラム陽性球菌に高い効果があり、グラム陰性菌に対しても有効です。

参考文献 

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）の適応対象となる患者さん

リンデロンVGは、その2つの有効成分の働きによって、以下のような効果を期待できます。

• 炎症や赤み、腫れの軽減
• アレルギーによる皮膚のかゆみや湿疹の緩和
• 細菌による皮膚感染の治療

リンデロンVGは、これらが同時に起こっているような病態、すなわち浸潤やびらんを認めたり、伝染性膿痂疹（とびひ）のような二次感染を伴うよう湿疹や皮膚炎、外傷、手術創などに特に有効性の高い薬です。

添付文書では以下のように示されています⁷⁾。

適応菌種

・ゲンタマイシン感性菌

適応症

・湿潤、びらん、結痂を伴うか、又は二次感染を併発している、湿疹・皮膚炎群（進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む）、乾癬、掌蹠膿疱症（しょうせきのうほうしょう）

・外傷・熱傷及び手術創等の二次感染（ローションを除く）

一方、以下に該当する方はリンデロンVGを使用することができません。

• リンデロンVGの成分に過去にアレルギー反応を示したことがある方
• ゲンタマイシン耐性菌または非感性菌による皮膚感染がある場合
• 真菌やウイルスなどの皮膚感染症がある場合
• 潰瘍部や第Ⅱ度深在性以上の熱傷・凍傷
• 鼓膜穿孔を認める場合

参考文献

7) 添付文書 医療用医薬品：リンデロン 4. 効能または効果

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）の使用方法と注意点

薬の使用に伴う皮膚のトラブルをなるべく避けるためにも、リンデロンVGを使用する際の正しい方法と注意点を知っておくことは非常に大切です。

使用方法

使用量と頻度

リンデロンVGは、通常、1日1〜数回、患部に適量を塗布し⁸⁾、頻度は症状により主治医が変更を指示することもあります。

ステロイドの使用量は、1FTU(フィンガーチップユニット)という単位が一つの目安です。

塗布の方法

清潔な手で、適量のリンデロンVGを指にとり、患部に優しくなじませます。塗布後は、手をよく洗ってください。

注意点

参考文献 

8) 添付文書 医療用医薬品：リンデロン 6. 用法及び用量

お子さま、ご高齢の方への使用

リンデロンVGは多くの皮膚症状に対して有効な外用薬ですが、小さなお子さまやご高齢の方への使用には注意が必要です。ここでは、特定の年齢層に対する使用方法や注意点について解説いたします。

お子さまへの使用

小児の皮膚は成人よりも薄く、また成人と比べて体表面積に対する体重が大きいため、薬の吸収率が高くなります⁹⁾。

小児に長期、大量に塗布したり密封法（ODT）を行った場合に、発達障害をきたす可能性も¹⁰⁾。

リンデロンVGをお子さまに使用する際の注意事項

項目	説明・注意点
使用量	指示された量を厳守し、過剰な使用は避ける
使用部位	顔やおむつの内側など、皮膚が特に薄い部分の使用は特に注意が必要で、使用は短期間のみとし、医師の指示に従う
使用期間	短期間の使用を原則とし、長期間の使用は避ける

ご高齢の方への使用

ご高齢の方の皮膚は、老化によって乾燥しやすく、皮膚のバリア機能が低下するため、外用薬の吸収が高まることがあります¹¹⁾。

リンデロンVGの使用の際は主治医から指示された使用量を守り、使用期間も短期間にとどめてください。

参考文献 

9) Carr WW. Topical calcineurin inhibitors for atopic dermatitis: review and treatment recommendations. Paediatr Drugs, 2013; 15(4): 303-310.
10) Vermeer BJ, et al. A case of growth retardation and cushing’s syndrome due to excessive application of betamethasone-17-valerate ointment. Dermatologica. 1974; 149(59:299-304.
11) Farage MA,et al. Intrinsic and extrinsic factors in skin ageing: a review. Int J Cosmet Sci.  2008; 30(2): 87-95.

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）の治療期間

リンデロンVGの適切な治療期間を遵守することが、副作用のリスクを軽減するためにも重要です。

治療期間

リンデロンVGの治療期間は、患者さんの症状や状態によっても異なります。長期使用によって副作用を認める可能性があるので、使用期間は最低限にとどめることが推奨。

リンデロンVGは一時的なびらんや浸潤、感染症状を伴うケースに処方されることが多く、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症疾患で長期にわたって使用することはほとんどありません。

数日から1週間程度の短期間の使用でびらんや二次感染などの症状の改善を認めれば、非ステロイド外用薬や抗生物質が配合されていない他のステロイド外用薬への変更を検討します¹²⁾。

それまでに症状の改善を認めない場合は、他の対応が必要になりますので主治医に早めに相談してください。

参考文献

12) Eichenfield LF, et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis. J Am Acad Dermatol. 2014;70(2):338-351.

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）の副作用やデメリット

リンデロンVGの主な副作用は配合されている合成ステロイドによるものです。中でも最も報告が多いものは皮膚の刺激感や紅潮で¹³⁾、その他にも多毛や皮膚の萎縮、ニキビなどいくつかあります¹⁴⁾。

重大な副作用として挙げられるのは目の周りの皮膚に使用した場合に眼圧が上がる緑内障や白内障で、目周りの使用には特に注意が必要です¹⁵⁾。

リンデロンVGの主な副作用

副作用	説明
ステロイドざ瘡	毛穴に一致したニキビ様の皮疹が特徴
刺激感	一過性の刺激を感じる
皮膚の萎縮	皮膚が薄くなる現象
酒さ様皮膚炎	毛細血管拡張や紅色丘疹など
皮膚の感染症	真菌性やウイルス性の皮膚感染症
眼症状	緑内障や白内障、中心性漿液性網脈絡膜症など
曽於他	腎障害、副腎皮質機能低下など

表に挙げられた副作用は一部であり、他にもさまざまな症状が出る可能性があります。使用時に異常を感じた際は、すぐ医師の診察を受けてください。

使用時の注意点

参考文献

13)斉藤忠夫. 皮膚科の臨床. 1969; 11 (2):114.
14) 添付文書 医療用医薬品: リンデロン 11. 副作用
15) Beck KM, Set al. Ocular co-morbidities of atopic dermatitis. Part II: Ocular disease secondary to treatments. Am J Clin Dermatol. 2019; 20: 807-815.

リンデロンVG（ベタメタゾン・ゲンタマイシン）で効果がなかった場合の対応

リンデロンVGは、すべての患者さんに対して効果が現れるわけではありません。そのような場合は以下のような対応を考えます。

ゲンタマイシン耐性菌の可能性

リンデロンVGに配合されているゲンタマイシンは、幅広い菌に対する殺菌作用を持っていますが、中にはゲンタマイシン耐性菌があります¹⁶⁾。

ゲンタマイシンに対して感受性があるかどうかは細菌培養検査によって判断することに。感染症状の改善を認めない場合は、細菌培養検査を行い、感受性のある抗生物質への変更を検討します。

また、感染症状が顕著である時は抗生剤の内服薬への検討も考慮します。

他のステロイド外用薬への変更

リンデロンVGの有効成分であるベタメタゾン吉草酸エステルは、炎症所見が著明である場合、効果が得られにくいことがあり、その際は、very strongやstrongestクラスのステロイド外用薬への変更を検討します。

非ステロイド外用薬への変更

慢性炎症疾患でリンデロンVGを長期間にわたり塗布するケースはまれですが、副作用が懸念される場合は、非ステロイド外用薬に切り替えることがあります。

代替治療薬名	主成分
プロトピック軟膏	タクロリムス
コレクチム軟膏	デルゴシチニブ
モイゼルト軟膏	ジファミラスト

代替治療薬の注意点

参考文献 

16) Ohguchi Y, et al. Gentamicin-Induced Readthrough and Nonsense-Mediated mRNA Decay of SERPINB7 Nonsense Mutant Transcripts. J Invest Dermatol. 2018; 138(4):836-843.

他の治療薬との併用禁忌

リンデロンVGは他の薬剤と併用禁忌になることは現時点ではありませんが、他のステロイド薬を同時に同じ部位に塗るなど、指示以外の使い方は副作用の発現を高める可能性があり推奨されていません。

使用する際は必ず専門医の指示に従ってください。

保険適用について

リンデロンVGが保険適用となる疾患は、以下のとおりです

適応菌種

・ゲンタマイシン感性菌

適応症

・湿潤、びらん、結痂を伴うか、又は二次感染を併発している、湿疹・皮膚炎群（進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む）、乾癬、掌蹠膿疱症

・外傷・熱傷及び手術創等の二次感染（ローションを除く）

薬価は、どの剤型も27.7円/gです。

タイプ	薬価に基づく薬の価格
軟膏	5g/本:138.5円(3割負担で約42円)　10g/本:277円(3割負担約83円)
クリーム	5g/本:138.5円(3割負担で約42円)　10g/本:277円(3割負担約83円)　30g/本:831円(3割負担約249円)
ローション	10ml/本:277円(3割負担約83円)

保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要で、初診料あるいは再診療、処置代などがかかります。

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