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イピリムマブ(ヤーボイ)

イピリムマブ(ヤーボイ)

イピリムマブ(ヤーボイ)とは、主に進行性や転移性の悪性黒色腫などの治療に用いられる免疫チェックポイント阻害薬です。

抗がん剤の中でも免疫系に直接働きかける特徴があり、患者さん自身の免疫力を高めながら腫瘍細胞を排除しようとする作用が期待できます。

一般的な化学療法とは異なる仕組みを持つため、独特の効果や注意点があります。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

イピリムマブ(ヤーボイ)の有効成分と効果、作用機序

イピリムマブ(ヤーボイ)は免疫系に作用する特殊な薬剤です。通常の抗がん剤のように腫瘍そのものを直接攻撃するのではなく、患者さんの免疫システムを活性化しながらがん細胞を排除する手助けを行います。

イピリムマブの有効成分と特徴

イピリムマブは、ヒト型モノクローナル抗体の一種である抗CTLA-4抗体に分類され、CTLA-4はT細胞の表面にあるタンパク質で、免疫のブレーキ役を担う分子として知られています。

イピリムマブはCTLA-4に結合することでT細胞の免疫抑制を解除し、がん細胞への攻撃力を向上させる仕組みをもっています。

  • ヒト型モノクローナル抗体として開発
  • CTLA-4をターゲットにして免疫を活性化
  • がん細胞への攻撃能力を高めるアプローチ

多くのがん細胞は免疫から逃れる仕組みを形成していますが、イピリムマブによって一部の免疫ブロックを解除し、T細胞ががん細胞を積極的に攻撃できる状態に近づけるのが特徴です。

イピリムマブが発揮する主な効果は、悪性黒色腫(メラノーマ)の進行を抑制することで、さらに海外の臨床や一部の適応拡大で、腎細胞がんや肺がんなどへの効果も検討されています。

イピリムマブの作用

作用の焦点具体的な働き結果
CTLA-4への結合T細胞上のCTLA-4と結合し、免疫抑制を緩和免疫ががん細胞を認識しやすくなる
免疫記憶のサポート活性化T細胞ががん細胞の情報を保持しやすい環境再発リスクを低減する可能性
細胞傷害性の向上細胞傷害性T細胞(CTL)の機能強化腫瘍細胞への攻撃力が上がる

免疫チェックポイント阻害薬の位置づけ

イピリムマブは、いわゆる免疫チェックポイント阻害薬の中でも比較的早期に開発された薬剤で、PD-1やPD-L1を阻害するニボルマブやペムブロリズマブといった他の免疫療法薬と併用されるケースもあります。

CTLA-4をターゲットとするイピリムマブと、PD-1/PD-L1を阻害する薬の組み合わせは相乗効果が期待される一方で、副作用管理がより重要です。

どのようながんに効果があるか

主な適応としては悪性黒色腫が挙げられますが、近年では腎細胞がんや肺がんに対しても効果が確認され、条件付きで適応が認められるケースが増えています。

治療効果には個人差があるため、必ずしも全員に劇的な効果が現れるわけではありませんが、従来の化学療法だけでは難しかった患者さんにも治療の選択肢を提供している点が大きいです。

イピリムマブの得られるメリット

イピリムマブのメリットは長期的な生存率向上につながる可能性があることで、免疫を活性化する仕組みゆえに、効果が持続すると長い期間がんの進行を抑制できる場合があります。

従来の化学療法に比べると奏効率そのものは低いこともありますが、一定割合で長期奏効が期待できます。

  • 体内の免疫を活用するため、持続効果が期待される
  • 一定数の患者さんで長期間がんの進行を抑えられる
  • 他の治療と併用して相乗効果が狙える場合がある

イピリムマブの恩恵と課題

視点ポジティブ面課題
治療効果一部の患者さんで長期寛解が望める全員に当てはまるわけではない
安全性化学療法とは副作用の性質が異なり比較的投与しやすい免疫関連の重篤な副作用が発生する場合あり
経済面長期的に使うことで医療費を抑えられる可能性高額な薬価で経済的負担が大きい

使用方法と注意点

イピリムマブ(ヤーボイ)の使用では、投与スケジュールや併用薬の管理に十分配慮することが求められ、免疫系を操作する薬剤であるため、副作用の初期兆候を見逃さないようにすることが重要です。

投与スケジュールの概要

標準的には点滴静注により数週間ごとに投与し、1回の投与量は体重や病状によって異なります。

医師は患者さんの体重やがんの進行度、他の治療歴などを考慮して投与量と間隔を決定し、多くのケースでは3週間から6週間に1回程度のペースで投与が継続されることが多いです。

  • 点滴静注での投与
  • 3~6週間おきに1回の投与
  • 体重や病状で投与量が変わる

主な投与間隔とスケジュール

投与回数投与間隔対象例
第1~4回3週間おき悪性黒色腫や腎細胞がんなどで標準
以降6~8週間おき治療効果の評価次第で検討
併用療法病状によるPD-1阻害薬との同時投与など

併用薬との相互作用

イピリムマブは免疫系を活性化するため、ステロイドなど免疫抑制作用のある薬との併用には注意が必要です。

副作用が強く出た際にステロイド投与で症状をコントロールすることがありますが、治療効果を損なう可能性があるため、医師が用量やタイミングを慎重に判断します。

  • ステロイド剤とのバランスに注意
  • 免疫機能をアップさせるサプリなどにも注意が必要
  • 他のがん治療薬との組み合わせでは副作用を増す可能性

一方、過度の免疫亢進は自己免疫的な副作用につながるため、状況に応じて免疫抑制剤を用いることもあり、さじ加減が難しく、専門医の綿密な管理が求められます。

投与前に留意する点

投与前には、以下のような項目を確認しておくことが大切です。

  • 内科的疾患の有無(特に自己免疫疾患や肝障害など)
  • 他の治療(放射線治療や化学療法)とのスケジュール調整
  • 服用している薬やサプリメントのリスト

安全管理のポイント

イピリムマブの治療中は定期的な血液検査を含むモニタリングを行い、早期に副作用を見つけることが望まれます。特に肝機能や腎機能、甲状腺ホルモンなどの検査を実施して、免疫関連の炎症が起きていないかチェックすることが大事です。

  • 定期的な血液検査で炎症や肝機能障害を早期発見
  • 免疫不全状態を起こさないための注意
  • 服用薬やサプリの申告を徹底する

イピリムマブ投与時の注意事項

項目注意点
定期検査の実施血液検査や画像検査で副作用と治療効果を評価
他薬との併用状況ステロイドや免疫調整薬の過不足に注意
生活習慣の見直し飲酒や喫煙はできるだけ控える方が体調管理に有効
異常の早期発見少しでも異変を感じたら主治医に相談する

イピリムマブ(ヤーボイ)の適応対象となる患者さん

イピリムマブ(ヤーボイ)は、特定のがんタイプに対してのみ保険適用の対象で、代表的には悪性黒色腫が挙げられますが、承認の拡大とともに腎細胞がんや肺がんなどでも使用されることがあります。

悪性黒色腫(メラノーマ)

皮膚科領域でイピリムマブが中心的に使われるのは進行期の悪性黒色腫です。進行度が高いメラノーマは従来の治療選択肢が限られていましたが、免疫チェックポイント阻害薬の登場によって長期生存を目指す道が広がっています。

  • 手術後の再発防止目的
  • すでにリンパ節や他臓器に転移した状態への治療
  • 免疫療法が効果的なタイプのがん細胞

病状や遺伝子変異の有無によって他の分子標的薬を用いたほうが良いケースもあり、医師がメラノーマの特徴を評価し、最適な治療を選択していく流れです。

イピリムマブが候補となる悪性黒色腫の特徴

  • 切除が難しい部位に発生している
  • 他の化学療法や分子標的薬で十分な効果が得られなかった
  • 免疫細胞浸潤が見られ、免疫療法に反応しやすい可能性がある

腎細胞がん

腎がんの中でも腎細胞がんは、全身転移を起こしやすいタイプがあり、近年、イピリムマブとニボルマブの併用療法が標準治療の1つとして注目されており、適応拡大が進んでいます。

ただし、副作用のリスク管理が従来以上に複雑になるため、十分なモニタリングが必要です。

非小細胞肺がん

PD-1/PD-L1阻害薬が主に用いられる肺がん治療において、CTLA-4阻害薬であるイピリムマブを併用するケースもあります。

高い免疫応答が得られる可能性がある患者さんで選択されることがありますが、適応要件や保険の扱いは症例によって異なるため、専門医と相談してください。

その他のがん

臨床試験の段階では、消化器がんや乳がんなど多様ながん種に対してイピリムマブの有用性を研究しています。

イピリムマブ適応が検討される主ながん種と考慮点

がん種主な適応の状況併用療法の例
悪性黒色腫既存療法が効かない進行期単独療法またはPD-1阻害薬併用
腎細胞がん転移性腎細胞がんニボルマブとの併用が注目される
非小細胞肺がん一部の高度進行例併用療法で有効性を検討中
その他臨床試験段階で研究が進んでいる個別適応や試験参加が必要になる場合あり

イピリムマブ(ヤーボイ)の治療期間

イピリムマブの治療期間は、病状や副作用の出方、治療効果によって大きく左右され、一定の治療回数をこなして効果判定を行い、継続するか中止するか、別の治療へ切り替えるかを決定する流れが一般的です。

標準的な治療コース

進行期の悪性黒色腫に対しては、イピリムマブを3週間から6週間ごとに数回(一般的には4回ほど)投与し、その後効果判定を行います。

効果が確認できれば投与間隔を空けながら継続することもあれば、いったん治療を止めて経過観察する方針を取る場合もあります。

典型的な治療スケジュール

  • 第1サイクル~第4サイクル:3週間おきの投与
  • その後:画像検査や血液検査で評価
  • 効果があれば継続、またはいったん休薬して観察

長期投与の考え方

イピリムマブは免疫を介した効果を狙うため、投与終了後も一定期間抗がん作用が続く可能性があり、長期にわたり効果が持続する患者さんもいれば、早期に効果がみられないこともあります。

医師は症状の推移や副作用の程度を見ながら総合的に判断します。

  • 無理に長期間投与せず、適切なタイミングで継続や中止を判断
  • 一度治療終了しても、再度腫瘍が増悪した際に再投与を検討する場合がある

経過観察の重要性

治療が終わったとしても、定期的に検査を行って再発リスクを確認することは大切で、これはイピリムマブが効いている間は症状が安定していても、時間経過とともにがん細胞が再び増殖するケースもあるためです。

自覚症状がなくてもスケジュールに沿って受診しましょう。

治療終了後のフォローアップ

フォローアップ内容目的頻度
血液検査肝機能や免疫状態のチェック1か月~3か月ごとに実施
画像検査(CTやMRIなど)腫瘍の増悪や再発の有無を確認3か月~6か月ごと
内科的診察全身状態や副作用の有無必要に応じて随時
皮膚症状の確認皮膚科領域のがんや副作用の発現確認症状が出た際は早めに受診

治療期間を短縮・延長する要因

副作用が重度となった場合や治療効果が早期に得られない場合は、治療スケジュールを変更する場合があります。また、併用療法を行う際は、他薬の投与タイミングと合わせて最適化する必要があるため、主治医としっかり相談してください。

副作用やデメリット

イピリムマブ(ヤーボイ)は免疫系を活性化するため、免疫関連の副作用が特徴的で、化学療法でよく見られる脱毛や骨髄抑制だけでなく、自己免疫性の炎症が多彩に現れる可能性があります。

重症化すると危険な場合もあるため、早期発見と対策が欠かせません。

主な副作用と症状

免疫チェックポイント阻害薬特有の副作用として、以下のような症状が挙げられます。

  • 皮膚症状(発疹、かゆみ)
  • 下痢や腸炎
  • 肝機能障害
  • 甲状腺機能の異常
  • 肺炎や腎炎、内分泌障害

これらは総称して「免疫関連有害事象(irAE)」と呼ばれることがあり、早めに治療を開始しないと重症化しやすい性質があります。

イピリムマブで生じやすい副作用

副作用具体的症状重点管理の必要性
皮膚障害発疹、そう痒感、色素沈着軽度なら外用薬で対処可能
消化器症状下痢、腹痛、血便重度の場合は入院治療が必要
肝機能障害AST/ALTの上昇、黄疸定期的な血液検査が重要
内分泌障害甲状腺機能低下/亢進、糖尿病などホルモン補充で管理可能な場合あり
肺炎息切れ、呼吸困難、発熱重症化で生命に関わる

副作用が起こるメカニズム

イピリムマブは、T細胞による免疫活動を強化し、がん細胞だけでなく、自己の正常細胞にも攻撃が及ぶ可能性があり、その結果として自己免疫疾患に似た症状が出るのです。

個人差が大きく、ほとんど副作用を感じない人もいれば、治療を中断せざるを得ないほど重篤な副作用が生じる人もいます。

副作用への対応

軽度の皮膚症状や下痢などは外来で対症療法を行うことが多いですが、重度の場合はステロイドや免疫抑制剤による治療が検討されます。

自己判断で薬をやめたり量を調整したりすると病状が悪化する恐れがあるため、必ず主治医の指示を仰ぐことが必要です。

  • 症状の重症度に応じて早期からステロイドを使用
  • 甲状腺機能低下の場合はホルモン補充
  • 必要に応じて投与の一時中断や中止を検討

イピリムマブ(ヤーボイ)で効果がなかった場合

イピリムマブは免疫療法の一種であり、効果が表れるまで時間がかかる場合もあれば、まったく効果が得られないケースもあり、そのときにどのような対応が考えられるのかを理解しておくと、不安を減らすことにつながります。

効果判定のタイミング

投与開始から数週間~数か月で画像検査や血液検査などを用いて効果判定を行い、早い段階で腫瘍縮小がみられる場合もあれば、一時的に腫瘍が大きくなったように見える偽進行という現象が起こることもあります。

偽進行は免疫細胞が腫瘍組織に集まる過程で生じるもので、本当の悪化とは限りません。

  • 偽進行と本当の増悪を見極める必要
  • 追加の画像検査や腫瘍マーカー測定で総合判断

他の免疫チェックポイント阻害薬への切り替え

イピリムマブ単独で効果が乏しかった場合、PD-1阻害薬やPD-L1阻害薬への切り替え・併用を検討することが一般的です。免疫療法はターゲットとなる分子が異なる薬を組み合わせることで、別の経路から免疫賦活を狙うアプローチを試みます。

イピリムマブからの切り替え時の候補薬

薬剤名ターゲット特徴
ニボルマブPD-1イピリムマブと併用するケースあり
ペムブロリズマブPD-1悪性黒色腫や肺がんで使用実績
アテゾリズマブPD-L1肺がんや尿路上皮がんで適応
デュルバルマブPD-L1小細胞肺がんでの承認例など

別の治療法との併用や切り替え

がん治療は多面的なアプローチが求められ、イピリムマブが単独で効かなかった場合でも、放射線治療や化学療法と組み合わせることで相乗効果を狙うことが可能です。

また、手術が適応になる状態に改善した場合には外科的切除を検討することもあります。

中止を検討するタイミング

治療効果が見込めず、副作用が強く出るようであればイピリムマブを中止し、他の治療法に移行するほうが得策になることもあります。

この判断は主治医や専門チームが患者さんと話し合いを重ね、生活の質やリスク・ベネフィットを検討しながら行います。

イピリムマブ中止を検討する場面

  • 副作用が治療継続を困難にするレベル
  • 連続投与にかかわらず腫瘍が増大し続ける
  • 併用療法でも効果が見られない
  • 患者さんの全身状態や希望により判断

他の治療薬との併用禁忌

イピリムマブは免疫系を調整する薬剤であるため、併用禁忌や併用注意となる薬があり、特に免疫機能に大きく影響を与える薬剤とは慎重に併用を検討する必要があります。

免疫抑制薬

免疫抑制薬(ステロイド、高容量の免疫抑制剤など)を同時に使用すると、イピリムマブの免疫活性化効果が減少し、治療効果を損なう可能性があります。

ただし、重度の自己免疫症状が出た際には、ステロイドの投与が副作用管理の面で欠かせなくなるケースもあるため、タイミングや用量の調整が大切です。

  • ステロイドとイピリムマブを一緒に使う場合は慎重なモニタリング
  • 免疫抑制薬の長期使用は治療効果の妨げになる場合あり

インターフェロン製剤

インターフェロンも免疫系に作用する薬ですが、作用機序が異なり、時に相互作用が問題視されます。併用することで副作用が増加する恐れがあるため、一般的には主治医が適応を慎重に判断します。

生ワクチン

イピリムマブ治療中は、免疫系のバランスが崩れやすくなるため、生ワクチン接種は避けましょう。生ワクチンには弱毒化した病原体が含まれており、接種すると予期せぬ感染症リスクが上がる可能性があるためです。

併用禁忌・注意が必要な例

薬剤/治療留意点主なリスク
ステロイド系薬剤免疫活性化効果を弱める恐れがある副作用コントロール時のバランスが難しい
免疫抑制剤免疫抑制が強く働きすぎ、効果減弱または感染症増大治療効率の低下や重篤感染
生ワクチン接種により感染リスクが高まる予期しないウイルス・菌増殖
他の免疫療法相乗効果を狙う反面、副作用も増加する可能性合併症リスク要注意

併用注意が必要な理由

免疫チェックポイント阻害薬は体内の免疫細胞を制御する繊細な仕組みで、わずかな薬理作用の変化で副作用の増減に直結するため、他薬との併用は特に慎重にならざるを得ません。

主治医や薬剤師とのコミュニケーションを密にし、服用中の薬を正確に伝えることが大切です。

イピリムマブ(ヤーボイ)の保険適用と薬価について

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

保険適用の範囲

悪性黒色腫や腎細胞がんなど、一部の適応疾患に対しては公的医療保険での給付対象となります。適応外使用の場合は自己負担が高くなることがあるため、必ず医師の説明を受けてください。

  • 日本国内では主に悪性黒色腫などで保険適用
  • 高額療養費制度を利用すると自己負担上限が設定される
  • 適応外では全額自己負担になる場合あり

イピリムマブの薬価

イピリムマブ(ヤーボイ)の薬価は1バイアル50mgあたり630,996円(2025年時点)です。

患者さんが3割負担であれば、単純計算でも約189,299円の自己負担になり、複数回投与することを考慮すると、数十万円以上の自己負担が発生する可能性があります。

イピリムマブの薬価と負担

薬剤量薬価(1バイアル50mg)3割負担の目安留意点
50mg 1バイアル630,996円約189,299円1回の投与に必要なバイアル数で総額が変動
2バイアル使用1,261,992円約378,598円体重や治療計画により変動
4~8回投与時の合計治療回数×薬価高額療養費制度の活用を検討投与サイクルや回数に注意

高額療養費制度と民間保険

日本の公的医療保険には高額療養費制度があり、所得区分ごとに自己負担の上限が設定されています。

イピリムマブのような高額薬剤を使用する際には大きな助けになりますが、それでも自己負担分はかなりの金額になる場合があるため、民間のがん保険や先進医療特約などの活用も検討してください。

  • 高額療養費制度で月ごとの自己負担に上限がある
  • 民間保険で先進医療特約が適用できるか要確認
  • 保険会社や病院のソーシャルワーカーに相談すると手続きがスムーズ

以上

参考文献

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