エクロックゲル5% ｜わき汗（原発性腋窩多汗症）治療剤

エクロックゲルとは、脇の多汗症（原発性腋窩多汗症）に効果がある塗り薬です。多汗症は、日常生活に影響を及ぼすことがあり、時には深刻な問題にも。

エクロックゲルは最初に脇の多汗症に保険適用となった外用薬で、抗コリン作用によって過剰な発汗を抑える効果があります。

この記事では、原発性腋窩多汗症治療剤エクロックゲルについて詳しく解説していきましょう。

エクロックゲルの有効成分と効果、作用機序

エクロックゲルの有効成分

エクロックゲルの主要な有効成分は「ソフピロニウム臭化物」で、5%の配合です。ソフピロニウム臭化物はグリコピロニウム臭化物アナログで、抗コリン作用があります。

成分	特徴
ソフピロニウム臭化物	抗コリン作用によって汗の分泌を抑制

エクロックゲルの作用機序

汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、多汗症の原因となる汗はエクリン腺から分泌されます。

アセチルコリンがエクリン腺のM3受容体（ムスカリン受容体）に結合することで汗が分泌され、ソフプロニウム臭化物はM3受容体に結合し、アセチルコリンの働きを妨げることで汗を分泌するシグナルを阻害。

エクロックゲルの効果

エクロックゲルの効果

• 汗の量の減少: 汗の分泌が抑制されるため、わき汗の量が有意に減少。
• 肌の快適さ: 汗が減少することで皮膚の刺激や不快感が減り、より快適な肌状態を維持。
• 生活の質の向上、社会的不安の軽減: わき汗が減少することで、衣服の汗ジミによる恥ずかしさや不安が軽減し、生活の質が向上。

エクロックゲルの使用方法と注意点

エクロックゲルの使用方法

エクロックゲルは1日1回塗布する薬です。エクロックゲルにはツイストボトルとアプリケーター付きボトルの2つのタイプがあり、それぞれ使用方法が異なります。

【ツイストボトルの使用方法】

1. エクロックゲルを塗布する前に、脇の水気をタオルなどでよくふき取り、清潔に。
2. キャップを開けて頭部を時計回りにゆっくり回し、頭部が上がったら反時計方向にゆっくり回すと1回分の薬液が。
3. 薬液を片方の脇全体に塗り広げる。
4. 同様にもう一度薬液を出し、片方の脇も。
5. ゲルが完全に乾くまで待ち、衣服を着用。

【アプリケーター付きボトルの使用方法】

1. エクロックゲルを塗布する前に、脇の水気をタオルなどでよくふき取り、清潔な状態に。
2. キャップを開けて中のアプリケーターを取り出しま、ポンプを押してアプリケーターの上面に薬液をのせる。１プッシュ分が片方の脇に塗布する量。
3. 薬液を片方の脇全体に塗り広げる。
4. 同様にもう一度薬液を出し、片方の脇も。
5. ゲルが完全に乾くまで待ち、衣服を着用。

エクロックゲルの使用時の注意点

エクロックゲルを使用する際には、いくつかの注意点があります。

使用前、使用時の注意点

• 薬液は手を使って塗らず、手に着いたらすぐに洗い流す。
• 傷や湿疹・皮膚炎などがある部位には使用を避ける。
• 使用する前に脇を拭いて、清潔かつ乾燥させる。
• 製品が目に入らないように注意し、万が一目に入ってしまったら直ちに水で洗い流す。
• 塗布した場所をラップで覆うなど密封しない。
• お子様が誤って触れないよう、適切に管理。

適応対象となる患者さん

エクロックゲルは重度の原発性腋窩多汗症の方のみの適応です。

原発性腋窩多汗症の重症度分類にはHDSS（Hyperhidrosis disease severity scale、多汗症疾患重症度評価度)があり、自覚症状により4段階に分類されます。

エクロックゲルが適応となるのはHDSSスコアが3、もしくは4の患者さんで、日常生活において汗が我慢できないことが一つの適応の指標です。

• 社会生活に支障をきたす程度のわき汗を経験する方: 職場や学校での活動中にわき汗により不快感や恥ずかしさを感じ、仕事や勉学に支障をきたす方。
• 日常生活における自己意識が高い方: わき汗による汗ジミや体臭を気にすることで、自己意識が高まっている方。

エクロックゲルの使用を避けるべき患者さん

エクロックゲルは、以下のような症状をお持ちの方は使用できません。

• 前立腺肥大症がある方：前立腺肥大症があり、排尿障害がある方は使用できず、排尿障害がない場合でも、抗コリン作用(排尿時に膀胱が収縮しなくなる)により尿が出なくなることがあり、使用前に必ず医師に相談。
• 閉塞隅角緑内障がある方：緑内障の中でも閉塞隅角緑内障の方は、抗コリン作用により眼圧が上昇し、緑内障の症状を悪化させる恐れがあり、使用前に必ず医師に相談。
• 塗布部位に傷や湿疹、皮膚炎等がみられる方：傷や湿疹、皮膚炎等がある部位への使用は避ける。薬剤が体内に吸収されやすくなり、抗コリン作用の副作用が現れるリスクが高まる。

特定の背景を有する方への使用

お子さんへの使用

12歳未満の小児等を対象とした臨床試験は行われていません。

12歳未満の方に使用する際は、保護者の指導のもと使用します。詳しくは主治医にご相談ください。

妊娠中や授乳中の方への使用

妊娠中や妊娠している可能性のある方へは、医師が治療上の有益性が危険性を上回ると判断したときのみ使用できます。エクロックゲルは胎児通過性は低いと考えられていますが、胎盤移行の可能性が。

また、授乳中の方への使用は、治療と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳を続けるか中止するかを判断したうえで処方することもあります。

エクロックゲルの治療期間

エクロックゲルの治療に定められた期間はなく、早いと数日〜2週間程度で症状の改善を認め、6週間前後で効果を実感する方が多いです。

治療効果が認められれば継続して使用でき、長期投与試験では52週の時点でも有効性が認められています。

エクロックゲルの副作用やデメリット

エクロックゲルは原発性腋窩多汗症に有効な薬ですが、副作用やデメリットもあります。

エクロックゲルの一般的な副作用

エクロックゲルの主な副作用

副作用	説明
皮膚症状	エクロックゲルの成分で接触皮膚炎を認めたり、赤みや痒みなどの刺激症状を引き起こす可能性
抗コリン症状	眩しく見えたり霞んで見えたりする症状（霧視）や、ドライアイ、排尿困難、頻尿、口の渇きといった抗コリン作用が出ることが
代償性発汗	長期使用の場合、他の部位の発汗が増加する可能性

エクロックゲル使用のデメリット

エクロックゲルの使用には、いくつかのデメリットもあります。

エクロックゲルで効果がなかった場合

エクロックゲルの効果が不十分だったり、副作用で使用できない際は他の治療を検討する必要があります。

原発性腋窩多汗症の治療には、薬物療法(外用、内服及び注射)、レーザー治療、手術療法なども。

外用薬は他に、同じ抗コリンのラピフォートワイプ（グリコピロニウムトシル酸塩水和物）があり、原発性腋窩多汗症に対して保険適用されます。

塩化アルミニウム製剤も腋窩の多汗症に有効で、表皮の汗管を閉塞することで制汗作用を発揮し、抗コリン薬外用剤との併用も可能です。

重度の原発性腋窩多汗症に対しては、ボツリヌス毒素製剤の局所注射や抗コリン内服薬が保険適用となります。

その他、医療機器による施術として、マイクロ波を使用し汗腺を焼却する機器（ミラドライ）やレーザー・フラクショナルマイクロニードル高周波・高密度焦点式超音波を用いた治療法の選択肢もありますが、いずれも保険適用外です。

また、治療の補足として心理療法を検討することもあります。

これらの治療では効果がなく、患者さん本人の希望が強いことを条件に、重度の原発性腋窩多汗症に対して交感神経遮断術が適応となるケースが。

遮断術に伴う副作用もありますので、専門医としっかり話し合ったうえで治療方針を決めることが大切です。

他の治療薬との併用禁忌

エクロックゲルと併用禁忌となる薬はありません。

保険適用について

エクロックゲルが保険適用となる疾患は重度の原発性腋窩多汗症です。

薬価は、1gあたり24.62円となっています。

タイプ	薬価に基づく薬の価格
エクロックゲル5%	20g: 492.4円/本40g: 984.8円/本

保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要で、この他、初診料あるいは再診料、処置料などがかかります。

詳しくはお問い合わせください。

参考文献

添付文書　医療用医薬品：エクロック

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KIRSCH, Brandon, et al. A Multi-Center, Open-Label Study to Assess Pharmacokinetics (PK), Safety and Tolerability of Sofpironium Bromide Gel, 15% Applied Topically to Children and Adolescents,≥ 9 to< 17 Years of Age, with Axillary Hyperhidrosis. SKIN The Journal of Cutaneous Medicine, 2019, 3: S54-S54.