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アクアチムは抗生剤の一つで、ニキビ治療薬に用いられる薬です。
多くの人が一度は悩んだことがあるニキビは、毛穴の詰まりや過剰な皮脂、アクネ菌の増殖による炎症に起因。
アクアチムは増殖したアクネ菌に働きかけて、炎症を効果的に抑える効果があります。
この記事では、アクアチムについて詳しく解説していきましょう。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
アクアチムの有効成分と作用機序、効果
有効成分
アクアチムの有効成分は「ナジフロキサシン」で、ニューキノロン系の抗生物質に分類されます。アクアチムは世界初のニューキノロン系外用剤として開発されました。
日本ではナジフロキサシンが1%配合された軟膏・クリーム・ローションの3つの剤型が発売されています。
作用機序
ナジフロキサシンは、細菌細胞内のDNAジャイレースという酵素を阻害。これにより細菌のDNA複製を妨げ、主にニキビの原因となるアクネ菌や、ブドウ球菌属などに対して殺菌的に作用します1)。
効果
- 赤ニキビの改善：ニキビには以下のような段階に分かれますが、アクアチムはそのうち「赤ニキビ」と呼ばれる炎症を伴うニキビに対して効果を発揮。
アクアチムは抗菌作用により炎症を伴う赤ニキビの数を有意に減少させることが報告されており2)、ガイドラインにおいても炎症性皮疹に対して強く推奨されています3)。
- とびひ（伝染性膿痂疹）や毛包炎など皮膚感染症の改善：アクアチムは黄色ブドウ球菌やCNS（コアグラーゼ陰性ブドウ球菌）などに対しても強い殺菌効果を有しており、とびひ（伝染性膿痂疹）や毛包炎などにも効果的です。
参考文献
1) Plewig G, et al. Clinical and bacteriological evaluation of nadifloxacin 1% cream in patients with acne vulgaris: a double-blind, phase III study com- parison study versus erythromycin 2% cream. Eur J Dermatol. 2006;16:48-55.
2) Kuwahara K, et al. Nadifloxacin, an antiacne quinolone antimicrobial, inhibits the production of proinflammatory cytokines by human peripheral blood mononuclear cells and normal human keratinocytes. J Dermatol Sci. 2005; 38(1):47-55.
3) 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023.
アクアチムの使用方法と注意点
アクアチムを用いる際は、適切な使用方法を理解することが効果を高めるためにも非常に大切です。
使用方法
どの剤型も1日2回、患部に適量を塗布します4)。洗顔後の清潔な状態で、まずアクアチムを指にとり、赤ニキビなどの患部に優しく触れるように塗布してください。
注意点
- 使用頻度：1日2度塗布する薬で、1回では十分な殺菌効果を得られず、耐性菌だけ作ってしまう可能性があるため忘れずに塗布。
- 使用期間：皮膚感染症に対しての使用は1週間まで、化膿性炎症を伴う痤瘡に対しては4週間まで、が使用期間の目安。炎症性の皮疹が消失したら、中止した方がいい場合もあるので主治医の指示に従う。
- 薬の併用：ニキビ治療で、抗生剤単独の使用は推奨されない。アダパレンや過酸化ベンゾイルと併用しニキビの発生を予防すると、抗生剤の使用頻度を少なくでき、耐性菌のリスクを減らすことが可能。
- その他：眼に入った場合には速やかに洗い流す。本剤は外用剤ですが、内服の場合光線過敏症が報告5)。使用中や使用後に異常を感じた時は速やかに専門医や薬剤師に相談。
参考文献
4) 添付文書 医療用医薬品：アクアチム 6. 用法及び用量
5) 上出良一. 皮膚科の臨床. 1992;34(9 特32):1369-1377.
適応対象となる患者さん
アクアチムの適応菌種、および適応症は以下となります6)。
＜適応菌種＞
・オゼノキサシンに感性のブドウ球菌属、アクネ菌
＜適応症＞
・表在性皮膚感染症（とびひ、毛包炎など）
・深在性皮膚感染症（尋常性毛瘡）
・化膿性炎症を伴うざ瘡
参考文献
6) 添付文書 医療用医薬品：アクアチム 4. 効能または効果
特定の背景を有する患者さんの使用
アクアチムを小さなお子さまや妊娠中・授乳中の方へ使用する際には特に注意が必要です7)。
お子さまへの使用
小児に対する使用は少ないため安全性が確立されていません。状態によっては処方を検討するケースもあります。詳しくは専門医にご相談ください。
妊娠中や授乳中の方への使用
アクアチムは妊娠中や妊娠の可能性のある方、授乳中の方に対しても、安全性が確立されていません。
それでも治療上必要であれば、場合によっては処方を検討するケースもあります。詳しくは専門医にご相談ください。
参考文献
7) 添付文書 医療用医薬品：アクアチム 9. 特定の背景を有する患者に関する注意
アクアチムの治療期間
アクアチムの使用期間の目安8)9)
| 皮膚疾患 | 使用期間の目安 |
|---|---|
| 表在性皮膚感染症 | 1週間を超えない |
| 深在性皮膚感染症 | 1週間を超えない |
| 化膿性炎症を伴う痤瘡 | 4週間を超えない |
アクアチムの使用に際して長期使用が推奨されないのは、耐性菌の懸念があるためです。抗生剤が徐々に効かなくなり、漫然と長期に使い続けることでリスクが高まります。
そのため、抗生剤は治療上必要な最低限の使用期間にとどめることが推奨10)。
海外の文献では12週間の投薬期間で臨床効果を検討したものもありますが11)、治療期間については専門医の指示に従ってください。
参考文献
8) OPC-7251 研究会. 西日本皮膚科. 1996;58(2):296-304.
9) OPC-7251 アクネ研究会. 臨床医薬. 1992;8(10):2453-2465.
10) 添付文書 医療用医薬品：アクアチム 8. 重要な基本的注意
11) Plewig G, et al. Clinical and bacterio- logical evaluation of nadifloxacin 1% cream in patients with acne vulgaris: a double-blind, phase III study comparison study versus erythromycin 2% cream. Eur J Dermatol. 2006;16:48-55.
アクアチムの副作用
アクアチムで問題になる副作用はあまりありませんが、ローションで塗布時に刺激感を10.6%の方に認めたという報告があります12)。
その他にも発赤やほてり感など多彩な症状が出ることがありますが、いずれも軽いものです13)、もし、使用中に異常がみられたり、不安なことがあった場合は速やかに専門医や薬剤師にご相談ください。
参考文献
12) 大塚製薬 インタビューフォーム アクアチムクリーム1%/アクアチムローション1%. 8. 副作用
13) Kurokawa I, et al. Clinical and bacteriologic evaluation of OPC-7251 in patients with acne: A double-blind group comparison study versus cream base. J Am Acad Dermatol.1991;25:674-681.
アクアチムで効果がなかった場合の対応
アクアチムは、ニキビやとびひなどの皮膚感染症で有効な薬ですが、すべての方に等しく効果があるわけではありません。
ここでは、アクアチムが十分な効果を示さなかった場合に考慮すべき点について説明します。
まずアクアチムをはじめ抗生剤は、ニキビ治療においてアダパレンや過酸化ベンゾイルとの併用が推奨されている薬です。
アダパレンはレチノイド様作用によって皮膚のターンオーバーを促し、角化を抑えることで、毛穴の詰まりを防ぐ効果があります14)。
ベピオに代表される過酸化ベンゾイルは、抗菌作用があり、抗生剤のような耐性菌の報告がないことから長期に使用できる薬です。また、ピーリング作用もあるため毛穴詰まりを改善しニキビを予防します15)。
抗生剤単独の使用はニキビの発生は抑えられず、長期使用による耐性菌のリスクも増加。これらの薬はいずれもニキビの発生を抑える効能があり、抗生剤と併用することでニキビ治療の効果を高めてくれます。
アダパレンや過酸化ベンゾイルを併用しても改善が見られないニキビ患者さんには、抗菌薬の内服を併用することで効果を示すことが海外の文献などで報告16)。
注意しなければならないのは、使用初期の皮膚の刺激感です。まずは少量から開始するなど指示された用法を厳守し、必要に応じて医師のアドバイスを仰ぐことが大切です。
それでも改善が乏しい重症例では、イソトレチノインの内服やスピロノラクトンの内服、低用量ピルの内服などへの変更を検討します。
特にイソトレチノインは皮脂腺を強力に縮小する作用があり、ニキビの改善効果が高いです17)。ただし、日本においては保険が適用されず、胎児奇形など重篤な副作用もあるため、その適応については慎重に判断されます。
参考文献
執筆の根拠にした論文等
14) Cunliffe WJ, et al. A comparison of the efficacy and tolerability of adapalene 0.1% gel versus tretinoin 0.025% gel in patients with acne vulgaris: a meta-analysis of five randomized trials. Br J Dermatol. 1998;139(Suppl52):48-56.
15) Cove JH, Holland KT. The effect of benzoyl peroxide on cutaneous micro organisms in vitro. J Appl Bacteriol. 1983;54(3):379-82.
16) Dréno B, et al. Combination therapy with adapalene-benzoyl peroxide and oral lymecycline in the treatment of moderate to severe acne vulgaris: a multicentre, randomized, double-blind controlled study. Br J Dermatol. 2011;165:383-390.
17) Eichenfield DZ, et al. Management of Acne Vulgaris: A Review. JAMA. 2021; 326(20): 2055-2067.
他の治療薬との併用禁忌
アクアチムは他の治療薬との併用禁忌は特にありませんが、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどのニキビ治療薬と併用した場合、皮膚への刺激感が増すことがあります。
保険適用について
アクアチムが保険適用となる疾患は、
・表在性皮膚感染症
・深在性皮膚感染症
・化膿性炎症を伴うざ瘡
となっています。
薬価は、どの剤型でも24.5円/gです。
| タイプ | 薬価に基づく薬の価格 |
|---|---|
| 軟膏 | 10g/本:245円(3割負担で73.5円) 100g/本:2450円(3割負担735円) |
| クリーム | 10g/本:245円(3割負担で73.5円) 100g/本:2450円(3割負担735円) |
| ローション | 20ml/本:490円(3割負担で147円) |
保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要です。
この他、初診料あるいは再診料、処置料などがかかります。詳しくはお問い合わせください。