レーザーをメラニン(黒い色素)に反応させ、熱を発することで発毛組織を破壊する医療脱毛。
メラニンが多いほどレーザーは反応しやすいため、太い毛や濃い毛は効果を実感しやすい特徴がありますが、産毛のようなメラニンの少ない毛までは抜けないのでしょうか。
この記事では、医療脱毛で産毛におすすめの医療レーザー機器を紹介。医療脱毛の産毛への効果や効果実感までの回数、産毛が抜けないときの対策を解説しています。
顔・お腹・背中・二の腕などの産毛を脱毛したい方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
医療脱毛でも産毛までは効果がない?
「産毛は細いから脱毛しやすそう」といった意見がある一方で、「医療脱毛でも産毛には効果がない」「産毛を医療脱毛すると逆に濃くなる」といった声もネット上で見かけます。
実際、医療脱毛の産毛への効果はどうなのでしょうか。下記に詳しく解説しました。
医療脱毛は産毛にも効果あり
とはいえ、産毛が脱毛しにくい毛であるのは事実。医療脱毛が産毛に効かないと言われるのは、下記のような理由が挙げられます。
医療脱毛は産毛に効かないと言われる理由
- 産毛にはメラニンが少なくレーザーが反応しにくい毛だから
- 太い毛から抜けていくからあとに残った産毛が目立ちやすい
- 産毛に向いている脱毛機とそうでない脱毛機があるから
医療脱毛のレーザーはメラニンが多い毛に良く反応しますが、産毛はメラニンが少ないので反応しにくくなります。
レーザーに反応しやすい太い毛から先に抜けていくので、あとに残った産毛は、どうしても「効果がない」と感じやすいです。
ただ、適切な出力や産毛に適した脱毛機を使い、回数を重ねると産毛であっても医療脱毛の効果を実感しやすくなります。
産毛が逆に濃くなるって本当?
ただし「硬毛化」といって、太く硬い毛が生えてくるケースがごくまれにあります(硬毛化する理由は明確にはなっていませんが、発毛組織が活性化するのが原因とも言われます)。
硬毛化は、顔・二の腕・背中などの産毛が生えている部位に起こりやすい現象です。
剛毛の発毛細胞が活性化されても、変化が分かりづらく「脱毛の効果が実感できない」となる程度。
対して産毛はメラニンに反応しにくいので照射エネルギーが弱すぎると発毛組織を破壊しきれず、レーザーの刺激で活性化してしまうことも考えられ、その変化も分かりやすいです。
とはいえ、硬毛化する確率は非常に低く、一時的に硬毛化してもさらに施術を続ければムダ毛がきちんと脱毛されますので、過度に心配する必要はないでしょう。
硬毛化した場合には、その部分に無料で照射してくれるクリニックがほとんどですが、対応について契約前に確認しておくと安心です。
産毛まで脱毛したい時に必要な通院回数は何回?
ワキのようなメラニンが多い部位にくらべて産毛はメラニンが少ないため、医療レーザーが反応しにくい特徴があります。
そのため、脱毛に必要な通院回数は8~10回と少し多めです。
毛質・毛量は個人差がありますので、毛量が多い方は目安回数よりも多めにかかる傾向があります。
産毛まで一切ない「無毛状態」まで脱毛するのは非常に難しく、わずかな産毛が残っている状態で満足されて脱毛を終了する方が多いのですが、さらにその先を目指したい場合は照射を重ねていくしかありません。
希望する仕上がりと対象部位の毛質・毛量によって通院回数は変わっていきますので、クリニックでのカウンセリング前には、どこまでの仕上がりを目指すのか決めておくと良いでしょう。
産毛まですっかり無くしたいという方は、まず8回コース以上を検討し、終了した段階の発毛状態でさらに追加するかどうかを決めるのがおすすめです。
ただし、産毛の生えている部分は脱毛レーザーの照射により逆に毛が濃くなる「増毛化」や、毛が太くなる「硬毛化」が起きやすい場所なので、リスクのへ理解も大切になります。
産毛に効果的な医療レーザーのおすすめ機械は?
医療脱毛で扱われるレーザーには、3つの波長と、2つの脱毛方式があります。
産毛に適しているのが、中間の波長を持ったダイオードレーザーです。また、蓄熱式は産毛を得意とする脱毛方式です。
クリニックによって扱う機械が違うため、産毛の脱毛をしたい方は、脱毛機を確認した上で脱毛を受けるクリニックを選ぶと良いでしょう。
レーザー脱毛機の波長
アレキサンドライトレーザー (755nm) | メラニンによく反応する 剛毛が得意 |
ダイオードレーザー (805~940nm) | 痛みを感じにくい 産毛が得意 |
ヤグレーザー (1064nm) | 日焼け肌でも照射できる 根深い毛が得意 |
ダイオードレーザーは波長800nm前後の近赤外線を照射し、アレキサンドライトレーザーよりもメラニン色素への吸収率が低くなります。
そのため、産毛のような細い毛や、メラニン色素の少ない毛にも効果的に脱毛できます。また、日焼けした肌や色黒肌の方にも照射できます。
レーザー脱毛機の方式
熱破壊式(ショット式) | 高いエネルギーを1発で照射 剛毛が得意 |
蓄熱式(SHR) | 低いエネルギーを複数回照射 産毛が得意 |
熱破壊式脱毛は太く濃い毛に効果的ですが、産毛のような細い毛や、メラニン色素の少ない毛には、ダメージを与えにくい場合があります。
蓄熱式脱毛では、低出力のレーザーを連続照射することで毛根周辺の組織をゆっくりと加熱し、毛根を破壊します。
産毛はメラニン色素が少ないため、熱破壊式よりも蓄熱式の方が、毛根にダメージを与えやすいのが特徴です。
ダイオードレーザーを使用した蓄熱式脱毛機が産毛に効果的
メディオスターNeXT PRO
ダイオードレーザーの808・940nmといった2波長を同時に照射する脱毛機です。
冷却ジェルで肌を保護しながら照射するので、敏感肌やアトピー肌の方でも皮膚へのダメージが少なく脱毛ができます。
メディオスターモノリス
メディオスターNeXT PROの後継機で、基本的な特徴は従来機と同じです。
改良された点は、照射スピードの速さと操作面。簡単な操作で、施術者の技術力に左右されることが少ないのがメリットとなります。
ソプラノアイス・プラチナム
アレキサンドライトレーザー・ダイオードレーザー・ヤグレーザーの3つの波長を同時に照射する脱毛機です。
幅広い毛質に効果があり、色黒肌の方やある程度の日焼け肌の方でも照射ができます。
ソプラノチタニウム
ソプラノアイス・プラチナムの上位機種で、従来機のスペックをそのまま受け継いでいます。
照射面が巨大化したので、よりスピーディーな施術が可能。ジェルを使用しながら肌を保護して脱毛します。
ラシャ
熱破壊式・蓄熱式の切り替えが可能な脱毛機です。産毛への脱毛は蓄熱式を使用することで効果を最大限に発揮。
ハンドピースに自動冷却装置を搭載しているため、肌ダメージを最小限に抑えられます。
クリスタルプロ
医療脱毛専門の「エミナルクリニック」が独自開発した、熱破壊式・蓄熱式の切り替えができる脱毛機です。
照射前に塗るローションと強力な冷却システムで肌への負担を軽減しながら、毛の状態に合わせた施術ができます。
熱破壊式の機械は産毛に効果がない?
医療脱毛の機械の中では「ダイオードレーザー蓄熱式が産毛に効果的」と紹介してきましたが、熱破壊式の脱毛機が産毛に全く効果がないかというと、そういう訳ではありません。
どんな機械であっても、医療レーザー脱毛機はメラニンに反応させて熱を出し、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域といった発毛に関わる組織を破壊していきます。
産毛は毛が薄く、メラニンが少ないため、レーザーに反応しにくいのはどちらの機械であっても同様です。
ただし、反応しづらい産毛を熱破壊式で脱毛するときは出力を上げる必要があるため、やけどのリスクも高まります。
熱破壊式での産毛脱毛は、個々の肌質や毛質に合わせた機械の出力設定が重要なので、施術者の技術力に効果は左右されるのです。
熱破壊式を扱うクリニックでは、産毛に効果的な出力に調整してもらえるかどうかを確認しましょう。ただし、出力が高くなると痛みを感じやすくなります。
痛みが苦手な方は、産毛を脱毛したいのであれば初めから蓄熱式脱毛機を扱うクリニックを選ぶと良いでしょう。
脱毛後に産毛がなかなか抜けない・なくならないときの対策
さいごに、脱毛後に産毛がなかなか抜けない・なくならないときに自分でできる対策をまとめました。
脱毛に通っている方で抜けない産毛にお悩みの方はもちろん、これから産毛の医療脱毛に通う方もぜひ参考にしてください。
蓄熱式脱毛では、照射後毛が抜け落ちるまでに3~4週間かかります。それを踏まえた上で、ある程度の期間が経っても抜けない・なくならないときには、下記の対策をとってみてください。
毛周期に合わせた間隔で通う
通院回数を最小限に抑え、なくならない毛をしっかりと脱毛するためには、毛周期に合わせた間隔で通院しましょう。
産毛がなかなか抜けないときは、通院間隔が毛周期よりも早い可能性があります。
成長期・退行期・休止期といった毛が生えるサイクルのこと。毛周期は部位によって差があります。
産毛脱毛のベストな間隔
顔 | 1~2カ月 |
背中 | 3~4カ月 |
お腹 | 2~3カ月 |
二の腕 | 2~3カ月 |
毛周期よりも短い間隔での通院をクリニック側から勧められることもありますが、毛が十分に生えそろっていない段階で照射しても、ムダ打ちになってしまいかねません。
部位ごとの脱毛であればそれぞれの毛周期に合わせて脱毛に通い、全身を脱毛したい場合は3~4カ月の間隔が目安です。
通院間隔は空き過ぎても効果に大きな影響はありませんが、完了までの期間を最小限にするためにも、なるべく毛周期に合わせて通うようにしましょう。
脱毛期間中は肌を乾燥させない
脱毛期間中は、しっかりと保湿をして、肌を乾燥させない努力が産毛脱毛の効果を引き出します。
「脱毛中はていねいな保湿をしましょう」といった案内をどのクリニックでもしているのは、肌が乾燥した状態だと照射出力を上げられないので、脱毛の効果が減少してしまうからです。
適切な出力は、医療脱毛をする上で重要な要素となります。出力を落とすと脱毛の効果が減り、産毛がなかなか抜けない・なくならないといった悩みにつながってしまいます。
産毛に適した出力で照射ができるよう、日頃から保湿をして肌を健康な状態に保ちましょう。
照射前日は剃り残しがないようにシェービングする
「産毛くらいなら、きっちりとシェービングしなくてもいい?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
脱毛前の自己処理で剃り残しがないようにするのは大変な作業ですし、少しくらいなら・・と思ってしまうのも分かります。
ただ、照射前日の自己処理は脱毛の効果を引き出すためにも、やけどのリスクを回避するためにも重要です。
産毛しか生えていない部位であっても、しっかりとていねいに行いましょう。
脱毛前日のシェービング方法
- 明るいところで時間に余裕を持って剃る
- 電気シェーバーを使うと安全に剃れる
- 見えにくい部位は鏡を利用する
照射部位に剃り残しがあるとレーザーのエネルギーが分散して、毛根に届く熱が減ってしまいます。その結果、しっかりと破壊されなかった発毛組織がでてきてしまうので、産毛が抜けないケースも。
パッと見では分かりづらい産毛ですので少しくらい残っても問題なさそうに感じますが、脱毛の効果を高めるためにも、ていねいなシェービングを心がけましょう。
うなじや背中、おしりなどの手が届きづらい部位を脱毛するのであれば、その部分のシェービングを無料で行ってくれるクリニックを選ぶのも一つの方法です。
医療脱毛クリニックをのりかえる方法も
産毛がきちんと脱毛されるように対策をとっているにもかかわらず、なかなか産毛が抜けない・なくならない、といった場合には、産毛に効果的な医療脱毛クリニックへの乗り換えも検討してみましょう。
医療脱毛を始めると「せっかく契約したから」という思いもあり、産毛への効果を感じられなくても継続して通ってしまいがち。
ただ、思い切ってちがう医療脱毛クリニックに変更すると、なくならない産毛の問題が解決する場合もあります。
クリニックを変更する際のチェックポイント
- ダイオードレーザーの蓄熱式脱毛機を扱うクリニックであるか
- 熱破壊式の場合は産毛に効果的な出力へ調整をしてもらえるか
- シェービング料・キャンセル料は通いやすい規定であるか
- 乗り換え割の特典はあるか
産毛への効果が感じられずに乗り換えを検討する場合は、カウンセリング時に必ず産毛について相談するようにしましょう。
また、クリニックを変更して新たにコース契約をするとなるとそれだけ費用がかかってしまうため、乗り換え割のあるクリニックを選ぶと出費を抑えられます。
参考文献
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