魚の目は、特定の場所に継続的な圧迫や摩擦が加わることで皮膚が硬くなり、その中心に楔(くさび)状の芯ができる状態でこの芯が皮膚の奥深くにある神経を圧迫し、鋭い痛みを起こします。
市販薬で対処しようとしたり、自分で無理に削ったりすると、かえって症状を悪化させることもあります。
この記事では、皮膚科で行う魚の目の治療法、痛みの原因である芯の取り除き方、そして何よりも大切な再発予防の対策について詳しく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
そもそも「魚の目」とは?タコやイボとの違い
足のトラブルとしてよく聞く魚の目は、似たような症状を持つタコやイボと混同しやすいですが、見た目が似ていても原因も対処法も根本的に異なります。
正しいケアのためには、まず自分の症状がどれに当たるのかを正確に理解することが重要です。
魚の目の正体と痛みの原因
魚の目は医学的には鶏眼(けいがん)と呼ばれ、皮膚の最も外側にある角質層が、特定の場所に集中する圧力や摩擦(たとえば靴との慢性的なこすれ)によって厚く硬くなる角質増殖症の一種です。
最大の特徴は、硬くなった角質層の中心部に、皮膚の内側(真皮層)に向かって円錐形に突き刺さるような、硬い芯(角質柱)ができることです。
この芯が、歩行時などに体重がかかることで、画びょうを内側から踏んでいるかのように、真皮層にある神経の末端を強く圧迫します。
これが、魚の目特有の鋭い痛みの正体で、芯が深ければ深いほど、神経に近い場所を圧迫するため、痛みは強くなる傾向にあります。
主に足の指の上部、指の間、足の裏の骨が突出している部分(体重がかかりやすい場所)など、靴や骨同士が強く当たる場所にできやすいです。
タコとの見分け方
タコは医学的には胼胝(べんち)と呼ばれ、魚の目と同じく圧力や摩擦で角質が厚くなる状態で、魚の目との決定的な違いは、痛みの直接的な原因となる明確な芯がないことです。
タコは、圧力がかかる範囲が比較的広く、皮膚の外側に向かって角質が平らに、もしくは丘のように盛り上がります。色は黄色っぽく、硬くなりますが、芯がないため神経を直接圧迫することは少なく、通常は強い痛みを伴いません。
感覚が鈍くなっている場合もありが、タコがあまりに厚くなると、その下の皮膚が圧迫されて鈍い痛みを感じることや、タコの内部や下に魚の目が隠れているケース(タコの下に魚の目が併発)もあります。
ウイルス性のイボとの違い
最も注意が必要なのが、イボ(尋常性疣贅)との違いで、イボは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染によって起きます。魚の目やタコが物理的な刺激に対する皮膚の防御反応であるのに対し、イボは感染症です。
イボは表面がザラザラしており、よく見ると黒い点々(ウイルスによって増殖した毛細血管が出血し、血栓となったもの)が見えることがあります。
また、挟むと痛みを感じる(つまむと痛い)のが特徴で、これは魚の目が圧迫(上から押す)で痛むのと対照的です。
イボはウイルス性であるため、削ったりするとウイルスが周囲の皮膚に広がり、数が増えたり、大きくなったりする可能性があります。自己判断で魚の目だと思って削ってしまうと、症状を悪化させる危険があるため、鑑別は非常に重要です。
魚の目・タコ・イボの主な違い
| 特徴 | 魚の目(鶏眼) | タコ(胼胝) |
|---|---|---|
| 原因 | 圧迫・摩擦(集中的) | 圧迫・摩擦(広範囲) |
| 芯の有無 | あり(中心に硬い芯) | なし |
| 痛み | 押すと痛い(芯が神経を圧迫) | 基本的には痛くない(厚くなると鈍痛) |
イボ(尋常性疣贅)の特徴
| 特徴 | イボ(尋常性疣贅) |
|---|---|
| 原因 | ウイルス感染(HPV) |
| 芯の有無 | なし(点状の出血が見えることあり) |
| 痛み | つまむと痛い |
なぜ魚の目はできるのか(原因)
魚の目ができる根本的な原因は、足の特定の場所に継続的かつ過剰な圧力がかかることで、背景には、日常生活に潜むさまざまな要因が複雑に関係しています。
最も一般的で大きな原因は、足に合わない靴の着用です。サイズが小さい靴はもちろん、先端が細いハイヒールやパンプスは、指先を強く圧迫し、指の上や指の間に魚の目を作る大きな要因となります。
また、サイズが大きすぎる靴も、靴の中で足が前後に滑り、指先が靴の先端に繰り返し当たることで摩擦や圧力を生じさせます。
さらに、開張足(足の横アーチが崩れて足幅が広がる状態)や外反母趾、扁平足(土踏まずがない状態)といった足の構造的な変形(アライメント異常)も関係します。
その他、長時間の立ち仕事や歩行、特定のスポーツ(ランニングやダンスなど)による足への繰り返しの負担、さらには体重の増加や、すり足のような歩き方の癖も、魚の目ができるリスクを高めます。
魚の目を放置するリスクとセルフケアの限界
痛みがそれほど強くなければ、ついそのままにしてしまいがちな魚の目ですが、放置することには多くのリスクが伴います。また、手軽に思えるセルフケアも、正しい知識がないと逆効果になることがあります。
痛みが悪化し歩行に影響
魚の目を放置すると、芯は徐々に皮膚の奥深くへと侵入していき、角質は硬くなり続け、芯はより深く、より硬く成長していきます。
芯が深くなればなるほど、神経への圧迫は強まり、初めは違和感程度だったものが、やがて耐え難い鋭い痛みに変わっていきます。
強い痛みを感じると、無意識のうちに痛む場所をかばうような歩き方になり、足の外側だけで歩こうとしたり、特定の部分を接地させないようにしたりします。
不自然な歩き方(跛行)が長期間続くと、足首、膝、股関節、さらには腰や背中にまで不必要な負担がかかり、二次的な痛みや関節の障害(変形性膝関節症の悪化や腰痛など)を起こすことがあります。
化膿や感染のリスク
魚の目の芯が深くなると、強い圧迫によって周囲の組織が炎症を起こすことがあります。
また、痛みを我慢して歩き続けることで、芯の周囲に微小な傷ができ、そこから細菌が侵入すると、化膿して赤く腫れ上がり、激しい痛みを伴う感染症(蜂窩織炎など)が起きることがあります。
特に糖尿病や閉塞性動脈硬化症などで足の血流障害のある方、神経障害で足の感覚が鈍くなっている方は、注意が必要で、足の感覚が鈍くなっていると、痛みに気づきにくく、発見が遅れがちです。
さらに、血流が悪いと傷の治りが遅く、小さな傷から重篤な感染症や潰瘍(足病変)に発展するリスクが高いため、魚の目であっても自己判断せず、早期に医療機関を受診してください。
市販薬や自己処理の問題点
角質溶解剤(サリチル酸)を含む貼り薬は、硬い角質をふやかす作用がありますが、薬剤が健康な皮膚にまで影響を与え、皮膚を傷めたり、炎症を起こしたりすることがあります。
また、芯が深い場合、表面の角質を柔らかくするだけでは芯を完全に取り除くことは困難です。
カッターや爪切りで自分で削る行為は、最も危険です。どれだけ深く削ればよいかの判断は非常に難しく、誤って皮膚を深く傷つけ、出血や細菌感染の原因となります。
もし魚の目ではなくウイルス性のイボだった場合、削ることでウイルスを撒き散らし、症状を悪化させます。イボは見た目が魚の目と酷似していることも多く、専門家でなければ正確な鑑別は困難です。
自己処理の危険な例
- カッターで削りすぎて出血した
- 爪切りで芯を掘ろうとして炎症を起こした
- イボを魚の目だと思い削って数が増えた
- 市販薬で周囲の健康な皮膚がただれた
- 芯が取り切れず前より痛くなった
皮膚科で行う魚の目の診断方法
魚の目か、タコか、それともイボかの判断は、治療の第一歩として非常に重要です。皮膚科では、専門的な知識と器具を用いて、正確な診断を行います。
医師による視診と触診
まずは、患部の状態を直接見て、触って確認し、魚の目の場合、中心に透明感のある芯があるか、上から押したときに痛み(圧痛)があるかを確かめます。タコであれば、芯がなく圧痛も伴わないことがほとんどです。
イボの場合は、特徴的なザラザラした表面や、圧痛ではなく、横からつまんだ時の痛み(挟痛)があるかなどをチェックします。
ダーモスコピーを使った詳細な観察
視診だけでは判断が難しい場合や、イボとの鑑別をより確実にするために、ダーモスコピー(ダーマトスコープ)という特殊な拡大鏡を用いた検査を行います。
ダーモスコピーを使うと、魚の目であれば半透明の均一な芯(角質柱)が中心に見え、イボであれば特徴的な点状の出血(毛細血管の血栓)や乳頭状の構造(ウイルスの影響で毛細血管が増殖したもの)がはっきりと確認できます。
検査により、肉眼では似て見える魚の目とイボを、より確実に鑑別することが可能です。
イボとの鑑別の重要性
魚の目の治療は、物理的な刺激を取り除くこと(芯の除去、圧迫の軽減)が中心で、原因はあくまで圧迫や摩擦です。イボの治療は、ウイルスに感染した細胞を取り除くこと(冷凍凝固療法、レーザー治療、外用薬など)が中心となります。
もしイボを魚の目と誤診し削る処置だけを行うと、ウイルスが残存するためすぐに再発し、処置の際に出血などを伴うと、ウイルスが周囲に拡散してかえってイボが増える原因にもなります。
反して、魚の目をイボと誤診して冷凍凝固療法などを繰り返しても、原因である圧迫が解消されなければ、治療の痛みだけで効果は得られにくいです。
診断時に確認するポイント
| 確認項目 | 魚の目の場合 | イボの場合 |
|---|---|---|
| 痛みの種類 | 圧迫痛(上から押すと痛い) | 挟痛(つまむと痛い) |
| 表面の状態 | 比較的滑らか、中心に芯 | ザラザラしている |
| ダーモスコピー所見 | 半透明の角質柱 | 点状出血、乳頭状構造 |
皮膚科での魚の目治療(芯の除去)の方法
皮膚科での魚の目治療の目的は、痛みの原因である芯を正確に取り除くことです。症状の深さや大きさ、患者さんのライフスタイル、痛みの程度に応じて、いくつかの治療法を単独で、または組み合わせて行います。
メスや専用の器具による芯の切除(外科的処置)
最も一般的で、即効性のある基本的な治療法です。まず、患部の周囲の硬くなった角質(タコの部分)を、メスやコーンカッター、あるいは専用のグラインダー(医療用ドリル)などを使って丁寧に削り落としていきます。
処置は、神経のない角質層に対して行うため、通常は出血や痛みを伴いません。
表面の硬い角質を取り除くと、中心にある魚の目の芯がはっきりと見えてきて、次に、芯をメスの先端や専用の器具(くり抜き器など)を使い、楔状になっている芯の根元から摘出します。
芯自体も角質であり、神経に達しているわけではないため、この処置もほとんど痛みを感じることなく完了します。
芯が完全に取り除かれると、その瞬間に圧迫されていた神経が解放されるため、処置の直後から痛みが劇的に軽減するのが大きな利点です。処置後は、削った部分を保護し、感染予防のために小さな保護パッドや絆創膏などを貼ることがあります。
スピール膏など角質溶解剤の使用
市販薬としても知られていますが、皮膚科ではより高濃度のサリチル酸を含む薬剤(スピール膏やサリチル酸ワセリン軟膏)を使用します。
治療は、硬くなった角質をふやかして柔らかくすることを目的として、魚の目の大きさに合わせて薬剤を正確に貼り、ずれないように固定し、数日間そのままにします。その後、ふやけて白くなった角質を削り取ります。
芯が浅い場合や、外科的処置の補助(硬すぎる角質を柔らかくするため)として用いることが多いです。
皮膚科では、患者さnの皮膚の状態を見極め、適切な薬剤の濃度や貼付期間を管理します。薬剤が健康な皮膚に付着すると、その部分もふやけて炎症を起こす可能性があるため、正確な範囲に貼ることが大切です。
ただし、芯が深い場合は、この治療だけでは芯を取り切れないこともあります。
主な角質溶解剤
- サリチル酸ワセリン
- サリチル酸絆創膏(スピール膏)
液体窒素による冷凍凝固療法
冷凍凝固療法は本来、主にウイルス性のイボの治療に用いられる治療法ですが、他の治療法で効果が得られにくい、非常に硬く深い魚の目(難治性)に対しても選択肢となることがあります。
マイナス196度の超低温の液体窒素を綿棒やスプレーで患部に当て、意図的に軽い凍傷(やけど)状態を作り、異常な角質細胞と芯の組織を低温で壊死させ、新しい皮膚の再生を促します。
処置中は強い痛みを伴うことが多く、処置後には水ぶくれができることがあります。1回で完了することはまれで、皮膚の反応を見ながら、1〜2週間おきに数回の治療を繰り返すことが必要です。
レーザー治療(炭酸ガスレーザーなど)
炭酸ガス(CO2)レーザーは、水分を多く含む組織を蒸散させる(焼き切る)性質があり、魚の目の芯を正確に焼き切って除去します。
メスによる切除と同様に、芯を物理的に除去する治療ですが、レーザーは周囲の血管を瞬時に凝固させるため、出血がほとんどないということが利点です。
また、ピンポイントで照射できるため、周囲の正常な組織へのダメージを最小限に抑えられます。
処置の際には、痛みを伴うため局所麻酔の注射が必要で、処置後は軽いやけどの状態になるため、傷が治るまでに1〜2週間程度のケア(軟膏塗布や保護)が大切です。
皮膚科での主な治療法の比較
| 治療法 | 主な特徴 | 痛み(処置中) |
|---|---|---|
| メス等による切除 | 即効性が高い。最も一般的。 | ほとんどない |
| 角質溶解剤 | 角質を柔らかくする。補助的。 | ない(薬剤の刺激感除く) |
| 冷凍凝固療法 | 難治性の場合。イボ治療が主。 | 強い痛みを伴う |
| レーザー治療 | 出血が少ない。ピンポイント。 | 局所麻酔で対応 |
治療後の注意点とアフターケア
魚の目の芯を取り除いた後は、痛みが消えて安心しがちですが、正しいアフターケアが再発予防と傷口の速やかな治癒につながります。
処置後の傷口のケア
メスなどで芯を深く取り除いた場合、その部分は一時的に穴が開いたような(へこんだ)状態になり、通常、数日から1週間程度で新しい皮膚が再生してきて塞がります。
医師の指示に従い、処置当日は入浴を控えるか、患部を濡らさないように注意が必要な場合があり、翌日以降は、シャワーなどで軽く洗い流し、清潔を保ちます。
処方された軟膏がある場合は塗布し、ガーゼや絆創膏、あるいは圧力を軽減するための専用の保護パッドなどで患部を保護し、削った直後は皮膚が敏感になっているため、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぐことが大切です。
感染予防のための清潔保持
治療後の患部は、新しい皮膚が再生するまで感染しやすい状態なので、毎日の入浴やシャワーの際に、患部を優しく洗い、清潔に保つことを心がけてください。石鹸やボディソープの泡で包むように洗い、強くこすらないように注意します。
もし患部が赤く腫れてきた、ズキズキとした痛みが続く、熱を持っている、膿が出てきたなどの症状が現れた場合は、感染の可能性があり、自己判断せず、すぐに治療を受けた皮膚科に相談してください。
治療期間と通院の目安
魚の目の治療期間は、芯の深さや大きさ、選択した治療法によって異なります。
メスによる切除の場合、芯が浅ければ1回の処置で完了し、痛みもその場でなくなりますが、芯が非常に深い場合や、長期間放置されて硬くなっている場合は、一度で取り切れないことや、無理に取ろうとすると出血を伴うことがあります。
その場合は、皮膚の再生を待ちながら、1〜2週間後に再度処置(追加の削り)を行うことがあります。角質溶解剤や冷凍凝固療法を選択した場合は、複数回の通院が前提です。
治療法別のアフターケア概要
| 治療法 | 処置後の状態 | ケアのポイント |
|---|---|---|
| メス等による切除 | 芯の部分がへこむ | 清潔保持、保護パッド使用 |
| 冷凍凝固療法 | 水ぶくれ、かさぶた | 水ぶくれを破らない、保護 |
| レーザー治療 | 軽いやけど、かさぶた | 軟膏塗布、ガーゼ保護 |
魚の目の再発を防ぐための根本的な対策
皮膚科で痛みの原因である芯を取り除いても、魚の目ができた原因そのものを解決しなければ、再発を繰り返すことになります。治療と並行して、生活習慣を改善することが重要です。
再発の主な原因を理解する
魚の目の再発は、ほとんどの場合、治療前と同じ場所に継続的な圧迫や摩擦がかかり続けることが原因です。
芯を取り除いて一時的に痛みがなくなっても、足に合わない靴を履き続けたり、歩き方の癖がそのままであったりすれば、角質は再び防御反応として硬くなり始め、やがて芯が再生してしまいます。
皮膚科での芯の除去は、痛みを速やかに取り除くための対症療法、それに対し、靴や歩き方を見直すことは、魚の目を二度と作らないための原因療法になります。
皮膚科での処置はゴールではなく、健康な足を取り戻すためのスタートラインだと考えることが大切です。
靴選びの重要性(サイズと形)
再発予防において、最も効果的で重要なのが靴の見直しです。多くの魚の目は、不適切な靴によって起きてます。以下のポイントを参考に、ご自身の足に本当に合っているかを確認してください。
靴選びのチェックポイント
- つま先にゆとりがあるか(指が動かせる程度)
- 足の幅(ワイズ)が合っているか
- かかとがしっかり固定されるか
- 土踏まず(アーチ)を支える構造か
- ヒールは高すぎないか(3〜5cm程度が理想)
女性の場合、デザイン優先で先端の細いパンプスやハイヒールを選びがちですが、指先を強く圧迫し、体重をつま先に集中させるため、魚の目の最大の原因となります。
仕事などで履く必要がある場合でも、通勤時はスニーカーにするなど、足への負担を減らす工夫をしましょう。
靴を購入する際は足がむくみやすい夕方に選び、必ず両足とも試し履きをし、店内を少し歩いてみて、違和感がないかを確認してください。シューフィッターなど、専門知識のある店員に相談しながら選ぶことをお勧めします。
足に負担をかける靴の例
| 靴の種類 | 主な問題点 |
|---|---|
| ハイヒール・パンプス | つま先への圧迫、体重の集中 |
| 先の細い革靴 | 指の圧迫、摩擦 |
| 大きすぎる靴 | 靴内での足の滑り、摩擦 |
インソール(足底挿板)の活用
靴選びと並んで有効なのが、インソール(足底挿板)の使用です。扁平足や開張足など、足のアーチが崩れている場合、インソールは足の機能をサポートし、体重が足裏全体に均等に分散するように補正する役割を果たします。
市販のものでも、魚の目のできる場所にかかる圧力を軽減するためのパッド(ドーナツ型のものなど)や、土踏まずのアーチを支えるタイプのインソールがあり、一定の効果が期待できる場合があります。
皮膚科や整形外科では、個々の足の形や歩き方、圧力のかかり方を分析し、その人に合わせたオーダーメイドのインソール(医療用足底挿板)を作成することも可能です。
足の変形が原因で魚の目を繰り返している場合は、専門家に相談してみるとよいでしょう。
歩き方の癖の改善
不自然な歩き方や姿勢の癖も、足の特定の場所に負担を集中させる原因となり、内股やがに股、すり足、片方の足に体重をかけて立つ癖などは、足裏の圧力バランスを崩しがちです。
正しい歩き方を意識するだけでも、足への負担は軽減されます。
正しい歩行のポイント
- 背筋を伸ばし、視線は前方に
- かかとから着地する
- 足の裏全体で体重を支える
- 最後に親指の付け根(母趾球)で地面を蹴る
自分の歩き方の癖を知ることは難しいため、専門家(理学療法士やフットケアの専門家)の指導を受け、客観的に評価してもらうことも一つの方法です。
インソールの種類と目的
| インソールの種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 市販(衝撃吸収タイプ) | 全体的な衝撃緩和 |
| 市販(アーチサポート) | 土踏まずの崩れを補正 |
| 医療用(オーダーメイド) | 個々の足の問題点を詳細に補正 |
日常生活でできる予防と足の健康管理
魚の目の治療や再発予防には、日々のフットケアの積み重ねも欠かせません。足を清潔に保ち、適度な保湿と血行促進を心がけることで、角質の異常な増殖を防ぎ、健康な皮膚状態を維持できます。
足を清潔に保つフットケア
毎日の入浴時には、足の指の間や爪の周りまで、石鹸を使って丁寧に洗いましょう。汗や汚れ、古い角質を洗い流し、皮膚を清潔に保つことは、感染症の予防になるだけでなく、自分の足の状態を毎日チェックする良い機会です。
洗った後は、タオルで水分をしっかり拭き取り、特に指の間は湿気が残りやすいので、念入りに拭き取ることが水虫などの予防にもつながります。
角質ケアと保湿
角質が硬くなり始める初期段階(タコのような状態)であれば、セルフケアで進行を抑えることも可能です。入浴後など皮膚が柔らかくなっている時に、軽石やフットファイル(専用のやすり)を使って、厚くなった角質を優しく削ります。
この時、削りすぎないことが重要で、一度にすべて取り除こうとせず、皮膚を傷つけない程度に、定期的に行うのがコツです。削りすぎは皮膚を傷め、かえって角質を厚くする原因にもなります。
角質ケアの後は、皮膚が乾燥しやすいため、必ず保湿クリーム(尿素配合のものなど)を塗って、皮膚の柔軟性を保ちましょう。皮膚が柔らかければ、集中的な圧力がかかっても芯ができにくくなります。
ただし、痛みがある場合や、すでに魚の目の芯ができている場合は、削ることで悪化させる可能性があるため、皮膚科に相談してください。
毎日のフットケアルーティン
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 洗浄 | 指の間まで丁寧に洗う | 洗い残しがないように |
| 2. 拭き取り | 指の間までしっかり乾かす | 湿気を残さない |
| 3. 保湿 | 保湿クリームを塗る | 乾燥を防ぎ、皮膚を柔らかく保つ |
足の血行を良くする習慣
足の血行が悪いと、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が乱れ、古い角質が溜まりやすくなり、また、栄養が末端まで届きにくくなり、皮膚の再生能力も低下します。
血行不良は足の冷えにもつながり、筋肉が硬くなることで歩行バランスにも悪影響を及ぼすので、日常生活の中で、足の血行を促進する簡単な習慣を取り入れましょう。
血行促進のための習慣
- 湯船に浸かって足を温める
- 足の指をグーパーさせる運動
- 足首を回すストレッチ
- ふくらはぎのマッサージ
血行促進のためのケアは、魚の目の予防だけでなく、足の疲れを癒し、むくみを解消する効果も期待できます。健康な足は、快適な日常生活を送るための土台なので、痛みや違和感を放置せず、日々のケアを大切にしてください。
魚の目治療に関するよくある質問
最後に、患者さんから寄せられることの多い、魚の目治療に関するご質問にお答えします。
- 魚の目の治療は痛いですか?
-
皮膚科で最も一般的に行う、メスや専用の器具で芯を削り取る処置は、痛みの原因である芯を取り除く治療です。神経のない角質層(アカ)の部分を削るため、通常は麻酔なしでもほとんど痛みを感じることはありません。
ただし、イボの治療にも使われる液体窒素による冷凍凝固療法を行う場合は、処置中および処置後に強い痛みを伴います。
- 治療は1回で終わりますか?
-
芯の深さによります。 魚の目の芯が比較的浅い場合は、1回の切除処置で完了することが多いです。
しかし、芯が非常に深く、長期間放置されていたようなケースでは、一度にすべてを取り除こうとすると出血や痛みを伴う可能性があるため、皮膚の再生を待ちながら、数回に分けて処置を行うこともあります。
また、角質溶解剤や冷凍凝固療法を選択した場合は、複数回の通院が必要です。
- 治療したその日に歩けますか?
-
ほとんどの場合、問題なく歩いて帰れます。 メスによる切除処置の場合、痛みの原因である芯が取り除かれるため、治療前よりも歩きやすくなることがほとんどです。
処置後は患部を保護するパッドなどを貼りますが、歩行に大きな支障はありません。日常生活(入浴や運動など)に関する制限は、削った深さや傷の状態によりますので、医師の指示に従ってください。
レーザー治療や冷凍凝固療法を行った場合は、処置後の痛みや水ぶくれにより、一時的に歩行に違和感が出ることがあります。
- 芯は完全に取り除けますか?
-
魚の目の痛みの原因は芯(角質柱)です。皮膚科では、視診やダーモスコピーで芯の深さや範囲を正確に診断し、メスなどの器具を用いて、芯を根本から取り除くことを目指します。
ご自身でケアをすると芯の先端しか取れず、すぐに再発しがちですが、医療機関では芯をしっかり除去することが可能です。ただし芯を取り除いても、圧迫がかかり続ける限りは再発の可能性があります。
再発予防の対策(靴の見直しなど)を併せて行うことが非常に重要です。
以上
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