子供の肌に突然現れる水いぼは正式には伝染性軟属腫と呼ばれ、ありふれたウイルスによって起きる良性の皮膚感染症です。痛みやかゆみが少ないことも多いですが、見た目の問題や周囲への感染拡大が懸念材料となります。
この記事では、水いぼの根本的な原因であるウイルスそのものの性質から、なぜ子供の肌が感染しやすいのか、そして生活の中でどのような場面でうつるのかを、詳しく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
伝染性軟属腫ウイルスという病原体の正体
水いぼを起こすウイルスは、身の回りに常に潜んでいる一般的な病原体の一種で、このウイルスがどのような特徴を持ち、人間の肌に対してどのような作用を及ぼすのかを知ることは、感染対策を考える上で非常に重要です。
ポックスウイルス科に属する大型のDNAウイルス
水いぼの原因となる伝染性軟属腫ウイルス(Molluscum Contagiosum Virus:MCV)は、ポックスウイルス科というグループに属しています。
このグループには天然痘ウイルスなども含まれますが、MCVは人体に対してそれほど強い毒性を持っているわけではありません。
ウイルスのサイズは非常に大きく、一般的な顕微鏡でも観察できるほどの大きさで、二本鎖DNAという遺伝情報を持っており、細胞質内で増殖するとことが特徴です。
ウイルスの構造は非常に堅牢で、環境中での生存能力も比較的高いため、タオルの共有やプールなどでの接触を通じて容易に人から人へと移動します。乾燥した環境でも一定期間生存できるため、身の回りの物品を介した感染にも注意が必要です。
皮膚の表皮細胞のみに感染する特異性
このウイルスの最大の特徴は、感染する場所が皮膚の最も外側にある表皮に限られるという点です。インフルエンザウイルスのように血液に乗って全身を巡ったり、内臓に感染したりすることはありません。
ウイルスが皮膚の小さな傷から入り込むと、表皮の基底層付近の細胞に侵入し、そこで細胞分裂を利用して増殖し、周囲の細胞にも感染を広げていきます。
ウイルスに感染した細胞は異常な増殖を始め、軟属腫小体と呼ばれるウイルスと変性した細胞の塊を作り出し、これがいわゆる水いぼの芯となる部分です。
皮膚の表面に留まる感染症であるため、命に関わるような深刻な事態になることはまずありませんが、皮膚表面での局所的なトラブルが長く続く原因となります。
伝染性軟属腫ウイルスの基本特性
| 特性項目 | 内容と詳細 | 人体への影響 |
|---|---|---|
| ウイルスの分類 | ポックスウイルス科 | 皮膚表面にイボを形成する |
| 遺伝情報の種類 | 二本鎖DNA | 細胞質内で複製を行い増殖する |
| 感染部位 | 表皮(皮膚の最外層) | 内臓や全身への影響はない |
| 環境耐性 | 乾燥に比較的強い | 共有物や環境表面で生存可能 |
感染から発症までの潜伏期間の長さ
水いぼの厄介な点の一つは、ウイルスが皮膚に付着してから実際にイボとして目に見えるようになるまでに長い時間がかかることです。この期間を潜伏期間と呼び、一般的には2週間から数ヶ月、長い場合では半年近くかかることもあります。
イボが見つかった時点で「昨日行ったプールが原因だ」と特定することは非常に困難です。忘れた頃に症状が出てくるため、感染源や感染時期を正確に割り出すことは現実的ではありません。
長い潜伏期間中に知らず知らずのうちに、兄弟間や友達との間でウイルスをやり取りしてしまっていることも多いです。
免疫系からの逃避能力と自然治癒への道のり
体には、ウイルスなどの外敵が侵入するとそれを排除しようとする免疫システムが備わっていますが、MCVは免疫システムから逃れるための巧みな仕組みを持っています。
ウイルスが感染細胞から放出する特定のタンパク質が、免疫細胞の攻撃を抑制したり、炎症反応を抑えたりすることで、ウイルスは長期間にわたって皮膚に居座り続けます。
これが、水いぼが数ヶ月から数年という長い期間にわたって治らない理由の一つです。
最終的には体がウイルスを認識し、免疫反応が活性化することで自然に治癒に向かいますが、そのプロセスが完了するまでには個人差が大きく、長い時間を要します。
子供の肌が水いぼウイルスに狙われやすい理由
水いぼは大人にはほとんど見られず、主に幼児から小学生くらいの子供たちに集中して発生し、子供特有の肌の構造や免疫システムの発達段階が深く関係しています。
未発達な皮膚バリア機能と薄い角層
子供の皮膚は、大人に比べて非常に薄くデリケートにできていて、皮膚の最も外側で外部の刺激や異物の侵入を防いでいる角層は、大人の半分程度の厚さしかありません。
また、皮脂の分泌量も思春期を迎えるまでは非常に少なく、肌の表面を覆う皮脂膜が不十分な状態です。皮膚の水分が蒸発しやすく、乾燥しやすい状態にあり、肌は表面に目に見えない微細な亀裂や隙間が生じやすくなります。
ウイルスはこの微細な隙間を狙って侵入して、大人の丈夫で分厚い皮膚バリアであれば跳ね返せるウイルスも、子供の未熟なバリア機能では侵入を許してしまうのです。
獲得免疫の未熟さと学習プロセス
免疫には、生まれつき備わっている自然免疫と、一度感染した病原体を記憶して次は排除する獲得免疫があり、子供は獲得免疫がまだ十分に発達しておらず、学習の途中段階です。
多くの大人は過去にMCVに接した経験があるか、あるいは免疫システムが成熟しているため、ウイルスが肌に付着してもすぐに排除することができます。
しかし、子供の免疫システムにとってMCVは「初対面の敵」であることが多く、どのように対処してよいか分からずに感染を許してしまいます。
子供の体は様々な病原体との接触を通じて、免疫を訓練している最中です。
子供と大人の皮膚および免疫特性の比較
| 比較項目 | 子供の特性 | 大人の特性 |
|---|---|---|
| 皮膚の厚さ | 薄い(大人の約1/2) | 十分に厚い |
| 皮脂分泌量 | 非常に少ない | 多い(部位による) |
| バリア機能 | 未熟で壊れやすい | 強固で安定している |
| 対MCV免疫 | 経験がなく未学習 | 獲得済みで排除能力が高い |
活発な接触行動と集団生活の影響
身体的な要因に加えて、子供特有の行動パターンも感染を広げる大きな理由です。保育園や幼稚園、小学校などの集団生活では、子供同士の距離が非常に近く、肌と肌が触れ合う機会が頻繁にあります。
相撲ごっこや手つなぎ、狭い空間での遊びなど、濃厚な接触が日常的に行われ、また、子供は自分の肌を無意識に触ったり、掻いたりする癖があります。
痒みを感じれば我慢せずに掻きむしってしまい、その手で友達に触れたり、おもちゃを共有したりします。大人のように意識的に接触を避けたり、手洗いを徹底したりすることが難しいため、集団内で次々と感染が連鎖していくのです。
アトピー性皮膚炎や乾燥肌との深い関連
アトピー性皮膚炎や乾燥肌の傾向がある子供は、水いぼにかかりやすく、また症状が広がりやすいです。アトピー性皮膚炎の患部はバリア機能が著しく低下しており、ウイルスにとっては格好の侵入口となります。
さらに、慢性的な痒みがあるため、頻繁に患部を掻いてしまい、皮膚に新たな傷を作り、ウイルスを広げてしまう自家接種という現象が起きやすくなります。
ステロイド外用薬を使用している場合、局所的な免疫反応が抑えられているため、ウイルスが増殖しやすい環境になっていることもあります。
肌のコンディションと水いぼの感染リスクは密接にリンクしており、スキンケアが最大の予防策と言われるのはこのためです。
日常生活に潜む主な感染経路とリスク
水いぼは空気感染やくしゃみによる飛沫感染はしません。基本的にはウイルスが直接肌に触れることでうつります。しかし、触れるという状況は、日常生活の至る所に隠れています。
皮膚と皮膚の直接的な接触による感染
最も確実で頻度の高い感染経路は、患部と健常な皮膚が直接触れ合うことで、兄弟での入浴、添い寝、プロレスごっこ、プールでのじゃれ合いなどが典型的な場面です。
水いぼの表面が破れて中の内容物が出ている状態だと、感染力はさらに高まります。特に水に濡れた皮膚は摩擦に弱く、ウイルスが侵入しやすい状態になっているため、入浴中やプールでの接触は乾いている時よりもリスクが高いです。
親御さんが患部を触った手で、他の兄弟の肌を触ることでも感染する可能性があります。
物品を介した間接的な接触感染
ウイルスが付着した物を触ることでも感染は成立します(間接接触感染)。バスタオル、手拭きタオル、衣類、寝具などの共有が主な原因となり、また、ビート板や浮き輪、ジムのマット、おもちゃなども媒介物です。
MCVは環境中でも一定期間生存できるため、直前に感染者が触れた物をすぐに別の子供が使用すると、感染のリスクが生じます。
湿り気のあるタオルなどはウイルスが生存しやすい環境を提供してしまい、家庭内でのタオルの共用や、兄弟間での服の貸し借りは、感染を広げる大きな要因の一つです。
主な感染媒体となる場所や物品
- ビート板や浮き輪の共有
- 兄弟間でのバスタオルの使い回し
- スイミングスクールの更衣室
- お風呂場での椅子やマット
- 児童館などの共有おもちゃ
プールという環境での感染リスクの真実
「水いぼ=プール」というイメージが定着していますが、プールの水そのものを介して感染することはほとんどありません。
プールの水には塩素による消毒が行われており、大量の水の中でウイルスが希釈されるため、水を介した感染リスクは極めて低いです。
真のリスクは、プールサイドでの接触、ビート板の共有、更衣室でのタオルの貸し借り、着替えの際の肌の接触などにあります。
また、水に濡れてふやけた皮膚はバリア機能が一時的に低下し、傷つきやすくなっているので、その状態でビート板などで擦れると、ウイルスが侵入しやすくなります。
プール自体を禁止する必要は必ずしもありませんが、タオルや道具の管理、肌の露出を減らす工夫などが重要です。
直接接触と間接接触の区別
| 感染様式 | 具体的な状況 | 対策のポイント |
|---|---|---|
| 直接接触 | 肌と肌が触れ合う遊び、接触 | 患部を覆う、接触を控える |
| 間接接触 | タオルの共有、ビート板の使用 | 個人専用にする、使用後洗浄 |
| 自家接種 | 自分で掻いて他の部位へ広げる | 爪を切る、掻かない工夫 |
水いぼの症状変化と自家接種のメカニズム
水いぼは一度できると、時間とともに数が増えたり、見た目が変化したりします。初期段階で見つけることができれば対処もしやすいですが、多くの場合、気づいたときには数が増えてしまっています。
初期の兆候と特徴的な見た目
感染初期には、1ミリから数ミリ程度の小さな盛り上がりが皮膚に現れ、色は肌色からややピンク色、あるいは白っぽい色をしており、表面がツルツルとして光沢(真珠様光沢)があるのが特徴です。
通常のイボのようなゴツゴツした感じや、ガサガサした感じはありません。よく観察すると、イボの中央部分がわずかですがおへそのように凹んでいることがあり、これを中心臍窩(ちゅうしんさいか)と呼び、水いぼの特徴的な所見です。
痛みや痒みは初期にはほとんどありませんが、放置していると徐々に大きくなり、5ミリ程度まで成長することもあります。体幹や脇の下、手足の関節の内側など、皮膚が擦れやすい柔らかい部分によく発生します。
「自家接種」による爆発的な拡大
水いぼの数が急激に増える主な原因は「自家接種」と呼ばれる現象です。子供は無意識にイボを触ったり、痒みを感じて掻きむしったりし、この時、イボが破れて中からウイルスを大量に含んだ白い粥状の物質(軟属腫小体)が出てきます。
これが指先に付着し、その手で体の他の部分を触ることで、新しい場所にウイルスを植え付けてしまうのです。まるで種まきをするかのように、掻いた跡に沿って一列にイボが並んで発生することもあります(反応性散布)。
アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが弱っている場合、この自家接種が起こりやすく、数十個から時には百個近くまで増えてしまうこともあります。
水いぼの見た目の変化と経過
| 段階 | 外見的特徴 | 状態 |
|---|---|---|
| 発生初期 | 1〜2mmの光沢ある丘疹 | 目立たず、数も少ない |
| 増殖期 | 数mmに増大、中央が凹む | 内部にウイルス塊が充満 |
| 炎症期 | 赤く腫れる、膿を持つ | 治癒への反応開始、痒みあり |
| 治癒期 | かさぶた化、平坦化 | ウイルス消失、色素沈着残る |
炎症反応と「ましゅん」現象
水いぼは、ある時期が来ると突然赤く腫れ上がり、まるで化膿したような状態になることがあります。
これを医学的にはましゅんと呼ぶことがあり、保護者の方は「悪化したのではないか」「バイ菌が入ったのではないか」と心配されますが、治りかけのサインであることが多いです。
体がようやくウイルスを異物として認識し、強い免疫反応を起こして攻撃を始めた証拠です。
この時期は痒みを伴うことが多く、子供が掻き壊してトビヒ(伝染性膿痂疹)などの細菌感染を合併することもあるため注意が必要ですが、炎症反応を経て、イボは乾燥し、かさぶたとなり、最終的には脱落して治癒していきます。
水いぼができやすい身体の部位
- 脇の下や二の腕の内側
- 膝の裏や太ももの内側
- 胸やお腹などの体幹部
- 首回りや肘の内側
- お尻や陰部周辺
間違いやすい他の皮膚トラブルとの鑑別
子供の肌には様々な発疹が現れるため、保護者の方が自己判断するのは危険な場合があります。水いぼだと思っていたら実は別の皮膚病だった、あるいはその逆ということも珍しくありません。
アトピー性皮膚炎に伴う湿疹との違い
アトピー性皮膚炎の子供は、乾燥によるブツブツや湿疹ができやすい状態で、水いぼが混在していると、区別が非常に難しいです。アトピーの湿疹は一般的に赤みが強く、境界が不明瞭で、全体的にガサガサしています。
水いぼは一つ一つが独立した粒であり、表面に光沢があり、また、触った時の感触も、水いぼはしっかりとした芯があるような硬さを感じることが多いです。
ただし、掻き壊して炎症を起こしている水いぼは、湿疹と見分けがつかなくなることがあります。
アトピー性皮膚炎の治療でステロイド外用薬を塗っている場所に水いぼができると、免疫が抑制されてイボが大きくなったり増えたりすることがあるため、注意深い観察が必要です。
健康な肌とアトピー肌のリスク差
| 比較要素 | 健康な皮膚 | アトピー素因のある皮膚 |
|---|---|---|
| バリア機能 | 正常に機能 | 低下し、隙間が多い |
| 感染リスク | 接触しても弾くことがある | 容易に侵入を許す |
| 拡大速度 | 緩やか | 自家接種で急速に拡大 |
| 痒みの程度 | 少ない | 強く、掻き壊しやすい |
尋常性疣贅(普通のイボ)との相違点
いわゆる普通のイボと呼ばれる尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)もウイルス性ですが、原因となるウイルス(ヒトパピローマウイルス)が異なります。普通のイボは表面がザラザラ、ガサガサしており、白っぽく角質化して硬くなるのが特徴です。
手足の指や足の裏などにできやすく、水いぼのようなツルツルした光沢や中心の凹みはありません。治療法も液体窒素による凍結療法が主となり、水いぼとはアプローチが異なります。
見た目の質感、「ツルツル」か「ガサガサ」かが、両者を見分ける大きなポイントです。
あせもや虫刺されとの区別
夏場などは、あせもや虫刺されと混同されることもよくあります。あせもは非常に小さな水疱や赤いブツブツが密集してでき、強い痒みを伴うのが一般的で、涼しくしてスキンケアをすれば数日で改善します。
虫刺されは急に出現し、赤く盛り上がり、中心に刺し口が見えることがあり、比較的短期間で変化したり治ったりします。水いぼは数日では消えず、数週間から数ヶ月単位で存在し続けます。
「なかなか治らない虫刺されだな」と思っていたら、実は水いぼだったというケースは非常に多いです。
よく似た皮膚疾患一覧
- 尋常性疣贅(一般的なイボ)
- 若年性黄色肉芽腫
- 汗管腫(目の周りなど)
- 虫刺され(ストロフルス)
- ニキビ(面皰)
家庭でできる予防策と生活上の注意点
水いぼは感染力がそれなりに強いため、完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、日常のちょっとした工夫でリスクを大幅に下げることができます。また、すでに感染してしまった場合でも、他への拡大を防ぐためのケアが大切です。
徹底した保湿によるバリア機能の強化
水いぼ予防の基本にして極意は保湿です。乾燥してカサカサした肌は、ウイルスにとって侵入しやすい無防備な状態なので、毎日の入浴後に保湿剤をたっぷりと塗り、肌のバリア機能を整えておくことが、ウイルスを跳ね返す最強の盾となります。
アトピー性皮膚炎や乾燥肌の子供は、朝晩2回の保湿ケアを習慣にすることが望ましいです。肌が潤い、キメが整っていると、ウイルスが付着しても奥まで入り込みにくくなります。
また、保湿によって痒みを抑えることができれば、掻きむしりによる自家接種のリスクも減らすことができます。
タオルの使い分けと衛生管理
兄弟間での感染を防ぐために、タオルの共有は絶対に避けるようにしてください。お風呂上がりのバスタオルはもちろん、手洗い場のタオルも分けるのが理想的です。
もし患部がある子供がいる場合は、入浴の順番を最後にすることで、他への感染リスクを減らすことができます。また、入浴後は患部を擦らずに、タオルで優しく押さえるようにして水分を拭き取ります。
ゴシゴシ擦るとウイルスを周囲に広げてしまうからです。使用したタオルはすぐに洗濯機に入れ、可能であれば乾燥機を使用するか、天日干しでしっかりと乾かすことでウイルスを不活性化させることができます。
衣類やパジャマもこまめに洗濯し、清潔を保つことが大切です。
兄弟間での感染対策チェック
| 対策項目 | 理由 | ポイント |
|---|---|---|
| タオルの個別化 | 最も多い感染経路を断つ | 色分けするとわかりやすい |
| 入浴順の調整 | 湯上りの接触リスク低減 | 患児は最後、またはシャワー |
| 爪を短く切る | 掻いた時の皮膚損傷を防ぐ | こまめなケアが必要 |
| 手洗いの励行 | 手指についたウイルス除去 | 帰宅後、食事前の習慣化 |
爪を短く切り、掻き壊しを防ぐ
子供の爪は意外と鋭利で、伸びていると肌を傷つけることなり、爪が長い状態で水いぼを掻くと、ウイルスが爪の間に入り込み、その手で触った別の場所に容易に感染を広げてしまいます。
爪を常に短く滑らかに整えておくことは、自家接種を防ぐための非常に有効な手段で、また、寝ている間に無意識に掻いてしまうことを防ぐために、患部を絆創膏や衣服で覆っておくことも有効です。
ただし、絆創膏を貼りっぱなしにすると皮膚がかぶれてバリア機能が低下することがあるため、こまめに交換するか、通気性の良い衣服で物理的にガードする方法を選択してください。
毎日のスキンケアの重要ポイント
- 入浴後5分以内の急速保湿
- 季節を問わず保湿剤を塗る
- 肌の状態に合わせた基剤選択
- ゴシゴシ洗わず泡で洗う
- すすぎ残しがないよう流す
水いぼが治るまでの経過と予後
「いつかは治る」と言われても、それがいつなのか、どのような経過をたどるのかが見えないと不安は募ります。ここでは、治癒までの大まかなタイムラインと、注意すべき合併症について触れます。
免疫獲得までの長い道のり
水いぼに対する免疫ができるまでには、個人差がありますが平均して6ヶ月から2年程度です。一度免疫を獲得すれば、その後は再感染することはほとんどなく、できたとしても軽微で済みます。
治療を行わず自然治癒を待つという選択肢も、標準的な考え方の一つですが、数が増えすぎて生活に支障が出る場合や、プールなどの活動制限がストレスになる場合は、積極的に治療介入することもあります。
細菌感染によるトビヒの合併に注意
水いぼの経過中で最も注意が必要なのは、二次的な細菌感染です。痒くて掻き壊した傷口から、黄色ブドウ球菌や溶連菌などの細菌が入り込むと、伝染性膿痂疹(トビヒ)を起こすことがあります。
こうなると、水いぼだけでなくトビヒの治療も必要になり、じゅくじゅくとした発疹が全身に広がる恐れがあります。
水いぼが急に赤く腫れて痛みを持ったり、周囲がただれてきたりした場合は、単なる炎症反応ではなく細菌感染を起こしている可能性があります。この場合は早めに医療機関を受診し、抗生物質などで細菌を叩くことが必要です。
よくある質問(FAQ)
ここでは、水いぼの原因や感染に関して、患者さんの保護者の方から頻繁に寄せられる質問にお答えします。
- 水いぼがあってもプールに入っても大丈夫ですか?
-
プールの水そのものを介して感染することはほとんどないので、水いぼがあってもプールに入ることは可能です。
ただし、ビート板やタオルの共有、肌同士の接触でうつる可能性があるため、水着やラッシュガードで患部を覆うなどの配慮が求められます。
また、通っている園やスクールによっては独自のルールで禁止している場合もあるため、施設の規則を確認することが必要です。
- 大人の私にもうつる可能性はありますか?
-
大人にうつる可能性は極めて低いです。大人は過去の感染経験や成熟した免疫システムを持っているため、通常はウイルスが付着しても発症しません。
しかし、重度のアトピー性皮膚炎がある方や、免疫抑制剤を使用している方、HIV感染者など、免疫機能が低下している状態にある場合は、大人でも感染し、重症化することがあります。
- 自然に治るのを待つべきか、取ってしまうべきか迷っています。
-
お子様の年齢、数、性格、生活環境によって判断が分かれます。痛みや恐怖を伴う処置を無理に行うことで病院嫌いになるリスクと、放置して数が増えたりプールに入れなかったりするデメリットを天秤にかける必要があります。
数が数個のうちであれば、摘除することで早期に解決できることも多いですが、大量にできている場合は自然治癒を待つ方が本人への負担が少ないこともあります。
- 一度治れば二度とかかりませんか?
-
一度治癒すれば強い免疫が獲得されるため、再感染のリスクは非常に低いです。
終生免疫に近い状態と考えますが、インフルエンザのようにウイルスの型が多少異なる場合や、免疫の記憶が薄れた場合、あるいは免疫力が著しく低下している場合には、稀に再発することがあります。
しかし、その場合でも初回よりは症状が軽く、数も少なく済むことがほとんどです。多くの子供は小学校低学年くらいまでに免疫を獲得し、高学年になる頃には水いぼとは無縁になります。
以上
参考文献
Yamashita H, Uemura T, Kawashima M. Molecular epidemiologic analysis of Japanese patients with molluscum contagiosum. International journal of dermatology. 1996 Feb;35(2):99-105.
Kojima R, Miyake K, Shinohara R, Kushima M, Yui H, Otawa S, Horiuchi S, Yokomichi H, Akiyama Y, Ooka T, Yamagata Z. Association between filaggrin gene mutations and the clinical features of molluscum contagiosum: The Yamanashi Adjunct Study of the Japan Environment and Children’s Study. The Journal of Dermatology. 2024 Apr;51(4):484-90.
Hayashida S, Furusho N, Uchi H, Miyazaki S, Eiraku K, Gondo C, Tsuji G, Hachisuka J, Fukagawa S, Kido M, Nakahara T. Are lifetime prevalence of impetigo, molluscum and herpes infection really increased in children having atopic dermatitis?. Journal of dermatological science. 2010 Dec 1;60(3):173-8.
Olsen JR, Gallacher J, Piguet V, Francis NA. Epidemiology of molluscum contagiosum in children: a systematic review. Family practice. 2014 Apr 1;31(2):130-6.
Tanaka A, Niimi N, Takahashi M, Takahashi H, Nagata K, Nishiyama N, Noda H, Hara T, Maeda M, Mizuiri Y, Morikawa H. Prevalence of skin diseases and prognosis of atopic dermatitis in primary school children in populated areas of Japan from 2010 to 2019: The Asa Study in Hiroshima, Japan. The Journal of Dermatology. 2022 Dec;49(12):1284-90.
Kawahara A, Yoshida M. Detection of viral DNA in nonlesional skin of patients with molluscum contagiosum and on environmental fomites. British Journal of Dermatology. 2009 Jun 1;160(6):1357-9.
Braue A, Ross G, Varigos G, Kelly H. Epidemiology and impact of childhood molluscum contagiosum: a case series and critical review of the literature. Pediatric dermatology. 2005 Jul;22(4):287-94.
Olsen JR, Gallacher J, Piguet V, Francis NA. Epidemiology of molluscum contagiosum in children: a systematic review. Family practice. 2014 Apr 1;31(2):130-6.
Robinson G, Townsend S, Jahnke MN. Molluscum contagiosum: review and update on clinical presentation, diagnosis, risk, prevention, and treatment. Current Dermatology Reports. 2020 Mar;9(1):83-92.
Gerlero P, Hernández-Martín Á. Update on the treatment of molluscum contagiosum in children. Actas Dermo-Sifiliográficas (English Edition). 2018 Jun 1;109(5):408-15.
