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顔にできた水いぼ、跡を残さず治すには?皮膚科での治療と注意点

顔にできた水いぼ、跡を残さず治すには?皮膚科での治療と注意点

ふと鏡を見たときや、お子さんの顔を洗っているときに気づく水いぼ。特に顔にできた水いぼは、目立つ場所だけに、跡が残ったたりしないかと心配される方が多くいらっしゃいます。

自然に治ることもありますが、顔の皮膚はデリケートなため、対応をしないと色素沈着やクレーターのような跡が残ってしまうリスクも伴います。

この記事では、顔にできる水いぼの特徴から、跡を残さないための治療法、ご自宅でのケア方法までを詳しく解説します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

顔にできる水いぼとは何か?特徴と原因

顔にできる小さなできものは数多くありますが、水いぼは独特の特徴を持っています。水いぼは単なる肌荒れとは異なり、ウイルスという明確な原因があるため、性質に合わせた対策が必要です。

水いぼの正体と伝染性軟属腫ウイルスの感染経路

水いぼは、医学的には伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)と呼ばれるウイルス性の皮膚感染症です。

原因となるのはポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスで、このウイルスが皮膚の小さな傷や毛穴から侵入し、表皮細胞の中で増殖することで発症します。

感染した細胞は風船のように膨らみ、内部にウイルス粒子が詰まった軟属腫小体と呼ばれる白い塊を形成し、肉眼で見ると、白っぽく光沢のあるいぼとして認識されます。

感染力は比較的強く、直接肌と肌が触れ合うことで感染するほか、タオルや衣類、ビート板、浮き輪などを介した間接的な接触でも広がることがあります。

ウイルスの潜伏期間は2週間から数ヶ月と幅があり、いつの間にか感染し、気づいたら増えていたというケースが少なくありません。

子供では、保育園や幼稚園、プールといった肌の露出が増える集団生活の場で流行しやすい傾向にあります。大人の場合は、免疫力が低下しているときや、アトピー性皮膚炎などで肌のバリア機能が弱まっているときに感染リスクが高いです。

主な感染経路とリスクの高い場面

感染経路具体的な場面対策のポイント
直接接触水遊び、接触を伴う遊び、格闘技系のスポーツ肌の露出を控える、傷がある場合は覆う
間接接触タオルの共用、プールのビート板、お風呂の椅子個人専用のものを使用、使用後の洗浄と乾燥
自家接種患部を触った手で他の部位を触る、掻きむしる患部を触らない、爪を短く切る、保湿で痒みを抑える

顔の皮膚の特徴と水いぼができやすい理由

顔の皮膚は体の中でも特に薄く、デリケートな構造をしていて、目の周りの皮膚は頬の皮膚の約3分の1ほどの厚さしかなく、わずかな刺激でも小さな傷(マイクロカット)ができやすく、そこがウイルスの侵入口となってしまいます。

また、子供は無意識に顔を触る癖があることが多く、手に付着したウイルスを顔に運んでしまうことも、顔に水いぼができやすい大きな要因の一つです。

さらに、顔は常に露出している部分であるため、兄弟間や友達同士で遊んでいる最中に直接触れ合う機会が多くなります。

冬場の乾燥による肌荒れや、花粉症で鼻をかむ際の摩擦なども、皮膚のバリア機能を低下させ、ウイルスが定着しやすい環境を作ってしまいます。

顔にできた水いぼは、衣服で覆われる体幹部と比べて、目につきやすいため気になって触ってしまい、結果として掻き壊してしまうリスクも高いです。

顔の中で水いぼができやすい要注意エリア

  • 目の周り(皮膚が最も薄く、こすりやすい)
  • 鼻の下から口周り(鼻水や食べこぼしを拭く刺激を受けやすい)
  • 頬(他人との接触や寝具との摩擦が多い)
  • あごのライン(手が触れやすく、マフラーなどの刺激もある)
  • 額(前髪による刺激や汗の影響を受けやすい)

ニキビや他の皮膚トラブルとの見分け方

顔にできるポツポツとしたできものは、水いぼ以外にもニキビ(尋常性ざ瘡)や稗粒腫(はいりゅうしゅ)などがあり、一見しただけでは区別がつきにくいことがありまが、水いぼにはいくつかの特有のサインがあります。

典型的な水いぼは、直径1〜5mm程度の半球状に盛り上がった発疹で、表面になめらかな光沢があり、よく観察すると、頂点がわずかにへこんでいる(中心臍窩)ことが多く、色は周囲の皮膚と同じか、やや白っぽいのが特徴です。

ニキビのように毛穴に一致して赤く腫れたり、白や黄色の膿を持ったりすることは、細菌感染を併発していない限りありません。

また、稗粒腫は目の周りなどにできる硬い白色の粒ですが、水いぼよりもさらに小さく、中に硬い角質の塊が入っているため触感が異なります。

自己判断でニキビ用の薬を使ったり、誤ったケアをしたりすると症状を悪化させる可能性があるため、少しでも疑問を感じたら専門医の診断を受けることが大切です。

水いぼと他の皮膚疾患の特徴比較

疾患名見た目の特徴主な発生要因
水いぼ光沢のある半球状、中央がへこむ、軟らかいウイルス感染
ニキビ毛穴の赤い腫れ、白や黄色の膿、痛みがあることも皮脂詰まり、アクネ菌
稗粒腫目の周りの硬い白い粒、1〜2mm、触ると硬い角質の蓄積、体質

顔の水いぼを放置するリスクと早期治療の重要性

放っておけばそのうち治るという話を耳にしたことがあるかもしれません。自然治癒することもありますが、顔という目立つ部位においては、放置することのリスクがメリットを上回ることがあります。

自然治癒までの期間と顔での感染拡大リスク

水いぼが自然に治るまでには、個人の免疫状態にもよりますが、平均して6ヶ月から長い場合では2年以上かかることがあり、この期間中、ウイルスはずっと皮膚に存在し続けるため、常に周囲へ感染を広げるリスクを抱えることになります。

特に顔は手で触れやすい場所であり、ご自身が触れた手で他の場所を触ることで、体のあちこちに水いぼが増えてしまう自家接種という現象が頻繁に起こります。

最初は1つだった水いぼが、数週間で数十個に増えてしまうケースも珍しくありません。一つや二つの段階で治療を開始すれば、短期間で、かつ少ない負担で完治を目指すことができます。

数が少ないうちにウイルスの供給源を断つことが、感染拡大を防ぐ最も確実な方法です。

放置期間と予想されるリスクの変化

放置期間肌の状態主なリスク
初期(〜1ヶ月)数個の小さなポツポツ無意識に触って周囲に広げるリスク
中期(数ヶ月〜)数が増え、大きさも目立つように掻き壊しによる細菌感染(とびひ)、他者への感染
長期(半年以上)広範囲に多発、炎症を起こすものも混在治癒後の色素沈着やクレーター状の跡残りのリスク大

かき壊しによるとびひや跡残りの危険性

水いぼ自体は強い痒みを伴わないことも多いですが、アトピー性皮膚炎を合併している場合や、乾燥肌の方は、痒みを感じて掻きむしってしまうことがあります。

顔の皮膚を掻き壊してしまうと、傷口から黄色ブドウ球菌などの細菌が入り込み、とびひ(伝染性膿痂疹)を併発するリスクが高まります。とびひは非常に強い感染力を持ち、あっという間に全身に広がることもあります。

とびひになると、大きな水疱ができたり、皮膚がただれてジクジクしたりして、治った後も強い炎症による色素沈着や、皮膚が凹んでしまうクレーター状の跡(瘢痕)が残りやすくなります。

水いぼをきれいに治すためには、二次感染を起こす前に適切な処置を行うことが非常に重要です。

皮膚科で行う顔の水いぼ治療法

顔にできた水いぼを、跡を最小限に抑えつつ確実に治すためには、専門的な治療が必要です。皮膚科では、患者さんの年齢、水いぼの数や大きさ、できている場所、ご本人の希望を総合的に判断し、治療法を提案します。

専用器具を用いた摘除法(ピンセット治療)

現在、日本で最も標準的かつ確実に行われているのが、先がリング状になった特殊な医療用ピンセット(モスキート鉗子など)を使って、水いぼの中にあるウイルスを含んだ白い塊(軟属腫小体)を一つひとつ摘み取る方法です。

この方法の最大の利点は、原因物質を物理的に除去するため、取ったその場から治癒に向かうという即効性と確実性です。

皮膚のきめやシワの方向に沿って処置を行うことで、周囲の正常な皮膚へのダメージを最小限に抑え、きれいな仕上がりを目指します。

処置直後は少し血がにじむことがありますが、すぐに止血され、通常は数日で小さな点状のかさぶたとなり、1〜2週間程度で次第に目立たなくなっていきます。

痛みを和らげる麻酔テープの効果的な活用

摘除法は確実な反面、摘み取る際に痛みを伴うのが欠点です。顔は痛覚神経が発達しており痛みに敏感な部位であるため、痛みを軽減するためにリドカインなどを主成分とする麻酔テープ(ペンレステープなど)が広く活用されています。

治療予定の部位に、来院前にあらかじめテープを貼っておくことで、皮膚の表面感覚を一時的に麻痺させ、処置時の痛みを大幅に和らげることが可能です。

麻酔テープの効果を十分に発揮させるには、正しい使い方が重要で、通常、処置の約1時間から2時間前に貼ることが推奨されています。

また、子供さんは気になって剥がしてしまうことがあるため、上から医療用のサージカルテープで補強するなどの工夫も有効です。

麻酔テープを使用する際のポイント

  • 貼る前に患部の汚れや油分を優しく拭き取る
  • 水いぼが完全に覆われる大きさのテープを用意する
  • 指定された時間(通常1〜2時間前)を守って貼る
  • 剥がれやすい場所は上から医療用テープなどで固定する
  • 万が一、かぶれや赤みが出た場合はすぐに剥がして医師に相談する

その他の選択肢:凍結療法や漢方薬治療

液体窒素を用いた凍結療法は、マイナス196度の超低温でウイルスに感染した細胞を急激に凍らせて壊死させる方法です。綿棒などで液体窒素を患部に押し当てます。

短時間で済みますが、処置時に独特の痛みがあり、顔に行うと炎症後の色素沈着が強く残りやすい傾向があるため、慎重に適用が判断されます。

痛みを伴う処置が難しい場合や、数が非常に多くて全てを取るのが現実的でない場合には、漢方薬であるヨクイニンの内服を併用することもあります。

ヨクイニンはハトムギの種子から抽出された生薬で、皮膚のターンオーバーを促進し、免疫力を高める効果が期待できます。即効性はなく、効果が出るまでに数週間から数ヶ月かかりますが、痛みがなく自宅で続けられることが利点です。

主な皮膚科治療の比較

治療法メリットデメリット・注意点
摘除法確実性が高く、早期に治癒が期待できる処置時に痛みを伴う(麻酔で軽減可)、一時的な出血
凍結療法特殊な器具が不要で、短時間で処置が終わる痛みが強い、顔では色素沈着のリスクがやや高い
ヨクイニン内服痛みが全くなく、自宅で手軽に継続できる効果に個人差が大きく、治癒までに時間がかかる

治療期間中の患部ケアと日常生活の過ごし方

皮膚科での治療が終わっても、完全に肌が元通りになるまでには自宅でのケアが欠かせません。治療直後の肌は非常に敏感な状態になっており、ここでの対応が仕上がりの良し悪しを左右します。

治療当日から数日間の患部への対応

摘除法を行った当日は、患部から少量の出血が見られることがあり、その場合は、清潔なガーゼやティッシュで軽く数分間押さえて止血します。

当日の入浴は、血行が良くなりすぎて再出血するのを防ぐため、長時間湯船に浸かることは避け、短時間のシャワーで済ませるのが無難です。

洗顔時は、患部を強くこすらないよう、しっかりと泡立てた石鹸の泡で優しくなでるように洗い、ぬるま湯で十分にすすぎます。タオルで拭く際も、ゴシゴシこすらず、優しく押さえるようにして水分を吸い取ります。

清潔を保つことが、何よりの細菌感染予防になります。

翌日以降、患部は小さな赤い点状のかさぶたになり、かさぶたは、新しい皮膚ができるまでの天然の保護膜です。自然に剥がれ落ちるまで、絶対に無理に剥がさないようにしてください。

無理に剥がすと、治りが遅くなるだけでなく、凹んだ跡が残ってしまう原因になります。

お子様が寝ている間に無意識に掻いてしまう心配がある場合は、通気性の良い小さな絆創膏を貼って保護するのも一つの方法ですが、長時間貼りっぱなしにして蒸れるとかえって治りが悪くなるため、こまめな交換が必要です。

処方薬の正しい使い方とスキンケアの基本

治療後、細菌感染を防ぐための化膿止め(抗生物質入り軟膏)や、炎症を抑えるための非ステロイド系の塗り薬が処方されることがあります。

薬は医師の指示通り、決められた回数(通常は朝晩の2回など)と期間、正しく塗布してください。見た目がきれいになったからといって自己判断で急に中止すると、思わぬトラブルにつながることがあります。

また、水いぼができるお子さんは、背景に乾燥肌やアトピー性素因を持っていることが多くあるので、患部以外の健康な皮膚も含めて、日頃からのスキンケアが非常に重要です。

入浴後は5分以内に、保湿剤を全身にたっぷり塗って皮膚のバリア機能を高めておくことは、新たな水いぼのウイルスの侵入を防ぐことにもつながります。

ただし、処置をした直後の傷がある部分には、一般的な保湿剤が刺激になることがあるため、その部分は処方された軟膏のみにするなど、医師の指示に従ってください。

治療中のスキンケア用品選びのポイント

アイテム選び方の基準避けるべきもの
洗顔料・石鹸低刺激性、無香料、泡立ちが良いものスクラブ入り、強い清涼感があるもの
保湿剤敏感肌用、セラミドやヘパリン類似物質配合アルコール配合率が高いもの、刺激を感じるもの
日焼け止め紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル)、SPF30程度ウォータープルーフで専用クレンジングが必要な強力なもの

登園・登校や習い事に関する判断基準

水いぼの治療中の登園や登校は、基本的に問題なく、通常の学校生活の中で爆発的に感染が広がるようなものではないため、出席停止の対象感染症には指定されていません。

ただし、プールの授業に関しては、学校や園によって独自の基準が設けられていることがあります。

日本臨床皮膚科医会などの統一見解ではプールの水では感染しないが、タオルやビート板の共用、更衣室での直接の接触で感染する可能性があるとされています。

治療後、傷が完全に乾いてかさぶたになっていれば、プールへの参加を許可されることが一般的で、スイミングスクールや体操教室などの習い事も同様ですが、念のため施設の指導者に事前に確認しておくと安心です。

周囲への配慮として、露出する部分にまだ活動性の水いぼがある場合は、ラッシュガードやスパッツなどで覆うといった対策も有効であり、マナーとしても推奨されます。

跡を残さないための治癒後の徹底スキンケア

水いぼそのものが治っても、赤みや茶色いシミのような跡がしばらく残ることがあり(炎症後紅斑や炎症後色素沈着)、傷が治る過程の正常な反応でもあります。

しかし、特に顔は紫外線の影響をダイレクトに受けやすく、ケアを怠るとこれらの跡が長く残ってしまう可能性があります。

紫外線対策で色素沈着を防ぐ

治療後の皮膚は、軽い炎症を起こした状態に近く、通常よりもメラニン色素を生成する細胞(メラノサイト)が活性化しやすい状態になっています。

無防備な状態で紫外線を浴びると、強い色素沈着を起こし、茶色いシミとして定着してしまうことがあり、防ぐためには、徹底した紫外線対策が必要です。

外出時は、季節や天候に関わらず、低刺激な日焼け止めをこまめに塗る習慣をつけましょう。

日常生活であればSPF20〜30、PA++程度のもので十分ですが、朝一度塗るだけでなく、汗をかいたりタオルで拭いたりした後は塗り直すことが大切です。

また、つばの広い帽子をかぶることも、顔への紫外線を物理的にカットするのに非常に有効で、曇りの日や冬場でも紫外線は降り注いでいるため、油断せずに一年を通して対策を続けてください。

日焼け止めを選ぶ際のチェックリスト

  • 敏感肌用と明記されているか
  • 紫外線吸収剤を使っていない(ノンケミカル)か
  • 石鹸やいつものボディソープで簡単に落とせるか
  • 無香料・無着色・アルコールフリーであるか

保湿によるバリア機能の強化とターンオーバーの正常化

肌の生まれ変わり(ターンオーバー)を正常なサイクルに保つことは、残ってしまった跡を早く薄く排出するために重要です。

健康な皮膚では一定期間で細胞が入れ替わりますが、乾燥した肌ではこのサイクルが乱れがちになるため、十分な保湿ケアを継続して、肌の水分量を保つことが大切になります。

肌が潤っていると、皮膚のバリア機能が正常に働き、外部の刺激からも肌を守ることができます。

保湿剤は、お風呂上がりの肌がまだ少し湿っているうちに塗ると、水分を閉じ込めることができ効果的です。顔に塗る際は、強く擦り込むのではなく、手のひらで保湿剤を温めてから、優しく包み込むようになじませます。

赤みや茶色い跡が残った場合の医療的アプローチ

丁寧なご自宅でのケアを続けても、赤みや色素沈着が数ヶ月単位でなかなか消えない場合は、再度皮膚科で相談することができます。

症状に応じて、メラニンの生成を抑えるビタミンC誘導体やハイドロキノン(医師の管理下で使用する強力な美白剤)といった外用薬、あるいは肌のターンオーバーを促進するヘパリン類似物質やビタミンA系の外用薬が処方されることがあります。

また、自由診療にはなりますが、美容皮膚科的なアプローチとして、特定の波長の光を当てて赤みやシミを改善するフォトフェイシャルなどの光治療や、穏やかな酸を使って古い角質を取り除くケミカルピーリングなどが有効な場合もあります。

自宅でできるケアと絶対にやってはいけないこと

顔にできた水いぼを早く治したい一心で、ご自宅で様々な対処を試みようとする方もいて、良かれと思って行ったケアが、かえって症状を悪化させたり、一生残る傷跡を作ってしまったりするケースもあります。

自己判断での除去や民間療法の危険性

最も避けていただきたいのは、ご自宅で市販のピンセットや針を使って、見よう見まねで水いぼを自分で取ろうとすることです。

医療機関で使用する器具は完全に滅菌されていますが、家庭では同レベルの滅菌は困難であり、そこから雑菌が入って蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの重篤な皮膚感染症を起こすリスクがあります。

また、プロではないため力加減が分からずに深く傷つけてしまい、真皮という皮膚の深い部分まで損傷させ、凹み跡を作ってしまう危険性も非常に高いです。

インターネットや口コミでは、イソジンなどの強い消毒液を塗る、木酢液を貼る、特定の植物の汁を塗るといった様々な民間療法が紹介されていますが、絶対にやめましょう。

デリケートな顔の皮膚にかぶれ(接触皮膚炎)を起こし、赤くただれてしまったり、痒みが増して掻き壊しを誘発したりと、水いぼ以上につらい症状を起こす可能性があります。

よく見かける民間療法とリスク

民間療法・自己処理期待される(誤った)効果実際の医学的リスク
イソジン(消毒液)塗布ウイルスを消毒・乾燥させる正常な皮膚への強い刺激、かぶれ、ヨードアレルギーの誘発
木酢液・竹酢液の使用酸でいぼを腐食させる化学熱傷(やけど)のような状態、強い炎症、跡残り
自分で針で突く内容物を出す細菌感染、深部組織の損傷による永久的な傷跡

家庭内での感染拡大を防ぐ工夫

水いぼは感染力が強いため、家族間でも容易に感染します。感染を防ぐ基本は共有を避けることで、入浴後のバスタオルや顔を拭くフェイスタオルは、必ず一人ひとり専用のものを用意し、絶対に共用しないように徹底しましょう。

洗濯は通常通り一緒に行って構いませんが、乾燥機や天日干しでしっかりと乾かすことが大切です。

入浴の順番も工夫が必要で、水いぼがある方を最後に入浴させることで、他の家族がウイルスにさらされるリスクを減らすことができます。

また、一緒にお風呂に入る場合は、狭い浴槽内で肌と肌が直接触れ合わないように気をつけたり、お風呂で使用する椅子も共用を避け、使用後は熱めのシャワーで洗い流して乾燥させたりするなどの配慮が有効です。

大人の顔にできる水いぼの特徴と対応

水いぼは一般的に子供の病気と思われがちですが、大人でも発症することがあります。大人の顔に水いぼができた場合、子供とは異なる背景が隠れていることがあり、社会生活への影響も大きいため、対応にも少し違った視点が必要です。

大人特有の発症原因と免疫力との関係

大人の皮膚は通常、これまでの経験から水いぼウイルスに対して十分な免疫を獲得しており、簡単には感染しません。

それにもかかわらず発症するということは、何らかの原因で一時的、あるいは慢性的に免疫力が低下しているサインである可能性があります。

仕事の激務による過労、強い精神的ストレス、慢性的な寝不足、不規則な食生活などが続いている時期は要注意です。

また、基礎疾患としてアトピー性皮膚炎がある方や、他の皮膚疾患の治療でステロイド外用薬を顔に長期使用している方も、局所的な皮膚の免疫が低下し、ウイルスが定着しやすくなっています。

極めて稀ですが、HIV感染症や悪性リンパ腫などの重大な免疫不全をきたす疾患が背景に隠れているケースもあるため、単なる皮膚トラブルと軽視せず、医療機関でしっかりとした全身状態のチェックを含めた診察を受けてください。

子供と大人の水いぼの違い

比較項目子供の特徴大人の特徴
主な感染経路プール、友達との遊び、家族内感染性行為(陰部の場合)、接触スポーツ、免疫低下時の日和見感染
発症の背景免疫が未発達、乾燥肌、アトピー過労、ストレス、ステロイド長期使用、基礎疾患
治療への要望痛くないこと、怖くないこと早く治すこと、仕事に支障が出ないこと、跡を目立たせないこと

美容面を重視した大人の治療戦略

大人の場合、仕事や対人関係において顔の見た目が持つ意味合いが子供以上に大きくなるため、治療においてもいかに早く、かつ治療中の見た目も損なわずに治すかが重視されます。

子供と同じ摘除法も確実で有効ですが、処置後の赤みやかさぶたが数日間続くため、接客業などでどうしてもダウンタイム(回復にかかる時間)が取れない場合は、他のアプローチも検討します。

内服薬(ヨクイニンなど)をベースにしつつ、どうしても目立つ大きな数個だけを金曜日の夕方に処置して週末で回復を待つなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な治療計画を立てることが可能です。

また、美容皮膚科を併設しているクリニックでは、炭酸ガスレーザーを用いてより精密に病変部のみを蒸散させ、周囲のダメージを極限まで抑える治療を行っているところもあります(通常は自費診療)。

顔の水いぼに関するよくある質問

顔の水いぼ治療は痛いですか?

何もせずに摘除を行うと、一瞬ですが輪ゴムで弾かれたような強い痛みを伴うため、顔の治療を行う際には、痛みを最小限にするために事前に麻酔テープの使用を強く推奨します。

正しく麻酔テープを使用すれば、痛みはほとんど感じないか、我慢できる程度まで大幅に軽減できます。

治療した後、顔に跡は残りませんか?

アフターケア(触らない、日焼け止めを塗るなど)をしっかり守っていただければ、ほとんどの場合はきれいに治り、目立つ跡は残りません。

放置して掻き壊したり、ご自宅で無理に取ろうとしたりする方が、クレーター状の深い跡や消えにくい色素沈着を残すリスクが格段に高まります。跡を残さないためにも早期受診が大切です。

何回通院すれば完治しますか?

初診時に見えている水いぼが数個であれば、1回の処置で全て取りきれることもあります。

ただし、水いぼウイルスには潜伏期間があるため、最初の治療時には目に見えなかった小さな予備軍が、1〜2週間後に新たに皮膚表面に出てくることがよくあります。

完全に新しいものが出なくなるまで、平均して2〜4回程度の通院が必要になるケースが一般的です。

顔に水いぼがある状態で、普段使っている化粧品を使っても良いですか?

患部を避けていただければ、基本的なメイクやスキンケアは可能です。

ただし、パフやチークブラシなどを介して顔の他の部分にウイルスを広げてしまう可能性があるため、患部周辺は使い捨てのコットンや綿棒を使用するか、その部分だけメイクを控えることをお勧めします。

また、クレンジング時のマッサージやスクラブ洗顔など、肌を強く擦る行為は感染を広げるため厳禁です。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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